<マッチレビュー>
リーグ優勝への本気度が問われるゲームとなる。前節の柏レイソル戦は、アウェイで先制を許しながらすぐに追いつき、退場者を出しながらも勝点1を手にした。しかし、選手たちから出てきた言葉は悔しさのほうが多かった。
「優勝をめざすならホームでもアウェイでも関係なく勝っていかないといけない」
そこから1週間後の一戦は、サンガスタジアム by KYOCERAに乗り込んでのアウェイゲーム。ケガ人や出場停止の選手が多く、メンバーのやり繰りは簡単ではないが、この試合でキャプテン森重真人選手とチーム最年長の長友佑都選手がスタメン出場し、チーム一丸となって戦いに臨んだ。
1st HALF-スウォビィク選手の好守もあり無失点で折り返す
我慢の時間が多い45分となった。開始早々の前半5分、左サイドで失ったところから一気にゴール前まで運ばれ、ゴールネットを揺らされる。ここはVARのサポートにより、山田選手がバングーナガンデ佳史扶選手からボールを奪ったプレーがファウルと判定され、ゴールは取り消し。しかし、いきなり京都の圧力を受ける立ち上がりとなった。
その後は、少しずつ東京がリズムをつかんでいきゴールに迫る場面を作る。前半15分には左サイドで押し込み、インサイドハーフの小泉慶選手がポケットに侵入。その二次攻撃からディエゴ オリヴェイラ選手がシュートまで持ち込むもゴールキーパーの正面に収まった。
前半はこの良い流れが続かない。京都の素早い切り替えとプレッシャーの前にボールをつないで前進できない時間が続く。供給源である森重選手がボールを持っても受け手を見つけられず、ヤクブ スウォビィク選手に戻す回数が多くなる。そこからセカンドボールを回収され、守備の時間が長くなっていった。
前半23分にパトリックに打たれた決定的なシュートはスウォビィク選手のビッグセーブでしのぐ。その他のシーンでも、ゴール前まで持ち込まれながらも最後は決定的なプレーまで持ち込ませず、劣勢を強いられながらも無失点で折り返した。
2nd HALF-好機を生かせず失点を重ねて今季初黒星
後半、最初にチャンスを作ったのは東京だった。後半2分には左サイドを抜け出した佳史扶選手の折り返しをアダイウトン選手がフリーで合わせる。しかし、右足のシュートは浮いてしまい枠を外れた。
さらに後半17分には途中出場の俵積田晃太選手が右サイドで仕掛ける。グラウンダーのクロスに対し、大外で待っていたアダイウトン選手が今度は左足で合わせるもミートできなかった。
後半24分にはペロッチ選手を入れ、ディエゴ選手との2トップに並びを変更。前線に厚みを出して先制点を奪いに行った。
しかし、後半30分、先手を許す。セットプレーの二次攻撃から最後は川﨑選手にヘディングシュートを叩き込まれた。
失点直後、東京はプロ契約後初のリーグ戦出場となる寺山翼選手とリーグ戦初出場となる荒井悠汰選手を投入。追いつくために攻撃的なカードを切っていく。
ところが、思うようなチャンスを作れず、逆に後半44分にペナルティキックを献上し、パトリック選手に決められて2失点目。最後まで京都ゴールまで迫ったがそのままタイムアップを迎え、今季初黒星を喫してアウェイ2連戦は勝利を挙げられなかった。次節、開幕戦以来となるホームゲームで横浜FCと戦う。
MATCH DETAILS
<FC東京>
STARTING Ⅺ
GKヤクブ スウォビィク
DF長友佑都(後半33分:寺山翼)/木本恭生/森重真人/バングーナガンデ佳史扶
MF小泉慶/東慶悟/塚川孝輝(後半33分:荒井悠汰)
FW仲川輝人(後半12分:俵積田晃太)/ディエゴ オリヴェイラ/アダイウトン(後半24分:ペロッチ)
SUBS
GK野澤大志ブランドン
DF徳元悠平/エンリケ トレヴィザン
GOAL
―
<京都サンガF.C.>
STARTING Ⅺ
GK若原智哉
DF麻田将吾/井上黎生人/白井康介
MF川﨑颯太/福岡慎平(後半37分:イヨハ理ヘンリー)/武田将平(後半19分:金子大毅)/山田楓喜(後半19分:谷内田哲平)/佐藤 響
FWパトリック/木下康介(後半45+2分:山﨑凌吾)
SUBS
GKヴァルネル ハーン
MF荒木大吾
FW木村勇大
GOAL
後半30分:川﨑 颯太/後半45+1分:パトリック
[アルベル監督記者会見コメント]
Q、試合を振り返ってください。
