<マッチレビュー>
3週間のインターバルを挟み、今シーズン初の3連勝をめざした前節の横浜FC戦であったが、厳しい内容で最下位相手に敗戦。試合後、選手たちは一様に険しい表情を浮かべ、クラモフスキー監督は攻撃面での課題を指摘した。ホームに戻ってきて戦う今節は、リバウンドメンタリティを問われる一戦となる。
同じく3-4-2-1のシステムを敷くサンフレッチェ広島を相手にどのように攻撃の糸口を見つけ、ゴールに迫っていくのか。「アグレッシブに攻撃的にプレーする姿がサポーターに届く」と誓うのは出場停止が明ける仲川輝人選手。ホームで流れを変えるべく、勝点3をつかみに25周年記念試合の締め括りの一戦に臨んだ。
1stHALF—佳史扶がクロスバー直撃の決定機
攻撃の迫力を欠いた前節の反省を生かし、この試合は立ち上がりから積極的な姿勢が光った。仲川輝人選手が復帰した影響は大きく、右サイドで起点を作って攻撃の時間を増やしていった。一方、アグレッシブな姿勢を見せたことで最終ラインの裏を使われてしまうシーンも少なくなく、広島の素早いカウンターを受ける場面も見られた。
そのなか、最初に決定機を作ったのは広島。前半26分、右サイドでの素早いリスタートから川村選手が運び左サイドへ展開。東選手のアーリークロスに加藤選手がダイビングヘッドで合わせられたが、ここは野澤大志ブランドン選手のスーパーセーブで難を逃れた。
すると前半37分に反撃に出る。小泉慶選手、渡邊凌磨選手、ディエゴ オリヴェイラ選手の連携で右サイドを崩し、ディエゴ選手のマイナス方向へのクロスボールに飛び込んだのは左サイドバックのバングーナガンデ佳史扶選手だった。右足で合わせたシュートは惜しくもクロスバーを叩いたが、ピッチを広く使った攻撃からゴールを脅かした。
それでもお互いに先制点を取り切るまでには至らず、前半は0-0で折り返した。
2ndHALF—一度は同点に追い付いたものの
先制点が大きな価値を持つ展開となった後半、その貴重なゴールを相手に許す。後半3分、ゴール前にアバウトに入れられたボールは撥ね返したものの、中野選手に拾われて前線にループパスを送られ、加藤選手にゴールネットを揺らされた。
ホームで負けられない東京は、早いタイミングで同点に追い付く。後半17分、リスタートから原川力選手が持ち運んでスルーパス。相手の背後をとったアダイウトン選手が左サイドを駆け上がりクロスを入れると、これが相手ディフェンダーのオウンゴールを誘った。
スコアが振り出しに戻ってからはピッチ上にスペースが生まれ始め、両チームともに2点目につながるチャンスを作り出すも、シュートミスや相手の好守に阻まれて次の1点が生まれない時間が続いた。
膠着した展開のなか、再びスコアが動いたのは後半30分だった。自陣で拾ったボールを原川選手がつなごうと試みるも相手にカットされてカウンターを受ける。ドウグラス ヴィエイラ選手とのワンツーでエリア内に入ってきた満田選手を捕まえ切れず、勝ち越し点を奪われた。
その直後に熊田直紀選手と東慶悟選手を入れるなど同点ゴールをめざすものの、広島も集中力を切らさずに守備を固めてきたため思うようなチャンスを作れず。アディショナルタイムには仲川選手が退場になるなど流れを変えられずにタイムアップを迎えた。
MATCH DETAILS
<FC東京>
STARTING Ⅺ
GK野澤大志ブランドン
DF小泉慶/森重真人/エンリケ トレヴィザン/バングーナガンデ佳史扶(後半43分:徳元悠平)
MF松木玖生/原川力(後半34分:東慶悟)/渡邊凌磨
FW仲川輝人/ディエゴ オリヴェイラ(後半34分:熊田直紀)/アダイウトン(後半27分:俵積田晃太)
SUBS
GKヤクブ スウォビィク
DF木本恭生
MF寺山翼
GOAL
後半17分:オウンゴール
<サンフレッチェ広島>
STARTING Ⅺ
GK大迫敬介
DF塩谷司/荒木隼人/佐々木翔
MF中野就斗/満田誠/川村拓夢/東俊希/エゼキエウ(後半43分:志知孝明)
FW加藤陸次樹/ドウグラス ヴィエイラ(後半43分:ナッシム ベン カリファ)
SUBS
GK川浪吾郎
DF山﨑大地
MF松本泰志/中島洋太朗/野津田岳人
GOAL
後半3分:加藤陸次樹/後半30分:満田誠
[ピーター クラモフスキー監督記者会見コメント]
Q、試合を振り返ってください。
