<マッチレビュー>
5月に組まれている公式戦8試合のうち6試合目は、ルヴァンカップに戦いの舞台を移してサガン鳥栖と激突した。勝てばプレーオフステージに進出できる一発勝負のゲームとなる。
リーグ戦の前節、横浜F・マリノス戦から中2日で、さらにこの後には中3日でガンバ大阪とのリーグ戦が控えており、スターティングメンバーの約半数を変更した。センターバックは森重真人選手と岡哲平選手が公式戦では初めてスタートからピッチに並び、ダブルボランチは小泉慶選手と原川力選手の古巣対戦コンビを配置。前線には仲川輝人選手と松木玖生選手が並び、2回戦のY.S.C.C.横浜戦で加入後初ゴールを決めたジャジャ シルバ選手は右ウイングに入った。
1stHALF—押し込まれる時間が続くもショートカウンターで反撃
リーグ戦では5連敗中と鬼門となっている鳥栖のアウェイに乗り込んだゲームだったが、キックオフからしばらくは相手にボールを持たれ、走らされる時間が長く苦しい展開が続いた。
特にサガン鳥栖の左サイド、自分たちの右サイドの守備で後手を踏む場面が多く、簡単に自陣への侵入を許し、クロスを入れられるシーンが続いた。ただ、ゴール前では森重選手を中心に撥ね返し、コーナーキックから招いたピンチも相手のシュートミスなどに助けられ、何とか失点ゼロで凌いだ。
守備が落ち着かずになかなか攻撃にもリズムが出なかった東京だったが、時折、ショートカウンターからシュートまで持ち込んでいく。前半19分には俵積田晃太選手の突破から仲川選手がゴール前で左足を振るもシュートは枠を外れ、前半22分には松木選手が左足で狙うもゴールキーパーがセーブする。さらに前半37分には、白井康介選手が相手最終ラインの裏を取って折り返すと、ファーサイドで俵積田選手が合わせるも揺れたのはサイドネットの外側だった。
相手にゴール前まで迫られながらも耐え抜き、機を見たカウンターでチャンスを窺う緊張感のある展開で試合を折り返した。
2ndHALF—森重弾で先制も終了間際に追い付かれる
まずは流れを変えたい後半、東京は仲川選手に代え、荒木遼太郎選手を投入すると守備が改善。そして、後半11分にはコーナーキックから先制に成功する。原川選手の右コーナーキックにニアサイドに飛び込んだ森重選手が頭ですらしてゴールにねじ込んだ。
この先制点で完全に主導権を掌握した東京は、2点目を奪いにいき、後半17分にはまたしてもコーナーキックから森重選手がフリーで狙うも、これは惜しくも外れた。
さらに後半30分にもビッグチャンス。内側に絞っていた白井選手のミドルシュートはゴールキーパーにセーブされるも、こぼれ球に松木選手がフリーで詰める。しかし、コースが空いていたゴールには押し込めず2点目とはならなかった。
こうなると少しずつ鳥栖が盛り返していき、後半アディショナルタイムにまさかの同点ゴールを許す。マルセロ ヒアン選手にうまくディフェンスラインと入れ替わられ、飛び出した野澤大志ブランドン選手もかわされてゴールに流し込まれた。
EXTRA TIME—両チーム退場者を出す死闘はスコアが動かず
もう一度、気持ちを切り替えてスタートした延長戦は、前半7分に鳥栖のキム テヒョン選手が2枚目の警告で退場。数的有利のシチュエーションとなった。しかし、10人の相手を攻めあぐねていると、前半アディショナルタイムには原川選手も2回目の警告を受けて退場。10人対10人での戦いとなった。
両チームともに体力を振り絞った延長後半は鳥栖に押し込まれるも、瀬戸際で耐え抜き、1-1のスコアを死守。決着はペナルティキック戦にもつれ込んだ。
PENALTY SHOOTOUT—東京は全員が成功し鳥栖の5人目を大志がセーブ!
