アルベル監督×岩本輝雄氏 対談(2023年1月7日)

INTERVIEW2023.2.16

アルベル監督×岩本輝雄氏 対談(2023年1月7日)

2023年1月7日に開催された2023FC東京新体制発表会でのアルベル プッチ オルトネダ監督と岩本輝雄氏の対談、そして壇上だけでは時間が足りず、別室で続いた対談内容を掲載します。

新体制発表会での対談の様子を動画にてご覧になりたい方は本記事末尾のYouTubeも併せてご覧ください。

<新体制発表会>
岩本氏
今シーズンが始まりますが、新加入の外国人選手はいかがですか。スペイン人を加入させたいという気持ちはありますか。

アルベル監督
良い選手であることが重要であり、国籍は関係ありません。新加入のペロッチ選手には十分に期待したいですし、センターフォワードとしてより多くのゴールを決めてほしいというのが正直な気持ちです。得点力の部分で貢献してほしいと考えています。

岩本氏
センターフォワードの選手は、得点、アシスト、キープなどの役割がありますが、監督は守備のプレーも求めますか。

アルベル監督
まずはゴールハンターとしてゴールを決めることを期待します。次にゴールを決めることだけではなく、他の選手がゴールを決めるためのサポートする動きもして欲しいと考えています。そして三番目に、チームのファーストディフェンダーとして前線からの守備の貢献を求めています。

岩本氏
Jリーグやワールドカップなどを見ていると、前線からプレッシャーをかけるチームがあります。ワールドカップでは、日本はスペイン戦、ドイツ戦ではカウンターで、前線からのプレスがはまっていたのに対し、クロアチア戦では三笘選手も伊東選手も抑えられてしまいました。今後、日本がベスト8、ベスト4に入るためには、彼ら選手たちがワンランク上のレベルにいく必要があると森保監督はおっしゃっていました。どう思われますか。

アルベル監督
選手育成は、国全体として改善するべきだと思います。例えばルヴァンカップで23歳以下の選手を5人、6人起用しなければいけないルールがないと、アカデミーから昇格した若手選手にプレーの機会を与えるのは、難しいです。先ほど言ったような、若手選手を起用しなければいけないというルールがない中、若手選手を起用して負けた場合には監督が責任を取らなければなりません。昨シーズンの最初に、我々は新型コロナウイルスの感染に苦しめられました。ルヴァンカップには、より多くの若手選手を起用して育てたいという思いがあったのでコロナ感染の影響もあり、ルヴァンカップでは彼らを起用しました。若手選手というのはプレーする機会を与えないと成長できません。昨シーズンのリーグ戦第33節の名古屋グランパス戦では、まだ18歳の彼による幼いミスで負けたことがありましたが、それは彼が若かったので仕方のないことです。では何をしなければいけないか。モロッコ代表は多くの選手がヨーロッパの大きなクラブでスタメンとして活躍しています。もちろん日本代表にもスタメンで活躍している選手も複数いますが、多くはありません。やはり日本人選手をヨーロッパに送り込むのであれば、それはプレーをするためであって、ベンチを温めるためであってはいけません。どのレベルのリーグに行くのかでも変わってきます。だからこそ若手選手の育成は、国全体の方針が重要になってくると思います。

岩本氏
選手の育成というお話がありましたが、アルベル監督は育成年代での指導経験が豊富です。そこでお聞きしたいのですが、小学校高学年から中学校の時期は育成において大事な時期になると思いますが、何が一番大事だと思いますか。

アルベル監督
やはりレベルの高い大会が必要だと思います。

岩本氏
FCバルセロナのカンテラ(アカデミー組織の呼称)ではどうでしたか。

アルベル監督
重要なのは、ボールとともに勝負を競う、サッカーというスポーツを理解することです。勝ち続ければ成長するわけではなく、勝負にこだわることを重ねることで成長します。FCバルセロナのアカデミーはカタルーニャ州のリーグに所属しているので、ほとんどの試合に勝ちます。勝負にこだわる厳しい試合は少なくなるので、それでは選手の成長はストップしてしまいます。その解決策として、国際大会に多ければ年間10回以上出場し、ギリギリの戦いとなる試合経験を重ねます。例えば、日本の18歳の選手が、海外のチームと試合をする機会は少ないと思います。機会がない選手もいるでしょう。

岩本氏
先ほどアルベル監督から日本人選手は海外のビッグクラブに行った方が良いと話がありましたが、指導者も海外に行って経験を積んだ方がいいと思っています。または海外から日本に来ている外国人指導者から学ぶべきだと思います。

アルベル監督
私のように海外から来ている外国人監督は、日本にはないものを提供する義務があると思います。特別なものを提供できないのであれば、外国人監督が日本に来る意味はありません。私は4年間、FCバルセロナのアカデミーダイレクターを務めました。FCバルセロナのアカデミーは世界でナンバーワンだと思っています。今、日本で4シーズン目となりますが、若手の選手育成に関してほとんど質問されたことがありません。プライド、誇りを持ちすぎてしまい、それが強くなってしまうと、成長のブレーキになってしまいます。謙虚な気持ちこそが成長のエネルギーに変わると信じています。

岩本氏
そうした指導者育成のコメントを聞いていると、8年後、アルベル監督が日本代表の監督になっているのではないかと思います。

アルベル監督
まずは東京で良い仕事をしなければなりません。日本が好きなので、もちろん興味はありますが、私がポジションに適任であるかどうかを、自分の力で証明しなければなりません。新潟で2年間、良い指導をしてきたという自負があります。今シーズンは東京で2年目の仕事をしっかりしたいと思います。

岩本氏
今シーズンの東京に期待しています。2年目ですし、なにより選手がやり方を分かっていることが大きい。先ほど森重選手と話した時、「すごく面白いし、やりやすいから、今シーズン良いのではないか」と言っていましたよ。

アルベル監督
東京という都市は世界でも5本の指に入る規模の大きな都市です。そのような偉大な都市を背負っている東京が、首都の名前を背負って、相手に怯えて守備を固めてカウンターアタックでプレーするということは名前に見合っているでしょうか。カウンターアタックでプレーした方がより多くの試合に勝てるかもしれません。もちろん試合は勝ち負けがあり、当然東京が負けることもあるでしょう。ですが、積極的に攻め続け、最終的に試合に負けても多くのサポーターは満足してくれるでしょう。勝つか負けるかという話をしているのではありません。東京という名を背負っているからには、勝つために攻めなければいけない、その宿命があります。たとえば日本代表が、スペインやドイツと戦うのであれば、守備を固めてカウンターアタックはできると思いますが、勝つか負けるかの話ではなく、自分達のアイデンティティとしてどの方法を選ぶかということです。

岩本氏
今シーズン、僕の予想は3位にしておきます。

アルベル監督
私にとって真の成功とは、これから4年後、5年後、それ以降も常に東京が上位3チームの座を争い続ける力を持つことです。常にレベルの高い試合をしていれば、時にはタイトルを獲れるでしょうし、常にタイトル争いをする上位3チームに居名を連ね続けるチームに成長することができると思います。その時に私がいないとしても、結果的に私が東京にいた期間が成功であったと言えます。

岩本氏
新潟で日本サッカーに素晴らしいものを与えてくれたように、それを続けて東京で成功を収めることを期待しています。

アルベル監督
まずは私がしっかりと自分の価値を証明しなければいけません。

岩本氏
楽しみにしています。ありがとうございました。

アルベル監督
ありがとうございました。


【対談の動画】
新体制発表会(11分40秒〜