<1stラウンド第1回戦・奈良クラブ戦のレビュー>
アウェイ奈良に乗り込んで迎えた1stラウンド第1回戦。J3クラブ相手ながら「目の前の敵が最強の敵」と気を引き締めて臨んだ一戦は、想像以上に難しい時間が続くゲームとなった。
果敢なハイプレス、ハイライン戦術を採りながらボールをつないで攻めてくる奈良クラブ。東京は塚川孝輝選手を最前線に置き、ボランチに入った東慶悟選手が最終ラインに落ちながらビルドアップをサポート。しかし、相手の集中した守備を崩し切れず、なかなか決定機を生み出せない。

スコアレスで迎えた後半は、開始から今シーズン初スタメンの木村誠二選手に代えて野澤零温選手を投入し、4バックにシステムを変更。松橋力蔵監督が試合前に「大きく変えることも考えたい」と話していたとおり、ピッチ内に明確な変化をもたらすことで流れを引き寄せようとする。これがチャンス増加につながったものの、奈良もパフォーマンスを落とすことなくアグレッシブな戦いを続け、主導権を再び奪われてしまう。
何度も危ないシーンを作られながら身体を張ったディフェンスと相手のミスに助けられて難を逃れると、迎えた後半アディショナルタイム、ついに試合が動く。
ペナルティエリア内で佐藤恵允選手が後ろから倒されてペナルティキックを獲得。これを安斎颯馬選手が右足で力強く蹴り込んでネットを揺らし、土壇場で先制点をゲット。キャプテンマークを託された背番号7の勝負強さが試合を決め、大苦戦の末に東京が2回戦進出の切符を勝ち取った。
<1stラウンド第2回戦のプレビュー>
J1からJ3までの全60クラブが参加してトーナメント方式で開催される2025Jリーグ YBCルヴァンカップ。一発勝負の1stラウンド第2回戦に臨む東京は、アウェイに乗り込んでJ2のRB大宮アルディージャと対戦。チームはリーグ戦7戦未勝利という苦境にあるが、流れを変える勝利を手にすることで、積み上げてきたものを自信に変えて前へ進んでいきたい。
先週末に国立競技場で行われた2025明治安田J1リーグ第10節 柏レイソル戦は、仲川輝人選手の今シーズン初ゴールで先制点を奪うも、後半アディショナルタイムに痛恨の同点弾を許してドロー。残り時間約1分というところまで時計の針を進めながら勝利を逃すという悔しい結果となってしまった。

一つの勝利がここまで遠いものになるとは誰もが思っていなかっただろう。だが、試合はやってくる。たとえ大会は変われども、目の前のゲーム、目の前の相手にしっかりとフォーカスしていくスタンスは変わらない。対戦相手のカテゴリーが下であることもキックオフのホイッスルが鳴ったら何も関係ない。結果が出ると信じて、そして自分が結果を出すという覚悟を持って、困難な状況を乗り越えていくしかない。矢印を自分に向け、お互いに高みをめざして求め合い、コミュニケーションをとりながら一丸となって進まなければ勝利は手にできないということを今の状況が教えてくれているとも言える。
苦い経験もすべて糧にしていくしかない。松橋力蔵監督は言う。
「ケーススタディとして自分たちの力や強みに変えていくことは、どんなゲームでも大事になる。勝ち負けに関係なく必ず課題はあるので、そういうところを潰していくことが結果につながりますし、どんどん自分たちの厚みが増えてくると思う。土台がしっかりすれば、そういう強みはもっと出てくる。そういうところは怠らずにやらなきゃいけない」
過ぎ去ったものは変わらない。ここを乗り越え、苦しい記憶と経験をプラスに変えていくことで、勝てなかった時期を未来への助走期間にしていくしかないのだ。

チームは過密日程を戦っていることもあり、フレッシュな選手を起用していく可能性もあると見られている。なかなか出場機会を得られない実力派も多いだけに、誰がピッチに立つのか、そして彼らがどんなパフォーマンスを見せてくれるのかには注目しておきたい。
対する大宮はJ3リーグ降格から1年でJ2リーグに舞い戻ってきた。経営形態が大きく変わった今シーズンはここまで開幕4連勝を含む6勝1分2敗の勝点19で2位につけ、ハードワークと攻撃的なサッカーで一気にJ1リーグ復帰を視野に入れている。
東京にとってはトップチームやU-23、アカデミーの指導者を長く歴任した長澤監督、選手として青赤のユニフォームに袖を通した喜名ヘッドコーチ、戸田コーチとスタッフ陣に縁のある顔ぶれが並ぶ。さらに東京の監督として2004シーズンの今大会(当時はヤマザキナビスコカップ)でクラブ初タイトルに導いた原氏が社長を務めているという因縁もある。橋本拳人選手、波多野豪選手らアカデミーやU-23チームでプレーした選手たちにとっては恩師でもある長澤監督との対決、クラブとしては一時代を支えたメンバーとの対戦となるだけに、しっかりと成長した姿を見せて“恩返し”をしたいところだ。
[松橋力蔵監督 インタビュー]

