本気で戦い抜いたからこその不完全燃焼
加入1年目にして“青赤の男”に
MF 22 遠藤渓太
人に、選手にストーリーあり。2024シーズンを戦い抜いた全青赤戦士を選手ごとに紹介する『2024 PLAYER’S REVIEW』。果たして彼らはいかなる想いを抱えながらシーズンを過ごしていたのだろうか。自信、手応え、課題、喜び、悔しさ……。それぞれが送った今シーズンの戦いを、本人の言葉を紡ぎながら振り返る。
東京1年目にして、チームを救う印象的なゴールを積み重ねた遠藤渓太。敗色濃厚の“東京決戦”で決めた2発で完全に“青赤の男”となった彼は、複数回の負傷離脱を乗り越えて結果を残してきた。だが、彼がめざすべきところはあくまで頂点。J1リーグ制覇やドイツでのプレーを経験したからこそ感じた勝利への渇望と危機感とは。
絶対に負けられない一戦で挙げた二つのゴールは、青赤の長い歴史において語り継がれていくであろうものとなった。J1リーグ戦では実に16シーズンぶりに実現した東京ヴェルディとの一戦。数的不利な状況下で0-2と敗戦濃厚だった空気を加入1年目の背番号22がガラっと変え、チームを救った。まず途中出場でピッチに送り込まれた7分後にクロスを右足ダイレクトで叩き込むと、1点ビハインドで迎えた後半アディショナルタイムに渾身の左足ミドルを突き刺す。“東京の遠藤渓太”は、この2発とともに誕生した。
約3年半を過ごしたドイツでの時間を終え、Jリーグに帰ってきた遠藤渓太が、新天地に選んだのは日本の首都クラブだった。加入直後からプレー機会を与えてくれた東京には「感謝」の二文字を繰り返してきた。今シーズンは怪我で離脱する時期もあったが、ピッチに戻ってくるたびに結果を残した。印象的なのはその勝負強さ。もっとも本人の自己評価は「最低限の結果は残せたかもしれないけど、もっととれたし、満足はしていない」と厳しいが、前述した東京V戦での2ゴールに始まり、国立競技場でのアルビレックス新潟戦やアウェイのヴィッセル神戸戦などインパクトの強いゴールが多い。
そして何より、この男の最大の魅力は、ほとばしる熱い気持ちとストレートな物言いにある。良いものは良い、悪いものは悪いとハッキリと言い、自分に厳しく向き合い、時にはチームに対しても厳しい言葉を投げかけてきた。それは東京での初めてのシーズンが佳境に入り、タイトルの可能性がなくなっても変わらなかった。このチームで勝ちたい、東京にJ1リーグ初タイトルをもたらしたい──。そう強く思っているからこそ、優勝争いに一度も加われないままシーズンが終わってしまった現状に危機感を覚えている。
「運営サイドの人たちはすごく努力してくれていると感じます。味の素スタジアムも国立競技場もスタジアムの雰囲気はとても良い。でも、クラブスタッフの人たちがどれだけ頑張ってファン・サポーターの人たちを増やそう、スタジアムの熱を高めようと思っても、選手である自分たちが結果で応えないと限界がある。そこは自分たち選手の努力次第。だから、今の順位ではダメ。この順位では相乗効果は生まれない」
トーキョーの一員となり、本気で戦い抜いたからこそ、見えてきたもの、感じたことがある。 “不完全燃焼”に終わった青赤1年目。この想いを新シーズンへのバネにするべく、遠藤渓太はさらなる高みをめざす。
Text by 須賀大輔(エル・ゴラッソ)