現役引退を発表した
クラブ史に名を刻むストライカー
人に、選手にストーリーあり。2024シーズンを戦い抜いた全青赤戦士を選手ごとに紹介する『2024 PLAYER’S REVIEW』。果たして彼らはいかなる想いを抱えながらシーズンを過ごしていたのだろうか。自信、手応え、課題、喜び、悔しさ……。それぞれが送った今シーズンの戦いを、本人の言葉を紡ぎながら振り返る。
まさに青天の霹靂だった。強じんなフィジカルとメンタルで青赤をけん引してきたディエゴ オリヴェイラが突然の現役引退を発表。今シーズンは序盤戦に負傷離脱があったものの、身体を張ったポストプレーや周囲を活かすラストパス、さらには前線からの献身的なディフェンスで1トップに君臨。リーグ戦4試合連続得点をマークし、J1クラブ歴代最多ゴール記録を更新するなど、変わらぬ存在感を示してきた。常にチームのために戦い続けた男が、プロサッカー選手として大きな決断を下した。
東京がディエゴ オリヴェイラにとって、現役最後のクラブとなった。「一つのクラブでこれだけ長くエースストライカーを務めた選手はなかなかいない」と語るのは東慶悟。長年9番に連れ添った同い年の背番号10だからこそ、その偉大さが分かるのだろう。
長きに渡ってセンターフォワードとして戦い抜いた。彼に代わる選手は簡単に見つかるものではない。当然ながら対戦相手も熟知する存在となり、マークが彼に集中する。ボールを収めるターゲットになろうとすることで、相手選手に削られて倒れ込むシーンは近年何度も再現されるようになっていた。今シーズン開幕前の宮崎キャンプで行われた練習試合でも、雨中の激戦で厳しいマークに遭うシーンが印象的だった。当然ながらシーズン開幕後も警戒度が高く、自由にさせてもらえる試合は少なくなった。それでも彼のスタンスは変わらなかった。
「特に相手が守備的なチームの場合はディフェンスも多いわけだし、自分に厳しいマークがつくことはもはや必然。私のプレースタイルも相手は研究しているし、チームのスタイルとしても今シーズンはウイングからのクロスを中心とした攻撃になっているから、そこでマークが集中するのは予想されることだし、仕方ないとは思う。全力を尽くしてやってはいたけれど、それでもなかなか良い成績が出なかった」
2023シーズンの15得点でJ1リーグ通算85ゴール。あと15得点を積み増せばJ1リーグ通算100ゴールの大台に到達したが、残念ながら昨シーズンのペースには及ばなかった。
「難しいシーズンだったね。タイトルを獲れず、タイトル争いに加わることすらできない非常に残念な1年だった。サッカーは結果がすべて。そこに尽きると思う。ずっとJリーグ優勝を望んできたけれど、それを果たせなかったことが悔しい」
過去、東京に在籍した外国籍選手では最多の試合出場数を誇り、ゴール数もルーカスを抜いてクラブJ1リーグ歴代最多得点を更新した。そしてこの東京で引退することで、ディエゴは真に青赤の男となり、クラブの歴史に名を残すことになった。
「ゴールを決めるだけが私の仕事ではないと思っている。キープをしたり、運んだり、もちろん守備もしたり、色々なものがある。今シーズンのゴール数に関しては満足していないけれど、それ以外にできるだけのプレーはした。たくさんゴールを決めたシーズンもあれば、今シーズンのように決められなかったシーズンもある。良い時ばかりではなかったけれど、東京で戦えたことを非常に嬉しく思う」。
今までありがとう、ディエゴ。あなたの名は100年先まで語り継がれるだろう。
Text by 後藤勝(フリーランスライター)