<天皇杯2回戦のプレビュー>
天皇杯初戦となる2回戦は、新鮮な顔ぶれがピッチに並びそうだ。6月14日の2025明治安田J1リーグ第20節セレッソ大阪戦から中3日で、今シーズンここまで出場機会の少なかった選手や、負傷明けの選手たちはこの一戦に向けて準備を進めてきた。松橋力蔵監督もコンディションやこれまでの出場時間など、「様々な要素を考えてメンバー選考をしたい」と言葉にする。6月に新加入した長倉幹樹選手や、長期離脱から復帰合流したバングーナガンデ佳史扶選手など〝新鮮力〟を送り出すことになるだろう。
14年ぶり2度目の優勝をめざし、まずは初戦で愛知県代表の中京大学を6-0で破った石川県代表のツエーゲン金沢と2回戦を戦う。すでに、6月11日に開催された2回戦の他会場でも、下位カテゴリーのクラブが上位を破る番狂わせがいくつも起こっている。
松橋監督は「初戦が本当に大事になると思うので、気を引き締めて臨みたい。過剰に意識することはないと思いますが、自分たちの力を信じて自分たちから相手に襲い掛かっていきたいと思います。計算高くやろうとすれば足元をすくわれる」と警戒を強める。一発勝負のトーナメント戦では、指揮官が常に言葉にしてきた「目の前の敵が最強の敵」という一戦必勝の構えが試される。
そして、松橋監督はゲームの焦点として「トランジション」をキーワードに挙げた。ミドルゾーンで構える金沢のブロックを突破し、ゴールネットを揺らすためには攻守の切り替えが重要になるという。ボールを奪った直後、金沢がブロックを構える前に相手ゴールに迫り、ボールを失った直後は即時奪回で相手の攻撃機会を奪いたいところだ。
一方で、中盤で構えられたとしても焦れずにボールをつなぐことも重要だと松橋監督は言う。
「自分たちがボールを保持しながら相手がどう対応してくるかはある程度想定できている。どこにスペースが空いて、誰がそこに入っていくのか。どういうタイミングでボールを受けにいくのか。それに対する周囲の関わり方や、次にどこを狙っていくのかも、良いボールの動かし方ができれば必ずズレが生じる。それが大事なポイントになる」

直近のC大阪戦で2得点したが、指揮官は「まだまだ得点が決められる場面はあった」と言い、こう続ける。
「それはずっと抱えている課題でもあります。ビッグチャンスはリーグでも多いというところはデータでも出ている。それを外している数も多い。その決定機をいかに決めるかが勝敗を左右する。それはリーグ、カップ戦問わず、求め続けなければいけない」
出場機会に飢えている選手たちが喫緊の課題である決定力不足を解消できれば、中3日で臨むJ1リーグ第21節ガンバ大阪戦に向けてチームは勢いづくはずだ。さらに、14年ぶりの戴冠となれば、『AFCチャンピオンズリーグ2』へとつながる。
アジアへの道を切り開く一戦は、味の素スタジアムで19:00にキックオフする。
[松橋力蔵監督 インタビュー]

Q、セレッソ大阪戦では最後の決めるべきところで、得点をとれたことで追いついた試合展開でした。
A、まだまだ、決められる場面はあったと思います。ここはずっと続いています。どこのクラブもチャンスを決め切れていないシーンはあると思いますが、我々はビッグチャンスという数は、リーグの中でも非常に多いほうというデータも出ています。ただ、外しているシーンも多いです。そのビッグチャンスを決めるかが勝敗を左右すると思うので、ここはリーグ、カップ戦にかかわらず求め続けないといけないと思います。
Q、2025 JリーグYBCルヴァンカップでは悔しい思いをしたなかで、新たなカップ戦が始まりますが、いかがでしょうか。
A、本当に初戦が一番大事になると思います。みんなで気を引き締めていきたいです。過剰に何かを意識する必要はないと思いますが、自分たちの力を信じて最初からフルパワーで試合に臨みたいです。自分たちで襲い掛かっていかなければいけないと思います。
Q、気温も高くなってきているなかで、中3日という短い期間での試合となります。
A、様々な要素を考慮して、メンバーを決めていきたいです。
Q、ツエーゲン金沢の印象はいかがでしょうか。
A、非常に手堅いチームの印象です。前線にはJ1リーグでも活躍していた選手もいます。決して侮れない相手だと思います。少しでも隙を見せるとやられるような個人の力を持っている選手もいます。そこをしっかりと警戒しながら、相手のウィークポイントを突いていけると良いなと思います。
Q、明日の試合ではボールを握る時間が長くなることも予想されます。
A、長くなるかは分かりませんが、相手はしっかりと守備を固めてくるチームなので、トランジションはすごく大きなキーワードになると思います。
[選手インタビュー]
<野澤零温選手>

