<前節・鹿島アントラーズ戦のレビュー>
立ち上がりから立て続けにビッグチャンスを作り、マルセロ ヒアン選手のスピードとパワーを活かして相手ゴールに迫っていく東京。ここはゴールを決めることができなかったが、キム スンギュ選手のファインセーブにも助けられながら主導権を握って戦い続け、相手陣内でプレーする時間を長くしていく。
右サイドバックに入った長友佑都選手も積極的な攻撃参加でチャンスメイク。前半25分にはオーバーラップからのピンポイントクロスで長倉幹樹選手の決定機を演出した。

攻守に素早い反応を見せ、出足の良さで上回りながら前半はゴールネットを揺らせず。勝負は後半へと持ち越された。
だが、後半開始早々に左サイドバックの室屋成選手が負傷交代。アグレッシブなプレーでチームをけん引してきた背番号2が抜けたことで少し流れを失ってしまうと、後半36分にスローインから左サイドを崩され、低空のクロスボールをピンポイントで合わされて失点。1点のビハインドを背負うことになってしまう。
結局、終盤の猛攻も実らず0-1で敗戦。約5か月前のアウェイゲームで決定力不足に泣いた反省を糧に臨んだゲームだったが、またもチャンスを決め切れない展開に陥り、勝負どころで勝点3を持っていかれる結果となってしまった。
<今節のプレビュー>
同じ轍を踏んではならない。
チャンスを作りながら決定力を欠き、アウェイと似たような展開で敗れた鹿島アントラーズ戦。内容と結果がつながらない悔しさはしっかりと胸に刻んできたはずだったが、それでも結果を変えることはできなかった。本当に強いチームになっていくためには、この壁を全員で乗り越えていくしかない。
思えば約5か月前。アウェイで鹿島に敗れた翌週、味の素スタジアムで湘南ベルマーレを迎え撃ち、鹿島戦からの悪い流れを断ち切ることができずにチャンスを逃してスコアレスドローに終わった。湘南とは5月に対戦したJリーグYBCルヴァンカップ 1stラウンド3回戦でもチャンスを決め切れずに敗れている。そういった意味でも今節の内容と結果が注目されるところだ。
松橋力蔵監督は前節鹿島戦の内容に手応えを感じつつ、結果という現実もしっかりと直視する。「今シーズン、ああいった展開でポイントを落としているゲームが、いくつもある。内容的にも非常に良いゲームだったとは思いますが、やはり結果が出ていない。勝点3になりうる場所で、しっかりと相手を上回っていかなければ」と警鐘を鳴らす。

勝負のキワは、攻守ともにやはりゴール前になる。指揮官が続ける。
「まさにゴール前ですよね。そこで本当に何ができるか。攻撃ではゴールネットを揺らせるか、相手の脅威になるようなことができるかだと思います。僕はもっと思い切り(足を)振ってほしいですし、もっと(キックを)しっかりボールにミートさせてほしい。守備においても、どれだけ打たせないか、寄せられるかとか、粘り強く守れるか。“魂込めて”じゃないですけど、やっぱりそういう部分も大事だと思います」
怖さと気迫──。そこで相手を上回り、勝利を引き寄せる。チームとして進んでいる方向に間違いがないことは内容に表れつつある。であれば、その正しさをあらためて結果で証明していくしかない。
対戦相手の湘南は現在17位。リーグ戦9戦未勝利と苦しい戦いが続いている。夏の移籍ウインドーで福田、畑、鈴木(淳)の3選手が海外移籍し、サンフレッチェ広島から松本、浦和レッズから二田、アルビレックス新潟から太田の各選手を補強。また、ゴールキーパーの上福元選手が負傷で長期離脱したことを受け、横浜F・マリノスからポープ ウィリアム選手を獲得するなど、今シーズン2度の対戦とは大きく状況が異なる。東京としてはしっかりと勝負どころを見極めてゴールを、そして勝利を仕留めたいところだ。
ただ、東京も内容が改善してきたとはいえ、リーグ戦では15位。決して油断ならない順位にほかならない。長倉幹樹選手は「明日は“6ポイントゲーム”になると思うので、しっかり勝ち切らなければいけない。中央を固めてくる相手を崩すために、チーム全体で連動した攻撃を見せたい」と話す。

