1年半後の夢舞台へ
前人未到の道程は続く
DF 5 長友佑都
人に、選手にストーリーあり。2024シーズンを戦い抜いた全青赤戦士を選手ごとに紹介する『2024 PLAYER’S REVIEW』。果たして彼らはいかなる想いを抱えながらシーズンを過ごしていたのだろうか。自信、手応え、課題、喜び、悔しさ……。それぞれが送った今シーズンの戦いを、本人の言葉を紡ぎながら振り返る。
今年3月、再び日本代表のメンバーリストに名を連ねた長友佑都。青赤のユニフォームをまとって結果を出し、5回目のFIFAワールドカップ出場という夢に向かって、ただひたすらに突き進む。日本代表ではベンチ外が続くが、自らを冷静に分析し、それでいて身体中の細胞が震え立つような熱量で日本サッカーを引っ張る覚悟は変わらない。誰も通ったことのない道を歩み、あらゆるものを乗り越えていこうとする自分自身の今シーズンを、彼はどう捉えているのだろうか。
「1年半後を見ておいてよ。必ずあの場所にたどり着くから」
FIFAワールドカップ2026北中米大会をめざす日本代表のメンバーリストに、カタール大会以来約1年3か月ぶりに長友佑都の名が刻まれた。前回の夢舞台を終えた時、一度は現役引退が頭をよぎった。それを踏みとどまらせたのは、内から湧き上がってくるアジア人初となる5大会連続ワールドカップ出場への思いだった。
「個人的には3月にパフォーマンスを上げ、代表復帰できたことは良かった。代表では試合には出られなかったけれど、継続して選出されていることで自分の夢への道がしっかりとつながった。勝ちとれる自信もあるし、そこに食い込んでいけたことは良かったと思う」
長友の今シーズンは、5054日ぶりの歓喜から幕を開けたと言ってもいい。代表発表直後となった明治安田J1リーグ第4節アビスパ福岡戦で、強烈なボレーシュートを突き刺した。この活躍がライバルたちに火を点け、シーズンを通してサイドバックの活躍が目立つシーズンとなった。
「チーム内の競争を生むためにベテランの自分がしっかりと競争に加わって、彼らに刺激を与えることはできたと思う。逆に、彼らから刺激を受けることもできた。そういった部分で、サイドバックで激しい競争ができた。他のチームも含めてこれほどサイドバックがゴールに絡んだシーズンはなかなかないし、そこは良い競争ができたと思う」
長友は「ただ」と言って首を横に振る。
「ポジティブな見方をすればそうだけれど、得点はおまけみたいなもの。特別にうまくなったからゴールが奪えたわけではない。そこは冷静に自分を分析している。それでも2得点だし、アシストもそこまで伸ばせなかった。自分が必ずしも成長したとは思わない。それにチームとしてはカップ戦も含めて何のタイトルも獲れずに終わったことが悔しくて不甲斐ない」
そうした想いも糧とし、前人未到の挑戦は続く。長友の前に道はなく、長友の後に道はできる。それを当の本人は特別なこととは思わないという。
「自分のなかから湧き出てくるモノだから、俯瞰で見ようなんて思えない。結局、人は人、自分は自分だから。やりたいこと、成し遂げたい夢のために戦っているだけなので。特別なことをしているとは思えないし、成し遂げたいことに向けて戦って生きている。それを達成できる姿も想像できているし、きっとたどり着くんだろうなと。その時にあらためて自分のサッカー人生を振り返りたい。そこで初めて自分がやってきたことは価値があることなんだと思えたらいい」。
過去にすがらず、“イマ”を生きている。そんな男の言葉は未来にまで飛んだ。
「ワールドカップに出場するイメージを固められた。1年半後でしょ。何の心配もしていない。ベンチ外が続いて、メディアのみなさんが『長友は大丈夫か』と心配してくれるけれど、自分では全く心配していない。そこは確実に心技体がそろった最高の状態に持っていけると確信している。だから、僕に焦りはない」
どこかに通じる道を歩んでいるのではない。踏みしめた足跡が夢へとつながる。この遠い道程のため、この遠い道程のため──。
Text by 馬場康平(フリーライター)