<前節・柏戦のレビュー>
今シーズン最初のアウェイゲームは、昨シーズンに6-3と大勝した良いイメージが残る三協フロンテア柏スタジアム。前線からマンツーマンでプレスをかけてくる柏レイソルを相手に、パスワークでも崩してカウンターでも確実に仕留める、“新しい東京”の姿を存分に見せた一戦だった。
ただし、毎シーズンのようにうまくいくとは限らない。まずは最大瞬間風速10メートルという予報もあったほどの強風に苦しめられた。風下に立った前半は相手のロングボール攻勢に押し込まれ、セカンドボールを奪い合う球際の強度の争いを強いられた。
なかなかボールを握れないもどかしい展開のなか、前半25分にスルーパスを通されて背後を突かれ、細谷真大選手に先制点を奪われた。
昨シーズンの東京は、先制された後のリカバリーに苦しんだ。相手がやや守備に比重を置いてくると攻めあぐねることが多かった。ところが、今シーズンは成長の証を示した。
前半36分、右サイドのスローインの場面で、相手の一瞬の隙を突いて中村帆高選手のスローに反応した塚川孝輝選手が相手のディフェンスラインの背後に抜け出す。ゴール付近まで持ち出してクロスボールを入れると、ニアサイドで渡邊凌磨選手が潰れ、左サイドからゴール前に入ってきたアダイウトン選手が詰めて前半のうちに同点に追いついた。
これで勢いづいた東京は、風上に立った後半に一気に柏を攻め立てた。前線からのプレスで相手に自由にボールを蹴らせず、セカンドボールをことごとく回収して二次攻撃三次攻撃を繰り出していく。ところが、チャンスをしっかりとモノにした前半とは一転して、ゴール前に侵入してシュートを打つ場面は多いもののゴールを捉えることができない。
試合を通して合計18本というシュートを放ったもののスコアは1-1。後半の終盤に退場者が出るなど想定外の事態もあるなか、先々の戦いに向けて明るい材料を多く残して勝点1を持ち帰った。
<プレビュー>
アウェイ連戦の2試合目、京都サンガF.C.との一戦は、相手の成績を理由にして楽観視できるほど簡単な試合にはならないはずだ。
京都は開幕後2試合で2敗かつ無得点という状況だ。ただし、曺貴裁監督によってよくトレーニングされたチームは、タレントを擁する鹿島アントラーズや名古屋グランパスを相手に、アグレッシブかつ組織的な戦い方で一歩も引かないサッカーを展開している。
攻撃の要だったピーター ウタカ選手と守備の砦だったゴールキーパーの上福元直人選手が移籍してチームの軸は変容したが、前線にはJリーグでの実績が十分なパトリック選手が加入した。
昨シーズンの対戦は2戦2勝という成績だが、シーズン序盤にアウェイゲームで対戦した際には、新しいスタイルの構築段階で安定した戦いができず、決定的なチャンスを作り切れないなかで、試合終盤に木本恭生選手のロングフィードを起点としたカウンターで1点をもぎとって勝利した。
アグレッシブな戦いを展開してくる相手に対して、強度と速さというベーシックな部分でしっかりと上回り、その上でボールを保持して相手を自陣に貼り付かせたい。柏戦では後半に何度となく得たチャンスを生かし切れずに引き分けに終わった。その反省を生かし、ゴールを積み重ねて、今節こそは3ポイントを東京に持ち帰る。
[アルベル監督インタビュー]
Q、京都戦に向けて相手の印象を教えてください。
A、京都は、現在の監督が就任して3シーズン目になります。J2で新潟を率いていた際も対戦したことがありますが、インテンシティの高いプレーが彼らの特長だと思います。ボールも大切にしますが、選手の入れ替わりもあり、少し慎重にプレーしているように見受けられます。昨シーズンの終盤まで、J1残留の戦いに巻き込まれていました。降格争いに絡んでいましたが、昨シーズンどのチームにおいても、京都と戦うことは難しかったと思いますし、攻守において強度の高いプレーは、相手チームにとってやりづらいチームだと思います。
Q、開幕後は負傷離脱者が出てきています。どのように考えていますか。