A、エキサイティングなフットボールでした。結果以外を見れば、イーブンなところも多かったと思います。パフォーマンスに関しては、自分たちのやりたい良いフットボールを出せていました。そのなかでゴール前やアタッキングサードでのシャープさやキレが足りなかったと思っています。チャンスをゴールに変えること、良い場面からチャンスを作ることにもっと磨きをかけていかなければいけません。自分たちが使いたいスペースをうまく使いながら勇敢に前へプレーすること、そしてアグレッシブなフットボールを出せていました。自分たちが練習してきた形でチャンスを作れており、選手たちはファン・サポーターのために勝点3を届けようと全力を出して戦ってくれたと思います。
Q、90分間アグレッシブな姿勢は見られましたが、最後の精度が足りなかったように感じました。今後、どんなトレーニングが必要だと考えていますか。
A、新しいことではなく、今までやってきたことに磨きをかけていかないといけないと考えています。ゴールが一番大事です。我々にとって大事なこと、良かったことは自分たちが作り出そうとしているフットボールの発展は出せたことです。そのなかで前向きなプレー、アグレッシブに戦うことはできていました。もう少しのところで今日は得点が足りませんでした。自分たちが使いたいスペースは活用できていましたし、テンポよく入れていたと思います。違う日、違うゲームならもう数点取れていたかもしれません。そんな少しの差だと思います。広島は非常によい対戦相手で、両チームがすべてを出し切った良い戦いでした。
Q、アタッキングサードでの質は、まだチーム作りの段階だから完成していないのか、それともこのゲームでは足りなかったのか、どちらでしょうか。
A、そういう場面を作れないのであれば違ったアプローチをしないといけませんが、良い状況は作れていたと思います。最後の部分の磨きをかけていくと話しましたが、色々な要素で磨きをかけていかないといけません。もちろん、今日の試合で2、3点とれていれば誰もそういうことは言わないかもしれません。自分たちが作ったプレー、やろうとしたフットボールでそれだけの報いを受けてもおかしくないシーンは作れていました。良いプレー、自分たちが作ってきたもの、今週、選手たちがやろうとしてきたものを出し切ってくれました。考え過ぎず、複雑にすることなく、今やっていることをやり続けるべきです。そうすれば自分たちに報いは返ってくると思っています。
こういう試合であれば、別の日ならば数点とれるかもしれません。それに値するものを選手たちは出してくれました。ただ、フットボールは常に教訓を与えてくれるものです。全員が悔しいと思っていますし、選手たちもファン・サポーターのために勝利を収められず悔しいと思っています。選手たちはもっと自分たちのプレーを良くしようとこれからも取り組んでくれるはずです。自分たちの望んでいるチームになれるように、発展していきたいと思います。
[選手インタビュー]
<原川力選手>
Q、前半と後半で試合の内容が変わりました。原川力選手のポジションからはどのように見えていましたか。
A、サンフレッチェ広島は、後半から前半よりもアグレッシブに前からプレスをかけてきていました。逆に東京は全体が前半よりボールを受ける意識がなくなり、パスの出しどころが無く、ロングボールを蹴ってしまう時間帯が続いてしまいました。
Q、後半は相手のプレスの位置が高くなりました。
A、前半より人にプレスをかけてくるようになりました。相手の出方を見ながらプレーできれば良かったですが、それができませんでした。
Q、原川選手のパスから得点に繋がりました。どのようなことを意識していましたか。
A、ボールを奪った後に、エンリケ トレヴィザン選手がすぐパスを出してくれました。今週は、サイドの選手が裏に抜け出す攻撃のトレーニングを実施していました。自分がフリーで、アダイウトン選手がサイドでポジションを取っていることが分かっていたので前を向いてパスを出しました。あのシーンは今週のトレーニングの成果が出ました。
Q、ホームでの試合も残り1試合となり、シーズン終盤になりました。残りの試合をどのように臨みますか。
A、横浜FC戦よりボールを相手サイドのボックスにもっていくことができていたので、それを続けることが大切だと思います。ですが、次の対戦相手となるアルビレックス新潟はスタイルが違うチームなので、また異なる崩し方をトレーニングを通して準備していきたいです。
