<前節・北海道コンサドーレ札幌戦のレビュー>
突き付けられたのは非常に厳しい結果だった。立ち上がりに札幌の勢いに飲まれて先制を許し、前半を0-3で折り返す。北の大地まで駆けつけてくれた多くのファン・サポーターを前に、諦めるわけにはいかない。ファイティングポーズで構えた腕を下げるわけにもいかない。
『どんな状況でも俺はあきらめない』
後半の頭からピッチに送り出された男の目は、そう語っていた。
後半のスタートから最大限の力でボールを追い、チーム全体の出力が上がらない中でも、前線からボールを追い、プレスバックして相手のボールホルダーを追い、マイボールになれば前線へと走った。
後半開始直後にも失点し、その差を4点へと広げられても、男の目は虎視眈々とゴールを狙うハンターのそれから変わらなかった。
そうして生まれたのが後半28分のゴールだった。守備に回る時間が多いなかで、アダイウトン選手が速攻を仕掛けると、長距離を走ってゴール前に顔を出し、クロスボールをプッシュして札幌ゴールを割る。
ここからチーム全体のギアが上がり、ハンターにも幾度となくチャンスが訪れたが、そのチャンスをモノにすることはできなかった。しかし、1点を返した後にボールを即座にセンターサークルに戻し、自陣に戻っても喜びも見せずに『まず次の1点だ』とギラついていたハンターは、この先の東京の反攻を託す存在だ。
<プレビュー>
第10節からの3連戦はホームでアルビレックス新潟に勝利した後、アウェイでアビスパ福岡と北海道コンサドーレ札幌に連敗。今シーズン、リーグ戦初の連敗を喫したチームの現状を、森重真人選手は「攻守において中途半端になっている」と表現した。特に5失点した札幌戦については「チームとして安定した力と結果を求めるのであれば、守備の修正が必要だと感じている」と語り、守備の改善を重要な課題として受け止めていることを強調した。
今節は川崎フロンターレを国立競技場に迎え、第41回を数える“多摩川クラシコ”を戦う。多摩川を挟んだライバルはシーズン序盤戦でケガ人が続出。苦しい試合が続いていたものの、ここにきて3連勝と調子を上げ、相手陣内でスムーズにパスをつなぐ場面も増えている。東京にとっては、課題だった守備面をどこまで修正できるかが問われる一戦になりそうだ。
リーグ戦での直接対決では東京の7連敗中。しかし、舞台は東京が勝率100パーセント(改修後)を誇る国立競技場だ。ここまでの流れを変える契機とするためにも、東京は勝利のみをめざして大一番に挑む。
[アルベル監督インタビュー]
Q、前節の北海道コンサドーレ札幌戦の振り返りと川崎フロンターレ戦に向けた意気込みをお願いします。
A、我々にとって札幌戦は痛い敗戦となってしまいました。あらためてチームとして自信を持ってプレーできるように今週のトレーニングでは促してきました。まずは自分自身に矢印を向け、成長段階にあるチームとして、目の前の試合で全力を出さなければ勝つことはできません。犯してしまったミスを上手くカバーするためには、戦う姿勢や勝利にこだわる姿勢が非常に重要となってきます。選手たちとはコミュニケーションをとり、良い準備がここまでできています。川崎が難しい対戦相手であることは十分理解していますし、成熟度の高いチームです。我々も自信を持って、今節に向けて準備を進めてきました。明日は素晴らしい試合になると思っています。
Q、東慶悟選手に求める役割を教えてください。
A、攻守に渡る、それぞれの局面のデュエルに集中して戦ってほしいと思います。
Q、今週、監督から特に強調して伝えたことはありますか。
A、あらためて自信を取り戻すことを強調しました。川崎は長きにわたって同じスタイルでプレーし、成熟度が高い印象があります。彼らの武器を上手く消す戦術的な準備も進めてきましたし、我々のスタイルを試合で表現できるように今週のトレーニングでは取り組んでいました。
Q、攻守において表現したいプレーは多くあると思いますが、あれもこれも、と中途半端になってしまう場面も感じました。
A、ゴールに向かう意識を常に持つことを強調しました。ボールを保持するだけではなく、相手ゴールに向かい、決定的なチャンスに繋げることが重要です。今シーズン、10を超える決定的なチャンスを作り出せた試合とそうではない試合がありました。不安定な試合が続いてしまうことは今後、絶対に許されません。
Q、監督が感じている多摩川クラシコの印象を教えてください。