A、怪我はしていないですが、松木選手も不在です。安部選手は怪我をしています。それ以外の選手は違和感や打撲のため、短期間で戦線復帰できるような、小さな怪我です。そこは心配していません。中村選手は、柏戦の退場で京都戦に出場できませんが、シーズンは長いですし、怪我人や出場停止の選手が出ます。それにより、他の選手にチャンスが回るのは通常の流れだと思います。怪我人を抱えていないチームもあるかもしれません。そういうチームでさえも、いずれは怪我人を抱えることになると思います。監督の仕事のひとつは、選手の怪我や出場停止で不在となった際に、どのようにチームをマネジメントしてチームのパフォーマンスを高く維持するかだと思います。
Q、柏戦の前に、ボールを保持する攻撃に加えて相手の背後を突く攻撃も武器として持っていたいと言っていました。まさにそこが京都に対して有効になってくるのではないでしょうか。
A、前にもお伝えしましたが、東京はボールを大切に保持し、すべての武器をうまく使った攻撃をしたい意図があります。日本でも海外でも、試合に勝った際にそのチームの戦術はすばらしく、負けたチームの戦術は評価されないのが常だと思います。柏の明確な枠内シュートは1、2本でした。我々は、明確なチャンスを9回作っています。前半、向かい風の難しい状況にありながらも、長いボールを背後に送るプレーを活かし、チャンスを作りました。私が何を言いたいかというと、常に試合結果が評価に大きな影響を与えるということです。例えば、相手チームにたくさんチャンスを作られ、疲弊している状態のチームが1回、2回のチャンスを決めて試合に勝ったとします。その場合にも、守備を固めて難しい試合に勝利したと書かれ、勝ったチームが評価されるということが常だと思います。試合展開は、誰にも試合前にはわからないものです。そういう意味でも、試合が始まり選手一人ひとりが試合の流れをうまく認知し、都度相手が嫌がるプレーは何かと判断して欲しいと思います。例えば、京都がマンマーク気味に前からプレスをかけてくるのであれば、我々の前線には1対1の状況、数的同位が生まれます。それに対して長いボールを使って背後を突くということがやはり効果的なオプションだと思います。いつも言っていますが、私はこのチームがボールを支配しながら試合の主役としてプレーして欲しいと願っています。そのためには、試合の流れ、相手チームの状況を踏まえたうえで適切な判断をして攻撃し、プレーすることが重要になります。決して相手チームの戦い方に左右されて我々のプレーが決まるということではありません。試合結果によって戦術や監督の評価が変わるのはどの世界でも同じですよね。
Q、浦和戦と柏戦で東選手のアンカー横スペースをどう守るかが大事になると思いますが、修正はできましたか。
A、チームはアンカーの横スペースを守る準備をしっかりとしなければいけません。浦和は、ウィングが中に入り東選手の脇をつこうとしていました。柏は長いボールを前線に入れて、セカンドボールを回収して東慶悟選手の脇を狙っていました。選手たちは経験を積んでいます。相手チームがどんな戦い方をしてきても、我々のワンボランチの脇のスペースを狙ってくるのであれば、うまく適応して守備をしなければいけません。そのための準備は整っています。中盤の3人は、試合の状況に応じてポジションを修正することが必要になると思います。一方で試合の展開で予想されるのが、自分たちが守備をしっかり固めていきたいのであれば、守備的なボランチを2人並べて、ダブルボランチ気味に守備をするのも一つの選択肢です。中盤の選手たちには賢く守備をして欲しいと思っています。脇のスペースをうまく対応しなければいけないのは、ワンボランチを採用する以上は常に存在する課題だと思います。
Q、京都戦で勝つためには何が必要ですか。
A、ホームやアウェイに関係なく、勝点3を獲りに行こうと心がけています。試合展開によっては、アウェイでの勝点1は価値のある勝点1だと思います。一方で柏戦に関しては勝利に値するプレーができていたと思います。勝点3を取れなくて悔しかったです。ホームアウェイに関係なく、東京として常に勝点3のためにピッチに立ち続けたいです。
