2024 CAMP INTERVIEW<br />
森重真人選手×仲川輝人選手 対談(前編)

INTERVIEW2024.2.09

2024 CAMP INTERVIEW
森重真人選手×仲川輝人選手 対談(前編)

青赤を知り尽くす守備の要と、青赤を変えたいと本気で意気込む攻撃の軸が、初めて膝を突き合わせて言葉を交わした。キャラクターも立ち居振る舞いも話し方も全く異なる二人ではあるが、心に秘める熱さと今シーズンの終わりに思い描く景色は同じだった。
東京であらゆるものを手にしながら、リーグ優勝の味だけを知れていない背番号3と、自身3度目のリーグ優勝を成し遂げるべく東京にやってきた背番号39が、それぞれの言葉で今のトーキョーと今シーズンに懸ける思いを語ってくれた。



──お二人の組み合わせは珍しいですよね(笑)。
森重真人 珍しいね(笑)。
仲川輝人 初めてじゃないですか?
森重 そうだね、初めてだね。

──昨シーズン、チームメイトとして過ごして感じた印象はどうですか。
森重 テルは自分のペースを持っているし、とにかくマイペース。ただ、見た目もこんな感じで派手だし、もっとキャピキャピしている人かと思っていたら、意外にのんびり自分のペースでやるタイプだなと。そのギャップはあったかな(笑)。テルは?
仲川 僕からすればイメージどおりの人でした。
森重 ウソ、マジで?(笑)
仲川 キャプテンシーがあって、チームのことを上から眺めているというか、しっかりとまとめようとしている感じを受けました。でも、対戦したときはすごくイヤらしい選手……。激しいというか、手グセが悪いなと思っていました(笑)。
森重 テルはちょこちょこするからね(笑)。



──対戦した試合で覚えていることはありますか。
森重 はっきり覚えているのは、テルを倒してPKになって退場したシーン。0-8で負けた試合(2021シーズンJ1第35節@日産スタジアム)……(苦笑)。最初はレフェリーが流していたんだけど、VARが入ってPKになった時だね。
仲川 僕もそれは覚えていますね。でも、さっきも言いましたけど、相手としてはすごくイヤでしたよ。読みも鋭いし、熱いし(笑)。
森重 試合中は熱くなっちゃうんだよ(笑)。
仲川 だからこそ、チームメイトになるとすごく頼もしかったですね。熱さはもちろん、後ろからつないでくれるし、いなしてくれるし、めちゃくちゃ良いところに(くさびのパスを)刺してくれるのですごく助かっています。
森重 こっちも頼もしく感じていたよ。攻撃で違いを生み出せる選手だなと。ここ数年、日本人で攻撃に違いを生み出せる選手があまりいなかったから、経験も実績もある選手が入ってきて、そこはさすがだなと一緒にやってみてあらためて感じたね。

──昨シーズンはトレーニング後に一緒にランニングしている姿をよく見かけました。
仲川 ジョギングしながら『こうしたい』『こうやりたい』とは、(長友)佑都くんも交えて話すことはありましたよね。
森重 外から来た人が東京に入ってみて、どう思っているかは気になるからね。東京で当たり前の習慣が自分の当たり前にもなっているから、違う感覚が分からない部分もあって。だから外から入ってきた選手が違和感あることは知りたいと思ってね。でも、最初からいきなり聞いても言いづらかっただろうね(笑)。
仲川 そこは探り探りでした(笑)。




初めての対談にソファに深く腰掛けてコーヒーをすすり、笑い合いながら対戦していた当時を振り返ったり、お互いの印象を明かしたりと和やかな雰囲気で進んだ序盤から一転、今シーズンのチームへ話題が変わると、一瞬にして二人の目つきは鋭くなり、ストレートな言葉が並んだ。それはチームへの要求であり、本気で勝ちたいと思っているからこその宣言。言い換えれば「今のままではダメ」「自分たちはもっとできる』という“心の叫び”にも聞こえた。


──キャンプ終盤を迎え、ここまでの手応えや仕上がりはどうですか。
森重 手応えはあまりないですね。でも、それで良いのかなと。ここからトレーニングマッチを重ねて改善していく作業をやっていかなければならないので、今はそのサイクルの過程にあると思う。出てきた課題をどう自分たちで解決していくのか。そういう作業をもっとやっていくべきだと思う。みんながどう思っているのかをちゃんと吐き出して、机の上に並べて議論することが一番必要かなと感じています。
仲川 今だからできることもありますよね。後ろから徹底してつなぐことも、今は失敗してもいい時期。チャレンジしながら改善して成功につなげていくことをやっているところなので。その改善点はキャンプで明確に出たし、良いプレーもいくつかあった。それはやり続けていけば良いし、そうすることでみんなが良いイメージ、良い距離感をつかめていけると思います。
森重 むしろその前提の話が大事で、チームとしてやりたいことはあるけど、もっとみんなが主体的にチャレンジするところがまだまだできていない気がする。みんなが自信をもって主体的にやり始めることで、ようやく初めていろいろな歯車がかみ合ってくると思う。こういうサッカーをしていると必ずエラーはあるから、それぞれが思っていること、感じていることをどんどん出していきながら、チャレンジしながら、それを修正する作業を繰り返しやっていくしかない。たくさんミスをして、その経験をチームとして重ねていくことが今は一番大事だと思う。それぞれのポジションで「こうやりたい」「こうするよ」という強い意志表示があって良い。まだ周りを窺いながらプレーしている感じがあるかな。



──今の森重選手の言葉は、昨シーズン、仲川選手からよく聞いた言葉に似ていると感じました。
仲川 東京を変えていきたい気持ちは強いですよ。もちろんめざすは優勝なので。そのためには負けて得ることもあるし、それをキャンプで得られたこともあるけど、チームとしても個人としても、もっともっとやっていかなければならないことが多いのは事実。新しい選手も入ってきたので、コミュニケーションをとりながらやっていきたい。このチームは伸びしろが大きいと思うので、そうやっていければ良いチームになっていけると思います。
森重 自分のやりたいプレーや持ち味を、もっとわがままに出して良いよね。特に前線の選手はもっと自由に解き放たれたようにプレーして、それを後ろの選手たちがうまくカバーできれば良い。今は後ろの年齢層が高いからやりづらいのかもしれないけど、もっと前線の選手が好き勝手にやりながら、後ろが修正しながら戦えるのが一番良いと思う。みんなにもうちょっと伸び伸びとプレーしてほしいね。
仲川 決められたポジションはあるけど、攻撃は個人、個人のイマジネーションが相手を惑わせたりするので、楽しく相手をいなすようなプレーを増やして良い。攻撃の形を作ったほうが良いのは間違いないけれど、それだけでは相手が絶対に崩れない。だから意外性のあるプレーやトリッキーなプレーは必要だと思うんです。前線の選手でイメージを共有して、お互いに個々の特徴を踏まえながらプレーできればチャンスも得点も増えてくる。あとは失った時やミスをした時の切り替えの意識も、前線の選手がスイッチを入れないと。そこがまだまだ遅いのは変えていかなきゃいけないですね。

森重 守備陣としても、もっと前から行かせないといけないし、そうやって要求するからには後ろも責任あるプレーをしないと。周りにどんどん求めていくことで、自分に求められるものも高くなってくるけど、それを恐れずに自分にも周りにも厳しくする雰囲気を作って、チームを高みに押し上げたいと思います。



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Text by 須賀大輔(エル・ゴラッソ)