プレーオフラウンド進出をかけたペナルティキック戦。
先攻の東京は、一人目で森重選手が成功させると、二人目の荒木選手、三人目の遠藤選手、四人目の徳元悠平選手、五人目の小泉選手も確実に決め、迎えた鳥栖の五人目のキッカー、長沼選手のキックを野澤大志選手がストップ。死闘を制し、サンフレッチェ広島と戦うプレーオフステージに進出した。
MATCH DETAILS
<FC東京>
STARTING Ⅺ
GK 野澤大志ブランドン
DF 白井康介(延長前半12分:野澤零温)/森重真人/岡哲平/徳元悠平
MF 松木玖生(後半42分:東慶悟)/小泉慶/原川力
FW 俵積田晃太(後半15分:遠藤渓太)/仲川輝人(後半0分:荒木遼太郎)/ジャジャ シルバ(後半15分:安斎颯馬)(延長後半17分:高宇洋)
SUBS
GK 波多野豪
DF エンリケ トレヴィザン
MF 佐藤龍之介
GOAL
後半11分:森重真人
<サガン鳥栖>
STARTING Ⅺ
GK 朴一圭
DF 山﨑浩介/上夷克典/原田亘/北島郁哉(後半0分:キム テヒョン)
MF 河原創/渡邉綾平(後半0分:手塚康平)/日野翔太(後半22分:横山歩夢)
FW 富樫敬真(後半38分:河田篤秀)(延長後半4分:菊地泰智)/長沼洋一/ヴィニシウス アラウージョ(後半12分:マルセロ ヒアン)
SUBS
GK アルナウ
DF 丸橋祐介
MF 森谷賢太郎
GOAL
後半45+1分:マルセロ ヒアン
PENALTY SHOOTOUT
[ピーター クラモフスキー監督インタビュー]
Q、試合を振り返ってください。
A、フットボールの良い戦いでした。両チームともエンターテインメント性の高い戦い方をしていました。タイトな試合のなかで何か多くのことが起きたわけではなかったかもしれません。それでも我々の選手たちはすべてを出し尽くして戦い抜いて、タフなアウェイで勝利してくれました。相手よりも試合の間隔が一日少ないなかでの戦いでしたが、選手たちは自分たちが出したいパフォーマンスを発揮してくれました。我々が持っている特長を出し、自分たちのフットボールへの信念を持って最後まで戦い抜いてくれました。それが勝利につながった要因だと思っています。また、平日にアウェイの地まで足を運んでサポートしてくれたファン・サポーターに感謝しています。彼らの応援が選手たちに力を与えてくれました。
Q、うまくいかないことが多かった試合かもしれませんが、終盤に相手の攻撃に耐えた守備と最後のペナルティキック戦について教えてください。
A、試合を振り返って、まだ改善しなければいけない部分があったと思います。前半はイーブンな戦いで、後半は使いたいエリアを自分たちは使えていました。それで1-0のリードを奪えたと思いますし、この連戦のなかでもリードに値するパフォーマンスを出せていました。ただ、90分間でゲームを締められなかったところは残念です。最後の時間帯の試合の締め方は、自分たちが改善しなければいけないところです。そして、ここから学ばなければいけません。
延長戦には色々なものが詰まっていました。相手選手が一人退場したことで自分たちがアドバンテージを持って戦える状況もありました。しかし、そこも結果的には同じ人数になりました。我々が十人でゲームを終わらせないといけない状況になりましたが、そこは自分たちができるようになってきている部分でした。選手たちが自分の特長や個性や信念を持って、ペナルティキック戦まで戦ってくれました。
選手たちを誇りに思っています。出場機会の少なかった選手たちがこういった試合に入っていくのは難しいなかで、しっかりと戦ってくれました。全選手が、個人でもそうですが、選手同士がつながりを持ってプレーしていました。完璧なフットボールをすべての時間帯でできるわけではありません。そのなかで、自分たちが成長していける要素がありました。特別なメンタリティは毎日の練習のなかで出せていますし、それが勝者のメンタリティだと思います。選手たちがしっかりと出し切ってくれました。
Q、延長戦に入る前に選手たちにどのような声掛けをしましたか。
A、次の時間帯で使えそうなところなど、そのまとめを話しました。次の15分間で何が大事になるかについてです。細かいところも含めて、彼らに力を与えようと考えていました。選手たちは、自分たちがどのような男かを示してくれましたし、誇りに思います。しっかりと回復して、東京に戻って次の試合に向けた準備をしたいと思います。
[選手インタビュー]
<森重真人選手>
Q、試合を振り返ってください。
A、タフな試合でしたが、全員の勝ちたい気持ちが相手よりも勝ったことが結果に繋がったと思います。アウェイの難しい試合でタフに戦えたことが良かったです。色々な判断の部分で、ピッチ上で全員が同じ認識を共有できていないと、失点シーンのような局面を招いてしまうと思います。反省すべき点です。
