<前節・ジュビロ磐田戦のレビュー>
中断期間中に発表されたピーター クラモフスキー監督の退任に加えて、ディエゴ オリヴェイラ選手の今シーズン限りでの現役引退が報じられた直後の試合。ディエゴ選手はジュビロ磐田とのアウェイゲームでスタメン出場すると、序盤から力強いポストプレーや積極的なプレスバックを披露し、青赤の大黒柱として存在感を見せていく。しかし、相手の厳しいマークに遭い、前半終了間際に右足首を負傷。長い治療の末にいったんはピッチに戻ったが、ハーフタイムでの交代を余儀なくされてしまう。
迎えた後半、東京が攻勢に出る。ピッチを広く使った展開でチャンスを作ると、そこで得た左コーナーキックから試合を動かすことに成功する。
軽快かつリズミカルなアタックだった。
後半8分、荒木遼太郎選手がポケットの位置に入ってきた仲川輝人選手にショートコーナーでつなぎ、そこからボールを受けた東慶悟選手が右足で柔らかなクロスを供給。ここで後方から安斎颯馬選手が飛び込み、相手ゴールキーパーの頭を越す絶妙なヘディングでゴールネットを揺らした。前半から数多くコーナーキックのチャンスを得てきた青赤が、ここで変化を加えての先制点。時崎悠コーチからの指示が功を奏し、アウェイでリードを奪った。
だが、後半32分、木本恭生選手が相手選手を倒して一発退場になると、そのフリーキックから同点ゴールを許してしまう。この試合の勝利が残留への絶対条件だった磐田の勢いに押されると、終了間際にペナルティキックで勝ち越し点を許して敗戦。リーグ戦で悔しい3連敗を喫する結果となってしまった。
<マッチプレビュー>
クラブの歴史に名を残すディエゴ オリヴェイラ選手が、今シーズン限りでユニフォームを脱ぐことを決断した。東京の一員となったのは2018シーズン。それ以降、攻守にハードワークを惜しまない全力プレーで、東京のエースにふさわしいパフォーマンスを見せ続けてきた。在籍7シーズンで積み重ねたゴールは、J1リーグでのクラブ最多記録となる74得点。周囲の期待とリスペクトに応え続けた16年間の現役生活に、東京で終止符を打つ。
引退の経緯について「長い間ブラジルから離れ、両親や家族と一緒に過ごしたい想いはある。それにアスリートとして戦い続ける日々はかなりのエネルギーを消耗する。それを使い切ってしまった」と、寂しさをたたえた表情で話した。引退発表後、友人やチームメイト、ファン・サポーターから届いた多くのメッセージについて、目頭を熱くしながら「どれだけ愛され、大事にされていたか分かった。この場を借りて関わるすべての人たちにお礼を申し上げたい」と、何度も感謝の想いを口にした。
泣いても笑っても、セレッソ大阪との今シーズン最終節が背番号9のラストダンスとなる。舞台は味の素スタジアム。偉大なストライカーは、これまでと変わらない全力プレーで勝利のために戦う。その最後の雄姿は、永遠にファン・サポーターの記憶に刻まれるはずだ。
今節のマッチデープログラムはこちら
[ピーター クラモフスキー監督インタビュー]
Q、今シーズンのラストゲームとなります。
A、自分たちの“ショー”を見せられるように、ファン・サポーターに笑顔をもたらせられるようにしたいと思います。
Q、集大成として、ここまでに積み上げてきたものを出し切りたいところですね。
A、しっかりと自分たちのチームパフォーマンスを出せるようにすることが大切です。クラブが、そしてファン・サポーターが誇りに思えるような戦いをしたいです。そして、勝点3を獲得して終わりたいです。先週、自分たちでつかんでいた試合を、自分たちでこぼしてしまいました。もちろん、みんなが悔しく思っています。その教訓をしっかりと生かしながら次の試合に臨みたいです。勝つために全力を尽くしていきます。
Q、ディエゴ オリヴェイラ選手にとっても現役のラストゲームです。1シーズン半一緒に取り組んできて、どのような選手だと考えていますか。
A、日本に私が初めて来た時、2018シーズンの開幕前だったと思いますが、ディエゴ オリヴェイラ選手を練習試合で観ていて、すごい選手だと思っていました。来日して以来、ずっと彼のプレーを観てきました。18か月一緒に活動させてもらい、彼の選手としての素晴らしさと同時に人間性の部分に触れて、彼がこのクラブのレジェンドなんだということがよく分かりました。みんなが、彼に勝点3を届けようと必死に戦うはずです。そして、彼の記憶に一生残るような戦いができればと思います。
Q、ご自身にとっても東京でのラストゲームで、ファン・サポーターに向けてどのようなメッセージを残したいですか。
