韓国で開催された東アジアE-1サッカー選手権決勝大会2025のSAMURAI BLUE(日本代表)に、FC東京から選出された俵積田晃太。中国戦ではスタメン起用に応え、得意のドリブルで相手を翻弄するなど、来年6月のワールドカップ出場に向けて、自身の持ち味をアピールした今大会について、韓国で現地取材した青山知雄氏が戦いを総括する。
韓国の地で得たのは、着実な手応えとほろ苦さだった。
子どもの頃からの夢だった日本代表デビューを果たした6月のFIFAワールドカップ26アジア最終予選に続き、東アジアE-1サッカー選手権2025決勝大会(E-1)も森保ジャパンに継続招集。前回はオーストラリアとのアウェイゲームにスタメン出場して初の代表キャップを刻み、続くインドネシア戦では途中起用され、アジア最終予選の初招集組では唯一となる連続出場を記録した。 “Jリーグ選抜”と言える編成で臨むことになった今回の東アジアE-1では、代表経験者として主力としての活躍が期待されていた。
日本代表の一員となったことで以前よりも意識が強まったのは、何よりチームの成績にこだわる部分だろう。国を背負って戦うという重責を担ったことで、東京でも代表でも今まで以上に結果への欲が強くなった。

俵積田自身も大会開幕に際して「個人的には違いを見せなきゃいけないと思っていますが、普段どおりの意識で、自分のところからチャンスをどんどん作っていきたい」とコメント。今大会のトレーニング初日には「また代表のユニフォームを着ることができてうれしい。今回は大会なので日本代表として優勝したい」と意気込んだ。
7月6日に韓国・水原で集合した代表チームは、2日間のトレーニングを挟んでホンコン・チャイナと対戦。大会初戦の左ウイングバックにはFIFAワールドカップ カタールの本大会メンバーだった相馬勇紀(FC町田ゼルビア)が起用され、ゲームキャプテンも託された。
その相馬が初戦で躍動する。縦横無尽にドリブルを仕掛け、縦への突破やカットインからのシュートとスルーパス、さらには大きなサイドチェンジとセットプレーからの正確なキックも披露。守っては果敢なプレスと球際の強さを見せ、2アシストを含む3ゴールに関与する活躍を見せた。同じポジションのライバルが見せたプレーは、俵積田にとって刺激的なものだった。
結果的にベンチから戦況を見守り続けることになった俵積田は、「いろいろなプレーを見ることができて、自分にないものを持っているし、経験も含めて学べるものは学んでいきたい」と気持ち新たにした。
そして中国との2戦目、俵積田が3度目の代表キャップを記録する。今回も左ウイングバックで起用され、左ストッパーに入った長友佑都と縦関係を構築。俵積田は「自分の仕掛けだけじゃなく、チームとしていろいろ工夫していきたい」と意気込んでいたが、5バックで守りを固める相手を崩すことができず、「前半はなかなかボールが入らなくて、自分のところで特長を生かせなかった」と漏らす。
それでも前半28分には左サイドで1対1を仕掛けて敵陣深くまで侵入し、細谷真大(柏レイソル)の決定的なヘディングを演出。同40分にはタッチライン際で猛然とプレスバックし、フィジカルの強さを見せながら巧みに身体を入れてボールをカットするなど、攻守で随所に良さを出していく。
ハーフタイムに修正を施したチームは後半、左右どちらからもバランスよく攻撃を展開できるようになり、俵積田の持ち味が引き出されていく。

彼にとってこの試合最大のハイライトは、後半19分の突破だろう。リズミカルなステップから縦へ仕掛け、そのままドリブルのコースを変えて中央へカットイン。鮮やかに敵陣を切り裂く突破から右サイドへパスを出し、望月ヘンリー海輝(町田)の追加点を呼び込んだ。
「後半になって監督やスタッフからの声もあって、自分からもコミュニケーションをとったりしてボールがくるようになった。(前半のプレスバックで奪ったシーンは)森保監督から『まず目の前の相手に負けないように』とずっと言われていたので、そういうプレーが自然と出せるようになってきた。後半は自分の特長がすごく活きた試合だと思うし、ドリブルからヘンリーくんの得点にもつながったのも良かった。ドリブルでえぐったりするシーンも何回かあったので、前半から良さを出せるようにコミュニケーションと連携を深めていけたらと思います」
過緊張だった6月のオーストラリア戦から大きく表情を変えた青年は、国際舞台でも自分のドリブル突破に少しずつ手応えを強くしているように感じられた。「ボールさえ受けられれば」というコメントを強調し、実際に見どころも作っていたのは事実だ。「自分の得意なプレーをやっていくだけでも相手は嫌がる。少しずつ自信もついてきたし、試合に出たらどんどん積極的に仕掛けていきたい」とも話していた。惜しくも直接的ではなかったが、こだわっていたゴールと勝利に関与することもできた。
しかし、優勝を懸けた韓国代表との第3戦では再び相馬がスタメン出場。結局、最後まで俵積田に出番が回ってくることはなく、タイトルを懸けて緊迫した雰囲気に包まれたアウェイの日韓戦でピッチに立つことは叶わなかった。

少しずつ手応えを感じながら、重要な試合で起用されなかった現実と“ほろ苦さ”を味わった。彼自身も日本代表での立ち位置は、「まだまだ」と話しており、「守備の部分、フィニッシュやラストパスの精度に課題がある」と振り返る。
他者が持ち得ない確固たる魅力は間違いなくある。ポイントはそれをいかに高いレベルでコンスタントに表現できるようになるかだろう。個人としてのレベルアップに取り組みながら、ピッチ内外でのコミュニケーションを深めることで、その武器はより強大なものになる。頭を整理し、見えるものを増やし、言語化しながら情報をインプットし、プレーで的確にアウトプットしていく。そうして再現性にこだわることが、より大きな成長につながるはずだ。
求められるのは意識と継続。日本を代表して過ごした6月からの濃密な時間が、彼の未来にどんなプラスをもたらすのか。日常から高みをめざす21歳のドリブラーが、ここから青赤で見せる変化と進化を楽しみにしていきたい。
(文中敬称略)
Text by 青山知雄
Photos by 新井賢一


