<前節・鹿島アントラーズ戦のレビュー>
アウェイで鹿島アントラーズと対戦した中断期間前の第24節。荒木遼太郎、野澤大志ブランドンの両選手がU-23日本代表合流のため、キャプテン松木玖生選手が移籍を前提とした準備のためにチームを離れた一戦は、日差しと暑さの残るなかでキックオフを迎えた。
序盤、右サイドの連携から相手陣内に攻め込んでチャンスメイクを図る東京。だが前半30分、ディエゴ オリヴェイラ選手の決定機をブロックされたところから鹿島に鋭いカウンターを食らって失点。1点のビハインドを背負ってしまう。
反撃を期す東京。ここで22番の超絶トラップがチームに同点弾をもたらした。
前半41分、左サイドで細かくパスを出し入れしながら攻め手をうかがうと、遠藤渓太選手が最終ラインの裏を狙って鋭くダッシュ。これを見逃さなかった徳元悠平選手が得意の左足で前方へピンポイントのフィードを送る。
後方から来るフワリとしたボールに対して、ボールの落ちどころにタイミングを合わせた遠藤選手。左足インサイドで巻き込みながら前方へ持ち出す絶妙なトラップを見せ、流れるようなプレーで巧みにゴール前へ迫ると、鋭い切り返しで相手のスライディングをいなして右足を振り抜きゴールネットを揺らした。
まさに“ビタ止め”。見事にボールの勢いを吸収するトラップを見せた遠藤選手が、国立競技場で行われたアルビレックス新潟戦に続いて2試合連続ゴールを叩き込み、試合を振り出しに戻して試合を折り返した。
この勢いで逆転を狙った東京だったが、後半立ち上がりに勝ち越しゴールを許してしまう。その後も遠藤選手や途中出場の俵積田晃太選手の仕掛けを中心に同点ゴールを狙ったが及ばず。悔しい黒星を喫して中断期間へ突入することになった。
<マッチプレビュー>
中断期間を挟み、アウェイ大阪の地で明治安田J1リーグが再開する。
ミッドウィークに行われるJ1第24節で東京が乗り込むのは、ガンバ大阪の本拠地パナソニック スタジアム 吹田。ここまで10勝6分8敗、勝点36で7位の東京にとっては、後半戦の巻き返しに勢いをつけるための極めて重要な一戦となる。
2週間あまりのリーグ戦中断期間、チームには様々な動きがあった。
まずはキャプテンの松木玖生選手がイングランドのサウサンプトンFCへ完全移籍(今シーズンは期限付き移籍でトルコのギョズテペSKでプレー)。ジャジャ シルバ選手のサガン鳥栖への期限付き移籍も発表された。
そして3人制を敷いていたキャプテンには、新たに高宇洋選手が就任。高選手にとっては新主将としての初戦がプロデビューした古巣とのゲームとなる。責任感の強い司令塔だけに、かつての本拠地で気持ちの入ったプレーを見せてくれそうだ。
負傷者が続々と実戦復帰する好材料も見られている。前半戦で攻守の中心選手として期待されながら負傷に泣いた小柏剛、土肥幹太の両選手が直前の練習試合に出場し、寺山翼選手と東廉太選手もトレーニングに合流。選手層に厚みが加わり、再び各ポジションのポジション争いが激化していくことでチーム力をアップしたいところだ。
また、U-23日本代表として世界を経験した荒木遼太郎、野澤大志ブランドンの両選手は8月4日夕方に帰国。フランスで味わった悔しさと貴重な経験を彼らの今後に、そしてチームに還元してくれることを期待したい。
ピッチ上のトレーニングでは、ピーター クラモフスキー監督が主にボールの保持に重点を置いたトレーニングを落とし込んだ。リーグ戦再開後にいきなりの過密日程を強いられることもあり、酷暑の環境下で主導権を握って戦う時間帯を伸ばさなければチームの疲弊は避けられない。これまでも素早い攻撃とボールを握るサッカーの両立をめざしてきたが、従来どおりに強度の高さを求めながら、あらためて試合巧者となるべく意識を植え付けた形だ。
ガンバ大阪との前回対戦は、5月26日に行われた第16節。東京がリーグ最多得点、ガンバ大阪がリーグ最少失点で迎えたゲームだったが、東京がビッグチャンスを決め切れず、後半40分に先制点を許してしまう。終了間際にエンリケ トレヴィザン選手が同点弾を決めたかに思われたが、直前のプレーがオフサイドと判定されてゴールは認められず。堅守を誇る相手に0-1で黒星を喫した。
ガンバ大阪はこの勝利で勢いに乗って連勝街道を突き進み、中断期間突入時点で首位と勝点5差の2位に浮上。6月度の明治安田JリーグKONAMI月間MVPにも選出され、攻撃に変化を加える宇佐美貴史選手は累積警告により出場停止だが、力強い突破とスピードを兼ね備えるウェルトン選手や戦況に応じた的確なパスを持ち味とする鈴木徳真選手など、東京としても絶対に抑えなければならない選手が数多く在籍する。
再び上位争いに加わりたい東京としては、再開初戦で勝利を手にし、いきなり重要なゲームが続く“真夏の連戦”に勢いをつけたいところ。今節は8月7日(水)19:00キックオフ。明治安田J1リーグ後半戦、青赤軍団の猛反撃がアウェイ大阪からスタートする。
[ピーター クラモフスキー監督インタビュー]
