8/17 東京V戦 MATCH REVIEW & INTERVIEW

INTERVIEW2024.8.17

8/17 東京V戦 MATCH REVIEW & INTERVIEW

<マッチレビュー>

東京は青赤だ。それを証明するための大一番がやってきた。

中断明けの初勝利、そして約1カ月ぶりのリーグ戦白星をめざして、青赤軍団がホーム味の素スタジアムで“緑”を迎え撃った。

絶対に勝利が求められるゲームだ。前節は川崎フロンターレとの多摩川クラシコで0-3と敗戦。しかも味の素スタジアムでは2勝4分5敗と結果を残せておらず、監督や選手も口々に「ファン・サポーターに勝利で応えたい」と話す。

そのような状況で迎えた東京ヴェルディとのゲーム。前回対戦は数的不利と2点のビハインドを跳ね返して後半アディショナルタイムの同点弾で引き分けに持ち込んだが、勝利を手にするには至らなかった。

チームの再浮上を懸けて臨むゲームで求めるのは勝利のみ。まずは圧倒的にメンタルで上回り、局面の勝負を制していくことで試合を優位に進めたいところだ。

まず守備陣には経験豊富なベテランとアカデミー出身選手をそろえた。最後方に野澤大志ブランドン、最終ラインは右から白井康介、土肥幹太、森重真人、長友佑都の各選手を配置。ボランチは高宇洋選手と小泉慶選手がコンビを組み、トップ下には荒木遼太郎選手を起用。3トップは中央にディエゴ オリヴェイラ選手、ウイングは右に仲川輝人、左に遠藤渓太の両選手が入った。

チームは直近の公式戦7試合で1勝と苦しんでいるだけに、この試合を浮上のきっかけとしたいところ。『FIREWORKS NIGHT supported by Paidy』として行われた試合は、スタジアムは開始前からヒートアップ。ムービングライトによる選手紹介を経て、豪快な花火をバックにゴール裏からバックスタンドが青赤で染まるなかで選手入場。最高の雰囲気でキックオフを迎えた。

1stHALF—ボールを保持してチャンスを作るもゴールに結びつかず

ホームの大観衆を背に、序盤からボールをつないで攻める東京。パリ五輪後の初スタメンとなったトップ下の荒木選手とボランチの高選手が中央でボールを落ち着かせ、ディエゴ選手のポストプレーを活かしながら攻撃のリズムを作っていく。右サイドバックの白井選手が見せる力強い縦へのドリブル突破も攻撃のアクセントとなった。

前半はポゼッションの青赤、カウンターの緑という構図が続くなか、最初にビッグチャンスを作ったのは東京だった。前半25分、中央で持ち上がった遠藤選手が右足でグラウンダーのミドルシュート。これは惜しくもゴール左に外れたが、東京が押し込みながら相手ゴールに迫っていく。

前半33分には野澤選手を使った巧みなビルドアップから決定機が生まれる。最終ラインでボールを回しながら野澤選手が受けると、右サイドバックの白井選手が内側にポジションを取ってパスを受け、くるりとターンして右サイドの仲川選手へ。ここでディエゴ選手が裏のスペースへ抜けて相手選手を引きつけると、仲川選手がカットインから左足を振り抜いてシュートを放つ。相手ディフェンダーに当たったボールはコースが変わって枠を外れたが、鋭いパスワークで敵陣に襲いかかるという東京らしいアタッキングを披露した。

前半42分、東京Vが左右に大きく揺さぶる展開からチャンスを迎える。松村選手の左クロスにファーで齋藤選手が合わせたが、シュートは枠の外へ。あわやというシーンだったが、野澤選手もしっかりとニアのコースを消しており、ここは難を逃れることに成功した。

主導権を握りながらフィニッシュまで迫りきれない東京。ペースを握っている状況で早い時間帯に先制点が欲しいところだったが、一方で相手のカウンターは身体を張った守備でしっかりとケアするなど、大事なゲームならではの気迫とリスクマネジメントも感じさせた。

結局、前半は2分間のアディショナルタイムを経てスコアレスのままタイムアップとなり、試合の行方は後半に持ち越しに。選手たちはゴール裏のファン・サポーターから「ヴェルディだけには負けられない! 俺たちの力、見せてやろうぜ」というチャントに送られてロッカールームへ戻っていった。

2ndHALF—大志のビッグセーブ連発でスコアレスドロー

後半、いきなり大きなピンチを招く。東京Vはカウンターから松村選手が右クロス。ファーサイドに走り込んだ翁長選手がダイレクトで合わせたが、シュートがミートせず。

そしてピンチの後にチャンスあり。最終ラインでつないでチャンスをうかがうと、複数選手がワンタッチで中盤から左サイドを崩して遠藤選手から中央へパス。これを受けた荒木選手が仕掛けて右足でフィニッシュ。ブロックに入った相手に当たって枠を逸れたが、テクニックとスピード感に溢れる鮮やかな攻撃を見せていく。

