<前節・鳥栖戦のレビュー>
8か月ぶりの戦線復帰は、中盤の選手に怪我人が相次いでいたチームにとって光明だった。
サガン鳥栖との一戦は、戦績でも明らかなように、東京にとっては鬼門だった。ホームゲームであれ、アウェイゲームであれ、直前の試合で内容も結果も良かったとしても、鳥栖との試合だけはどうしても“何か”が起きてしまう。
たとえ90分間、「いや、今日こそは…」と感じる展開であっても、油断ができない。
この一戦も、お互いに球際での強度が高く、お互いにボール保持を分け合うような五分五分のぶつかり合いの展開になった。ただし、前半から鳥栖のパスに乱れが目立ち、反撃を食らう前にマイボールが戻ってくる展開が多く、東京のほうがボールを持ちながら相手を押し込むシーンが目立つ。
後半に入ってもラッキーな形でボールが戻ってくることが多かったが、歩調が合ってしまったのか、東京もラストパスがズレてなかなか決定的なチャンスを作り出すことができない。とはいえ、J1リーグ初出場を果たした徳元悠平選手が相手の背後に飛び出すシーンを作るなど、ゴールをこじ開けられそうな雰囲気は漂っていた。
東京に攻撃のあと一手が出れば試合が決まりそうな展開ながら、時計は90分を過ぎ、アディショナルタイムも終了が見えた時。ヤクブ スウォビィク選手がつなごうとしたゴールキックが相手のフォワードにインターセプトされ、そのままゴールを割られてタイムアップ。またも“何か”が起きる幕切れとなった。
厳しい結果に直面したチームだったが、先々を見据えたポジティブな要素がまったくないわけでもなかった。徳元選手がJ1初とは思えないパフォーマンスで攻守に存在感を見せ、さらに後半27分には塚川孝輝選手に代わって青木拓矢選手が投入される。実に8か月ぶりとなる実戦復帰だった。
昨シーズンは、負傷離脱する7月まで不動のアンカーとして、アルベル東京の戦術的な根幹を支える存在だった。復帰まで時間を要したが、戻ってきたタイミングは、怪我人が多く中盤の構成を苦心している最中だった。
ボール保持の要となるアンカーに適職の男が戻り、ここからアルベルトーキョーの反撃がはじまる。
<試合プレビュー>
J1リーグ第6節はサガン鳥栖に0-1で敗れ、続くルヴァンカップグループステージ第3節もガンバ大阪に0-3と完敗。ガンバ大阪に敗れて公式戦2連敗となった直後、ディエゴ オリヴェイラ選手はロッカールームで「こんなクオリティになってしまう選手たちが集まっているわけじゃない」と、チームメートを鼓舞した。
もっとも、若手を中心に多くの選手がチャンスを与えられ、自身の存在をアピールしていることは序盤戦の収穫だろう。その中の一人、移籍1シーズン目の徳元悠平選手は鳥栖戦でJ1デビューを飾り、積極的なプレーでチームを活性化させた。徳元選手は「やってきたことはウソをつかないと示せたと思う。引き続き東京が勝つために良い準備をしていきたい」と言葉にしている。
今節はホームに帰り、湘南ベルマーレを迎え撃つ。湘南は前節、ガンバ大阪を相手に町野修斗選手が一人で4得点を挙げ快勝。リーグ最多13ゴールを挙げている攻撃力には警戒が必要だ。
ケガ人が続々と復帰しつつある今、勝利という結果こそがチームを勢いづける最高のエネルギーを生む。チーム一丸となって好調の湘南を抑え、流れを変える勝点3を獲りにいく。
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[アルベル監督インタビュー]
Q、渡邊凌磨選手、安部柊斗選手、中村帆高選手が練習に合流していました。彼らの現在の状態と、明日の試合には絡みそうですか。
A、ありがたいことに3人とも復帰し、合流しています。プレーできる状態ですが、それぞれ戦線離脱していた期間もありましたので、慎重に進めていきたいと思います。
Q、佳史扶選手が怪我で離脱したなか、中村選手の復帰は大きいのではないですか。
A、中村選手、佳史扶選手の両名が怪我でどちらも離れていたことは我々にとって大きな痛手でした。それに合わせて中盤の選手に怪我人が重なり、試合時においては中盤のポジションでボールを失うシーンも目立ち、ゲームをコントロールすることができずにいました。つまり全員が一緒に旅をする、というようなプレーができませんでした。もちろん、長友佑都選手、徳元悠平選手のそれぞれに特長がありますが、より攻撃的なプレーを発揮できるのは中村選手、佳史扶選手だと思っています。
