<マッチレビュー>
2023シーズン、ホーム味の素スタジアムでの最終戦を迎えた。さまざまなことが起きたシーズンも1年間の総決算。ホームのファン・サポーターに向けて勝点3を届け、またシーズン最終戦に弾みをつけたい一戦に臨んだ。
警告累積やコンディション調整で選手選考は前節のアルビレックス新潟戦から若干の変更があった。センターバックは木本恭生選手が森重真人選手とコンビを組み、左サイドバックは徳元悠平選手がスタートからピッチに。前線は出場停止明けの仲川輝人選手が右ウイングに入った。
1stHALF—キャリアハイを更新するディエゴールで先制
立ち上がりは北海道コンサドーレ札幌の勢いに押されるものの、徐々にボールを保持する時間が増えていき、攻撃に転じる時間が増えていく。
大きなチャンスにつながったのは前半18分、相手の攻撃を撥ね返した流れで右サイドに開いていた木本選手がボールを受けると、前線のスペースへ動き出した仲川選手に鋭い縦パスを送る。相手の背後をとった仲川選手はそのままペナルティエリア内に抜け出し、ゴール右手前でゴールキーパーとの1対1を迎える。足元を抜くシュートを放ったが、ボールはゴール左へと逸れた。
前半36分には左サイドから中央に強引にカットインしたアダイウトン選手がマーカーを振り切ってゴール正面の位置で右足を振り抜いたが、ディフェンダーにブロックされてしまう。
攻撃のリズムをつかんできた東京は立て続けにチャンスを創出する。前半40分、右サイドを崩してペナルティエリアで起点を作ると、左に流し、走り込んできた徳元選手がミドルシュートを狙ったが、ゴール上へと逸れた。
チャンスを作りながらも決め切れないでいたが、前半41分に攻撃姿勢が結実する。原川力選手からペナルティエリア中央付近にポジションをとっていたアダイウトン選手に縦パスが入る。ディエゴ オリヴェイラ選手のポジションが視界に入ったアダイウトン選手はマークの選手を連れながらヒールでボールを残す。そこにディエゴ選手が走り込みながら左足でゴール左隅へと流し込み、東京が待望の先制点を挙げた。
2ndHALF—立ち上がりにひっくり返される
前半終盤に迎えた良い流れを継続したかったが、後半の立ち上がりに崩れる。後半6分、中盤でのパスワークから3人目の動きを捕まえ切れず、ワンタッチパスを通されてディフェンスラインの背後をとられる。抜け出した浅野選手に野澤大志ブランドン選手の出端でシュートを流し込まれた。
札幌の勢いを止められない。後半12分、左サイドからのクロスボールをディフェスラインとゴールキーパーの間に通されると、最終ラインを突破した小柏選手にワンタッチで合わされて失点。一気に試合をひっくり返された。
その後は自陣でブロックを敷く札幌の堅守を崩し切れない時間が続く。後半の中盤には青木拓矢選手、東慶悟選手、白井康介選手を投入し、終盤にも熊田直紀選手、寺山翼選手とフレッシュな選手を入れて活性化を図る。しかし、試合の流れを変えるには至らず、アディショナルタイムに突入する。
攻撃姿勢を強め、前がかりに攻める東京だが、後半45+4分に高い位置でボールを奪われると、前に出ていた野澤選手の頭上を抜くロングシュートを決められ、ビハインドが広がった。最後までゴールをめざし続けた東京だったが、2点差を縮めることはできずタイムアップを迎えた。
MATCH DETAILS
<FC東京>
STARTING Ⅺ
GK野澤大志ブランドン
DF長友佑都/木本恭生/森重真人/徳元悠平(後半29分:白井康介)
MF小泉慶(後半21分:青木拓矢)/原川力(後半39分:寺山翼)/渡邊凌磨(後半21分:東慶悟)
FW仲川輝人/ディエゴ オリヴェイラ(後半39分:熊田直紀)/アダイウトン
SUBS
GK児玉剛
DF木村誠二
GOAL
前半41分:ディエゴオリヴェイラ
<北海道コンサドーレ札幌>
STARTING Ⅺ
GK菅野孝憲
DF田中駿汰/岡村大八(後半30分:西野奨太)/福森晃斗(後半0分:中村桐耶)
MF浅野雄也(後半45+1分:大森真吾)/荒野拓馬/宮澤裕樹/菅大輝(後半0分:スパチョーク)/駒井善成/青木亮太