A、成熟度の高い川崎を相手に昨シーズンは2試合とも良い試合をしながらも、勝利につながる最後のところで負けてしまった印象が強いです。勝利に対する強いメンタリティを持つ川崎を越えるためには、それ以上の気持ちと勝利にこだわる姿勢を見せる必要があると思っています。川崎は多くのタイトルを獲得していますし、それゆえ、自信に満ちています。彼らとの対戦は、より集中して、勝利にこだわる姿勢が重要になると思っています。
Q、2連敗から迎える今節の位置づけを教えてください。
A、すべての試合が重要であり、このリーグは非常に拮抗しています。毎試合、難しい戦いが続きますし、可能な限り、目の前の試合から多くの勝点を積み重ねていく必要があります。
[選手インタビュー]
<森重真人選手>
Q、北海道コンサドーレ札幌戦後、森重選手は「攻撃も守備も中途半端になっている」とコメントしていました。これは個々のプレーの質よりも、チームとしての意思統一や組織の問題が気になるということでしょうか。
A、一概にどちらかとは言えません。チームの状態が良ければ個人のパフォーマンスも良くなるし、個人が良ければチームの状態も良くなります。色々な要因があると思いますが、自分たちのやることが明確ではなく、迷いがあるなかでプレーをしてああいう試合になってしまったのかなと思います。
Q、連敗から気持ちを切り替えるために、チームメイトに対してどのような声がけや意識づけをしましたか。
A、自分たちのやりたいことができなかったということももちろんありますが、それ以前に勝ちたい気持ちだったり、戦う気持ちだったり、ファン・サポーターのために戦うということなど大前提の部分でできていないところがあったので、そこをもう一度みんなで取り戻そうという話はしました。それがあった上での戦術であり、サッカースタイルなので。まずサッカーをやるうえでの大事な気持ちを入れてプレーする。それが見ている人に伝わるし、相手にとって脅威になる。その部分をチーム内で再確認し合いました。
Q、森重選手はシーズン序盤、ケガもあって出場機会が限られました。今のコンディションはいかがでしょうか。
A、問題ないです。良いモチベーション、良い緊張感で戦えていると思っています。それを自分だけではなくて、チームの結果に反映させたいという想いがあるので、こういう時だからこそ、自分の経験や、やるべきことをしっかりチームのために発揮していきたいと思っています。
Q、多摩川クラシコについてお聞きします。川崎フロンターレとの直接対決は現在7連敗中(リーグ戦)と勝てていませんが、相性の悪さを意識することはありますか。
A、相性の悪さといいますか、純粋に川崎の状態が良かったということもあります。そこは相手をリスペクトしていますし、ずっとチャンピオンを走ってきたチームです。ただ今の自分たちに必要なことは、川崎を意識するというよりも、自分たちの気持ちを示すことにフォーカスしているので、そこを表現できればいいかなと思っています。
Q、国立競技場は東京にとってホームであり、本当にたくさんのサポーターが集まります。国立での開催ということについてはどう感じていますか。
A、国立には多くのファン・サポーターが見に来てくれると思うし、自分たちにとってはチャンスですし、国立でやるということも相性が良いので、そこは自信を持って臨みたいと思います。また、試合前の演出など盛り上げてくれる部分はおのずとモチベーションが上がってきます。自分たちの味方がたくさんいることは心強いです。
Q、最後に、ファン・サポーターのみなさんに意気込みをお願いします。
A、ここ数試合、情けない試合をしているので、結果を一番に求めていきますが、それと同じくらいファン・サポーターのみなさんが納得する、気持ちが伝わるプレー、応援したいと思ってもらえるような姿を見せられるように頑張りたいと思います。応援よろしくお願いします。
<長友佑都選手>
Q、今節の試合はJリーグ30周年のスペシャルマッチとなります。
A、レベルの高い川崎フロンターレと多摩川クラシコという形で、国立競技場で戦えることにいつも以上に気が引き締まっていますし、気合いも入っています。
Q、これまで数々のシーンが生まれてきた多摩川クラシコで、長友佑都選手自身、印象に残っている試合や場面などはありますか。
A、一つの試合に特化するわけではなく、どの試合も鮮明に思い返すことができます。「この試合」とピックアップするのは難しいですが、それくらい全体を通して、それぞれの試合が忘れられない一戦になっています。