中盤の位置でボールを失うことなく支配することができれば、両ウイング、両サイドバックの選手が、より攻撃に参加できるようになって厚みをもたらしてくれると思います。よって、両サイドからの攻撃回数も増えると思います。いまお伝えしたことは、今シーズン第2節ごろまでできていたとも思います。その後、怪我人が増えましたが、徐々に復帰しています。開幕当初の状態が戻ってくることに期待しています。
Q、先日のルヴァンカップ ガンバ大阪戦では東慶悟選手がメンバーから外れましたが、今節はアンカーの位置に入るかと思います。彼が入ることで、主体的にボールを回せるのではないでしょうか。
A、試合を通じてミスが目立ってしまったのは、中盤の位置でボールを失い、かつ支配できなかった点です。ですが、若い選手を多く起用したことは注目に値すると思います。ベストメンバーに近い形で臨んできたガンバ大阪に対し、若い選手たちの健闘は、評価に値すると思っています。0-3という結果で、私に対して批判の声が挙がることは、構わないですし、批判も受け止めて私は仕事を進めていかなければなりません。ガンバ大阪戦が終了した後、8名の若い選手がピッチに立っていました。それと同時に、クラブとして進めているスタイルの構築、ポジショナルプレーの成熟について、レベルアップを試みています。そのためには、中盤のクオリティが求められますし、必要不可欠です。もちろん、東選手は多くのものをもたらしてくれる一人です。
チームとしてさらに成長するためにはクオリティの高い選手が試合に絡んでくることが大切です。あらためて、佐藤龍之介選手には期待を寄せています。なぜならば、ボールが吸い付くプレーを表現できる選手だからです。彼のように特長を持った選手は、我々が必要としている選手の一人です。センターバックの選手も、もちろん守備面を重要視しますが、より攻撃的なプレーも求めています。そして、中盤の選手については、ボールを簡単に失うことは許されないポジションです。良いかたちで前線に配球できる選手を私は求めています。そのようなプロフィールを持った選手たちが試合に関わり、そして育つことで、クラブとしての成長につながると思っています。
Q、今節は直近の試合で好調な湘南ベルマーレです。
A、直近の試合で好調ぶりが伺えますが、開幕から良い結果が出ていなかった印象です。この短期間で良い状態になってきていると感じています。一方、我々はこの短期間で悪い流れに巻き込まれました。サガン鳥栖戦では不用意な形で失点をし、ルヴァンカップでは0-3でガンバ大阪に敗れました。もちろん、それがサッカーです。サッカーというのは1試合ごとに評価が変わりやすいスポーツです。仮に明日の湘南に敗れたら、降格争いに巻き込まれるのではないかと言われ、湘南に勝利すれば、AFCアジアチャンピオンズリーグにも出場できるのでは、と盛り上がることでしょう。ですが、リーグ戦は開幕したばかりで、第7節を迎える段階です。以上を踏まえても、湘南はボールを保持するプレースタイルの相手に対し、より強さを発揮する印象です。ミドルゾーンで守備を固め、ボールを奪ってから素早い攻撃を仕掛けてきます。昨シーズンから引き続き、彼らはその持ち味を発揮し、強みとしています。
Q、先制点が重要になると思います。
A、4-1で終わった前節の湘南ベルマーレ対ガンバ大阪の試合は、ガンバ大阪はミスから失点をし、そこから湘南が得点を重ねました。湘南がブロックを組み、良い位置でボールを奪い、時間を追うごとにチャンス生み出していました。それゆえに、先制点が試合の流れに大きく影響します。先制点は重要です。次の試合に限らず、すべての試合に通じると思います。例えばスペインでは、首位のチームが最下位のチームに敗れることは考えにくいですが、Jリーグでは違います。なぜならば、リーグ全体のレベルが拮抗しているからです。
Q、熊田選手の評価を教えてください。彼がさらに輝くために、チームとしてどのように活かしていきたいですか。
A、熊田選手はまだ若い選手です。彼がもっとチームに適応する必要があるとも思います。ですが彼は、他の日本人フォワードにはない特長を持った選手です。同じような特長をもった選手は南米などには多くいますが、日本には少ない印象です。ボックス内でのフィニッシャーとしての能力は高いですが、ゴールから離れた位置でのプレーについては、まだまだ成長段階です。チームへの貢献度もさらに求めていきたいです。ここからクラブとして、より押し込んだ位置でのプレー回数が増えていくのであれば、彼はクラブとして欠かすことのできないセンターフォワードになることでしょう。先ほども言いましたが、彼の最大の武器は、ボックス内で仕事ができることです。彼の成長とクラブの成長が同時進行し、彼の武器をより活かせる形になることを期待しています。ですが、地に足をつけて進まなければなりません。
