<マッチレビュー>
前節、アウェイで首位のヴィッセル神戸に2-3で敗れた東京。再起を期す今節はホーム味の素スタジアムに戻り、横浜F・マリノスとの一戦を迎えた。
古巣との対戦となる仲川輝人選手は右ウイングでスタメン起用された。アンカーには今シーズンリーグ戦初スタメンとなる青木拓矢選手が入り、小泉慶選手と安部柊斗選手のインサイドハーフを支える形。U-20ワールドカップから戻ったばかりの松木玖生選手はサブメンバーに入った。
1stHALF—ディエゴール2発で逆転に成功
試合はいきなり動く。前半1分、左サイドから速いクロスボールをゴール前に入れられる。正面の位置にいたアンデルソン ロペス選手がヘディングでクロスボールの軌道を変え、ゴール右上隅へと決められた。
前半5分にはロングボールのこぼれ球がペナルティエリアに流れたところにヤン マテウス選手が飛び込むが、ループシュートは間合いを詰めたヤクブ スウォビィク選手がセービングして事なきを得た。
東京の最初の大きなチャンスは前半17分。自陣で相手のボールを奪うと、素早くつないで背後のスペースへボールを流し込む。右サイドのスペースに仲川選手が飛び込むと、スピードに乗ってペナルティエリアまで持ち出す。ファーサイドを狙ってグラウンダーのパスを入れたが、プレスバックした相手ディフェンダーにクリアされた。
前半20分には仲川選手が相手陣内深くまでボールを運び、ペナルティエリア内の右スペースへパス。安部選手が走り込んでゴール前にマイナス方向のボールを入れると、渡邊凌磨選手がダイレクトシュートを放つ。一度ディフェンダーにブロックされると、撥ね返りのボールを再びダイレクトで叩いたが、シュートはゴールの右へと逸れた。
お互いにボールを保持すると相手陣内の深くまで持ち込む試合展開。相手にはボールを保持した際の型があり、スムーズにペナルティエリアまで運ばれるシーンが見られたが、一方で東京も相手の守備陣形が整う前に素早くボールを縦へ運ぶ推進力で対抗し、手数を掛けずにゴールへ向かっていく。
焦れずに強度を維持しながら戦い続けることで好機がやってくる。前半34分、青木選手から右サイドのスペースへミドルレンジのパスが通る。相手のディフェンスラインとの駆け引きで仲川選手が抜け出すと、ペナルティエリアの右のスペースまで持ち出してスピードのあるクロスボールを入れる。ニアに飛び込んできたディエゴ オリヴェイラ選手がワンタッチで合わせると、ボールはゴール右隅へと吸い込まれていった。
スコアがイーブンになると、両チームの強度はより高まっていく。どちらがボールを握るか。ヒリヒリするようなせめぎ合いのなかで、東京がマイボールを確実にチャンスに結び付けた。
前半44分、左サイドに開いた渡邊選手がゴール前を一瞥すると、相手の寄せが甘いとみるや早い段階でクロスボールを入れる。ゴール正面の位置に落ちてきたボールをディエゴ選手がヘディングで合わせると、相手ゴールキーパーが反応したボールははじき切れずにネットを揺らして東京が逆転に成功した。
一気に畳みかける東京は、前半45+2分にコーナーキックでチャンスメイク。徳元悠平選手がニアサイドに入れたボールを森重真人選手が頭で合わせると、惜しくもクロスバーに撥ね返される。こぼれ球には仲川選手が詰めたが、ワンタッチで合わせたシュートは相手ゴールキーパーの好守に阻まれた
2ndHALF—数的不利になった後も最後まで戦う姿勢を貫く
東京は、後半の頭から小泉選手に代えて松木玖生選手を投入する。
後半の立ち上がりは相手に押し込まれる形だったが、東京も反撃に出る。後半7分、速攻を仕掛けると、右サイドで数的優位を作って仲川選手のパスを受けた長友佑都選手がクロスボールを入れる。ファーサイドに流れてきたクロスを渡邊選手が頭で合わせたが、惜しくもゴール上へと逸れた。
時間が経過するごとに相手にボールを持たれる時間が増えてくると、後半17分、右サイドからのクロスボールをアンデルソン ロペス選手に詰められて同点に追い付かれる。
反撃に向けて勢いを取り戻したい東京だったが、後半24分に松木選手が相手陣内でボールを奪取した際に相手選手を背負ってボールキープしたプレーがVAR判定とよりラフプレーと判断され、退場処分になってしまう。数的不利の展開になったものの、試合の流れを自分たちに向かせるために青木選手に代えて東選手を、ディエゴ選手に代えてペロッチ選手を投入。また後半39分にはアダイウトン選手を投入して攻撃の活性化を狙う。