湘南戦当日に32歳の誕生日を迎える橋本拳人選手も、この試合の重要性を説く。鹿島に敗れた直後には「点がとれなければ、もっとチャンスを作るしかない」と前を向いていたが、1週間のトレーニングを経て「しっかりと決定機で決められるように意識してトレーニングができた。それをしっかり出せると思う。僕たちは前回対戦した時よりクオリティもチーム力も上がっているので、違いを見せられるはず。相手に一瞬のスキも見せずに90分間戦いたいし、逆に相手のスキを突くような攻撃をしていきたい。形にこだわらず、しっかりチャンスを仕留めることが大事だと思うし、そろそろ自分もゴールを取りたい」と勝負のポイントを語りつつ、自らのバースデーゴールにも意欲を見せた。
チームとして、個人としての持ち味を発揮し、勝負どころで決める、防ぐことの重要性。そして絶対に勝ち切ろうという覚悟。まさにサッカーの基本的な部分ではあるが、結果を突き詰めていけばいくほど、原則に回帰するものでもある。ここまで味わってきた悔しさを結果に結びつけ、悪い流れを引きずらずに気迫の勝利を手にすることで、積み上げてきた自信を確信に変えていく契機の試合としたい。
[松橋力蔵監督 インタビュー]

Q、前節の鹿島アントラーズ戦では初めて、長倉幹樹選手とマルセロ ヒアン選手がスタメンでツートップを組みました。
A、それぞれの良さが出ていて、とても良かったと思います。欲を言えばヒアン選手が良いタイミングで背後に抜けたところをしっかりと使ってあげることができれば、チャンスが増えたと思いますし、そうすることで、長倉選手がさらに活きてくると思っています。そこがもう少しはっきりしてくると、相手はさらに守りづらくなると思います。
Q、今シーズン、湘南ベルマーレとは2試合戦っていますが、勝利がありません。あらためて、湘南の印象はいかがでしょうか。
A、非常にしっかりとしたスタイルを持っていて、湘南に対する印象に大きな変化はありません。選手の移籍などもありましたが、精度をしっかりと保てている部分があると思います。我々も(湘南と)2試合戦って、内容的にも非常に良いゲームをしたと思っていますが、やはり結果が出ていません。勝点3になり得る局面でしっかりと相手を上回り、決め切りたいです。
Q、湘南戦に向けて、どういったところを積み上げてきましたか。
A、もちろん相手に対しての対策もそうですが、自分たちがこだわらなくてはいけないところなど、鹿島戦のような試合展開で勝点を落としているゲームが、これまでに10数試合あります。今週はゴールに向かう、作りの部分を積み上げました。「勝点3はここに落ちているのではないか」と思うところにポイントを絞り、トレーニングで上積みを行いました。
Q、その勝点3が落ちている場所とはどこでしょうか。
A、それは“ゴール前”です。そこで本当に何ができるのか。ゴールネットを揺らせるのか、相手の脅威になれるのか。まずはそこだと思います。僕はもっと思いっきり足を振ってほしいと思っていますし、もっとしっかりとボールをミートさせてほしいです。ミートし切れない場面や、当て切れない場面が多くあり、非常にもったいない。多くのゲームを見ていますが、思い切りの良いプレーは、ゴールを生み出すうえで一つの大事な要素です。勝点3を奪うための本質になると思いますが、“際”になってくる部分については、もっと力の使い方を考えなくてはいけません。ゴール前で一番重要なことは、テクニックではないと思います。テクニックに偏ってしまうと、ゴールは難しくなってしまいます。最後は強引にいってでも、ボールが少しでもラインを越えてくれればゴールですし、そこに対する魂はとても大事です。
サッカーのスタイルがテクニカルでロジカルであっても、最後のところもそうなってしまうと後手を踏むことが大いにあります。理想は、最後までそこができて、常にゴールキーパーと2対1の場面を作り出せれば良いと思います。1対1は決定機ではないと思っています。その2対1の場面を毎回作るのは簡単ではないので、強引に打ち抜くことが重要と考えています。
[選手インタビュー]
<仲川輝人選手>