Q、リーグ戦では苦しい結果が続いていますが、カップ戦をどのような位置付けで考えていますか。
A、当初の考えから何も変わりはありません。我々にとって、大事な一戦が水曜日に控えているということだけです。もちろん反省すべきこと、足りないものに対して目を向けてアプローチすること、選手たちも真摯に取り組んでいます。あとは結果だけです。良い結果を得ると信じること、自分たちを信じること、やり続けることが大切です。
Q、RB大宮アルディージャの印象を教えてください。
A、非常にハードワークをするチームという印象です。そこを上回ることが必要ですし、奈良クラブ戦の際も同じように伝えましたが、我々が上から覗くようではいけません。しっかりと同じ目線で戦うことを求めていきます。リーグ戦の柏レイソル戦では、1-1という結果に終わり、ポジティブな面とそうではない面がありました。目を背けられない部分もありましたし、何度か同じようなことを繰り返してしまったという反省もあります。選手が日々のトレーニングからトライする姿を見ていますし、その点については、十分に満足していますが、それをピッチでやるかやらないか、という話を全体にしました。全員が同じ気持ちで次の試合に臨もうとしています。良い流れと結果を勝ちとるその時まで、諦めずに進んでいきたいです。
Q、選手たちの活気や表情は、監督の目にはどのように映っていますか。
A、大きく何かが変わったという印象はありませんし、選手それぞれ状況は理解してくれています。この苦しく困難な状況を何としてでも乗り越えていくんだ、という選手自身が“俺がやってやる”という気持ちを前面に出してほしいと選手たちには伝えました。もちろん、そのようなマインドは僕自身にも当てはまります。選手に任せっきりになるわけではなく、僕自身も針を振り切って伝えることも重要だと思っています。
[選手インタビュー]
<東慶悟選手>

Q、チームとして勝利から遠ざかるなか、東慶悟選手自身、どのようなことが必要だと考えていますか。
A、これまでのリーグ戦で試合に絡むことができなかった選手たちも出場する可能性があるなかで、まずはこの一戦を機に良い雰囲気に変えていきたいです。
Q、過去在籍していた古巣との一戦が控えています。
A、在籍していたのが2011、2012シーズンですし、RB大宮アルディージャのファン・サポーターのみなさんが、僕がいたことを覚えているか不安な部分もあります。ですが、短い在籍期間で本当に成長できた実感があります。本当に感謝していますし、覚えてくれている方々がいたとしたら、「成長したな」と思っていただけるようなプレーをお見せしたいです。
Q、柏レイソル戦では、攻め急いでしまった場面や目線が合わせ切れないシーン、守備面のコミュニケーション不足もあったと思います。
A、この流れならこうする、という全体の意識や、どのようなプレーで時間を進めるか、という部分で不足していたところがありました。2点目を奪いにいくのか、しっかりと守り抜くのかが中途半端になってしまいました。守備で言うと、コミュニケーションで解決できることもありつつ、局面における個人の意識も足りなかったと思います。
Q、攻守において、東選手に対して期待される役割も多いかと思います。
A、しっかりとやり切らなければいけませんし、攻撃だけがサッカーではありません。守備の局面における楽しさもあります。様々な角度から取り組むことで、“サッカーの深み”を知ることができます。攻守における“サッカーの楽しさ”を知ること、深めることで勝利に近付けると思っています。
<波多野豪選手>

Q、1回戦の奈良クラブ戦では無失点での勝利に貢献し、今回の出場の可能性があるなかでどのようなプレーを見せたいですか。
A、いつでも出場できる準備はできています。ピッチに立って、自分を表現するだけだと思います。カップ戦は勝利という結果でしか示すことができません。本当に勝ちにこだわったプレー、勝ちを引き寄せるプレーをしていきたいと思います。
Q、チームとして沈みがちなところに、雰囲気も含めて良い方向に変えるぞという意識も強いと思います。
A、先日の柏レイソル戦の試合後も、選手間で話し合いましたし、今週の練習も球際の強度など雰囲気を含めて勝ちにふさわしい練習ができています。これを試合で出せるか出せないかだと思っていますし、会場全体を巻き込むようなプレーをみんなでしていきたいと思います。
Q、今回の会場はサッカー専用スタジアムということもあり、ファン・サポーターとの距離が近くなります。パワーを受けながら、自分の良さも出せるのではないですか。
A、僕自身、NACK5スタジアム大宮で2シーズン前にプレーした経験もありますし、スタンドからピッチまでの距離が近く、声援や迫力を感じました。ファン・サポーターのみなさんをいつもより間近で感じられると思うので、なおさらみなさんのためにやろうという気持ちになります。サッカーを楽しみつつ、結果を出したいと思います。
Q、RB大宮アルディージャの印象やイメージを教えてください。
A、とても攻撃力があるクラブですし、僕も長澤監督のもとでプレーしていたので、どのようなサッカーをするかは何となく分かります。(在籍時には)僕のことを信用して、キャプテンマークを巻かせてくれたこともありますし、あのシーズンがあったからこそ僕も成長できたと思っています。翌シーズンはJ1リーグデビューもしましたし、とても感謝しています。「立派になったな」と思ってもらえるようなプレーを見せたいです。



