<マッチレビュー>
まさにリスタートの一戦だ。リーグ戦の連勝が先週末でストップし、ミッドウィークには2025JリーグYBCルヴァンカップで敗退。リーグ前半戦は今節のサンフレッチェ広島戦を含めてあと2試合となり、今日は後半戦の巻き返しに勢いを付けるために何としても勝利が欲しいゲームとなる。
ルヴァンカップの湘南ベルマーレ戦から中3日で試合に臨んだチームは、前節からスタメンを8人変更。ゴールキーパーは湘南戦に続いて起用され、リーグ戦では3試合ぶりのスタメンとなった野澤大志ブランドン選手。最終ラインは右から土肥幹太、木村誠二、エンリケ トレヴィザンの3選手が並び、ウイングバックは右に白井康介、左に安斎颯馬の各選手が入った。中盤はボランチに高宇洋選手と小泉慶選手、インサイドハーフは右に遠藤渓太選手、そして左には日本代表初招集で注目を集める俵積田晃太選手を配し、1トップに佐藤恵允選手を置く3-4-2-1システムを選択した。
会場は新装後のホーム無敗を誇る国立競技場。この日は『New Balance Day』で、青赤イレブンがサプライズでグレーのSpecial kitを着用。選手入場ではセンターサークルにジャイアントジャージが広げられ、キックオフを迎えた。
1stHALF—ともに攻守の切り替えや球際で高い集中力を見せる
ともに同じシステムを採用する“ミラーゲーム”。序盤はお互いの出方を見ながら攻め手を探り合う時間が続く。前半8分には相手の右フリーキックが逆サイドに流れ、クロスをファーサイドで詰められて先制を許したかと思われたが、VARのサポートでオフサイドとなって早い時間の失点は逃れた。
ボールを回しながら少しずつ押し込んでいこうとする東京。前半25分には自陣からロングカウンターを仕掛けると、力強く持ち運んだ佐藤選手がペナルティエリアに入ったところで思い切り良く右足を振り抜いたが、これはわずかにゴール左へ外れてしまう。
ともに攻守の切り替えや球際で高い集中力を見せるゲーム。お互いに長短のパスを使い分けて攻撃を仕掛けていくが、守備時に5バックへ可変してスペースを消すシステムを採用していることもあって思うように決定機を作れない。
鋭い攻撃でこじ開けようとしていく東京。前半44分には佐藤選手が細かなタッチを入れながらのドリブルで中央突破を図ったが、あと一歩のところでフィニッシュには持ち込むことはできなかった。
3分間のアディショナルタイムも試合は動かず、前半戦がタイムアップ。勝負の行方は後半へと持ち越された。
2ndHALF—攻撃の活路を見出せず、主導権を握られ0-3の敗戦
ハーフタイム明け、広島は前田選手に代えて中村選手を起用。対する東京はメンバー交代なく後半に臨んだ。
あらためて攻め手を探っていこうとする東京だったが、開始早々に出鼻をくじかれてしまう。後半4分、相手の左コーナーキックを弾き返したあとのスローインから右サイド深くへ進入され、新井選手のクロスを荒木選手に頭で合わされて失点。1点のビハインドを背負うことになってしまった。
追いかける東京は白井選手のピッチを横断するようなドリブル、遠藤選手の左足ミドル、俵積田選手のドリブルなどで相手陣内に迫っていこうとするが、後半14分にショートカウンターから左サイドを崩され、小泉選手が懸命に戻ってカットしながら最終ラインの連携が乱れてしまい、ジャーメイン選手に押し込まれて2点目を失ってしまう。
リードを広げられてしまった東京は白井選手、高選手に代えてリーグ戦3試合連続ゴール中のマルセロ ヒアン選手、この試合がJ1リーグ戦通算400試合出場となる東慶悟選手をピッチへ送り出す。この選手交代でヒアン選手が1トップに、佐藤選手がインサイドハーフ、遠藤選手が右ウイングバックへポジションチェンジ。東選手はそのままボランチに入った。
さらに後半28分にはエンリケ選手、佐藤選手から森重真人選手、仲川輝人選手にスイッチ。森重選手を3バックの中央に、仲川選手を右インサイドハーフに据えた布陣に変更する。
反撃を期す東京だったが、投入したばかりのヒアン選手が負傷して交代を余儀なくされるアクシデントに見舞われ、後半32分に岡哲平選手が急きょピッチへ。岡選手を左ウイングバックに置き、安斎選手をインサイドハーフへ、そして仲川選手を最前線に押し出すスクランブル体制で残り時間を戦うことになった。
しかし、なかなか攻撃の形が作れず、奪ったボールをつないでアタッキングサードまで運ぶことができない。
後半41分、セットプレーの守備で競り合った際にハンドをとられてペナルティキックを与えてしまうが、これは相手のキックミスに助けられる。だが、直後の同43分、自陣左サイドを中村選手に突破され、折り返しを川辺選手に蹴り込まれて痛恨の3点目を失ってしまった。
6分間のアディショナルタイム、俵積田選手がカットインから仲川選手への縦パス、遠藤選手のフリーキックから木村選手がヘディング、遠藤選手のスルーパスから俵積田選手が飛び出すなど反撃したが、決定機を作るには至らずタイムアップ。0-3というスコアで敗れて公式戦3連敗、国立競技場でのホーム無敗記録も10でストップしてしまう悔しい結果となった。

