Q、国頭キャンプの全日程が終了しました。手応えはいかがでしょうか。
A、新しい戦術コンセプトを吸収したいという選手たちの意欲が感じられたので満足しています。やはり何かを変えるときは、その変化、改革を信じなければなりません。実際に選手たちから信じようとする意識が伝わってきたので、そういう意味でも最初の10日間は有意義だったと思います。ここまではフィジカルコンディションを上げるためのトレーニングを重ねていますが、予定通り進んでいます。もちろん、選手たちの疲労は溜まっていますが、計算通りなので心配していません。疲労が溜まればトップスピードが出せない状態になりますが、それも想定内です。
初日から何度もコメントしている通り、新しいものを構築するのは簡単な道のりではありません。それを認識したうえで1日1日積み重ねているところです。数年後により偉大なクラブに成長するためには今、苦しみながら、新しい時代を構築するためのベースを作らなければならないのです。今日(1月26日)の実戦形式のトレーニングでも苦しんだ時間帯がありました。今後も苦しむ時期があると思います。ただ、何か大きいものを成し遂げるためには必要なことだと思っています。
Q、始動からここまではフィジカルコンディションを上げる時期ですが、アルベル監督のトレーニングメニューはほとんどすべてボールとともに行われますね。
A、ボールを使ってトレーニングしていますが、選手たちがフィジカル面で追い込まれているのが伝わっていると思います。現代サッカーにおいて必要なフィジカルコンディションは、ボールを使ったトレーニングでしか得られないと私は考えています。ヨーロッパにおけるレベルの高いクラブではプレースタイルがどうであれ、フィジカル面ににせよ、戦術面にせよ、複合的にトレーニングすることが主流となっています。我々も、私が思い描くプレースタイルに紐づいた形のトレーニングをこの時期から行っています。私が求めているのは強度が高く、密度の濃いトレーニングです。そのトレーニングに慣れるためには3、4週間のプレシーズンが必要となります。開幕を迎える頃には選手たちもこのトレーニングに慣れて、体も適応しているとはずです。
Q、選手たちから「練習が楽しい」「頭が疲れる」という声が聞かれます。練習メニューについて心がけていることはなんでしょうか。
A、私が期待するのは賢いサッカー、賢い選手たちの集合体ですから、トレーニングにおいて脳が疲れるのは当然です。新しい戦術コンセプトに取り組んでいるわけですから、選手たちは頭が疲れると感じるのでしょう。また、脳を使いながらプレーすることにまだ慣れていないという面もあると思います。でも、そこもじきに慣れてくるはずですよ。今はおおいに脳を疲れさせてもらいたいですね(笑)
Q、22日の実戦形式のトレーニングでは選手たちに「ボールを保持すること」「正しいポジションを取ること」「失ったらすぐに奪い返しにいくこと」の3つを強調されていました。これらの成果と課題について聞かせてください。
A、この3つについて選手たちが意識してプレーしてくれたのは感じました。ただ、今日の実戦形式のトレーニングでは多くのボールを失ったのも事実です。期待どおりにボールを保持する時間が長ければ、ボールを奪われても素早く切り替えて奪い返すことができるのですが、今日のようにボールを失う回数が多いと、選手たちも疲れます。疲れている状態では素早い切り替えも難しくなります。道のりは長いですが、チームがこの数日間で確実に成長していることも確かです。
Q、ボールを失うことが多かった要因は、疲労でしょうか。それとも技術の問題なのか、立ち位置の問題なのでしょうか。
A、技術的な問題ではありませんでした。立ち位置の問題というより、一人ひとりがボールを持ちすぎてしまい、それによって相手にハメられてしまったのだと思います。一人ひとりのタッチ数が増えてテンポが遅くなると、相手は守備でハメやすくなります。センターバックを中心としたディフェンスラインにおけるパス回しのテンポが今日は遅かったですね。プレーテンポを速くするにはポジショナルゲームのトレーニングをやり続けることが必要となります。
今日は、一人ひとりが適切な立ち位置に入るのが遅れたり、うまくコーディネートできないままボールを奪いに行って打開されてしまった場面がありましたが、プレシーズンが始まってまだ10日なので仕方がありません。ただ、完成度を高めるために待ち続けるというわけではなく、シーズンに入れば勝ち点を重ねていかなければなりません。毎試合勝利を掴み取ることにエネルギーを注ぐことと並行して、チーム全体でこのプレースタイルの完成度を高めていきたいと思っています。
Q、では、糸満キャンプで重点的に取り組みたいことはなんでしょうか。
A、次は守備面もトレーニングしていきたいと思っています。攻撃面の改善に取り組みつつ、どうやってボールを奪うのかにも注力していきます。私も選手一人ひとりの個性をだいぶ把握できましたから、開幕戦に向けてどのような形で守備をすればいいスタートを切ることに繋がるのか、最適な守備の仕方を探っていきたいと思います。また、プレースピードは我々のスタイルにおいて重要なポイントになります。それは日々の積み重ねによってしかレベルアップできないので、糸満キャンプでもやり続けます。
Q、このキャンプ中に選手と個別で話をされているそうですが、どのような話をしたのでしょうか。
A、選手と個別に話すことが私は好きですし、とても重要だと思うので、そういう時間を取るように心がけています。
Q、その内容は…
A、そこは秘密だからこそ、個別に話しているのです(笑)
Q、森重真人選手をキャプテンに、ディエゴ オリヴェイラ選手を副キャプテンに選出されました。その理由はなんでしょうか。
A、彼らはふたりともリーダーに相応しい人間性だと判断しました。彼らには私の右腕としてチームをまとめることに貢献してほしいと期待していますし、本人たちにもそう伝えています。ピッチの中や更衣室の中が常にいい雰囲気であるよう心がけてほしいと思います。シーズンは長いので、チーム内で問題が生じる時期もあるでしょう。そうしたときにチームをまとめ、素早く解決してくれることも期待しています。
text by Atsushi Iio