<マッチレビュー>
今シーズン2度目の3連勝をめざして青赤軍団が乗り込んだのは、日産スタジアムでの横浜F・マリノス戦。
連勝中の東京は勢いそのままに多くのメンバーをキープし、完封勝利を収めた前節の浦和レッズ戦から右サイドバックだけを変更。長友佑都選手が第28節京都サンガF.C.戦以来となるスタメン復帰を果たした。
猛暑が一段落したこともあって今節からキックオフ時間の前倒しが可能になり、アウェイでの一戦は明るさが残る17:00にキックオフを迎えた。
1stHALF—先制を許すもテツ弾で追い付く
夏場のトンネルを抜け、主導権を握りながら先手をとることで試合を優位に進め、連勝を収めてきた東京。この試合も立ち上がりから東慶悟選手が気迫のスライディングでプレスバックしてボールを奪取するなど気持ちの入った戦いを見せていく。
東京としてはそのまま連勝中と同じような展開に持ち込みたいところだったが、立ち上がりから相手の果敢なプレスに押し込まれ、前半4分に中央をパスワークで崩されて失点。早い時間帯にリードを奪われてしまう。
しかし、これで気落ちしないのが現在の東京だ。しっかりとボールをつないでチャンスをうかがっていくと、前半13分には高宇洋選手が狙い澄ました右足ミドルシュート。枠を捉えた一撃は相手ゴールキーパーのファインセーブに阻まれたが、攻勢を強めて相手陣内に迫っていく。
連動したサッカーで攻撃の形を作っていくと、前半19分に東選手の鋭いスルーパスが青赤に同点弾をもたらす。右サイドでボールを持った背番号10がインナーラップで裏のスペースに抜け出した長友選手へ。この相手守備陣を切り裂くような縦パスを中央へ折り返すと、荒木遼太郎選手がつないだボールを逆サイドの俵積田晃太選手がシュート。これは相手にブロックされたが、このこぼれ球に走り込んだのは岡哲平選手。右足のインサイドで狙い澄ましたシュートを力強く流し込んだ。前節、豪快なシュートブロックでチームを救った左サイドバックが、今度は攻撃参加から試合を振り出しに戻す一撃。豪快なジャンピングガッツポーズでアウェイに詰めかけたファン・サポーターを沸かせた。
その後は一進一退、ボールを握り合うような攻防が続く。東京は最近の数試合で機能していた中央を締める守備を徹底し、何度かサイドから押し込まれながらも決定機は作らせず。攻撃では長友選手のアーリークロスに飛び出した荒木選手が胸トラップからシュートを狙い、両サイドに入った仲川輝人、俵積田の両選手が積極的な突破を見せたが、こちらも得点には至らない。1点ずつ奪い合った前半は、5分間のアディショナルタイムを経て試合を折り返した。
2ndHALF—立ち上がりの猛攻を凌ぎタワラ弾とテル弾で逆転
ハーフタイムで喜田選手に代えて山根選手を投入した横浜FMに対し、東京はメンバー変更なし。前半と同じ11人で後半に臨んだ。
立ち上がりからややオープンな展開になった後半。開始11分までにコーナーキックやカウンターのこぼれ球からのハーフボレー、中央からのミドルシュートなど続けざまにピンチを迎えたが、いずれもシュートがバーの上に外れて難を逃れた。
そして後半15分、攻守が連動した素晴らしい展開から逆転弾が生まれる。
中盤で緩やかにボールを持つ横浜FMに対して、荒木選手が猛然とプレスバックしてボールを奪取。中盤で相手の寄せを剥がしてディエゴ オリヴェイラ選手が落としたところで荒木選手が前方へスルーパスを供給すると、鋭く裏のスペースに抜け出した俵積田選手がそのまま高速ドリブルで独走。追いすがる相手選手を引き離してゴール前まで持ち上がり、ゴールキーパーの位置を確認して左足で流し込む逆転ゴール。荒木選手の高い守備意識、奪ってからの中盤での細かなパスワーク、そして裏のスペースを突いたスピード溢れる攻撃。選手それぞれが存分に持ち味をする圧巻の突破劇で、東京が試合をひっくり返すことに成功した。
後半26分には、ここまで抜群の存在感を見せていた俵積田、東の両選手に代えて遠藤渓太選手と原川力選手を投入。古巣対戦となる遠藤選手は初の日産スタジアム凱旋となり、原川選手は8月17日に行われた第27節の東京ヴェルディ戦以来の公式戦復帰となった。
ピッチを活性化させたい東京はさらに動く。長友選手に代えて右サイドバックに中村帆高選手を送り出し、荒木選手にスイッチして安斎颯馬選手を右ウイングに配置。仲川選手を中央に置く布陣に変更する。
後半41分には同点弾を含めて左サイドバックで奮闘していた岡選手が両足を攣って走れなくなるアクシデントが発生。ここで野澤零温選手を右ウイングに投入し、送り込んだばかりの安斎選手を左サイドバックに回す形で対応することになった。