A、試合前から、インテンシティが高く、戦う場面が多くなる試合になることは予想していました。だからこそ、最初はドタバタする時間があるにせよ、その後は落ち着いてゲームをコントロールする。それがゲームプランでした。前半20分、25分ほどは試合をコントロールすることが難しかったですが、その後は、うまく落ち着くことができていました。ただ、京都のアグレッシブでインテンシティの高い守備に苦しむことが多く、コントロールできた時間もありましたが、それを継続することができませんでした。我々としても京都としても、お互いに試合をコントロールしている時間は長くなかったと思います。その場合、先制点を取ったチームが勝点3をもぎ取るような試合展開になります。アダイウトン選手にも先制点を取るチャンスはありましたが、京都の方がそのチャンスを生かして勝点3を取りました。いずれにせよ、もっと試合をコントロールすることを求める展開でした。
中央でのプレーもなかなかできず、ライン間でのプレーもいつもどおりできなかった。そうやってプレーできた時はチャンスを作れていたと思いますが、継続的にできていたかと言うと決してそうではなかったです。先制点を決めたチームが勝つ、不安定な試合展開だったと思います。
Q、失点はセットプレーとペナルティキックからで、戦術とはあまり関係ない部分の失点でした。今後に向けて、どのように修正していきますか。
A、開幕からの2試合と今日の試合の大きな差は、最初の2試合は我々が試合をコントロールする時間が長くて多くのチャンスを作っていたが、今日は決してそうではなかったということです。我々が期待する形で多くのチャンスを作ることができませんでした。浦和戦はお互いにプレーしようとする意識が強かったです。そして、柏、京都はアグレッシブな守備が特長だと思います。柏戦では冷静に落ち着いてプレーをして複数のチャンスを作れていましたが、今日はそれが課題として残ります。
現在のチームは、中央やライン間でのプレーするのが得意な選手が複数離脱しています。そしてU-20日本代表に行っている松木選手も不在です。特定のポジションに不在の選手が重なっていますが、それをチームとしてカバーしてプレーしないといけません。今日の試合が難しくなるのは予想していました。そこで幅を取るスピードのあるウイングを起用した攻撃を狙っていました。やはり、アグレッシブな守備をしてくる京都には中央でのプレーが難しいと予想していたので、幅を取るウイングの起用が狙いでした。アグレッシブな守備をうまくいなす形でボールを持てた時は落ち着いてプレーし、相手陣地で押し込んで攻撃し続けたい意図があったわけですが、それが狙いどおりにできなかった試合展開でした。ある特定のスタイルをめざすと言えど、それに適した選手が複数人戦線離脱していると難しい展開になることは仕方ないと思います。そのなかで両ウイングのスピードを生かしたプレーを望みましたが、なかなか期待どおりに発展させることができず、試合も落ち着いた展開ではなかったので、先制点が大きな比重をもつ展開だったと思います。
質問に対する返答としては、セットプレーからの失点がチームの抱える大きな問題とは思っていません。プロとしてデビューした複数の若手選手が大胆にプレーしたことはとても称賛に値すると思います。
[選手インタビュー]
<仲川輝人選手>
Q、試合を振り返ってください。
A、相手の勢いに前半から押されてしまい、セカンドボールの回収の部分でほぼ京都に負けてしまっていました。そこで先手を取ることができなかったことは改善しなければいけない部分だと思います。それは改善できる部分だし、そこを拾えるようになればもっと良い展開になると思います。
Q、まだ欲しい場所やタイミングでボールをもらえていないのではないか、という印象がありました。
A、前半は相手陣内でボールを保持することがほとんでできなかった印象があります。ボールを動かしながら攻めていく展開ができなかったので、攻撃に厚みを増やしていかなければいけないと思います。縦に早く攻撃する部分もちろん良いですが、もっとボールを大事に失わないように運び、敵陣でもっとボールを回したいです。そこは選手の距離感の部分で、コンパクトさがなかったので、セカンドボールを奪うことができなかったり、ボールを回せないというところに繋がったのかなと思います。自分たちがボールを持っている時には、良い攻撃もあったと思うし、それをどれだけ相手陣内で回しながら攻撃できるかが大事になってくると思います。
Q、強度の高い相手にもボールを回して攻めるためには何が重要になってくると思いますか。
A、怖がらず後ろから繋ぐところは繋がなければいけないと思います。そうでなければチームとしても選手としても成長できないと思うし、今日はチーム内で後ろから繋ぐのか、ロングボールで攻めるのかというところに意識のズレがあったように感じるので、そこはもっと共通理解を深めて改善しなければいけないと思います。みんな技術は高いので、そこが良くなればやることが定まってくると思います。意識を揃えて、その時に最善の選択ができれば、もっと厚みのある攻撃や自分たちのポゼッション率を高めることに繋がると思います。こういう強度の高い相手には、そうしたことが大事だと思います。