Q、“国立競技場”は長友選手にとってどのような舞台ですか。
A、高校サッカー出身の僕としては、高校時代から聖地であり夢の舞台です。学生時代から憧れていた舞台ですし、(国立競技場で)何試合プレーしてもその気持ちに変わりはありません。
Q、その夢の舞台で長友選手自身、どのようなプレーでチームに貢献したいですか。
A、勝負にこだわる姿、自分自身の特長でもあるアグレッシブな守備を意識して試合に入りたいと思っています。1対1の局面で負けないこと、ストロングポイントを活かしたプレーをみせていきたいと思います。
Q、チームとして2連敗を喫したなかで迎える今節。この悪い流れを断ち切るために必要になることを教えてください。
A、当然、全員が悔しい想いをしています。それは、選手やスタッフだけではなく、ファン・サポーターのみなさんも同じだと思っています。特に選手たちは悔しい想いが強いですし、自分たちの想いを示すことができるのはピッチ上だと思っています。明日の多摩川クラシコでは、自分たちの意地をピッチでしっかりと表現したいと思います。
<東慶悟選手>
Q、川崎フロンターレ戦に向けて、どのような準備をしてきましたか。
A、前節の北海道コンサドーレ札幌戦では大敗を喫してしまい、選手間でもミーティングを行いました。日程など難しい部分もありましたが、選手は言い訳せずにピッチで表現しなければいけません。もう一度、やるべきことを確認して、今週の練習は取り組みました。
Q、多くのファン・サポーターの来場が予想される注目の一戦です。どのような試合にしたいですか。
A、多くの方がスタジアムに来てくれることで、自然とモチベーションも上がりますし、選手としてそのような素晴らしい環境でプレーできることは嬉しいことです。川崎フロンターレも調子を上げてきていますし、そのような相手から絶対に勝利したいです。素晴らしい舞台で勝ち、勢いに乗れるようにしたいと思っています。
Q、どのような部分を特に強調してプレーしてきましたか。
A、気持ちの部分や攻守の切り替え、球際の強さなど、ベースの部分が大切になると思います。もう一度、意識を高めようと選手間で話をして練習には臨んでいます。連敗をしてしまい、決して良い雰囲気ではなかったですし、非常にシビアな時期を過ごしていると思います。だからこそ、川崎のような強い相手にがむしゃらに戦い、勝つことによって、ナーバスな雰囲気を振り払いたいと思います。
Q、国立競技場は相性の良いスタジアムだと思いますが。
A、そういうジンクスも上手く利用してチームが上昇するきっかけを作りたいと思います。
Q、東選手自身はどのようなプレーを今節は意識しますか。
A、個人としては、サッカー人生でなかなか味わうことのできない、約5万人の観衆のなかで良いプレーをみせたいと思います。
Q、戦う姿勢を前面に出して、チームを勇気づけたいという意識もありますか。
A、そのような気持ちの部分はチーム内に伝わると思っていますし、僕自身も長友佑都選手の姿を見て、球際の強さや攻守の切り替えなどのベースが一番重要であることを感じています。長友選手の熱い気持ちは当然、僕自身にも伝播していますし刺激を受けています。練習も試合も、今度は僕自身が伝える側になっていきたいと思います。
Q、ピッチ内で“同じ絵を描ききれていない”雰囲気もあって、2連敗に繋がってしまったという感覚でしょうか。
A、少なからずあると思います。同じ絵を描ききれていないということは、今日お越しのメディアのみなさんも日ごろからサッカーを見ていると思いますので、感じていらっしゃると思います。現状抱えている課題の一つでもあり、戦術的な面はチームとして共有しなければいけませんが、選手それぞれが色々な考えやアイディアを持ってプレーをしています。しっかりと選手間で話をして、必要に応じた選択を常にして、プレーしていくべきだと思います。
Q、川崎に主導権を握られる時間が多くなってしまうことも想定されます。先制点がカギを握る試合になりそうですか。
A、先制点は非常に重要だと思います。相手のチャンスを上手く防いで、どのように自分たちがゴールを奪うかというところにフォーカスしたいと思います。仮に先制点を与えたとしても、それで終わりではありません。札幌戦の失点シーンを見ても、守備エリアでの人数は足りていました。苦しい時間帯をゴールキーパー含めてどう守るかも重要になると思っています。