Q、得点シーンを振り返ってください。
A、良いボールがくれば、セットプレーから得点を奪う良い感触と自信がありました。相手の守備の隙も必ず出てくると思っていました。うまくゴールに入ってくれてホッとしました。決め切れる場面でゴールを奪って試合をしっかりと終わらせることが今後、チームとして求められてくる部分だと思います。
Q、相手の背後を意識したビルドアップが全体を通して見られました。
A、相手のラインが高く設定されていたので、その裏に落とすようなイメージでボールを配球しました。相手の嫌がる部分であり、チームとしての狙いでもありました。僕自身もボールを受けた後にチャンスがあれば、積極的に狙おうと意識していました。
<徳元悠平選手>
Q、試合を振り返ってください。
A、リーグ戦ではスタメンで出場する機会を得られていませんでしたが、今日のように試合に出場できることを常に意識して、日々のトレーニングから準備をしていました。僕自身のアシストやゴールで試合を決めることができればベストでしたが、ペナルティキック戦のキッカーとしてしっかりと決め切ることができて良かったです。
Q、120分を通して、徳元悠平選手の良さが出ていました。
A、野澤大志ブランドン選手にも岡哲平選手にもボールをどんどん自分に送ってくれと要求していましたし、ボールを受けた後のプレーには自信があります。良さを出すことが勝利に繋がると思ってプレーできたことが良い方向に進んだ要因だと思います。
Q、ただ、試合終盤の失点が試合展開を苦しくしてしまいました。
A、防ぐことができた失点でした。修正して次に繋げられる内容だと思いますし、中3日でリーグ戦でガンバ大阪と戦いますし、来週の金曜日には、今度はリーグ戦でサガン鳥栖と対戦します。チーム全体で課題を共有したいと思います。あとは攻撃陣を信じて、守備の選手は粘り強く守ることが重要だと思います。
Q、劣勢の試合展開でも得点を奪う力がついてきているように見えます。
A、追加点に繋がるチャンスは、今日の試合でも多くありました。練習から細部にこだわることが大切で、今日のような難しい試合で勝って修正できることをプラスに捉えて、次につなげたいと思います。
<岡哲平選手>
Q 試合を振り返ってください。
A、緊張はもちろんありましたが、自分のやるべきことはチームの勝利に貢献することでした。守備では森重真人選手とのチャレンジ&カバーだったり、周囲の選手へのコーチング、そして相手が背後を狙ってきていたので、その対応を意識してプレーしました。攻撃面では、ミスをしてもいいから積極的にチャレンジをしようという気持ちでプレーしました。あえて切り返しをしたりして「自分は見えている」と余裕を見せて、強気にプレーすることを心掛けました。最終的に勝利できたことが本当に大きく、勝利という経験値を持った上で修正できるので、今後に繋げていきたいと思います。
Q、先輩のサポートも大きかったのではないでしょうか。
A、ボランチに入っていた小泉慶選手や原川力選手が本当に良いタイミングで顔を出してくれて、ビルドアップも凄くやりやすかったです。周りの支えがあったからこその勝利だと思います。
Q、新たなスタートだと思います。今後に向けた意気込みをお願いします。
A、またここからチャンスを掴みにいって、出場した試合では無失点で勝利に貢献したいです。今日も感じましたが、小平グランドの練習でやっていることがすべてなので、一日一日を無駄にせず成長していきたいと思います。
<東慶悟選手>
Q、怪我から復帰して久しぶりの公式戦でした。
A、内容よりもまずは勝利が絶対条件でした。90分でしっかりと試合を終えられれば良かったのですが、相手に勢いもあり失点を許してしまいました。ペナルティキック戦までもつれてしまいましたが、勝利できて良かったです。
Q、後半の終盤から試合全体が落ち着かない時間が続くなかで、意識したことを教えてください。
A、両チームともに退場者を出してしまうなどイレギュラーなことがピッチ内で起きてしまっていたので、まずは相手にこれ以上得点を与えないこと、隙をついて自分たちが得点を奪うことを意識していました。全員のハードワークが勝利に繋がったと思います。
Q、延長戦はボランチの位置でプレーしていました。
A、ボールを受けて動かすこと、リズムを作ること、相手がハイラインだったので、その裏にボールを送って攻撃を組み立てる狙いは持っていましたが、全体的に疲労していたので、バランスをとることを最優先に考えていました。小泉慶選手の連戦の出場を考えると、途中から出場した僕がいかにサポートできるか、ハードワークできるか、というところも意識していました。
Q、引き続き失点減少という点がチームとしての課題ですが、どのようなアプローチが必要ですか。
A、最後の部分でしっかりと締める必要がありました。90分を通した守り方、試合の終え方をチームとして整理したいと思います。