FW小柏剛(後半35分:キムゴンヒ)
SUBS
GK高木駿
MF小林祐希
GOAL
後半6分:浅野雄也/後半12分:小柏剛/後半45+4分: 大森真吾
[ピーター クラモフスキー監督記者会見コメント]
Q、試合を振り返ってください。
A、敗戦という結果は非常に残念です。ファン・サポーターには申し訳ないと思っています。チャンスを決め切ることができれば良かったです。自分たちがより多くのチャンスを作り、ゴールを奪えそうな場面が何度もありました。試合展開で相手を突き放すチャンスもありました。そこをしっかりと決め切れませんでした。今日の試合では北海道コンサドーレ札幌の方がチャンスを決め切る力が一枚上手でした。
Q、前半は、攻撃面で準備してきたことを出せていましたが、後半は相手のやり方に対応するまでに2失点してしまいました。敗戦につながった要因を教えてください。
A、前半に関しては、札幌に対して準備してきたものがしっかりと出せていたので、想定通りでしたし、追加点を狙えるような試合の流れでした。後半は、パフォーマンスが落ちている時間帯で続けて失点してしまいました。この2点でプランが崩れてしまい、流れが変わってしまいました。自分たちが2点目を獲ることができていれば、違った試合展開になったと思います。後半の対応に苦しんだ時間帯のなかでも自分たちのチャンスを作ることはできていたと感じています。
Q、後半から出場した若手選手が能力を発揮するためには、個々の力を向上させるのか、連携を改善するのか、何が必要だと思いますか。
A、そのどちらも必要です。もちろん、ベンチメンバーの役割は、途中出場した際にチームに影響を与え、試合を最後まで戦うことです。今日は、試合をひっくり返せませんでしたが、今日の試合での学びを次に生かしていきたいと思います。
[選手インタビュー]
<森重真人選手>
Q、非常に良い前半の入りもありましたが、後半早々に失点する展開になってしまいました。
A、非常に良いゲームの入りでしたが、先制点以外の場面で得点を重ねることができれば勝てた試合だったと思います。簡単な失点でしたし、大味な試合になってしまいました。ですが、チームとしてチャレンジしていること、取り組んでいることは随所に表現できたシーンもありました。ポジティブな部分にフォーカスするのであれば、いつもより自分たちの狙いとするプレーは出せたと思っています。
Q、チームとしても森重選手としても、前半から高い位置でのプレー、相手のプレーを限定する守備が光っていました。
A、攻守においてアグレッシブに戦うことが特に今日のテーマでした。前半はボールの動かし方、前線からの守備など、良い形で表現できていました。ですが、後半に入り相手の戦い方に変更もあり、対応しきれないシーンが増えてしまった印象です。
Q、後半開始から選手を代え、戦術の変化を加えてきた相手に対し、ピッチ内ではどのような対応が求められていましたか。
A、そこまで大きな混乱は生まれませんでしたが、一瞬の隙を突かれてしまい、失点に直結してしまいました。細かいコミュニケーションが不足していたことが、後半早々の立て続けの失点を招いてしまったと思っています。
Q、試合後セレモニーでは、キャプテンとして感じてきた想いも述べられていました。最終戦、そして東京が前進するために必要なことは何でしょうか。
A、セレモニーで選手を代表して述べさせていただいたことが全てです。チームとしてどこをめざすのか、そのめざすべき目標に向かって選手それぞれがどのような仕事をするのかが大切です。今シーズンはクラブとして色々な変化がありましたが、チームが勝つこと、優勝することに繋がる行動と捉えています。
それぞれのやり方や考え方に違いはあり、賛否もあるかと思いますが、最終的にクラブに関わる全員がめざすべき場所は同じですし、そのめざすべき先にたどり着くためには同じ方向を向かなければいけません。目標に対して、やり方や過程を議論しながらより良いものを作り出す。最終的に“勝つためにどうするのか”ということを前提に話を進めることこそが、各々が“仕事をする”ということに繋がっていくと思います。