青赤に染まったゴール裏へ攻める後半も主導権を握って戦う東京。しっかりとボールを保持しながら、サイドに展開しても無理に仕掛けることなく“やり直し”を選択する試合巧者ぶりを披露。今まで課題とされてきた部分が全体で意識され、チームとしての成長を感じさせる戦いを見せる。

球際の激しさ、試合運びの巧さ、そしてリスクマネジメントをしっかり表現し、あとはゴールを決めるだけという状況。早くゴールを決めたい時間帯が続く。

守備陣も集中したプレーを披露。後半23分には相手にペナルティエリア内でフリーの選手にダイビングヘッドを許したが、ここは野澤選手が横っ飛びで弾き出すビッグセーブ。後半30分にも相手のコーナーキックから決定的なヘディングを打たれたが、これも野澤選手が至近距離でワンバウンドする難しいボールに右手を伸ばすスーパーセーブ。ピッチの選手全員が集中したプレーを続け、勝利に向かって突き進んでいく。

ここで東京にアクシデント。相手のシュートブロックに入った森重選手の側頭部にボールが当たって倒れ込んでしまう。意識が飛んでいるような様子にも見えたことで心配されたが、担架で運ばれる際には手を挙げて反応していた。これに脳震盪交代が適用され、森重選手に代わって岡哲平選手が出場。さらに後半41分には長友選手に代えて右サイドバックに中村帆高選手を送り込み、白井選手を左サイドへ回す布陣に変更した。

後半42分には相手のカウンターからピンチを招いたが、枠を捉えた山見選手のシュートを野澤選手がまたもビッグセーブ。わずかにコースを変えてゴールを守り抜いた。

6分間のアディショナルタイム、青赤のゴール裏から「ヴェルディだけには負けられない」のチャントが大音量で鳴り響くなか、ピッチ上では勝負を分ける1点を巡って激しいバトルが繰り広げられたが、最後までゴールネットを揺らすことはできずスコアレスで試合終了。

勝利への執念がぶつかり合った一戦となったが、内容面で手応えをつかみながら白星を手にすることはできず。味の素スタジアムに3万9921人の大観衆を集めた試合は、0-0で痛み分けに終わった。


MATCH DETAILS
<FC東京>
STARTING Ⅺ
GK野澤大志ブランドン
DF白井康介、土肥幹太、森重真人(後半38分:岡哲平)、長友佑都(後半41分:中村帆高)
MF高宇洋(後半32分:原川力)、小泉慶、荒木遼太郎(後半32分:小柏剛)
FWディエゴ オリヴェイラ、遠藤渓太(後半25分:俵積田晃太)、仲川輝人(後半25分:安斎颯馬)

SUBS
GK波多野豪

GOAL

<東京ヴェルディ>
STARTING Ⅺ
GKマテウス
DF宮原和也、林尚輝、谷口栄斗
MF松村優太(後半41分:松橋優安)、森田晃樹(後半21分:見木友哉)、齋藤功佑、翁長聖
FW山田楓喜(後半21分:山見大登)、木村勇大(後半44分:山田剛綺)、染野唯月

SUBS
GK長沢祐弥
DF深澤大輝
MF綱島悠斗

GOAL



[ピーター クラモフスキー監督インタビュー]


Q、試合の総括をお願いします。
A、予期していた通り、東京ヴェルディとの試合ということで両チームがすべてを出し尽くした試合でした。試合開始からファン・サポーターの感情のこもった応援のなかで、両チームが最後までよく戦った試合だったと思います。パフォーマンスの部分に関しては、70分までは自分たちがある程度ゲームをコントロールできていたと思っていますが、攻撃のところはもう少し鋭さが必要でしたし、もっと相手にとって脅威にならなければいけなかったと思います。最後の20分は自分たちが主導権を失ってしまい、オープンな試合展開になってしまいました。選手たちは勝点3を奪うためにすべてを出し切って戦ってくれましたが、ファン・サポーターのために勝点3をもらたすことができずに残念に思っています。

Q、森重真人選手の状況を教えてください。
A、まずはじめに、彼は本当に素晴らしいパフォーマンスを出してくれたと思っています。冷静に自分たちがゲームをコントロールできるようにボールを動かしてくれていたと思います。森重選手が出ている時間帯、守備は非常に強く戦えていました。そのなかでシュートが頭に当たってしまいました。今はもう少しメディカルチームから情報をもらわなければいけない状況です。彼が無事であることを祈っています。みんな彼のこと、そして彼の家族のことを思っています。

Q、積極的な選手交代を行っていたと思います。また、出場した選手もダイナミックに動いていました。それでも試合終盤にゲームをコントロールできなかった理由は何でしょうか。
A、控えの選手も使いながら最後まで強く戦っていくというところでは、しっかりインパクトを残してくれたと思っています。今日は森重選手の脳振盪による交代もあり、フィールドプレーヤーで登録されている選手は全員出場しました。出場した選手全員がインパクトを残そうとしてしっかり戦ってくれたと思いますが、その中で相手のロングボールが入ってきたところで間延びしてしまったことにより、自分たちがコントロールを失ってしまったと思っています。ただ、選手たちは出せるものをすべて出し切ってくれたと思っています。今日出すことができたパフォーマンスの中で良かった部分を継続していき、改善すべき点を改善するトレーニングに取り組んでいきたいと思います。