Q、今シーズンは湘南ベルマーレと二度対戦していますが、どちらも勝ち切れない試合になりました。
A、湘南ベルマーレとのアウェイゲームはいつも難しい試合展開になるので、まずは失点しないことが重要だと思います。前節の鹿島アントラーズ戦もそうでしたが、決めなければいけないシーンでチャンスを逃すと、あのような結果になってしまいます。それは、第4節の鹿島戦もそうでしたし、第5節の湘南戦も多くの決定機を逃してしまった試合でした。まずは、1点をしっかりと仕留め切れるか、どれだけ集中力高く決め切れるか。“気持ち”だと思います。ゴール前でのチャンス一つひとつを大切に、気持ちを込めて戦いたいです。
Q、松橋監督も「ゴール前での強引さが重要」と話していましたが、ゴール前で打ち切ることが重要になりますか。
A、シュートを打たなければ何も起こりません。足を振ることで、相手に当たってこぼれ球が飛んでくるかもしれないですし、コースが変わってゴールに吸い込まれることもあります。とにかくチャンスを逃さないように集中したいです。直近の試合では、攻撃時に相手のボックス内に多くの人数が入っていけていますが、ペナルティエリア外からのシュートが少ない感触です。得点への意欲を全員で高めていきたいです。チャンスの数は増えてきています。決定機を外したとしても、決して下を向かず、次のチャンスで仕留めるんだと切り替えることが重要だと思います。
Q、反対にその意欲は、シュートブロックやボールサイドに寄せるスピードなど、守備面にも当てはまると思います。
A、鹿島戦は相手より“質”の部分で上回ることができませんでした。“質”と“タイミング”という視点で、攻撃はこだわりたいです。守備面では、相手に簡単にクロスを上げさせない寄せのスピードや、ゴール前ではポジショニングや相手のプレーを予測する動き出しなど、スピード感が重要になると思います。
<キム スンギュ選手>

Q、失点が続いてしまっていますが、どのような上積みを行ってきましたか。
A、いつもどおり、相手のストロングポイントをしっかりと分析しながら試合に臨んでいます。ディフェンスの選手たちとコミュニケーションをとり、改善点を共有しながら毎試合臨んでいます。前節の鹿島アントラーズ戦の失点シーンの映像もしっかりと見直しました。ゴールキーパーとディフェンスラインの間のスペースを突かれて失点してしまいました。鹿島戦の失点シーンは後半35分ぐらいでした。体力的にきつい時間帯ということもあり、集中力も少し落ちてしまっていたと思います。ボールが外に出た瞬間に集中が一瞬切れたことが失点の原因の一つです。ゴールキーパーとして、味方の選手が相手より早くポジションにつくことができるような声掛けをしていきたいです。
Q、キム スンギュ選手からの長短のパスが、チームの攻撃に良い流れをもたらしていますが、どのようなことを意識してプレーしていますか。
A、相手のプレッシングの矢印の向きや、どのタイミングでくるかを特に意識しています。相手選手がゴールキーパーに対して一人でくるのか、二人でくるのか。細かい部分も試合前にしっかりと映像を見て準備しています。試合中にも選手交代があれば、プレッシングにくる人数や方向も変わるので、相手選手をしっかりと見て判断しています。一緒に戦っている選手は全員テクニックもあり、少し無理をしたパスでもマイボールにしてくれます。味方のおかげで、自信を持ってプレーすることができています。
Q、湘南ベルマーレ戦では、無失点で勝利することで勢いもより増すと思います。試合に向けて意気込みをお願いします。
A、すべての試合において無失点で勝たなければいけないと思っています。これまでの結果を変えることはできません。まずは目の前の試合を無失点で勝利したいです。そのためにも、これまでもやってきましたが、チーム全体としてもしっかりとコミュニケーションをとり、相手のストロングポイントを抑えていきたいと思います。


