<マッチレビュー>
意地を見せなければならない一戦。直近の公式戦で6勝1敗と上り調子にある東京が、ホームで2位の鹿島アントラーズを迎え撃った。3月に行われたアウェイゲームでは数多くのチャンスを作りながら決定機を逃し続けて敗戦。その後の苦しい時期を過ごす契機になってしまっただけに、ここで勝負強さを見せて実力を証明し、さらに浮上していくきっかけとしたいところだ。
東京は水曜日に行われた天皇杯ラウンド16から中3日となることもあり、スターティングメンバーを7名変更。ゴールキーパーはキム スンギュ選手、最終ラインは右から長友佑都、アレクサンダー ショルツ、岡哲平、室屋成の各選手で4バックを編成。ボランチは高宇洋選手、橋本拳人選手が並び、アタッカーは右に佐藤恵允、左に俵積田晃太の両選手を配置。マルセロ ヒアン、長倉幹樹の両選手が2トップに入った。また、アカデミー出身のルーキー、山口太陽選手が初のベンチ入りメンバーに名を連ね、エヴェルトン ガウディーノ選手は6月25日に行われた明治安田J1リーグ第25節の横浜F・マリノス戦以来となるメンバー入りを果たした。
対する鹿島アントラーズはかつて東京に在籍した小川、荒木の両選手がスタメン出場し、田川選手がベンチに。試合前のメンバー紹介では3選手に対してスタジアムから大きな拍手が送られた。
1stHALF—攻守に集中した前半。試合は動かず後半へ
『FIREWORKS NIGHT supported by Paidy』の花火と光の演出に迎えられた青赤イレブンが、いきなり鹿島ゴールに襲いかかる。
開始2分、カウンターに抜け出したヒアン選手が縦へ持ち運んでシュート。これは相手ディフェンダーに当たって右ポストを叩く。さらに同4分には室屋選手の左クロスをヒアン選手が胸トラップからペナルティエリア内で強烈に左足を振ったが、これも相手ゴールキーパーの鋭い反応に阻まれてゴールネットを揺らすことができない。

その後もアグレッシブなプレーで主導権を握って試合を進める東京。前半15分には小川選手の左クロスからレオ セアラ選手に中央で合わされるが、至近距離からのヘディングシュートをキム スンギュ選手が抜群の反応をみせると、同18分にも強烈なロングシュートを横っ飛びで弾き出すなど、守備陣もしっかりとチームを盛り立てていく。
お互いにチャンスを作り合い、緊張感ある時間が続くなか、次に大きなチャンスを作ったのは東京だった。前半25分、右サイドを抜け出した長友選手が二人にマークされながらニアサイドへピンポイントクロス。これを長倉選手が右足のインサイドで合わせたが、またしても相手ゴールキーパーの好反応に阻まれてしまう。

サイドから中央から厚みのある攻撃を展開する東京。前半39分には俵積田選手の折り返しから長倉、佐藤の両選手がゴール前に突っ込むが、これもわずかに合わない。
前半はピッチの11人が集中したプレーを見せ、球際の戦いや予測の早さ、攻守の切り替えで相手を上回りながら2分間のアディショナルタイムでも試合を動かすことはできず。お互いに譲らない好ゲームの行方は、後半に持ち越されることになった。
2ndHALF—反撃に及ぶも前回対戦のリベンジ果たせず
5か月前のアウェイゲームで得た教訓を胸に、チャンスをしっかりと決めていきたい東京。ハーフタイムの選手交代はなく後半に臨んだ。対する鹿島は前半途中に4-4-2から4-2-3-1にシステム変更していたが、後半開始から2選手を入れ替えてテコ入れを図り、再び4-4-2に戻して勝負に出てきた。
攻勢に出たい東京だったが、後半開始早々にアクシデントが襲う。左サイドでパスを出した室屋選手が足を傷めて座り込み、後半8分にバングーナガンデ佳史扶選手との交代を余儀なくされてしまう。
お互いに攻め手をうかがう展開から東京がヒアン選手のスピードを活かしてチャンスを生み出す。後半14分、右サイドからつないだボールを佐藤選手が素早いターンからスルーパス。ここにヒアン選手が抜け出し、ドリブルで持ち上がって右足で狙ったが、ここも相手ゴールキーパーのセーブでゴールには至らない。さらに同21分、俵積田選手のシュートが相手に当たったこぼれ球を佐藤選手がダイレクトのハーフボレーで狙ったが、わずかにゴール右に外れてしまう。
大粒の雨が降りしきるなかでも熱く応援を続ける青赤ファミリーの期待に応えたい後半33分、松橋力蔵監督が動く。ヒアン選手、俵積田選手に代えて仲川輝人選手、野澤零温選手を投入。前線にフレッシュなアタッカーを送り出し、局面の打開を託した。すると直後の同34分、長友選手の右クロスがクリアされてファーサイドへ流れたこぼれ球の落ち際を野澤選手がダイレクトシュート。いきなり積極的なアタックを見せていく。
だが、チャンスを決め切れない展開が、アウェイゲームと同様にまたも難しい状況を招いてしまう。後半36分、一瞬のスキを突かれて自陣左サイドを破られると、グラウンダーのクロスからニアで田川選手にピンポイントで合わされて失点。1点のビハインドを背負った状態で試合終盤に突入する。
