2023シーズン新加入選手インタビュー<br />
仲川輝人

INTERVIEW2022.12.09

2023シーズン新加入選手インタビュー
仲川輝人

2019シーズン、FC東京の初優勝を阻んだスピードスターが、トリコロールから青赤にユニフォームを変える。大切にしてきたのは「サッカーを楽しむこと」だという。印象的だったのは、初のリーグ制覇のその先を見据えていることだった。「もうひと花咲かせたい」という仲川輝人がFC東京で成し遂げたいこととは――。


Q、FC東京からオファーが届いたときの率直な思いを教えてください。
A、正直、こんなに熱いオファーをくれるとは思っていませんでした。将来や、数年後のプランを強化部の方から聞いて率直にその力になりたいと思いました。

Q、決め手となった口説き文句はありましたか。
A、口説き文句はありませんでしたけど、僕に対するプレーの評価や、FC東京のプレースタイルに僕が合うということを熱弁してくれました。そこが大きな要因だったと思います。

Q、8年間在籍したチームから移籍するにあたって、決断するための基準はありましたか。
A、30歳という区切りもありましたし、マリノスに残した功績も多少はあったと思います。新しいチャレンジという意味でも、また一つ自分に刺激を与えなければいけないという思いはありました。

Q、決断に際し、相談した方はいましたか。
A、僕が移籍するときは、チームメートには言わないようにしています。結局は自分が決めることなので。人に話して気持ちが変わるものではないと思うし、自分が考えで決めることだと思っているので、相談した相手はいませんでした。

Q、FC東京にはどんなイメージを持っていましたか。
A、対戦したときのイメージだと、球際の激しさで自分たちも負けているときがあった。そういった部分でアグレッシブなチームだと感じていました。攻撃は前線に強力な外国籍選手がいるので、その強みを生かしていると思います。また、ここ数年はパスサッカーで崩そうという試みもしていますし、今年試合をした味スタでも後ろからつないでピンチをつくられた場面もありました。マリノスとは若干違いますが、崩しの部分では似ているスタイルだったので、そこは印象に残っています。


Q、味の素スタジアムにはどのような印象がありますか。
A、僕は得点もしているので、いい印象があるスタジアムです。敵として、ですけど(苦笑)。次はFC東京の選手として、得点をできるというイメージは勝手に思っています。

Q、そういえば、今シーズンも得点していますよね。
A、そうなんですよ。それに、ファン・サポーターとの一体感もあるスタジアムだと思います。スタンドとピッチとの距離は少しあって、そこが日産スタジアムとも似ている形状だけど、声援はしっかりと選手にも届いていますし、ファン・サポーターの熱さも印象的です。

Q、さきほど話もありましたが、FC東京のサッカースタイルについては。
A、もっとできる、もっと崩せるという思いはあります。後ろからビルドアップして数的有位をつくって相手陣地に入ってどう崩していくか。もっともっとレベルを上げることはできると思っているので、最後の質の部分で少しでも力になれればと思っています。

Q、まさにファイナルサードは乗り越えなければいけない今の課題です。そこでどういう力になりたいと考えていますか。
A、ファイナルサードの崩しについては、コンビネーションの質も関わってきます。ただ、個人の質、突破する力も必要になります。そこに入って、ドリブルで突破していくことも必要だし、マリノスがやっている形、経験してきたモノをアルベル監督のサッカーにプラスしていきたいと考えています。僕の経験値をこのチームに味つけできれば、もっと点を取れると思います。崩しの起点になったり、どういった形ができるのかも今後話合いながらやっていきたいと思います。

Q、最適なポジションはどこになると思いますか。
A、ずっと右サイドでプレーしてきましたが、昨シーズンからは左でもプレーしているので徐々に左の感覚もつかめてきています。左右どちらもできる選手になることも必要ですし、ウイングはやっぱりやりたいと思います。