<ディエゴ オリヴェイラ選手>
Q、キャリアハイとなる15ゴール目を決めました。ゴールシーンを振り返ってください。
A、ゴールに関しては選手が良い距離間にいたことによって、良い連携ができたので素早い展開から決めることができました。アダイウトン選手からも良いボールが来たので流し込むだけでした。ただ、ホーム最終戦だったにも関わらず勝つことができず、今シーズン最後の味の素スタジアムでの試合でファン・サポーターのみなさんと喜ぶことができず非常に残念です。
Q、前半はチャンスもあったなかで後半は押し込まれる時間が続きました。試合を振り返ってください。
A、前半はお互いにチャンスがあるなかで、1点しか取ることができなかったのは残念でした。後半になってからは相手のチャンスが多く、東京のチャンスが少なかったことが残念でした。
Q、次節、湘南ベルマーレ戦は2023シーズンの最終戦となります。意気込みをお願いいたします。
A、簡単な試合は1試合もありません。湘南戦はいつも難しい試合になりますし、アウェイゲームなのでさらに難しくなると思います。苦しいシーズンとなりましたが、最後は良い形で終えられるように1週間準備して、試合に臨みたいと思います。
<青木拓矢選手>
Q、後半途中からの出場でしたが、前半はベンチからどのように試合を見ていましたか。また、どのような狙いを持ってピッチに立ちましたか。
A、前半はベンチから見ていてボールを奪ってからの切り替えやカウンターなど、縦に速く攻めた時がチャンスになっていると感じていました。後半に出場した際は距離感を縮めることを意識しましたが、なかなかうまくいかない部分もありました。
Q、久しぶりに味の素スタジアムのピッチに立った感触はいかがでしたか。
A、試合自体が久々でしたし、試合に出場し続けていた選手たちとプレーするのも久々だったので、そういう面でうまく合わせられなかった場面が多かったと思います。
Q、怪我もありリハビリ期間も長かったシーズンでしたが、全体を振り返っていかがでしたか。
A、復帰してコンディションが上がってようやく戻れたタイミングでまた怪我をして、そのタイミングで監督が代わったのは、自分自身にとっては少し不利な状況だったなと感じていました。
Q、チームは現在4戦勝利がない状況ですが、シーズン最終戦に向けてチームとしてどのように照準を合わせていきますか。
A、やはり勝つことで良くなっていくと思うので、ただ貪欲にみんなで勝利を追うだけだと思います。
<徳元悠平選手>
Q、久しぶりの試合出場となりました。どのようなことを意識して試合に臨みましたか。
A、いつも通りの準備をして試合に臨みました。普段の練習から全力で取り組んでいましたが、スタメンでの出場が分かった時はさらに気合が入りました。
Q、前半は東京の流れも多くありましたが、後半は押し込まれる試合展開となりました。試合を振り返って下さい。
A、前半はどちらに転ぶか分からない試合状況のなかでディエゴ オリヴェイラ選手が先制点を決めてくれて、良い前半の終わり方ができました。一方で後半は受ける時間が多くなってしまい、難しい時間が続いてしまいました。失点をして試合を難しくしてしまったことはディフェンスの責任だと思います。同点ゴールが試合を決めることになってしまいました。
Q、他のサイドバックの選手とは異なる特長を持っているなかで、どのようなことを意識していましたか。
A、自分のできることをやろうとしていました。難しいことは考えず、自分のやるべきことをやればゲームを落ち着かせることができると思っていました。前半はうまくそれができていたのですが、後半は自分が逃げ道になれなかったことが悔しいです。やはり試合に出場することは非常に楽しかったです。
Q、次節、湘南ベルマーレ戦は2023シーズンの最終戦となります。意気込みをお願いいたします。
A、しっかりと勝って終わりたいです。本当に今シーズンは、ファン・サポーターに悔しい想いを多くさせてしまっていたので、最終戦は感謝の気持ちを込めて、東京のために全力でプレーしたいと思います。