A、誇りに思えるような、そしてみんながワクワクできるような戦いをすることです。自分がここにきてから、将来に向けた基盤が作れたと思っています。東京の将来は明るく、そして強いものになるでしょう。今シーズン、自分たちにとって良い時期というのもありましたし、上がる時もあれば下がる時もありました。苦しい時でもチームは成長してきましたし、それがチームの将来を作ることにつながると思います。シーズンを笑顔で終えられるように、そして誇りに思えるような戦いをしたいです。青赤というのは自分の心の中に一生残るものです。このクラブの成功を祈っています。
Q、最後に出し切りたい部分はどこですか。
A、もちろん誰もが明日成功したい、次の日に成功したいと思うのが常ですが、それがフットボールです。自分たちが知っていることは、18か月間をかけてここで作ってきたものがなければ、成功はないと思います。このクラブに強い基盤を作ったことを誇りに思い、去りたいと思います。その将来に利点がつながっていくことを願っています。
これはサヨナラではありません。また会いましょう。
[選手インタビュー]
<ディエゴ オリヴェイラ選手>
Q、今節が現役生活最後の試合になります。
A、次の試合は、東京にとっての今シーズン最終戦であり、私にとっては現役最後の試合になります。強く意気込んで試合に臨みたいと思っています。今シーズン、チームとしての成績は私たちが望んだものではなく、悔しいシーズンとなりました。最終戦のセレッソ大阪戦も難しい試合になるとは思いますが、絶対に勝って今シーズンを締めくくりたいです。私にとっても最後の試合になりますが、気持ちは落ち着いています。いつも通り、試合に入りたいと思っています。自分のゴールで終えられること、勝利でファン・サポーターのみなさんと喜びを分かち合えること、来シーズンに繋がるような試合にしたいと思います。
Q、引退を決断した理由を教えてください。
A、理由はいくつかありますが、一番大きなところでいうと、長い間ブラジルから遠く離れた日本でプレーする時間、生活する時間が長かったことで、ブラジルにいる両親や家族と長いこと離れている状況でした。ブラジルに戻って、家族との時間を過ごしたいという想いがあります。また、一人のサッカー選手としてここまでキャリアを積み重ねてきましたが、身体や心をはじめ多くのエネルギーを消費してきました。高いモチベーションとプレーレベルで続けていくためのエネルギーが私自身のなかで少しずつ減ってきているようにも感じています。私自身、そして家族にも相談をして、「やり切った」と思える自分もいました。さまざまな理由もあり、引退という決断に至りました。クラブからは、来シーズンも一緒に戦おうと、ありがたいお話をいただいてはいましたが、私自身のなかで、今の状態で引退することが良い形でサッカー選手を終えられる瞬間とも感じています。東京というクラブを離れること、現役を引退する寂しさも当然ありますが、良い形で現役を終えられる嬉しさも同時に感じています。
Q、決断のタイミングは、いつごろからですか。
A、以前から、引退することはそう遠い未来の話ではないと感じていました。口にすることはありませんでしたが、近いうちかな、と私自身感じていました。実際に決断したのは、引退発表の1か月前くらいです。私は東京というクラブが大好きです。私のことをいつも支えてくれて、リスペクトしてくれた方々が大勢います。私がこのタイミングで引退することに驚いている人も多くいました。東京のユニフォームが現役最後に着用するユニフォームにできたことを幸せに感じます。
Q、印象に残っている試合やゴールがあれば教えてください。
A、2018シーズンの味の素スタジアムでの湘南ベルマーレ戦のゴールです。東京に加入して、青赤のユニフォームに袖を通し、初めて決めたゴールが湘南戦でした。私自身のゴールが決勝点になったこともあり、とても心に残っています。
Q、プロキャリアをスタートした時に、ディエゴ選手が思い描いていた現役引退の形はありましたか。 A、プロ生活をスタートしたということは、いずれ終わりがくるということです。思い描いていた形としては、Jリーグのようにレベルの高いリーグでプレーをして、かつ、自分自身が良い状態で現役を退くということです。ある意味では、理想とする形で現役を終えられると思っています。
Q、直近の試合で勝利から遠ざかっていますが、あらためて気を引き締めなおさなければいけないポイントを教えてください。
A、しばらく勝利から遠ざかっていますし、私たちのホームである味の素スタジアムでも勝てていません。私たちが思い描いていたシーズンにはならず、苦しい時間を長く過ごしてしまいましたので、チームとして一体感をもって勝利にこだわるプレーにフォーカスしたいと思います。
Q、ディエゴ選手にとって、ファン・サポーターはあらためてどのような存在ですか。
A、前節のジュビロ磐田戦は、ゴール裏のスタンドから私に向けた横断幕やユニフォームなどを掲げてくださいました。みなさんの応援はしっかりと届いていますし、とても心が温まりました。ファン・サポーターのみなさんが私のことをリスペクトしてくださる姿に、心から感謝しています。