[選手インタビュー]
<中村帆高選手>
Q、怪我をした時から復帰までの期間をどう過ごしてきましたか。
A、リーグ戦とルヴァンカップに出場していたので、少し身体もきついと感じていました。練習前後にケアを入れて調整した状態で臨んだ横浜FC戦で、スプリントした時に違和感が出てきました。悪くなる前にプレーをやめ、交代することができたことが軽傷で済んだことにつながり、結果的には良かったと思います。トレーナーやドクターが色々と頑張ってくれたので、早く復帰することができ、良い状態まで戻すことができました。治療に関わってくれたみなさんに感謝しています。
Q、同じく離脱していた安部選手と励まし合うことはありましたか。
A、リハビリの時間が一緒だったので、励まし合いながら取り組んでいました。
Q、調子が良いなかでの怪我でした。復帰を急ぐ気持ちもあったのではないですか。
A、調子も感覚も良くなってきたなかで、試合途中に怪我をして離脱したことが悔しかったです。モヤモヤするところがありました。ですが、逆に自分の気持ちが高まっている時こそ、もう一回地に足をつけること、自分の気持ちと身体を一致させないと怪我をするとあらためて感じました。離脱した3、4週間で、色々と自分の身体とも対話できましたし、より深く自分を知れた部分があります。気持ちと身体をうまく繋げていきたいと思います。
Q、今は万全の状態で湘南戦を迎えられそうですか。
A、今は問題なくできています。試合でどう影響が出るか分からないですが、あまり怪我のことは考えずに全力でプレーしたいです。
Q、ルヴァンカップのガンバ大阪戦では、サイドバックでボールを失う場面がありました。
A、サイドバックだけの問題ではないと思います。サイドバックに入ってくるパスの段階で相手にはめられているパターンがあります。サポートの選手や、フォワードがタイミング良く顔を出してくれないと厳しい場面があります。もちろんサイドバックが厳しい状況のなかで一枚相手を剥がすことやボールをキープして奪われないことを磨いていかなければいけないと思います。ですが、チームとして、もっと前線から守備に来られているのであれば、どこにボールを出せばはまらないか、どこにスペースが空いているのかを瞬時に判断することが必要になると思います。そこは、もっとサイドバックからも要求したいですし、チームとしては、もっと共通理解や判断スピードを高めていかなければいけないと感じています。ポゼッションするためのボール保持ではなく、いかに早く相手陣地に入りゴールまで完結できるかだと思います。そこを見失ってはいけないと思いますし、そこは自分も含めてチームとして履き違えてはいけないと感じています。
Q、横浜FC戦のパフォーマンスが高かったと思います。
A、得点シーンは、チームとしても個人としても一つ描いていた形でした。やっと得点に結びつくプレーができたことは、個人としての収穫でした。チームとしてはビルドアップで上手くいっていなかったですし、個人としてもボールを取られてしまうことが何回かありました。得点に絡んだプレーは良かったですが、他のプレーで良い印象はなかったです。
Q、ここで停滞するのか、再び上昇するのかで最終的な結果にも影響する大事な試合になると思います。
A、今まではリーグ全体で勝点の開きがなく、一回勝てば上位にも下位にも行く状態でした。ここから少しずつ勝点の差も開いてくると思います。そういう意味では、鳥栖戦で勝点1を取らなければいけなかったと思いますし、ここからは勝点を落としたら上位と差が開いていくので、死ぬ気で戦いたいと思います。
Q、湘南ベルマーレのイメージはいかがですか。
A、湘南はやることがはっきりしていると思います。攻守の形も徹底されているので、そのなかでどうやって自分たちのサッカーを表現するかが重要になると思います。真正面からいつも通り戦っていると上位のチームも負けたりしているので、そこは湘南の実力だと思います。相手の嫌なことを選択してプレーしていけるかが鍵になると思います。
Q、復帰をめざすなかで、自分の身体とはどう付き合っていましたか。