[選手インタビュー]
<長友佑都選手>
Q、京都戦に向けて意気込みを聞かせてください。
A、先発、途中出場に関わらず試合に対する意気込みはいつも変わらないですし、常に良い準備を続けています。チームの勝利に貢献するために自分のやるべきことをするだけです。
Q、勝つために必要になってくることは何ですか。
A、勝つためには情熱や球際、攻守の切り替え、基本的なことをしっかりやることです。試合の中で相手がどう出てくるか、色々な駆け引きがある中で、しっかり自分たちのサッカーを出して相手を上回れるようにしたいです。それができれば勝利はついてくると思います。
Q、チームは良い状態にあるように見えますが、長友選手や森重選手の存在が大きいと思います。
A、僕らの存在よりも、若手選手が意識を持って取り組めていることが重要だと思います。引っ張れる存在がいたとしても、一人ひとりが意識を持たなければ、今のような良いチームはできあがらないです。選手一人ひとりの意識が変わり、高い意識でできていることが今のチーム状態が良い証だと思います。
Q、リーグ優勝に対する思いを聞かせてください。
A、サッカー人生のなかで、リーグ優勝に対する強い意志や気持ちと覚悟があります。そこに対する情熱も持ってプレーしています。
<アダイウトン選手>
Q、前節は今シーズン初ゴールを決めましたが、コンディションはいかがですか。
A、シーズンが始まり、早いタイミングで得点を決めることができて非常に嬉しく思います。コンディションも良いですが、これから練習を積んでさらに良い状態に持っていけるようにしたいです。ゴールでチームに貢献していければと思います。
Q、得点シーンですが、ボールが流れてくると思いましたか。
A、キャンプからゴール前に入っていく練習を重ねてきました。柏戦でもサイドからのクロスに対して前線の選手がゴール前に迫力を持って入れていました。得点のシーンでは、良いところにボールが転がってきて決めることができ良かったです。
Q、シーズが開幕して2試合を戦いましたが、チームの手応えはいかがでしょうか。課題も教えてください。
A、試合に出場している選手だけではなく、どの選手も普段の練習からいつでも試合に出られる準備やチームの勝利に貢献するための準備ができています。誰が出場しても良い状況が作れていると思います。2試合とも内容を含めて良かったと思いますが、前節はチャンスを作り出すことはできたなかで得点に結びつけることができず、勝点3を積み上げることができませんでした。京都戦では引き続き自分たちのサッカーを表現しながら、得点のチャンスがあればしっかり決めていきたいです。
Q、次節の相手である京都にはどのような印象がありますか。
A、相手はまだ勝点を積むことができていないですが、クオリティを含めて良いチームだと感じています。相手よりもまずは自分たちのプレーを出すこと、良い結果を残すことが重要だと思います。
Q、前回対戦した際には得点を決めていて良い印象があるのではないですか。
A、前回の対戦では良い結果を残すことができました。今回も全力を尽くして戦いたいですし、得点でチームに貢献したいです。
Q、監督からどんなことを求められていますか。アダイウトン選手のドリブルも重要になってくると思います。
A、監督からは自分が持っている能力を最大限に発揮するように言われています。自分の特徴でもあるプレーをどんどん出していきたいです。選手たちは、監督から信頼を得られている部分もあると思いますし、自信を持ってプレーできていると思います。凄くチームとして良い状態です。
Q、最後にファン・サポーターに向けて意気込みをお願いします。
A、アウェイでの試合になりますが、みなさんの応援が力になります。現地に来ていただけると嬉しいです。シーズンは始まったばかりですが、最後にはみんなで喜べるように全力を尽くして頑張りたいです。