Q、東京のファン・サポーターにとっては、初優勝の前に立ちはだかった2019シーズンのイメージがかなり強いと思います。得点王、MVPも獲得した、あのシーズンはあらためてどんな一年でしたか。
A、僕自身としては、シーズンを通してほぼスタメンで出場できたシーズンでした。その中で結果もついてきました。最終節までFC東京と優勝を争って、どうなるか分からなかったので本当に面白かった。マリノスにとってもJリーグの優勝は久しぶりだったので、本当にいい一年でした。

Q、こういうことを聞くのも変ですが、何が勝敗を分けたと思いますか。
A、得点数の部分で、圧倒的優位な条件で最終節を迎えられました。守っているだけではダメだと思いましたし、その得点数の差が最後のキーになりました。だからこそ、来シーズンはもっと東京の得点数を上げていきたいと思います。最終局面で得点数が大事になるという部分を2019シーズンに思い知らされたので。得点を取っていて良かったなと感じたので、FC東京を、1点、2点ではなく、3点、4点とれるチームにしていかないといけない。そういうチームになれると思っているので、その力に自分がなりたいです。

Q、そうなれば楽しくなりそうですね。
A、僕の中では、楽しくサッカーをすることを大切にしています。楽しくサッカーをして得点できればもっと楽しくなります。それがサッカーの醍醐味だと思うし、そういうサッカー人生をこれまで歩んできたので、それをこのチームでもやっていきたいと思います。

Q、その後、けがに苦しみ、一昨シーズンと昨シーズンは悩み多きシーズンだったと思います。どういうことを考えながらボールを蹴っていたんですか。
A、ハムストリングの肉離れや筋肉系のけがが多く、なかなかフルスプリントができませんでした。また怪我をしてしまうんじゃないのかという不安から、すごく怪我を意識して全力でスプリントができなくなっていました。特に、一昨シーズンはそういう思いをしながらプレーしていたので、いいパフォーマンスを出すことができませんでした。ただ、昨シーズンあたりから不安も払拭できて、筋肉系の怪我はほぼなくなりました。今シーズンはシーズン通して試合に絡むこともできたので、来シーズンは全試合スタメンで出場する意気込みでいます。


Q、このタイミングで環境を変え、どんな未来を描いていきたいと考えていますか。
A、30歳ですし、もうベテランと呼ばれる年齢でもあります。やっぱり年下の若い選手たちにサッカーの楽しさだったり、攻撃の崩し方だったりを伝えていきたいと思っています。FC東京にはFC東京のスタイルがあると思うので、そのクオリティを上げてもっと崩せたり、得点を取れるチームにしていきたい。それが経験を積んだ選手がやっていくべきことだと思っています。僕は言葉で示すタイプじゃない。プレーで示していきたいタイプなので、練習への姿勢や、細かい意識や質のところで、一つひとつのパスの精度にもこだわっていきたいと思います。もちろんマリノスとはいろんな面でも違ったりすると思います。ただ、細かい気づきを若手や成長著しい選手にアドバイスできる立場でもあると思います。優勝を2回しているので、勝者のメンタリティや、試合の入り方、試合に臨む姿勢でも見せていきたいと思います。

Q、大きな期待を背負っているので、プレッシャーも感じるのでは。
A、僕の中では楽しみでしかありません。プレッシャーを感じると、あまり良くないという印象はあります。2019シーズンにMVPを取ったプレッシャーを、その後は感じないようにはしていましたが、体のどこかでは感じていたのだと思います。だからこそ、楽しむことを第一に考えてやっていきたいと思うので、プレッシャーはありません。

Q、もうひと花咲かせてほしいという意味でも、多くのファン・サポーターが日本代表への復帰を期待しています。そこに対しては、どんな思いがありますか。
A、代表に戻りたいという気持ちはもちろんあります。強化部の方からも、FC東京から多くの日本代表が生まれていくことがクラブの理念だと話していただいた。まだ僕も4年後のワールドカップをめざせる年齢だと思っているので、日本の代表として国民の代表としてあの舞台に立ちたい。それが今まで育ててくれた家族への恩返しになると思っています。夢の舞台でもあるし、僕は絶対にあきらめたくはない。日本代表選手を輩出することが、きっとこのチームを強くすることにもつながると思うので、そういう選手になっていきたいです。それが、僕自身がもうひと花咲かせるポイントだと思っています。

