<前節・アビスパ福岡戦のレビュー>
「終始後手を踏むような、出来の悪いゲームでした」
前節終了後の記者会見、リーグ戦3試合連続無得点に加えて思うようにチャンスを作ることもできなかった内容を踏まえ、松橋力蔵監督は悔しそうな表情でアビスパ福岡戦を総括した。
序盤は身体を張ったディフェンスを見せ、ペナルティエリア内での連続ブロックや連動したプレス、野澤大志ブランドン選手のファインセーブ、橋本拳人選手の失点寸前のクリアなど守備陣が奮闘。攻めては白井康介選手の右クロスからニアに入り込んだ仲川輝人選手が頭で巧みにコースを変えて狙い、左サイドを突破した俵積田晃太選手の折り返しに逆サイドから白井選手が詰めるシーンもあったが、全体的には攻撃で変化をつけるシーンが少ないまま時間が経過してしまう。

後半に入っても福岡に押し込まれる展開が目立ったが、指揮官は流れを引き寄せるべく選手交代に動くと、東京に少しずつチャンスが増える。途中起用された佐藤恵允選手が力強い突破でゴールに迫れば、後半29分には今シーズン初出場となった東慶悟選手がワンタッチでリズムを変えるパスを供給するなど、惜しいシーンを生み出した。
試合終盤まで集中したディフェンスを続けて耐えてきたが、このままスコアレスドローかと思われた後半アディショナルタイムに痛恨の失点。最後の最後でゴールを許し、アウェイ福岡で悔しい敗戦を喫した。
<試合プレビュー>
インターナショナルマッチウイークを挟み、2週間ぶりに2025明治安田J1リーグが再開。3月は内容に手応えを覚えながら決定力不足でノーゴールに終わった鹿島アントラーズ、湘南ベルマーレとの2試合を経て、前節のアビスパ福岡戦は攻撃に再現性を生み出せず敗戦。
リーグ戦3試合連続無得点という苦しい状況にあったが、中断期間に行われた2025 JリーグYBCルヴァンカップ1stラウンド第1回戦で奈良クラブに勝利。一進一退の攻防が続いた末、試合終了間際に安斎颯馬選手のペナルティキックで勝利。苦しみながら2回戦に進出した。得点を奪えない時間帯に大きな変化を加えられなかったリーグ戦の反省を踏まえ、松橋力蔵監督は奈良戦の後半からシステムを変更。キャンプでもトライしていたシステムの併用を見せると、多数のチャンスを生み出すことに成功。また一つ新しいチャレンジにトライした形だ。
今回の中断期間、思うような結果が出ていない現状を踏まえ、松橋監督は「守備の時間が長く、ボールを握る時間が短い。より攻撃的にやっていかなければならない。攻守においてコンパクトな状態をしっかりと保ちながら攻撃的にしていく」ことにフォーカス。チームとしては公式戦では4試合続けて流れのなかからゴールを決めることができていないが、チャンスを生み出すことはできている。しっかりと細部にこだわって攻撃的なスタイルを打ち出しながら、「きれいな形じゃなくても先に(点が)入れば士気が上がる。それが色々なものを生み出す大きな効果になるんじゃないか」と期待を寄せる。

迎える今節は川崎フロンターレとの“多摩川クラシコ”。昨シーズンは二度の対戦でいずれも0-3と敗戦を喫しており、このカード自体でも3連敗中。多摩川を挟んだライバル対決でこれ以上の負けは許されない。今シーズンから青赤に加わった佐藤恵允選手は最近の対戦成績を踏まえて、「自分がハットトリックを決めて、今度は東京が3-0で勝つ」と力強いコメントを残している。
川崎は2017シーズンから指揮官を務めてきた鬼木達氏(現鹿島アントラーズ監督)に替わり、昨シーズンまで福岡を率いていた長谷部茂利監督が就任。従来のパスサッカーに長谷部監督らしい守備のエッセンスを加え、新しいスタイルを作り上げているところだ。ここまで1試合消化が少ないながら、2勝2分1敗の8位。チームはAFCチャンピオンズリーグエリート(ACLE)で準々決勝進出を決め、今節から7連戦という過密日程を経てACLEの決勝トーナメントが行われるサウジアラビアへ旅立つ。その初戦となる今節、彼らにとっては連戦に弾みをつけたい試合となることは間違いない。
結果を積み上げながら新しいサッカーの精度を上げていきたい東京。3月は産みの苦しみを味わう試合が続き、前節で黒星が先行する状況になってしまったが、今節から多摩川クラシコ、東京ヴェルディと負けられない相手との大事なゲームが続く。まずはホームでしっかりと川崎を叩き、浮上のきっかけとしたいところだ。
[選手インタビュー]
<佐藤恵允選手×伊藤達哉選手 多摩川クラシコ合同記者会見>