Q、セレッソ大阪戦では同点ゴールのアシストをはじめ、良さを発揮できた試合だったと思います。
A、C大阪戦は引き分けに終わってしまいましたが、個人としては手応えを感じましたし、目に見える結果を積み上げることができました。コンディションも良いですし、自信もついてきています。チームとして勝ち切れなかったことは途中出場した僕らにも責任がありますし、勝利に導けなかった悔しさが残っています。だからこそ、出場した試合では目に見える結果で応えたいですし、「零温が出たから勝ったよね」と言ってもらえるように頑張りたいです。そのような信頼や成長を得られるように、次の試合からひたむきに取り組みたいです。
Q、スタメン出場したルヴァンカップの湘南ベルマーレ戦では試合後に反省の弁を口にしていました。そのような経験を踏まえて、どのような意識で臨みたいですか。
A、湘南戦ではスタメンで出場しながら、勝利に貢献できませんでした。プレーのなかで良い感触もありましたが、結果は敗退。今回の天皇杯も一発勝負の大会として、勝利へのこだわりがより求められます。前線の選手として、数字と結果を意識して、ファン・サポーターのみなさんの期待に応えたいです。
Q、ここまでのリーグ戦で出場時間が少なかった選手たちにも出場のチャンスが巡ってくる可能性も高いと思います。
A、中断明けからチームとして戦術的な変更も多少ありましたが、ベースのところは変わっていません。誰が出場したとしても、チームとしても個人としても、やることと求められていることを試合で表現するだけです。選手それぞれの武器をうまく活かして、相手どうこうではなく、自分たちのやるべきことに集中して、貪欲に勝ちを狙っていきたいです。
Q、リーグ戦と大会形式は違いますが、この試合の勝利がチームと個人、それぞれにポジティブに働くと思います。
A、個人として結果を残せば、リーグ戦での出場機会も増えてくると思いますし、チームとしてはこの試合の勝利が良い軌道に乗せてくれると感じています。間違いなく大事な試合です。一発勝負の難しさ、独特な雰囲気はもちろんありますが、チームとして矢印を揃えて、戦いたいと思います。
<エヴェルトン ガウディーノ選手>

Q、前節、セレッソ大阪戦では久しぶりの出場となりました。良かったところと課題を教えてください。
A、個人的には短い時間でしたが、良い動きもできていましたし、シュートを打てるシーンなどチャンスも何度かありました。それを決め切りたかったです。チーム全体で言えばシステムが変わり、かなり良い形のチャンスが何度もありました。失点しているので修正点もありますが、システムが変わったことで、良いシーンが生まれていたと思います。
Q、2トップの一角として試合に出場しました。これまで以上にゴールに近いポジションでのプレーはいかがでしたか。
A、出場したポジションでは、すぐ近くにもう一人のフォワードがいました。バイタルエリアで常に近いポジションでプレーできていました。なので、自分のパスやドリブルでチャンスを作るシーンもあれば、パスを出してもらってチャンスを作ってもらうシーンもありました。逆に2トップの一角でも、サイドミッドフィルダーでもどちらのポジションでもやりづらさはありません。
Q、明日は天皇杯です。リーグ戦での出場に向けたアピールの場にもなると思います。
A、どの試合でも私たちは全力で試合に臨みます。どんな時でも、どんな試合でも出場するために全力を尽くしています。次の試合も、チームが勝利するためだけにプレーをします。そして、ファン・サポーターと一緒に喜びを分かち合えるようにしたいです。