一人少ないなかでも陣形を下げることなくボールサイドに粘り強くスライドしながら相手ボールを奪い、攻撃のチャンスを作り続けた。しかし後半44分、ワイドに揺さぶられる展開に持ち込まれるとゴール前でマークの受け渡しが追い付かず、マルコス ジュニオール選手に詰められて逆転を許した。しかしその後も同点をめざし、8分のアディショナルタイムも積極的な守備から、アダイウトン選手の突破やセットプレーからチャンスをつくるも、ゴールを捉えることができずそのままタイムアップとなった。
数的不利な状況でも戦う姿勢を失わず、引いて守るのではなく相手に向かう戦いを選択した。数少ないチャンスを決められて逆転こそ許したが、自分たちのスタイルを貫いて90分間戦い続けた。明確に示した“東京の戦い方はこれだ”というスタイルを、次の姿勢でもクオリティを落とすことなく示して、次こそ勝点3をつかみたい。
MATCH DETAILS
<FC東京>
STARTING Ⅺ
GKヤクブ スウォビィク
DF長友佑都/森重真人/木本恭生/徳元悠平
MF小泉慶(後半0分:松木玖生)/青木拓矢(後半28分:東慶悟)/安部柊斗
FW渡邊凌磨(後半21分:塚川孝輝)/ディエゴ オリヴェイラ(後半28分:ペロッチ)/仲川輝人(後半39分:アダイウトン)
SUBS
GK野澤大志ブランドン
DFエンリケ トレヴィザン
GOAL
前半34分:ディエゴ オリヴェイラ/前半44分:ディエゴ オリヴェイラ
<横浜F・マリノス>
STARTING Ⅺ
GK一森純
DF松原健/畠中槙之輔/エドゥアルド(後半19分:上島拓巳)/永戸勝也
MF渡辺皓太(後半32分:藤田譲瑠チマ)/喜田拓也/西村拓真(後半19分:マルコス ジュニオール)
FWヤン マテウス(後半36分:水沼宏太)/アンデルソン ロペス/エウベル(後半36分:宮市亮)
SUBS
GKオビ パウエル オビンナ
MF山根陸
GOAL
前半1分:アンデルソン ロペス/後半17分:アンデルソン ロペス/後半44分:マルコス ジュニオール
[アルベル監督記者会見コメント]
Q、本日の試合を振り返ってください。
A、試合のスタートのところで徳元悠平選手が足を滑らせてしまい、そこから早い時間帯に失点してしまいました。ただ、そのあとチームはしっかりと気持ちを切り替えて、相手を明確に上回る形でプレーしてくれました。良いサッカーを表現していましたし、ボールを奪った後も素早く相手のゴールに向かう攻撃的なプレーもできていました。前半、多くの決定的なチャンスを我々が作っていました。それゆれに、2点だけでなく3点、4点と前半のうちに追加点を取ることができていたらと思います。
そして後半、横浜F・マリノスが逆転に向けてより攻撃的にプレーをし始めましたが、我々も良い形で後半に入れたと思います。しかし、クロスボールへの対応でミスがあり、2失点目をしてしまいました。
これ以降についてはコメントを控えたいと思います。なぜならば、サッカー以外の部分に関してコメントをしなければならなくなるからです。我々の選手たちは、試合終了の笛が鳴るまで、同点、そして勝利を目指して戦ってくれましたし、それを誇りに思います。
今日は多くのチャンスを作ることができました。それをしっかりとゴールにつなげるという部分は課題として残っていると思います。そして、クロスへの対応もしっかりと改善していきたいと思います。クロスへの対応について日本人ディフェンダーには、相手のフォワード陣に大きな選手がいる際にやられてしまう傾向がありますが、それを傾向として許すのではなく、しっかりと対応しなければいけませんし、改善しなければいけないと思っています。
あらためて、私のチームは今日、良いサッカーを表現してくれました。ボールを大切にし、そして相手のゴールへ向かう意識を強く表現してくれました。中盤でも素早く、テンポよくボールを動かすこともできていましたし、サイド攻撃も上手く機能していました。それを今後も引き続き磨き続けていきたいと思います。チームはこの道を貫き続けてほしいと思いますし、それこそが私がこのクラブに残したいものです。今シーズン、しっかりと貫き続けて、さらに磨きをかけていきたいと思います。
Q、本日アンカーに入った青木拓矢選手のパフォーマンスは素晴らしかったと思いますが、監督はどのように感じましたか。
