<前節・東京ヴェルディ戦のレビュー>
前半は最終ラインからしっかりとつないでビルドアップする東京が、相手のカウンターを警戒しながら試合を進める展開となった。キックオフ直後には高宇洋選手が高い位置でロストしたボールを即時奪回。絶対に負けられない一戦で高い集中力と勝利への意識を見せていく。
ただ、ポゼッション率で圧倒しながらも5バックで守りを固められ、少しずつ崩しどころを模索していた前半20分、コーナーキックからワンチャンスを決められ先制を許してしまう。
思わぬ展開を強いられる形となってしまったが、東京はハイラインを保ちコンパクトな陣形から相手の裏を狙うパスなど攻撃に変化をつけ始めると、前半23分には右サイドから流れるようなパスワークで緑の守備網を一気に突破。最後は相手ゴールキーパーのファインセーブで俵積田晃太選手のシュートがわずかにコースを変えられて左ポストを叩き、ゴールには至らなかったが、“力蔵トーキョー”らしいアタックでビッグチャンスを作った。
気迫の戦いを見せる東京は前半43分、高選手が最終ラインの裏へ絶妙な浮き球パスを供給。ここへ佐藤恵允選手が鋭く抜け出して流し込み同点。“あうんの呼吸”とも言えるコンビネーションで試合を振り出しに戻すことに成功する。

後半、相手が一転してハイプレスを仕掛けてきたことで展開が大きく変化。後半7分には、エンリケ トレヴィザン選手が背後に抜け出そうとした相手選手への巧みなタックルでボールを奪うと、こぼれ球は野澤大志ブランドン選手の足元へ。野澤大志選手が激しく寄せてくる相手選手をかわそうと切り返したが、ボールを突かれて勝ち越しゴールを奪われてしまう。
これまで何度もピンチを救い、この試合でもビッグセーブを見せていた守護神をフォローするべく奮闘すると、終了間際の後半44分に安斎颯馬選手の右クロスからエンリケ選手がヘディングで合わせて同点に。昨シーズンの同カードで退場処分を受けて“借り”を返すべく燃えていた背番号7が野澤大志選手のミスを帳消しにするアシストを記録し、土壇場で東京が試合を振り出しに戻した。
その後も長身のエンリケ選手を前線に残して勝ち越しを狙ったが、ゴールネットは揺らせず。連続無得点試合は4試合でストップさせたものの、何が何でも勝ちたかった相手とのゲームで白星を手にすることはできず。同カードは昨シーズンから3試合連続の引き分けに終わり、リーグ戦5試合未勝利という悔しい結果となった。
<試合プレビュー>
リーグ戦5試合連続の未勝利。だが、チームは地道に取り組んできたトレーニングが実り始め、内容は確実に上向いている。選手の目線が合うようになり、パスに対する動き出しのタイミングやサポートの動きも整ってきた。松橋力蔵監督も「少しずついろいろなものが合い始めて、良い形で出始めてきている。やり続けてきた結果」と手応えを語る。
だからこそ、とにかく結果が欲しい。チームは4試合連続無得点という苦しい状況を打破し、前節は引き分けに終わったものの2ゴールをマーク。得点シーン以外にも“力蔵トーキョー”らしいパスワークでチャンスを作り、身体を張ったブロックや球際への寄せなど勝利への強い意欲を見せた。多摩川クラシコから2試合続けて“気持ちの勝負”とも言えるゲームを消化してきたが、ここで決して緩めることなく、「目の前の敵が最強の敵」(松橋監督)と一戦必勝の構えで今節に臨みたい。一つの勝利が流れを変える。今節のファジアーノ岡山戦がシーズンの分水嶺になったと思い返すようなゲームにしなければならない。

今シーズンからJ1リーグに初昇格してきた岡山はここまで3勝2分3敗の9位。前節、セレッソ大阪に今シーズン初めて複数失点を喫して敗れたが、それまで7試合3失点という堅守を誇り、ハードワークと集中したディフェンスで初めてのJ1リーグながら果敢な戦いを披露している。東京にとっては昇格組との対戦となるが、決して油断することなく、気持ちと戦術眼で相手を上回って、アウェイで第3節以来の勝利をつかみたい。
なお、東京から期限付き移籍している佐藤龍之介選手は前節のC大阪戦で記念すべきJ1リーグ初ゴールを記録。3-4-2-1の右ウイングバックとして出場し、左クロスを右足ダイレクトで合わせてゴールネットを揺らした。今シーズンはU-20日本代表にも継続して選出され、3月のスペイン遠征では同年代のフランス代表とアメリカ代表に連勝。佐藤選手は両試合に先発出場し、中心選手として存在感を高めている。今節は契約の関係で出場することができないが、武者修行中の青赤戦士にも注目しておきたいところだ。
[松橋力蔵監督 インタビュー]