MATCH DETAILS
<FC東京>
STARTING Ⅺ
GK 野澤大志ブランドン
DF 土肥幹太/エンリケ トレヴィザン(後半28分:森重真人)/木村誠二/白井康介(後半17分:マルセロ ヒアン)(後半32分:岡哲平)
MF 安斎颯馬/高宇洋/(後半17分:東慶悟)遠藤渓太/小泉慶
FW 佐藤恵允(後半28分:仲川輝人)/俵積田晃太
SUBS
GK 波多野豪
DF 木本恭生
MF常盤亨太
FW 野澤零温
MANAGER
松橋力蔵
GOAL
―
<サンフレッチェ広島>
STARTING Ⅺ
GK 大迫敬介
DF 塩谷司(後半45分:越道草太)/荒木隼人(後半45分:山﨑大地)/佐々木翔
MF 中野就斗/川辺駿/東俊希/新井直人
FW 前田直輝(後半0分:中村草太)/加藤陸次樹(後半45分:ヴァレール ジェルマン)/ジャーメイン良(後半49分:松本大弥)
SUBS
GK チョン ミンギ
MF 菅大輝/井上潮音/小原基樹
MANAGER
ミヒャエル スキッベ
GOAL
後半4分:荒木隼人 / 後半14分:ジャーメイン良/ 後半43分:川辺駿
[松橋力蔵監督インタビュー]

Q、本日の試合を振り返ってください。
A、この残念な結果は私自身の責任でもありますし、最近はリーグ戦だけに限らずカップ戦も敗戦が続いているというところに非常に責任を感じています。これをどう打開していくかというところで、ゲームの総括というよりも、次にどうしていこうかというところに頭が向いている状態です。
Q、今どのように打開していこうと考えていますか。
A、現時点では、フォーメーションのこともひとつ頭にはあります。これはかねてからあったものでもあります。それ以前に僕はフォーメーションがどうのこうのというよりも、選手の特長の最大値をどう出せるかというところが立ち位置というかポジションだと思うので、そういう意味で頭のはずっと巡っている感じです。
Q、選手が滑っているシーンが目立ったのですが、それはコンディションの問題なのか、それとも芝生への対応の問題だったのでしょうか。
A、ちょっと分からないですけれど、どんな理由であろうと、どんな条件であろうと、あってはならないと思います。もちろん、アクシデントで滑ることは当然あると思うのですが、そういう部分はゲームへの準備という意味では少し幼稚すぎる部分だなと思います。
Q、試合全体として何かが決定的に悪いとか明らかな敗因があるわけではなく、なんとなく試合がビハインドになって点差が開いていったように見えましたが、監督の目からはどのように見えていますか。
A、そういう見方もあると思いますが、そのなかでも勝たなくてはいけない。しっかり抑えなきゃいけない。点をとらなきゃいけない。ふわっとしている部分をふわっとしたままにすることは、敗戦には必ず理由があると思いますので、そういうふうに見えた部分をどう締めていけるか。選手の意識のなかでまったくそれがないとは言わないですが、やはり90分のなかでの高い集中力であったり予測力であったり、ゲームを読む力もそうですけれども、そういうものも含めてしっかりと自分たちで構築していかないと、なんとなくのところでやられるとなんとなくゲームが進んでしまう。
何が原因かというところでは、僕自身も今の失点はなんで起きたのかというところがタイムリーに全部がはっきりするわけではないですけれども、そういうなかで最適な交代カードを切れるか切れないか、そういうのも必要な部分であると思います。最近のゲームでいえばフィジカル的な問題で交代カードを切らなければならないケースも増えてきているので、それは怪我をしてどうこうというよりも、トレーニングのところから負荷はいったいどうなのかとか、そういう細部を詰めていかないとそのふわっというものが何なのかということが見えてこないと思っています。
[選手インタビュー]
<俵積田晃太選手>