A、今日の青木選手のプレーは本当に素晴らしかったです。あのようなプレーができる選手を私は期待しています。選手たちが日々努力してレベルアップしてくれていることを、私は本当に評価していますし、満足しています。今、選手たちはめざしているスタイルに適応してくれていますし、私はそれに満足しています。しかし、適応に苦労している選手もいますし、経験が少なく成長段階の若い選手もいて、彼らの成長を待たなければならないという部分もあります。昨シーズンも苦しみましたし、そして今シーズンもこの半年間、苦しんでいる部分がありますが、この苦しみが今後のクラブの成長そして成功につながらなければならないですし、つながるようにしなければならないと思っています。
[選手インタビュー]
<ディエゴ オリヴェイラ選手>
Q、試合を振り返ってみていかがですか。
A、非常に残念な結果です。横浜F・マリノスは素晴らしいチームなので、難しい試合になることは分かっていました。前半の早い時間帯に失点からすぐに逆転したところまでは良かったのですが、後半は残念な結果となってしまいました。
Q、逆転するまでは良い流れだったと思います。
A、強い相手に対しても前半は非常に良い流れで、良いサッカーができていたと思っています。今日の試合は良い部分もありましたし、修正すべき悪い部分もありました。次の試合に向けて、しっかりと修正していきたいと思います。
Q、どちらも素晴らしいゴールでした。
A、もちろん、ゴールを決めたことは嬉しいですが、チームが勝てなかったことが非常に残念です。次の試合もゴールを決めて、チームの勝利に貢献したいです。
<森重真人選手>
Q、横浜F・マリノスに対して、ディフェンス面についてはいかがでしたか。
A、自分たちの守備を良い形でできていたと思います。相手センターバックのところをうまく狙うことができていたので、相手が困惑しているのが分かりました。今日は上手く守備ができたのではないかと思います。
Q、ボール奪取からのカウンターを何回も行っていました。狙い通りでしたか。
A、自分たちの持ち味をしっかり出すために、1週間準備を行い、良い形でゴールを奪いに行くことができました。最後のゴールを決め切るところの差が、結果に繋がったと思います。
Q、前半のうちに逆転できました。
A、そのシーン以外にもチャンスはあったので、自分も含めて決め切ることができなかったことが、結果に繋がってしまいました。
Q、クロスからの失点となりました。何を改善すべきだと思いますか。
A、一つひとつ整理していくしかないです。2失点目も、意思統一のところでディフェンスラインを上げるのか下げるのか、意思統一の少しのズレで失点してしまいました。同じ形で失点しないように積み上げていくしかありません。
Q、一人少なくなった時間帯でも、得点をめざしてプレーをしていました。
A、やはり、自分たちの良さは推進力なので、下がってしまい、相手の攻撃を受けないようにゴールを狙っていました。もちろん引き分けという結果も考えていましたが、ファン・サポーターの前で情けない姿を見せるわけにはいかなかったので、勇気ある戦いを90分通してできたのではないかと思います。
Q、最終ラインの前でカットされるシーンが散見されました。
A、全員の考え方一つでプレーは変わると思うので、自信をなくしてしまうと積極的にプレーできず、後ろに、後ろにと悪循環が生まれてしまいます。1点目も長友佑都選手が、しっかりと球際で戦って奪ったボールを前に運んでいたところから決めた得点でした。攻撃でも守備でも前で勝負しなければ、現状の苦しい時期を乗り越えることはできないと思います。
Q、松木玖生選手が強い気持ちを持ってプレーしていました。試合後に何か声をかけましたか。
A、責任感が強い選手なので、まずは今日の結果に松木選手のプレーは関係ないと伝えました。今までの松木選手の姿勢を見ていれば、誰も責めることはできないと思います。
Q、試合前には、「CAPTAIN 3」という大きな幕が出ていました。
A、素直に嬉しかったですし、ファン・サポーターのために戦おうと思える雰囲気を作っていただいたので、ありがたかったです。前節のヴィッセル神戸戦の時から、そういった祝福と応援をしてくださっていたので、情けない姿を見せられないと思いました。
<仲川輝人選手>