終了間際の後半44分、投入されたばかりの右サイドコンビが生み出したチャンスから、古巣凱旋の男が、試合を決定付ける3点目を叩き込む。
高い位置でタメを作った中村選手が右前方へパス。ここに野澤零温選手が走り込んでグラウンダーで折り返すと、中央に飛び込んだのは仲川選手。右から来るボールを巧みな身のこなしで身体を開いて左足のインサイドで合わせ、ダイレクトでゴールネットを揺らした。アウェイに詰めかけた多くのファン・サポーターの前で決めた会心のゴール。殊勲の背番号39はそのままゴール裏へ向かい、自身のチャントに合わせてチームメイトと一緒にリズムをとりながら踊って歓喜を分かち合った。
8分間のアディショナルタイムもしっかりとクローズ。早い時間に先制を許しながら守備を立て直し、ファインゴール3発で鮮やかな逆転勝利を収め、今シーズン2度目のリーグ戦3連勝を達成。アウェイ横浜の地に勝利のチャント『眠らない街』が響き渡った。
MATCH DETAILS
<FC東京>
STARTING Ⅺ
GK野澤大志ブランドン
DF長友佑都(後半36分:中村帆高)/森重真人/木本恭生/岡哲平(後半39分:野澤零温)
MF高宇洋/東慶悟(後半25分:原川力)/荒木遼太郎(後半36分:安斎颯馬)
FWディエゴ オリヴェイラ/俵積田晃太(後半25分:遠藤渓太)/仲川輝人
SUBS
GK波多野豪
FW小柏剛
GOAL
前半19分:岡哲平 / 後半15分:俵積田晃太 / 後半44分:仲川輝人
<横浜F・マリノス>
STARTING Ⅺ
GKポープウィリアム
DF松原健(後半39分:加藤蓮)/畠中槙之輔/エドゥアルド/永戸勝也(後半39分:渡邊泰基)
MF渡辺皓太(後半31分:井上健太)/喜田拓也(後半0分:山根陸)/天野純(後半19分:植中朝日)FWヤン マテウス/アンデルソン ロペス/エウベル
SUBS
GK白坂楓馬
FW 水沼宏太
GOAL
前半4分:アンデルソン ロペス
[ピーター クラモフスキー監督インタビュー]
Q、試合を振り返ってください。
A、予期したとおりの試合になりました。エキサイティングな場面が多くありましたが、そのなかで自分たちの強いパフォーマンスを出すことができました。ここ最近のゲームから、さらにパフォーマンスを積み上げていこうと話していました。自分たちは攻撃面で相手の隙を突いていくことができるとも思っていました。良いスペースを使いながら、良い場面を作ることができて、そこから良い得点をとることができました。そして、もう少し得点が入ってもおかしくない展開でした。その部分はまだ継続して改善していかなければいけません。また守備でも、自分たちはできるだけアグレッシブに守らなければいけないと思っていました。立ち上がりから自分たちがアグレッシブにいって、失点はありましたが、それが良くなかったということではありませんでした。ただ、無失点に抑えることができなかったことは残念に思っています。
チームとしてのパフォーマンス、自分たちの決まりごとを実行するところでは、非常に強く戦えていました。選手たちはすべてを出し切って、アグレッシブに、強度も高くプレーしてくれました。彼らのパフォーマンス、そして取り組む姿勢を誇りに思っています。自分たちがやったことがご褒美として返ってきました。そして、アウェイまで足を運んでくれた多くのファン・サポーター、そしてここには来られなかったファン・サポーターも含めて、みなさんが本当に力をくれました。東京は少しの間、横浜F・マリノスに勝利できていませんでしたが、今日はクラブにとっても誇りに思える勝利を選手たちが成し遂げてくれました。
Q、前半立ち上がりの失点後、どのように立て直しの指示をしたのでしょうか。
A、本当は先制点を取ろうと声を掛けて選手たちを送り出しました。試合の序盤に先制点を許してしまったことで非常に難しい試合になってしまったと思います。しかし、それは自分たちが乗り越えなければいけない山ですし、自分たちの持つ強いパフォーマンスを出すことでそれを乗り越えることができました。このパフォーマンスは、自分たちのメンタリティとしっかりとつながっています。このメンタリティは、我々が日々取り組んでいることで積み上がってきたものです。本当に、選手たちはすべてを出してプレーしてくれたと思っています。
Q、選手たちのコンディションが良かったように見えました。
