<マッチレビュー>
2週間のインターバルを経て2025明治安田J1リーグが再開。公式戦3試合連続無得点という苦しい状況から、中断期間に行われた2025 JリーグYBCルヴァンカップでは奈良クラブに後半アディショナルタイムのゴールで辛勝し、次のステージへと駒を進めた。チームとしては徐々に内容を積み上げてきているだけに、リーグ戦で得点と勝利を手にすることが流れを大きく変えるはず。ホームで戦う今節は、何としても白星をつかみたい試合だ。
ここで迎えるのは川崎フロンターレとの“多摩川クラシコ”。JFL時代からのライバル対決だ。そして、対戦相手の川崎は、青赤アカデミー出身である山口、丸山、三浦の3選手がスタメン入り。不思議な縁もありながらのゲームとなる。
東京のスターティングイレブンは、ゴールキーパーに野澤大志ブランドン選手、最終ラインにはリーグ戦初出場となる木村誠二選手がルヴァンカップ奈良戦に続いてメンバー入りし、土肥幹太、岡哲平とアカデミー出身選手が並んだ。ウイングバックは右に白井康介、左に安斎颯馬の両選手が入り、ボランチは高宇洋選手と橋本拳人選手のコンビ。インサイドハーフは佐藤恵允選手と俵積田晃太選手、最前線に仲川輝人選手を起用した。
3バック以外にも先発にアカデミー出身選手がクラブ史上最多タイの7名(2015明治安田生命J1リーグ1stステージ第15節松本山雅FC戦以来)、ベンチ入り合計では史上最多の11名という“青赤の血”を中心としたメンバーで、ルヴァンカップ奈良戦に続く公式戦連勝をめざすことになった。
1stHALF- 相手を崩し切れず、スコアレスで前半を折り返す
序盤から主導権を握ったのは東京。ボールホルダーに対して遠近で複数のパスコースを作る動きを徹底し、ポゼッション率を高めていく。前半3分、左サイドで俵積田選手がドリブルで長い距離を独走してコーナーキックを獲得すると、俵積田選手は前半6分にも左サイドからカットインして右足シュート。続く前半7分には佐藤選手の浮き球パスに抜け出して決定機を迎えるなど、積極的な姿勢を披露。チームとしても長短のパスやドリブルを織り交ぜながら相手陣内に迫っていく。

お互いにボールを握りながら攻撃的なサッカーを展開。川崎も長いスルーパスや裏への抜け出しでチャンスを作ろうと試み、東京も積極的なプレスや身体を張ったディフェンスを見せるなど、緊張感のある好ゲームが続く。
前半28分にはセットプレーからゴール前で高井選手に強烈なヘディングを見舞われるが、至近距離でのシュートを野澤選手が鋭い反応でファインセーブ。このコーナーキックから高井選手に頭で押し込まれたかと思われたが、ここはファウルの判定で難を逃れた。
最終ラインからボールをつなぎ、ポゼッション率を高めながら攻め手を探る東京。相手のプレスを回避しながら攻め込もうとするが、アタッキングサードに入ったところで相手を崩し切れず。ミドルゾーンからフィニッシュへの工夫が欲しい時間帯が続く。
少しずつゴール前でピンチとなるシーンが増えたものの、前半はスコアレスのまま終了。東京としてはフィニッシュへの持ち込み方と決定力に課題を残す形でハーフタイムを迎えた。
2ndHALF—後半で3失点。悔しいホームでの黒星
ハーフタイムはともに交代なし。後半立ち上がりは一転して川崎がボールを握る時間が続く。
徐々に流れを引き寄せた東京は、後半5分に右サイドで突破を図った佐藤選手が倒されてフリーキックを獲得。これを安斎選手が右足で直接狙ったが、惜しくもゴール右側に外れた。同7分には右サイドでの崩しからオーバーラップしてきた白井選手がクロス。ゴール前でゴールキーパーに弾かれたこぼれ球を安斎選手が狙ったが、直前で軌道が変わったことでシュートを打ちきれず。セットプレーから惜しいシーンが続いた。
その後もボールをつないで攻撃を仕掛けていく東京。だが後半10分、一瞬の隙を突かれて左サイドから折り返されると、ペナルティエリア内で山田選手に反転シュートを許して先制点を奪われてしまう。
反撃を期す東京は後半20分、俵積田選手と橋本選手に代えて小柏剛、東慶悟の両選手を投入。小柏選手は左インサイドハーフ、東選手はボランチのポジションに入った。