Q、横浜F・マリノスとの古巣対決はいかがでしたか。
A、非常に楽しめた試合でした。結果は負けてしまいましたし、退場者が出るまでは僕らとしてもチャンスを作ることができていましたし、エキサイティングな試合をお見せできたとは思っています。
Q、仲川輝人選手を全員が意識していたような、独特な緊張感のある一戦でした。仲川選手自身、その雰囲気はどのように感じていましたか。
A、横浜FMのファン・サポーターのブーイングには愛情を含まれていたと思っています。色々な想いが詰まった、古巣との初対戦で、どうしても勝ちたかったですが、素直に「強かったなぁ」と思いました。
Q、失点から逆転という、素晴らしい前半だったと思います。得点の場面も含めて、振り返りをお願いします。
A、得点の場面もそうですし、あのエリアにスペースが生まれることは分かっていました。そこを上手く突くことができたからこそ、チャンスや得点につながりました。前半のうちに、もう1、2点を奪うことができれば、試合の結果も変わったと思います。今後、改善するためにはさらに気持ちを入れたプレーが必要になります。ディエゴ オリヴェイラ選手の2得点は良い形から生まれたゴールでした。ここ数試合、このような形で得点が生まれていなかったので、次に繋がるように、今日の良い材料を活かしていきたいと思います。
Q、後半に入り、ギアが上がった横浜FMに受け身に回ってしまった、という印象がありますか。
A、受けてしまったことにより、相手の圧力を感じていました。判定に対して、どうこう言うつもりありませんが、退場者が出てしまい、流れが変わったことは否めません。
Q、退場者が出てしまった後、チームとして切り替えるために選手間でどのような声がけをしていましたか。
A、相手が横浜FMですので、引いて守っていても、崩されて失点してしまうので、ボールホルダーに対してプレスをかけるタイミングなどを話し合いました。最後のクオリティでやられてしまった印象です。
Q、ここまでの数試合と比べて、後半の修正力が高まった印象を受けました。
A、チャレンジャーの気持ちで戦うことは特に強調できたと思いますが、失点の仕方に軽さを感じました。クロスから似たような形で失点が続いていますし、マークの修正も必要になると思います。開始1分以内で相手に得点を与えてしまったことも、ホームゲームでは絶対にやってはいけないプレーです。ですが、今日の試合は失点後にしっかりと切り替えられたことが逆転に繋がったと思います。そのような勢いを最初から表現すること、団結力やファミリー感をもっと高めていき、ファン・サポーターの期待に応えていきたいと思います。
<青木拓矢選手>
Q、リーグ戦では久しぶりの先発出場でした。ご自身のプレーを振り返っていかがですか。
A、自分自身でも数えましたが、11か月ぶりのリーグ戦スタメン出場でした。ここまで長かったですし、ようやくこのような形でプレーできた、という感覚です。
Q、開始直後に失点したものの、ディエゴ オリヴェイラ選手のゴールをはじめ、サイドからの攻撃が効いていました。
A、あのような失点を開始早々にしてしまうと、勝てる試合も取りこぼしてしまいます。そのようなプレーをなくすことが大切だと思っています。素早い攻撃から良い形で得点が奪えたと思います。
Q、中盤で意識した役割を教えてください。
A、球際の部分でしっかりと高い強度でプレーすることを全体で意識することができていました。前半はそれが良い方向に進んでいた印象です。個人としては、ディフェンスラインの選手たちとコミュニケーションを取りながら、相手フォワードとトップ下のケアを特に意識しました。
Q、後半は退場者が出た影響もあり2-3と逆転されました。試合の流れについてはどのように捉えていましたか。
A、僕たちにも追加点を取るチャンスは多くあったと思いますし、そのようなシーンを決め切る、または守り切る単純な差が試合内容に出てしまいました。
Q、スコア上では前節のヴィッセル神戸戦と同スコアの敗戦となりました。
A、神戸戦と比べると、自分たちで狙いを持った守備が表現できていたと思います。特に前節は相手にボールを持たれる時間が非常に長かった印象です。自分たちの意思を持った守備は今節の方ができていたと思いますし、スコアは一緒ですが、意味合いは違うと捉えています。ただ、負けは負けです。こうした試合で勝ち切れるように取り組んでいきたいと思います。