最後の交代カードは後半44分、佐藤、橋本の両選手に代えてエヴェルトン、東慶悟の両選手がピッチへ。
6分間と表示された後半アディショナルタイム、激しい雨に打たれながらゴール裏のボルテージはさらに上がっていく。「今日は負けられない日だ」という大声援に後押しされてカウンターで、セットプレーで、1点を追う青赤イレブンが鹿島ゴールに襲いかかる。
しかし、反撃及ばず。気持ちのこもった戦いを見せながら、雨中の激戦は惜しくも0-1で敗れる結果となってしまった。
MATCH DETAILS
<FC東京>
STARTING Ⅺ
GK キム スンギュ
DF 室屋成(後半8分:バングーナガンデ佳史扶)/長友佑都/アレクサンダー ショルツ/岡哲平
MF 高宇洋/佐藤恵允(後半44分:エヴェルトン ガウディーノ)/橋本拳人(後半44分:東慶悟)/俵積田晃太(後半33分:野澤零温)
FW マルセロ ヒアン(後半33分:仲川輝人)/長倉幹樹
SUBS
GK 小林将天
DF エンリケ トレヴィザン
MF 小泉慶
FW 山口太陽
MANAGER
松橋力蔵
GOAL
―
<鹿島アントラーズ>
STARTING Ⅺ
GK 早川友基
DF 小池龍太/植田直通/キム テヒョン/小川諒也
MF 舩橋佑(後半0分:知念慶)/三竿健斗(後半34分:溝口修平)/荒木遼太郎(後半0分:松村優太)/チャヴリッチ(後半16分:田川亨介)
FW レオ セアラ(後半30分:樋口雄太)/鈴木優磨
SUBS
GK 梶川裕嗣
DF 津久井佳祐/千田海人
MF 柴崎岳
MANAGER
鬼木達
GOAL
後半36分:田川亨介
[松橋力蔵監督 インタビュー]

Q、本日の試合の総括をお願いします。
A、本当に素晴らしい強さを発揮した鹿島アントラーズの前に屈してしまったことが非常に悔しいです。内容がどうこうというのではなく、結果で納得せざるをえないと。まだまだ積み上げていかなければいけないこと。染み込ませていかなければいけないこと。小さなことの積み重ね。そういうものがもう少し出てこないと、こういうチームには勝てないでしょうし、上にもいくことは難しいと思います。今日は、こういう天候のなかでも本当に多くのファン・サポーターの方に集まっていただいたにもかかわらず、勝利を届けることができなかったことは、非常に今は悔しいです。
Q、結果は悔しいと思うのですが、内容は非常に良かったと思います。そのあたりの評価はいかがでしょうか。
A、内容については、攻守において様々なものにしっかり対応したなかで、チャンスメイクであったりはできていたのかなと思います。ただ、守備のところでのファーストフェーズは、ある程度みんな危険だなというものは感じとることができますし、もちろん大事なことなんですが、セカンドフェーズ、サードフェーズというような、セカンドボールを相手に拾われたり、もしくは不用意に自分たちでボールを失ったり、その後のアクションへの危機感というか、ここが本当に危ないという瞬間を感じとる感度というものは、残念ながら高くなかったのかなと。もちろん高い時間帯もありましたが、やられ方としてはそう言わざるを得ないという部分です。
そういうものが出てしまえば、どんなに良いゲームをしようが、どんなに良い展開のゲームであろうが、おそらく勝てるであろうと思われるような内容のゲームであろうが、あのような失点をしてしまえば、なかなか良い評価にはつながらない。それくらいの気持ちでやっていかないと、ここだけは認めるということではなくて、勝点3をとれなかった理由というのは攻守においてあると思います。そこをしっかりと整えていかなくては、その内容もしっかりと詰めていかなければいけないなと思っています。
Q、選手交代のタイミングが後手になったように見えましたが、そのあたりの狙いを教えてください。
A、交代については、まだ足が止まっているように見えなかった部分もあったので、引っ張れるところまでは引っ張って、最後にまとめて交代をすることによってパワーを上げようという狙いがありつつも、徐々に疲労の見える選手であったり、雨の影響もあったので、そうした状況での交代になったことが後手のように見えた部分はあったのかもしれません。我々としては、まとめて交代することで終盤に向けて圧倒していくという狙いはありつつも、残念ながらそこも今日は出せなかった。あの時間帯で、ボールを下げることが優先されてしまったり、チャレンジが少ない。一番危険なところでボールを受けるということはパフォーマンスとして発揮できなかったと思っています。
Q、内容が良くて結果が出なかった試合後に、選手たちにはどのような声掛けをしたのでしょうか。