ゴール裏からチームを後押しする大声援が響き渡るなか、攻勢を強めたい東京。白井、小柏、佐藤、仲川の各選手がスピードに乗った攻撃で一気に相手陣内へ進入していけば、中盤ではボランチコンビを起点にポゼッションしながら打開を図っていく。

後半26分には佐藤選手に代えて、古巣対決となる塚川孝輝選手をピッチへ。奈良戦と同様に最前線に配し、仲川選手を一列下げてインサイドハーフのポジションに移した。
しかし、直後の後半28分。相手の右クロスから交代で入ったばかりの伊藤選手にゴール前で合わされて追加点を許してしまう。
2点のビハインドを背負うことになった東京。前線から連動したプレスを強め、アグレッシブな姿勢を押し出していく。だが、ラインを上げてポゼッションしながら攻めようとしたところで最終ラインへプレスを掛けられてロストすると、川崎のロングカウンターで失点し、さらにリードを広げられる苦しい展開に。
失点直後には土肥選手、仲川選手に代えて野澤零温選手、常盤亨太選手を入れ、4バックに変更していくも、最後までゴールネットを揺らすことはできず。これでリーグ戦4試合連続ノーゴールとなり、川崎には昨シーズンのホーム、アウェイに続いて3試合続けて0-3で敗れるという悔しい結果に終わった。
MATCH DETAILS
<FC東京>
STARTING Ⅺ
GK 野澤大志ブランドン
DF 岡哲平/土肥幹太(後半41分:野澤零温)/木村誠二/白井康介
MF 安斎颯馬/高宇洋/橋本拳人(後半20分:東慶悟)/俵積田晃太(後半20分:小柏剛)
FW 佐藤恵允(後半26分:塚川孝輝)/仲川輝人(後半41分:常盤亨太)
SUBS
GK 波多野豪
DF 木本恭生/エンリケ トレヴィザン
MF 西堂久俊
MANAGER
松橋力蔵
GOAL
ー
<川崎フロンターレ>
STARTING Ⅺ
GK 山口瑠伊
DF 佐々木旭/高井幸大/丸山祐市/三浦颯太
MF 山本悠樹(後半41分:河原創)/大島僚太(後半33分:橘田健人)/脇坂泰斗
FW 家長昭博/(後半41分:瀬川祐輔)/マルシーニョ(後半26分:伊藤達哉)/山田新(後半33分:エリソン)
SUBS
GK チョン ソンリョン
DF ファンウェルメスケルケン際/ジェジエウ
FW 宮城天
MANAGER
長谷部茂利
GOAL
後半10分:山田新 / 後半28分:伊藤達哉 / 後半38分:エリソン
[松橋力蔵監督インタビュー]

Q、試合を振り返ってください。
A、非常に悔しい結果となってしまいました。選手たちは試合の入りから攻守ともによりアグレッシブなプレーを表現してくれましたし、準備してきたことに対してしっかりと意識を持ってプレーしてくれました。そこは非常に満足していますし、次に繋げないといけないと思っています。ただ、どの試合でもシュートが少なく、最後のアタッキングサードの部分の質を上げないといけません。カウンターを受けるリスクの部分もそうですし、得点失点の“作り”も大事ですが、肝になるところもさらに改善していかなければならないと思っています。
Q、ここ2試合を受けて、思い切り針を振ったと感じたのですが、何か心境の変化がありましたか。また、試合の入りは良かったと思いますが、徐々にトーンダウンしてしまった要因は何でしょうか。
A、僕が求めること、伝えていることに対する意識は非常に強いですし、そこは選手に感謝しています。今回、いつもよりは僕も針を振ったなかで、肝というか、際というか、ボールを握ってはいるけれども、ボールを失うタイミングが多くなってしまいました。チャレンジする回数もそうですが、その場面だけではなく、どこで奪っているのか、どういう状況で奪っているのかを整理できていないわけではないのですが、少しずつボールロストが増えて、自分たちが守備をする時間が徐々に増えてしまった部分は残念だったなと思います。
Q、後半途中から塚川孝輝選手をトップで起用するなど、得点が奪えていない状況を打開するために新しい得点の形を模索されている段階なのでしょうか。