A、細かいことを挙げたらキリがないですが、怪我を未然に防ぐためには何が必要なのかをトレーナーと多く話し合いました。次に怪我をしないためのデータ収集もしながら3週間を過ごしました。
Q、試合に出場する可能性もあると思いますがいかがですか。
A、与えられた時間、全力でプレーします。
Q、怪我をして落ち込みがちかと思いましたが逆に燃えていますか。
A、自分でも驚いていますが、全く気持ちは落ちていないです。今シーズンは、自分が100%でプレーして、結果として外から何を言われたとしても良いと思っています。強気でいかないといけません。サッカーはメンタルスポーツでもあると思っています。今は、メンタルが良い状態だと思っています。
<徳元悠平選手>
Q、今シーズンから東京に加入し、4月1日のサガン鳥栖戦(J1リーグ第6節)でJ1リーグデビューを飾りました。ここまでの感触はいかがですか。
A、ポジション取りを考えながら動く東京のスタイルにとまどいもありましたが、焦らず地道に取り組んできました。ルヴァンカップ2試合とJ1リーグ鳥栖戦でプレーできて、自分の持ち味を出して戦えるという手ごたえをつかむことができました。
Q、新しいチームで順調に適応できているという感じですか。
A、そうですね。いつでも試合に出られる準備は練習からしていますし、メンバーから外れてしまった時も、メンバー外の選手たちを盛り上げるつもりでトレーニングができていたので、充実していました。
Q、キャンプの時は、ポジション取りが難しいと語っていました。東京で求められているプレーは、これまで経験したスタイルとは全く違うものですか。
A、サイドバックがボランチの位置を取るというのは、Jリーグでも取り組んでいるチームが少ないと思いますし、ファジアーノ岡山の時は3バックの左センターバックだったので、全く違うところからのスタートでした。でも、それはFC琉球時代に少しやっていたからこそ、今もできていると思います。本当に今はやりがいを感じていて、中で受けるのか、外で受けるのか、中から裏に抜け出すのか、という見極めを、ボールホルダーを見ながら選択しています。サイドハーフやセンターバック、ボランチと良い関係性が作れていると思います。
Q、サイドバックが一番ボールを触るサッカーだと思いますが、プレーをされていて楽しいのでは。
A、ボールが集まってくるので、楽しいです。ボールを持ってプレーすることで、ファン・サポーターのみなさんに見られていることが多くなると思います。やりがいを感じています。
Q、リーグ戦はここまで2勝2分2敗と成績が安定していませんが、どこに課題を感じていますか。
A、得点を決めるべき場面で決めないと苦しくなると強く感じています。現状はケガ人が多いという問題もありますが、ピッチに立てるメンバーが全力を尽くして結果を残さなければいけません。そういう意味では、自分にとってはチャンスだと思います。
Q、怪我人が出てしまい、ベストメンバーが組めない時にどこまで戦えるかは、まさにチーム力が問われます。
A、夏場、リーグ後半戦になると怪我人が増えてしまうケースはよくあると思いますが、東京はそれが前半戦で続出してしまいました。長いシーズンの中では絶対にみんなの力が必要になりますし、今は全員で踏ん張り、クラブとしてめざしている場所に辿り着くために頑張りたいと思います。
Q、どのようなプレー、特長をアピールしていきますか。
A、パス回しの逃げ道になるように、冷静なプレーを何シーン作れるかが僕自身のカギになると思います。ボランチの選手にしっかりと良い形でパスを送ることを心がけて、京都戦、鳥栖戦では数回表現できました。その回数を増やして、前線の選手が前向きのプレーができるようなボールの配給をしたいと思います。
Q、左サイドバックにはバングーナガンデ佳史扶選手、長友佑都選手というハイレベルな選手がいます。
A、質の高い選手とポジション争いができるこの状況を楽しんでいます。東京で結果を出せば日本代表に近づけることを実感していますし、自分が試合に出られない時でも、佳史扶選手や長友選手のプレーから学び続けようと思っています。
Q、今節の意気込みをお願いします。
A、まだリーグ戦のホームゲームに出場できていないので、味スタの熱いファン・サポーターの後押しを受けてプレーしたいという気持ちが強いです。ピッチに立ったら120パーセントの力で戦います。応援よろしくお願いします。