[選手インタビュー]
<野澤大志ブランド選手>


Q、好セーブでチームの無失点に大きく貢献しました。試合を振り返ってください。
A、前半はチームとしては非常に良かったと思います。ただ後半に入ってオープンな展開になり、要所要所でこぼれ球を拾われて押し込まれてしまったことは改善が必要です。それでもチーム全員がゴール前で身体を張って、最後はゴールキーパーの僕が身体を張って失点をゼロで終えられたのは一つ前向きなことだと思います。それでも、やはり勝たなければいけないですし、僕らはもっと相手のゴールへ押し込まなければいけません。そこはもっとやらなければいけないと思っています。

Q、後半の30分頃から少しオープンになり押し込まれる時間が多くありました。一番意識していたことは何ですか。
A、後半のあの展開のなかで、失点ゼロで終盤まで持ち込めれば絶対にチャンスが来ると味方を信じていました。

Q、4バックのメンバーが前々節と前節と変わっています。難しさを感じたりはしますか。
A、誰が出てもその時にできることを最大限にやりたいですし、自分自身の準備もそうですが、味方にも良い影響を与えられるように常に心掛けています。

Q、野澤大志ブランドン選手の成長をみんなが感じています。パリ五輪に行く前と帰ってきた後で変わったことはありますか。
A、自分が憧れてきたサッカーをあらためて楽しめているということと、今、東京のゴールキーパーとして試合に出場させてもらっているということに本当に強く感謝しています。責任を持ってもっと成長して、さらに大きな存在になりたいという想いが、自分をさらに成長させているのかなと思います。もっとできると思います。


<土肥幹太選手>


Q、試合を振り返ってください。
A、チャンスもピンチもあり、そのなかで後ろの選手としては無失点で終えることができて良かったと思いますが、今日は勝たなければいけない試合だったので得点が取れなかったことが悔しいです。後半は攻め込まれる時間帯が長かったのですが、この試合はゴールにボールを入れさせなければ良いと割り切っていたので、その部分は良かったと思います。

Q、前半はボールを保持する時間もありましたが、得点につながりませんでした。
A、自分のミスもありましたが、チャレンジすることは続けていきたいと思っているので、繰り返し繰り返しチャレンジして、決定的なパスをもっと出していきたいと思います。疲れている時間帯などにチーム全体の動きが止まってしまい、一瞬だとしてもパスコースに顔を出さない時などがあるので、声をかけてもっとしっかりと要求していきたいと思います。そういった部分でも、自分がチームを引っ張っていきたいと思います。

Q、今日のような試合に勝利するためには何が必要になると思いますか。
A、攻撃面では、ゴール前の迫力が必要になると思います。縦に差し込むボールもそうですが、セットプレーの時にゴール前に入り込む迫力が足りなかったと思います。守備の面では無失点でしたが、野澤大志ブランドン選手が相手の決定機を2、3回は止めてくれていたおかげなので、その決定機を無くしていかなければいけないと思います。

Q、苦しい試合が続いています。次節に向けてどのような準備をしますか。
A、3試合連続で得点を取れていないので、個人的には決定的なパスを出せるような選手になっていきたいです。チームとして、チャンスの数をもっとつくりだすには、全体がもっと走って、動いていかなければいけないと思っています。しっかりと出来ることをやって、次の試合に臨みたいと思います。


<小泉慶選手>


Q、ハードな90分だったと思いますが、試合を振り返ってください。
A、やはり、暑いなかでの試合というところで、少しボールを握って、自分たちがボールを持つ時間を長くして、落ち着かせるところは落ち着かせて、と意識してプレーした前半でした。ただ、もちろん狙いにいくところは狙いにいかないといけないですし、ミーティングでもチームとしてスペースを狙うことについて話がありました。そういうところはもう少し個人も含めて飛び出していければ良かったと思いますし、後半もサイドにボールが入った時にもう一つ背後に飛び出す動きも必要だったと思います。

Q、4試合勝利がなくて苦しいところですが、次の京都サンガF.C.戦に向けた部分も含めて大事にしなければいけないポイントをどう捉えていますか。
A、強度とか球際とか、こういう試合に対しての熱量とか、毎回これぐらいが当たり前というレベルにならないといけないと思います。そのなかで、チームとしてどのように守備をするのか、どのように攻撃で崩していくのかというところを、対戦相手によって柔軟に対応できるようにしていきたいです。そこはチームとしてもそうだし、個人としてもそうです。あと11試合になって、もう一つ上の争いに加わるのか、下の争いに巻き込まれてしまうのかというところ。今いる位置を意識して、しっかり危機感を持ってやっていきます。