Q、ルーティンが多いことでも知られていますが、環境を変えても続けていきたいですか。
A、FC東京の選手とはほぼ面識がないので、それを許してくれるかどうかは分かりません(笑)。でも、それはやり続けていかないといけない僕のポリシーでもあるので、何を言われようともマイペースでやり続けようと思っています。

Q、マリノスへの思いはいろんな場所でも語ってきたと思います。あらためて8年在籍したチームと今後優勝争いをしていくことについて気持ちを聞かせてください。
A、8年間はすごく長いようで短かったというのが率直な感想です。その中で2度のリーグ優勝も経験できました。マリノスには大学4年生のときに大怪我をして、それでもオファーを出してくれた恩がありました。その恩返しは多少できたと思っています。その経験を今度はFC東京に還元していきたいし、それが僕に与えられた使命でもあります。マリノスには強い結束や、ファミリー感がありました。東京のことはまだ分からないこともあるけど、そういったファミリー感をここでもつくっていきたい。スタメンだけじゃなく、サブや、ベンチ外の選手も、みんなが一体感、ファミリー感を持つことが優勝への第一歩になります。そこがすごく大事なことだと、2度の優勝を経験して感じることができました。
一人でも欠けていてはダメだし、みんなが同じ目標を持って夢を共有していかないといけない。みんなが同じベクトルで、アルベル監督がめざすサッカーへの熱を合わせないといけません。このチームに一体感を生み出したいし、それが僕の仕事だと思っています。FC東京は、まだリーグ優勝をしたことがなく、リーグ優勝はこのクラブの大きな目標でもあります。それに優勝することでチームの雰囲気が変わったり、次への目標もさらに大きくなるはずです。まずはリーグ優勝をめざし、一体感を持ってやるべきことをやっていきたいです。

Q、それだけ優勝の味は格別でしたか。
A、今シーズンの優勝のほうが格別でした。今シーズンのマリノスはスタメンが固定されていなかったので、毎試合誰かが入れ替わっていました。違う選手が出ても結果を出してきたことが、優勝にもつながりました。来シーズンから僕はFC東京の選手です。誰が出てもアルベル監督のサッカーを表現することが大事だと思っています。

Q、強いマリノスを倒したいですか。
A、もちろんです。これからは敵なのでバチバチいきたいし、後ろからビルドアップしてマリノスから得点を取りたい。自分が少しでも成長したと、マリノスのサポーターからも思われたいですね。


Q、さきほどから話は出ていましたが、このクラブで達成したい目標を教えてください。
A、チームとしては初のリーグ優勝をめざしていきたいです。そのためには一体感を持つことがカギになりますし、その力になれればいい。個人としては、全試合フル出場…は交代枠も増えたので無理かもしれないけど、全試合スタメンでいくつもりでいます。そのためのコンディショニングや、メンテナンスも30歳になってもっと高めていきたいです。そこは目標にしていきたいですし、10得点10アシストは僕がここでやらなきゃいけないことだと思っています。それが、東京が優勝するための手助けにもなると思うので。

Q、背番号はどうなりそうですか。
A、いろんなことを考えているので、そこは楽しみにしていてください(笑)。

Q、それでは東京のファン・サポーターに名刺代わりの挨拶をお願いします。
A、横浜F・マリノスから移籍してきた仲川輝人です。FC東京を初優勝へと導くことを目標として、僕はその力に少しでもなりたいと思っています。得点、アシストだけではなく、守備でも貢献していきたいと考えています。チームの一体感を生み出すための雰囲気づくりも自分の仕事だと思っています。来シーズンからにはなりますが、ファン・サポーターとともに、このチームのファミリー感を前面に押し出していきたいです。味スタや国立での勝利を格別なものにしていきたいですし、みんなで優勝のためにチーム一丸となって頑張っていきましょう!

Text by 馬場康平(フリーライター)