Q、J1リーグが再開します。中断期間中に重点的に取り組んできたことを教えてください。
A、フィジカルの部分を高めてきました。非常に気温が高いこともあり、難しい状況ではありますが、再開後のシーズンを強く戦っていくために良いものを積み上げられた期間になりました。ゲーム運びの要素をはじめ、常に自分たちを主体として、継続して成長することが重要です。守備のハイプレスや強度。狙いとする位置でボールを奪って攻撃に素早く転じること。ミドルサードの守備意識やゲームをコントロールするためのテンポや戦うために必要なことの精度を高めることができています。攻撃的に戦ううえで必要なこと、相手が嫌がる危険なスペースを突いていくこと、相手のゴールネットを多く揺らすことは今シーズン継続して選手たちには求めています。中断期間の約2週間で、今話したことを重点的に取り組みました。どのような相手よりも強く戦い、シーズンを終えられるようにしていきたいと思います。
Q、組織的な守備を構築するためのコミュニケーションも選手間で活発に行われていました。
A、非常に良いことであり、重要なことです。自分たちのゲームモデルのなかで、様々な決まりごとがあります。それをピッチで表現するためにコミュニケーションは欠かせません。選手間の連携をさらに高めることで、良い守備が構築されていくと思っています。
Q、上位をめざすうえで、今節のガンバ大阪戦は非常に重要な一戦になると思います。
A、どの試合も重要で、大事な試合がたくさん残っています。すべての試合で勝点3を奪うことだけを考えていますし、それだけをめざして今シーズンを戦い抜きます。ガンバ大阪は
非常に良いチームですし、タフなアウェイゲームになると思います。手強い相手ですが、自分たちのサッカーを表現することが何よりも重要です。信念を強く持ち、やり切ることを求めていきます。ピッチ上で起こりうる様々な局面で勝つこと、調子の良い相手ではありますが、恐れることなく戦うことが勝点3に繋がると思います。
[選手インタビュー]
<遠藤渓太選手>
Q、中断していたリーグ戦が再開します。
A、2戦連続でゴールも決めていましたし、自分の調子は良かったので、この中断で途絶えさせてしまうのではなく、この良い流れを継続させていきたいです。僕自身、もらったチャンスで結果を残すことができましたし、このまま結果を残して試合に出続けたいです。決められるだけゴールを決めたいですが、欲張らず謙虚に狙っていきたいと思います。
Q、過去に3戦連発はありましたか。
A、多分ないと思います。リーグ前半戦はなかなかチームに貢献できず、怪我を含めてチームに迷惑をかけたので、できるだけ多くの得点を奪いたいです。ですが、チームの勝利が一番ですし、ゴールとチームの勝利の両方のバランスを保ちつつ、決めにいきたいと思います。ゴールこそが一番チームを助けられると思っているので。
Q、今節対戦するガンバ大阪の印象を教えてください。
A、ゴールキーパーの一森純選手は、とてもビルドアップに長けている選手という印象です。ビッグセーブで流れを変えられる選手だと思いますし、本当に大きな存在、厄介な選手だなとフォワードとして思います。中断前の鹿島アントラーズ戦も非常に重要な一戦でしたが勝点を奪うことができませんでした。順位も混戦ですし、まだ上位をめざせるチャンスはあると思っていますが、内容のあるゲームと勝利を求めていきたいです。
<高宇洋選手>
Q、J1リーグの中断期間はチームとしてどのようなことに取り組みましたか。
A、試合のなかで良かったシーンはチームとして継続して取り組みましたし、今まで積み上げてきたものを“もう一度徹底しよう”とクラモフスキー監督はじめ、選手たちとコミュニケーションを図ることができました。チームが狙いとしているアタッキングサードの使い方、どのように侵入し厚みを持たせられるかについて整理できた期間になったと思います。
Q、中断期間中にはキャプテンに就任しました。あらためて、どのような気持ちですか。
A、森重真人選手や小泉慶選手もいるので、ゲームキャプテンとして実際にキャプテンマークを巻くかどうかは分かりませんが、僕個人としては何かを大きく変えるわけではありません。チームが勝つために、個人としてもう一つ突き抜けるために、日々の取り組みを大切にしていきたいです。勝点3のためにピッチの真ん中から発信し続けていきたいですし、責任ある役割を与えられたので、細部にこだわりながら、他の選手の協力も得つつ、高めていきたいと思います。
Q、リーグ前半戦のガンバ大阪戦は固い試合展開の末、0-1の敗戦を喫しました。
A、ゲームの背景としても、あの試合で勝点を奪うことができていれば、上位との勝点差を埋めることができていたと思います。あのような勝負どころで勝点を失ったことは痛かったですし、試合展開も0-0で時間が進み、最後に得点を許してしまいました。中断明けの今節から一つも勝点を落とすことはできません。アウェイの難しい試合になりますが、先制点を奪って、勝点3を持ち帰ってきたいと思います。