A、決して苦しい事情ではありません。今いる選手のなかでやるのが当然です。そのなかで彼の特長を十分に生かせるというのは日々のトレーニングのなかでつかんでいます。今日はそういう形をなかなか出せなかったですが、守備の部分で頑張ってくれましたし、とても感謝しています。ただ、誰がというわけではなく、誰が入っても同じ画を描けるパターンというのも一つですが、シチュエーションに合わせて精度の高いプレーができるようになっていかなければ、簡単には得点は生まれないと思っています。
Q、今日の試合の入り方を見ていて、かなり進んできたと感じます。松橋力蔵監督の思い描くサッカーをやるには少し時間が掛かると思うのですが、進んでいるという手応えはありますか。
A、徐々に……。僕の表現としては「くすぐりながら」と言ってきたのですが、少しその形が見えにくくなってきた部分があったものですから、そこはもう少し強調して選手にも求めていくと、選手は100パーセントその期待に応えてくれます。逆を言えば、私が的確なことを彼らにきちんと伝えられて、彼らがそれをモノにすれば、もっと良い方向に進んでいけると信じてやっています。
[選手インタビュー]
<白井康介選手>

Q、試合の振り返りをお願いします。
A、0-3という結果、ホームで負けてしまったことを悔しく思っています。内容としては、自分たちが今シーズンから重点的に取り組んで意識している後ろからボールをつなぐプレーやビルドアップについて、できていた時間帯もありましたし、前からの守備もうまくはまった局面もありました。ですが、自分たちがボールを保持しながらも、最後の局面でどのように差し込んでゴールをめざすのか、という部分では相手の脅威になりきれていません。まだまだ足りないことが多いと感じた試合でした。チャンスはありましたが、本数を増やすことと、再現性のあるプレーを増やしていきたいと思います。
Q、特に前半、相手のサイドバックへのアプローチを意識してか、高い位置取りで前からの守備を活性化していたように見えます。
A、守備の時には、4-2-4のような陣形で相手に対して守備の圧をかけることを意識していました。少し右上がりで僕自身が高い位置取りをすることで、奪った後にチャンスにつなげたい狙いがありました。しっかりと連動して狙いとする位置でボールを奪うことも前半はできていたと思います。
Q、リーグ戦では苦しい時間が続いていますが、そのなかでもチームの成長や進歩などを感じる部分はありますか。
A、ビルドアップはまだまだ発展途上の段階ですが、チームとして高い意識で取り組めていますし、同じ方向に意識を合わせてチャレンジできています。チャレンジと成長をしっかりと繰り返していくだけです。
Q、次節は東京ヴェルディとの一戦です。年間のリーグ戦のなかでも特に重要で注目される試合でどのようなことを意識していきたいですか。
A、リーグ戦では連敗となってしまいましたし、次節はヴェルディを相手に絶対に負けられない試合です。一番と言って良いほど負けられない試合に向かうために、強い気持ちと覚悟をもって勝利をめざして戦います。
<小柏剛選手>
Q、途中出場となりました。監督からどういった指示がありましたか。
A、シャドーのポジションで出るということで、ライン間でボールを受けて、前を向いて仕掛けて点をとるための動きをしてくれというふうに言われました。そこについては、仕掛けるところとパスを使うところでうまく使い分けてプレーはできたと思います。ただ、得点に結びつけることができず、不甲斐なく思っています。
Q、点をとるために具体的に足りなかったのはどういった部分でしょうか。
A、最後のスルーパスがあまり出せていませんでした。ゴールから逆算して2個前のパスが少しズレたり、良いところでボールを持てているのにパスがズレたり。少しずつズレが生まれて、スルーパスも出せない状況になっていました。一つひとつのプレーの質を上げないと、ゴールには迫れないと思います。
Q、次節に向けて、どういった準備していきますか。
A、シュートの形が少ないので、練習でやっていくしかないと思います。次が水曜日とすぐに試合が来るので、選手間でもしっかりとコミュニケーションをとり、形を作るところをやっていかないといけないです。東京ヴェルディとの試合は絶対に勝たなければいけないと思うので、内容どうこうではなくて結果で見せられるよう、良い準備をしたいです。