A、今ここでお話ししていることを選手にも話しました。ただ、このゲームに入る前から、最近は少し勝利を重ねる機会も多くなってきていて、そういう時だからこそ、何かやれるという気持ちを持つことも自信を持つことも大事だと思いますが、やはりそういうことで気持ちが大きくなり過ぎては良くないと伝えていました。そういう時には、足元をすくわれてしまう。やはり小さなことにしっかり目を向ける。当たり前のことをしっかり徹底してやるとか、それをどれぐらい繰り返せるかとか、そういうものにしっかり目を向けなければいけない。今までやっていたことを急にやらなくなるとか、それではダメで、人の成長と同じでどんどん大きくなり過ぎては良くない。僕はそう思っているので、そういうことを伝えながらこのゲームに臨んだのですが、それができないとこういうゲームになる。残念ながらその通りになってしまいました。でも、ここでもう一回みんなで目を覚まして、もう一回見つめ直していくしかない。やっていないわけではないですが、まだまだやらなくてはいけません。
それと、自分たちの感度をもっともっと上げていくための反復というものをしなければいけません。コーチたちとも話しながら、トレーニングのなかでそういうものをどれだけ反復させられるか、染み込ませることができるか。それは選手たちのなかの感性であったり、本質をくすぐらない限りは、なかなか彼らのパフォーマンスというもの、本来持っている能力を引き出せない部分もあるのかなと。彼らだけの責任ではなくて、日常のなかにそういうものがあると思うので、そこをもう一回見つめ直してやっていきたいと思います。
[選手インタビュー]
<高宇洋選手>
Q、試合の振り返りをお願いします。
A、前半から試合運びも良かったですし、チャンスも多くありましたが、決め切れなかったことで、相手に一瞬のスキを突かれてしまった非常に悔しい試合になってしまいました。
Q、チームとして良さを出せた反面、勝負どころで差がついた試合になってしまいました。
A、チャンスは前半から作れていましたし、そこを決め切ること、継続して相手ゴールを狙い続けること、リスク管理を含めて集中力を切らさないようにと、ピッチ内、ハーフタイムを含めてコミュニケーションはとっていました。本当に悔しいです。
Q、決定力という部分が結果に大きく影響した試合でした。
A、相手ゴールキーパーの早川選手も非常に素晴らしいキーパーで、ビッグチャンスも止められてしまいました。サイドからチャンスを多く生み出せていたなかで、クロスに対してうまく合わせられていれば、と思うシーンも多くありましたし、最後の“質”をチーム全体で求めていきたいです。
<佐藤恵允選手>

Q、前半、立ち上がりから決定的な場面を作れて、自分たちの流れで試合を進めました。ピッチ内での手応えはどうでしたか。
A、試合の入りだけでなく、試合を通して主導権を握れるシーンもあったし、相手に合わせずに自分たちのサッカーができていた分、決め切れずに逆に相手の少ないチャンスで決められてしまいました。勝負強さは相手の方が上回っていて、本当にそこの差かなと。力の差はまったくないと思いましたし、逆に自分たちの方が強いと自信を持って言えるし、だからこそ、これで負けてしまったことがものすごく悔しいです。
Q、前半30分過ぎくらいまでは、ほぼハーフコートゲームと言っていいくらい相手を押し込み続けました。自分たちで主導権を握れた要因をどう考えていますか。
A、一番の要因は、自分を含めて相手が嫌がるポジションをとって、相手のサイドバックを困らせる位置だったり、サイドの関係性が良くて相手を圧倒していました。逆に真ん中でも良い縦パスが入って、それに関わる動きもあって、サイドも中央も制圧できていました。だからこそ、相手を引き込んで相手の無理なクリアボールも回収できる、という良い循環になったのだと思います。
それを90分通してやっていれば、点もとれていたと思います。前半で良いシーンが多かったからこそ、決め切れないと少しずつ相手に流れが傾いていって、前回の鹿島戦ではありませんが、良いサッカーをしていても結局決められて負けてしまう。ゲームの内容としては、本当に東京の方が良いサッカーをしていたし、だからこそ悔しいです。
Q、佐藤恵允選手自身のパフォーマンスも調子の良さを感じました。
A、今日は、結構余裕を持ってプレーできたし、周りも見えていたし、サイドの関係性も良くできていました。ポジショニングだけでなく、もっと相手のゴールを脅かすプレー、相手が嫌がるプレーを出していければ攻撃の厚みが出るし、自分のプレーの幅も増えるし、得点という形に繋がっていくと思うので、あとはそこだけだと思います。
Q、今後も内容では上回っていても、紙一重で勝敗が変わるような試合があるかもしれません。その差は、何だと思いますか。
A、松橋監督も言っていましたが、そういう時こそ小さいところ、ディティールに目を向けて、局面局面で勝っていければ、自ずと試合にも勝てるしゴールも生まれます。そういうところを疎かにせずにやっていきたいです。良い守備も増えているし、継続していくだけだと思います。だんだんと良くなってきているし、すぐ切り替えて、次に向けて下を向かずにやっていくだけだと思っています。