A、準備のプロセスが大切だと思っています。それを継続してやることで、自分たちがアグレッシブに戦うエンジンというものが作れています。相手の横浜FMはそういった形を何年間も作ってきているチームですが、我々も一歩一歩、そのような形を作ってこれています。継続してもっと良くなり、強くなっていけると思っています。しっかりと自分たちに焦点を当てながら、次の週のホームゲームに臨みます。
[選手インタビュー]
<岡哲平選手>
Q、先制を許し不穏な空気が流れてもおかしくないなかで、しびれるゴールでした。
A、もう気持ちで押し込んだゴールでした。あのエリアにこぼれてくると信じて走った結果が得点に繋がりました。あの形を作り出すためにボールを運んでくれたチームメイトに感謝しています。得点後にVARが入って、一瞬だけ焦りました。柏レイソル戦の得点後もVARが入ったので(笑)。大丈夫と言い聞かせていましたが、内心は焦りましたね。
Q、宣言通り、相手のアタッカーを抑え込みました。
A、まだ全然できていません。すべての局面で抑え切れたわけではないので、全部勝ち切るくらいに成長していきたいです。対人の強さやアジリティ面を強化していきたいと思います。
Q、継続して取り組んでいる攻撃の意識も形になりはじめていますね。
A、俵積田晃太選手から「カットインや縦に剥がせるようなスペースを作るために相手をうまく引き付けてほしい」と言われていたので、僕自身は内側のスペースでプレーすることを意識しました。相手のマークを分散させる動きは継続して、回数を増やさないといけないですし、俵積田選手がもっと良い状態でボールを受けて仕掛けられるようにサポートしていきたいです。
Q、今シーズン2度目の3連勝に大きく貢献していると思います。
A、試合に勝つためには、練習中からチーム全体で高い基準で取り組むことが大切だと思います。現在試合に出場できていない選手も練習でハードワークしていますし、勝利に向けたモチベーションを作り、ベクトルをしっかりと揃えて、ホームのサガン鳥栖戦に向けてしっかりと準備していきたいと思います。
<俵積田晃太選手>
Q、今日の試合を振り返ってください。
A、荒木遼太郎選手が自陣でボールを奪って、自分のところに良いパスを送ってくれたので、あとは運んでシュートを打つだけでした。ゴールキーパーの股抜きで、狙い通りでした。
Q、調子が良くなっていると感じます。個人的な手応えはどうですか。
A、動き自体は非常に良くなっているという感触があります。
Q、岡哲平選手から「俵積田晃太選手が仕掛けやすいようにサポートしている」という話がありました。どう感じていますか。
A、2人で良い感じで関係を組めています。声を掛け合ったり良い関係性のなかでプレーできているという手応えがありますね。守備の部分でも岡選手が後ろから自分を動かしてくれるので、やりやすさを感じています。
Q、俵積田選手自身も守備の意識が強くなっていると感じます。
A、初めの頃に比べると、守備の能力などもだんだん良くなってきているのではないかという感覚はあります。
Q、数字にこだわるという話もありましたが、アシスト、得点につながるプレー、得点と試合を追うごとに良い形で数字を積み上げています。今後への意気込みをお願いします。
A、今シーズンはまだ4連勝ができていないので、まずは4連勝できるように頑張りたいですね。次は味の素スタジアムでの試合ですし、そこで自分のゴールで4連勝という結果につながれば最高です。
<仲川輝人選手>
Q、得点シーンの振り返りをお願いします。
A、野澤零温選手から良いボールがきましたし、日ごろの練習から継続して取り組んでいる形が実りました。フォワードの選手として、あのエリアに飛び出していくことが仕事ですし、継続してきた動きが得点に繋がったことを嬉しく思います。相手ゴールキーパーの位置も見て、左足で冷静に合わせることができた得点だったと思います。
Q、先制を許すも、逆転勝利となりました。試合全体の振り返りをお願いします。
A、前節の浦和レッズ戦も試合の入りが悪く、今日の試合では相手に開始4分で先制点を許してしまいました。その点は修正が必要です。3点を奪いましたが、相手に点を許してからスイッチが入った形なので、改善していきたいです。
Q、チームとして3連勝を手にしました。
A、サンフレッチェ広島戦の敗戦からチーム全体で話し合って、そこから勝ちに繋がっています。要因は良い守備から攻撃に繋げられていることです。この調子を継続し、リーグ戦で結果を残して、ファン・サポーターのみなさんに結果でしっかりと示したいです。上位を狙えるチャンスはまだまだあります。躍動感を持ってプレーできているので、チーム一丸となって上をめざしていきます。