Q、試合を振り返ってください。
A、情けないゲームでした。もっと押し込んでチャンスを作る場面、時間帯を増やさなければいけません。今日の試合は個の力でシュートまで持ち込む場面もありましたが、もっと連携面やコンビネーション、共通理解を深めていきたいです。あと少しの部分、ズレをしっかりと合わせて、工夫してプレーしていきたいです。セットプレーや目の前の相手に負けない、プレーの細部にこだわるところからです。でなければ、相手に勝ることはできません。そのような差が今日の試合に反映されたと思っています。
Q、日本代表に選ばれた直後のリーグ戦でした。
A、プレッシャーや緊張感は今日の試合に限らず感じていますが、どのような時であれ、自分がチームを引っ張っていかなければならないと思っています。難しい試合のなかでも、自分自身の力を出し切ってチームに貢献することが求められていると思います。まだまだ課題ばかりです。
Q、手堅い守備の広島に対して、攻撃面でどのような点が足りなかったと感じていますか。
A、ボールを受ける前のオフザボールの動き出し、チャンスの数が足りませんでした。もっと味方と連携して、僕自身がボールを受ける回数を増やすこと、そのシーンをチャンスや得点につなげていきたいです。あとは、失点した後に全体の雰囲気が沈み過ぎてしまいました。前を向いて盛り上げなければいけない状況でした。自分も含め、沈んだ時間がもったいないと思いますし、勝ちを手繰り寄せるには足りなかったと思います。
<東慶悟選手>

Q、悔しい結果に終わりました。
A、これが今の僕たちの現状ですし、これがリアルなので、これをどう受け止めてどう改善していくのかは自分たち次第なので、もうそれしかないのかなと思います。
Q、前半を見ていて、自身が出場するまでどういうところが厳しいと話していましたか。
A、自分たちからのアクションが少なかったなと。ホームなので、もっともっとゴールに向かう姿勢や、点をとるんだ、勝つんだというところ。前半からそれがちょっと少ないように見えましたし、相手の脅威にはなっていなかったのではないかと思います。
Q、そこは一人ひとりの問題なのか、チーム全体としてもっと統一すべきものなのでしょうか。
A、それはもちろん両方あると思います。サッカーなので、どちらか一方ということではないです。もちろん試合に出た選手の責任で、出たからには僕も含めてですけれど、もっとやらなければいけないですし、あとはチームとしてどうやっていくのかというところをもっとみんなで話をしてやっていかなければならないと。だからこそこの順位だと思うので、これが今の僕たちと広島との差なのではいかと思います。
Q、これだけのお客さんが入ってくれたなかで、内容も良くなかったよう見えました。
A、ダメです。まったくダメだと思います。もちろん僕も含めてなんですけれど、もっとやらなければいけないし、僕も途中から出たなら流れを変えなければいけない。本当に申し訳ないなと思っています。
Q、ここからどのように改善していこうと思っていますか。
A、簡単ではないです。でも逃げずに、今ごまかしてやっていてもしょうがないので、みんなで意見を出し合って、リアルにもっと「こうしよう、ああしよう」と言うことがもっと必要になってくると思います。
Q、J1リーグ通算400試合出場の節目の試合でした。
A、400試合を勝って祝うことが理想でしたが、人生はそんなにうまくいかないです。そうやって、良いことばかりではなくて辛い思いをしながら強くなってきた自負はあるので、それはこれからも変わらないし、ずっとその繰り返しだと思うので。だからこそ現状から逃げずに、僕も含めてチーム全体でしっかり受け止めてやっていくしかないと思います。いくら言葉で語っても、僕たちプロサッカー選手はピッチで表現することが価値だと思うので、また次のトレーニングからしっかりと積み上げて、次の試合でこの気持ちを晴らしていくしかないと思っています。
<高宇洋選手>

Q、本日の試合は悔しい結果に終わりました。
A、自分たちが弱いです。それに尽きます。
Q、試合後にいろいろとお話しされたと思いますが、どのような内容でしたか。
A、もうやるしかないので、しっかりと受け止めて、ただここでずっと倒れたままではなくてしっかりと立ち上がって、また次に向かおうという話をしました。
Q、プロ9年目、J1リーグでは6年ということになりますが、今日は100試合という節目になりました。
A、まずは今日の試合がとても悔しい想いで一杯ですけれど、ここまでたくさんの方に支えられてきたということに感謝して、これからもしっかりと歩みを止めずに日々精進していきたいと思います。
Q、100試合は通過点だと思いますが、これからどうなっていきたいと考えていますか。
A、もっと上手くなりたいですし、多くのものを勝ちとりたいと思うので、自分を見つめ直してやっていけたらと思います。