――それぞれ、自己紹介と意気込みをお願いします。
佐藤恵允選手: FC東京16番の佐藤恵允です。昨シーズンの多摩川クラシコでは、2戦とも0-3で敗れてしまい悔しい結果だったので、今シーズンは自分がしっかり活躍して、3-0で勝ちます。
伊藤達哉選手:川崎フロンターレ、17番の伊藤達哉です。自分たちはこれから公式戦7連戦とその後にAFCアジアチャンピオンズリーグエリート(ACLE)のサウジアラビアでの試合が控えているので、まずはこの試合に勝利して、そのままの勢いでこの連戦とACLEに向かっていきたいと考えています。この大事な一戦、勝ちたいと思います。
――今シーズンの対戦相手の印象を教えてください。
佐藤選手:やはり、ディフェンスラインから丁寧にボールをつないで崩していく印象がありますし、それだけではなく、前線の選手には個の能力が高い素晴らしい選手が揃っていて、どこをとっても隙がない印象です。
伊藤選手:FC東京も監督が変わり、今までと違ったサッカーのスタイルにトライしている印象です。多分、スタイルを模索している最中だとは思うのですが、能力の高い選手が多いことは間違いないので、それぞれがハマった時が脅威になると思っています。

――ゴールに近いポジションでプレーをされているお二人ですが、お互いのプレーの印象と、ご自身のここだけは負けないセールスポイントを教えてください。
佐藤選手:伊藤選手のプレーは、ドイツにいた時から映像で見ていましたし、縦への推進力や切れ味鋭いドリブル、緩急をつけたボールの運び方もとてもうまい選手という印象です。僕自身も縦への推進力やドリブルを武器にしているので、もしかしたら、試合でマッチアップすることがあるかもしれないですけど、その局面では自分のスピードでぶち抜いて、そのままゴールにつなげたいと思います。
伊藤選手:佐藤選手はパワーとスピードを兼ね備えている印象です。第3節の名古屋グランパス戦ではゴールとアシストを記録していますし、カウンターの時に、あれだけのスピードで絡んでこられたら、相手としても非常に嫌です。ルヴァンカップの奈良クラブ戦でも最後にペナルティキックを獲得して、あのような難しい試合で勝利に貢献していました。カウンターやトランジションの局面で驚異になると思っています。僕自身の特長としては、佐藤選手とは少し違いますが、1対1の局面や得点に絡むプレーで勝負したいと思っているので、今回の多摩川クラシコではゴールかアシストで貢献したいと思います。
Q、ともに初めて多摩川クラシコを経験されますが、この対戦カードにどのような印象をお持ちでしたか。
佐藤選手:多摩川クラシコ自体、もちろん知っていましたし、僕自身東京出身で、幼い時から“多摩川クラシコ”というワードに馴染みがあります。昔からの伝統の一戦という印象が強いです。
伊藤選手:僕も知ってはいましたし、ダービーではなくクラシコと呼び合っていることがとても印象的です。今回、その舞台で戦えることが楽しみです。

Q、今シーズンからJリーグで初めてプレーするお二人。実際にプレーしてみた印象を教えてください。
佐藤選手:海外のリーグと比べて、チームとして戦う意識や、組織力の高さ、選手個々の技術の高さを感じています。もちろん海外のリーグもレベルは高いですが、それとは違った繊細さがあって、プレーをしていて面白いです。
伊藤選手:組織的な守備で、ボールを受けた時に、スペースもなく守備にかける人数も多い印象です。海外はそれぞれの局面において1対1が試合中に何度もあるような形なので、その辺の違いは感じています。
――お互いのチームで“うちのここは譲れない”というような強みを教えてください。
佐藤選手:今シーズンから監督が変わり、東京のスタイルの一つである“戦う”というベースはもちろん、後ろからしっかりボールをつないで相手をいなしながら攻撃を仕掛けていくサッカーをめざしています。川崎フロンターレもしっかりとつなぎながら、主導権を握って試合を進めていくチームだと思いますが、主導権の握り合いは今回の対戦において面白いポイントの一つだと思っています。
伊藤選手:今シーズンの川崎は、今までより守備面が特長の一つになっていると思います。今シーズン、僕たちは複数失点をしていない強みがあるので、新しくなった川崎の強みの一つだと思います。
※両選手コメントは多摩川クラシコ合同記者会見の質疑応答より抜粋
[松橋力蔵監督 インタビュー]

Q、今節は多摩川クラシコですが、どのような準備を進めてきましたか。
A、良いゲームができていない現状を踏まえつつ、より攻撃的に仕掛けていきたいと思います。直近の試合では守備の時間が長くボールを保持する時間が短いなかで、キャンプから意識して積み上げてきたものにもう一度しっかりとトライしていきたいです。今週は、コンパクトな陣形を保ちつつ、より攻撃的に戦うことをテーマに攻守において取り組んできました。
Q、直近のリーグ戦では得点が生まれていない苦しい状況が続いています。
A、惜しいシーンは多くありましたが、その局面でしっかりと決め切らなければゲームを難しくしてしまいます。決して綺麗な形でなくとも、得点が決まることでチームの士気が上がり、勢いや良い雰囲気を生み出します。得点についてはこだわりながら、進めていきたいと思います。
Q、今シーズンから守備力が強化された川崎フロンターレの印象を教えてください。
A、システムなどは大きく変わった印象はありませんが、監督が代わり、守備の堅さや意識、選手個々の色がハッキリとプレーに反映されているように感じています。