<バングーナガンデ佳史扶選手>
Q、前後半でサンフレッチェ広島の戦い方も違っていて、やり辛さもあったかと思います。試合を振り返ってみていかがでしたか。
A、前半は、後ろからのビルドアップの部分でうまく相手を外して、自分たちの良い流れが続く時間もありましたが、チャンスを決め切ることができませんでした。あそこで得点できていれば、後半は違った流れにできたのではないかと思います。とても悔しいです。
Q、後半開始直後の時間帯、相手のウイングバックのポジショニングが高く、サイドからの攻撃を受ける機会が多かったと思います。ピッチでどのように対応しましたか。
A、相手のウィークポイントでもあったので、後半は高い位置で仕掛けてくることは予想していました。ですが、早い段階でうまく対応できず、失点してしまいました。
Q、前半には惜しいシュートもありました。前節の横浜FC戦よりもアグレッシブに攻撃参加していたように感じます。攻撃への関わり方については、どのように意識して試合に臨みましたか。
A、広島も横浜FCと同じ配置を想定していたので、前節の横浜FC戦の映像を見て研究しました。シュートをバーに当てたシーンも、あのスペースが空いてくると分かっていたので、あとはゴールを決めるだけでした。あそこでゴールを決めることができていれば、その後の流れをガラッと変えることができたので、決められなかったことが大きな反省点です。攻撃に関わる回数を増やすことはできましたが、結果に結びつかなかったので、課題として修正していきたいです。
Q、崩しの部分で、佳史扶選手が絡むシーンが多かったですが、攻撃に関して手ごたえはどうでしたか。
A、前半から、攻撃に関してはやれると思っていました。オウンゴールでしたが、自分たちが思い描いたプレーで崩すことができたので良かったです。ただ、もう1点を獲りにいく部分で失点してしまったので、次に向けて改善していきたいです。
<野澤大志ブランドン選手>
Q、前半にはチームを救うビッグセーブもありました。90分の振り返りをお願いします。
A、個人として大事な時期であることは分かっていますし、その中で勝利を手繰り寄せられなかったことが非常に悔しいです。前半は良い形でチームとして戦うことができていただけに、後半の失点が悔やまれます。チームも変わろうとしていますし、その変化に向かって選手の一人としてともに歩むためには、今日のようなプレーでは、まだまだ足りないことが多くあると思っています。自分自身が今後成長していくために、どのように変化を加えていくか反省して次に向けて改善していきます。
Q、前節の横浜FC戦に続き、3バックシステムを採用する相手に対しての戦い方について、最後尾からどのような進歩を感じていましたか。
A、横浜FC戦が良い教訓となるために、チームとして確認、整理をして広島戦に臨みました。前半は、僕らのボール回しにうまく対応できていない印象は受けていました。その時間帯で僕らのペースを生み出し、得点に繋がる流れが生まれていれば完璧な展開でした。ですが、後半に入り守備の部分で後手に回るシーンが増えてしまった印象です。
Q、後半の入りから広島が戦い方を修正してきたようにみえました。
A、僕個人としては、相手が攻撃を仕掛けてくる際に5人かけてきました。僕らとしては4枚のディフェンスで守らなければいけないシーンが後半は特に増え、局面でミスマッチが起きていました。ズレが生じてしまうことは、当然チームとして理解したうえで戦っていましたし、後半の早い段階で失点してしまいましたが、大きく崩れることなく守ることができました。最後尾の選手として、仕事ができなかったことが悔しいです。
Q、試合出場を重ね、野澤選手の成長を多くの方が感じています。リーグ戦も残り3試合となりましたが、どのように今シーズンを締めくくりますか。
A、チャレンジする姿勢は失いたくないです。僕のような選手を信頼して使ってくれるチーム、いつも心強い応援を届けてくださるファン・サポーターのみなさん、身近で支えてくださる方々を想うと責任を持ってプレーすることが何より重要だと思っています。どのような形であれ、1試合でも多く、日ごろの感謝をプレーで表現できるように成長していきたいです。もっと成長したいですし、深みのある選手になるために、今シーズンという括りではなく、選手生涯をとおして表現したいと思います。