Q、東京ヴェルディ戦の1点目ではこれまでやってきたことが凝縮されていました。手応えはいかがでしょうか。
A、勝ちたいですし、勝つために何が必要かを考えてやっているなかで、なかなか結果が出ていませんでした。この前も「成長」という言葉を使いましたが、少しずつ、少しずつではありますが、いろいろなものが合い始めているといいますか、良い形で出始めています。それは、やり続けた結果だと思いますし、やり続けてきたことで選手の目線もしっかりと合ってきたので、その成果が少し表れてきました。相手も対策をしてくるので、次の手、次の手と臨機応変さも大切ですし、そのプレーをするための目線合わせも必要だと思います。その両方にしっかりとアプローチしてより良いものを作っていきたいです。
Q、少しずつやりたいこともハマってきた印象があります。
A、試合のなかでは、ところどころ良い形はありました。これまではもう一歩と思うところがありましたが、前節は形として最後まで出たなと思います。そこがいくつか出ていますし、その他にもチャンスができています。選手個人にフォーカスしても、やっていくなかで、一人ひとりの意識がどんどん変わってきています。今朝も東慶悟選手と話しましたが、川崎フロンターレ戦と比べて東京V戦の時には、より前線に絡んでいく意識を高く持ったと言っていました。自分にもう少しこういうことを加えていけばというところも出てきています。そういうものが合わさってくると、さらに厚みが出てくると思います。
Q、ファジアーノ岡山戦に向けていかがでしょうか。
A、J1リーグに昇格してきたばかりのチームですが、いつもと同じように目の前のチームが、我々にとって最強の敵です。その目線をしっかりと持ちながらやっていきたいです。前節手応えがあったからという油断ではなく、何度も何度も続けていくことが大事です。競い合いあう上で、やはり1mmでも1cmでも相手より前に出ていくことや、1回でも相手より多くチャンスを作ること、1点でも相手より多くとるという、常に競うなかではディテールだけにこだわらず、戦う気持ちや、上回る気持ちが大事になってくると思います。自分たちがチャレンジしていくという気持ちを持ったなかで、積み上げてきたものを表現したいと思います。
[選手インタビュー]
<マルセロ ヒアン選手>

Q、東京ヴェルディ戦では約30分の出場でした。個人としての手応えはどのように感じていますか。
A、前節の東京V戦は、クラブにとってもファン・サポーターのみなさんにとっても特別な試合でしたし、その試合で何とかチームのために活躍したいという想いでしたが、悔しい引き分けに終わってしまいました。次の試合こそ、勝利を手繰り寄せたいです。個人としては、コンディション不良もあり、久しぶりの試合出場でした。私がピッチに入った時にはチームは1-2で負けている状況でしたし、攻撃の起点になること、点をとって同点、逆転につなげる意識でピッチに入りました。得点に直接関わるプレーはできませんでしたが、チームとして終了間際に同点に追いつくことができたことを次につなげたいです。
Q、“得点力”という部分に課題を残すなか、マルセロ ヒアン選手自身の特長をどのようにチームと融合させていきたいですか。
A、リーグ戦が開幕し、数試合を戦いましたが、攻撃の完成度はここからさらに良くなっていくと思っています。得点につながるチャンスも徐々に増えてきている手応えを感じていますし、私自身もチームメイトとの連携も増していて、チーム戦術を含めてフィットしてきています。ここでチームのために得点を決めて、良い流れをもたらしたいです。ここから勝ち星が増えていくことを信じています。
Q、ヒアン選手の加入後初ゴールに期待する声も多く寄せられています。
A、ここからの試合で得点を決めてチームに貢献したい想いはとても強いです。ですが、気負いすぎると良い結果はついてこないとも思っています。チャンスシーンでしっかりとゴールネットを揺らすこと、ここから出場時間をしっかりと増やすこと、ファジアーノ岡山相手に難しい試合にはなると思いますが、勝利のためにプレーしていきたいです。
<野澤大志ブランドン選手>

Q、前節の東京ヴェルディ戦、ファン・サポーターの熱量をピッチ上でどのように感じていましたか。
A、アウェイゲームでしたが、スタジアムやゴール裏の雰囲気も素晴らしかったですし、熱い想いをともに持って戦うことができた試合だったと思います。
Q、野澤大志選手自身、非常に悔しい試合を経て、どう切り替えていきたいですか。
A、試合中のミスやプレーの精度が評価の基準ですし、チームの結果に貢献できなければ、評価されません。それがプロの世界です。個人としては、どんな時でもチームに貢献したい一心です。チームが今後、スタメンとして抜擢してくれるのであれば、その期待に全力で応えるのみです。東京V戦を経て、何かを大きく変えるつもりはないですし、ミスを恐れたプレーをするつもりもありません。自分にできることを全力でやり切ることが、次につながると思っています。
Q、東京V戦に限らず多くのピンチを救うビッグセーブもありました。
A、これまでも大小問わず試合中のミスはたくさんありました。それでもスタメンでプレーする機会を与えてくれたチームには感謝しかありません。それがより自分自身を奮い立たせてくれますし、悔いのないようにプレーしようという気持ちにさせてくれています。たしかに、東京V戦は数本のセーブはありましたが、貢献できなかったということが全てです。責任を持って戦い続けたいです。
Q、4月から連戦になります。チームとしての総合力と結果が求められてくると思います。
A、チームとして今の流れを変えるためにも、良いキッカケにつながる試合が必要です。チームとしてここからさらに良くなっていくと僕自身は信じています。次のファジアーノ岡山戦、上位に食い込むためには大事な試合です。まずは目の前の試合で、しっかりとチームとして勝ちを手繰り寄せたいと思います。