<寺山翼選手>
Q、出場する時に何を意識していましたか。
A、真ん中でボールを持ち、試合を落ち着かせたいと思っていました。入る前に失点をしてしまっていたので、ボールを落ち着かせることもですが、得点を取ることを意識して試合に入りました。
Q、ボールを落ち着かせながら得点をするために、どのようなことを意識しましたか。
A、今日の試合を振り返って、ベンチで見ている時には、長いボールが多くセカンドボールも相手に拾われていたので自分たちのリズムが作れていないと思っていました。ボールを保持しながらより高い位置に進みゴールに近い位置で試合を進めることが重要だと思っていました。そのために、ボールを保持しつつも相手のサイドバックの裏を突き、背後を取るプレーなどが必要だと思いました。その結果、チームの距離感が良くなり、セカンドボールが拾えるようになると思っていました。
Q、荒井悠汰選手と同時に出場することになり、チームを活性させて勢いを与えることが求められていたと思います。ご自身のプレーを振り返っていかがでしょうか。
A、結果として負けてしまったのは残念です。自分が入ってから得点も取れていないので、悔しいです。あのような状況でも、自分の価値を示す必要があったと思うので、もっとボールに関わり、ゴールに向かう姿勢を見せていかなければいけないと思いました。
Q、ペナルティキックでの失点後にチームを鼓舞していましたが、どんな気持ちだったのでしょうか。
A、あそこで諦めてしまっていたら、試合が終わってしまうと思っていました。VARなどでアディショナルタイムも長くなることが最近は多かったので、絶対に取り返すことができると思っていました。そこで下を向くのではなく、前を向いて戦う姿勢を、ファン・サポーターの方はみたいと思っていたと思います。ファン・サポーターの方々は、僕たちが落ち込んでいるところを見に来ているのではないと思うので、最後まで戦い抜くことが重要だと思い、チーム全体に声をかけました。
Q、荒井選手、俵積田選手と一緒に3人で試合に絡む機会が多いですが、今後の課題はなんですか。
A、松木玖生選手や熊田直紀選手がU-20日本代表でいなくて、ケガ人もいるなかで、僕たち若手がアグレッシブにプレーし、ベテランの選手たちを上回る気持ちでやらないと、今日のようなシーンで何もすることができなくなってしまいます。ルヴァンカップもあるので自分たちの存在を示していきたいです。
Q、すぐに次の試合があります。
A、ルヴァンカップも大事な大会なので、まずは8日の試合に勝ってリーグ戦につなげたいと思います。
Q、試合終了時に、一番悔しがっていたと思うのですが、その時の感情を教えてください。
A、勝たなければいけない試合だったので、勝てなかったので悔しかったです。コーナーキックの時などチャンスの時には、ファン・サポーターの方が声を張り上げ応援してくれていたなかで、負けてしまった不甲斐なさを感じていました。
<荒井悠汰選手>
Q、リーグデビュー戦となりましたが、いかがですか。
A、与えられた時間で自分が点を取るという気持ちでピッチに入りました。
Q、監督からどのような指示がありましたか。
A、監督がコーチ陣とコミュニケーションをとっているタイミングで呼ばれたので、特に監督からの指示はありませんでした。急な出場でしたが、良い準備はしていたので最初から自分のプレーを出そうと思いました。
Q、自分のプレーは出せましたか。
A、まだまだ納得のいくプレーはできませんでした。与えられた時間で結果を残せる選手になりたいです。
Q、ベンチでは試合をどのような気持ちで見ていましたか。
A、自分たちのリズムに持っていけずに、いつも通りのプレーができていないと感じていました。後半はチームの流れも良くなり、自分が出場したので流れを変えたかったのですが、負けてしまったので、与えられた時間で結果を残したいです。
Q、惜しいシーンもあったと思います。
A、しっかりと振り抜けば相手に当たってチャンスになるかもしれないと思い、振り抜きました。
Q、前節からベンチ入りしていましたが、どのような気持ちでベンチに座っていましたか。
A、早く試合に出してくれと思っていました。
Q、ここから試合数や出場時間を延ばしていきたいと意気込んでいると思いますが、どのような準備を行っていきますか。
A、結果を残さなければ、次の試合でもベンチに入ることもできないと思います。すごい選手が多く選手層が厚いので、練習からも他の選手から学んで成長し、もっと試合で点を取りたいです。
Q、8日にはルヴァンカップもあり、アピールの場になると思います。
A、チームは2試合勝利がないので、8日の試合に勝利して次のリーグ戦に良い流れで向かえるようにしたいです。