似て非なる二人のアタッカーに迫った。そのテーマは“ドリブル”。
「特長はドリブル?」と聞かれて、首をかしげる遠藤渓太と迷いなく縦に振る俵積田晃太から出てくる答えは、共感する部分もあれば、真逆な部分もありと、同じ左ウイングを主戦場としながらもその考え方はそれぞれだ。
後編では好きなドリブラーや駆け引きをテーマに話を展開。そこで出てきたのはメッシ (インテル マイアミ)と三笘薫(ブライトン アンド ホーム アルビオン)の名前だった。メッシを見て育ってきた俵積田晃太と、同級生にリスペクトを払う遠藤渓太。そんな彼らにとってドリブルとはいったいどんなものだろうか。
──理想のドリブルや好きなドリブラーはいますか。
俵積田 ずっと小さいころから観ていたのはメッシですね。みんな、理想はメッシじゃないんですか?(笑)。
遠藤 そんなことないって(笑)。個人的には恥を忍んで言えば、三笘薫。自分と同い年の彼です。薫のドリブルを見ておけば、サッカー少年は絶対にうまくなりますから。
──三笘選手には同じプロでも真似できないすごさがありますか。
遠藤 それができないんですよねー(笑)。もう分からないです。シュートモーションからストップをかけて切り返して、縦に行くのはできない。できないよね?
俵積田 その選択をしようと思わないですね。
遠藤 そうそう。普通は縦か中かどちらかで行き切ってしまう。もちろんテクニックはあるけど、それよりも自分の身体をうまく使えているんだろうなと。もう次元が違います。だって、イングランドのプレミアリーグで活躍しているんですから。
──三笘薫選手も左サイドが主戦場ですが、お二人はそれぞれ左サイドでボールを持った時の一番の理想形はありますか。
俵積田 自分で突破してゴールを決めるのが一番ですよね。昨シーズン、ホームのガンバ大阪戦(2023明治安田生命J1リーグ第29節)で決めたゴールは理想的ですね。U-18時代もあれくらい長い距離を運ぶドリブルを結構やっていましたし。あの場面で言えば、ボールを持った瞬間にゴールまでは考えていなかったですけど、スペースがあるのは分かっていたので、ドリブルを仕掛けるのは決めていました。周りのサポートが追いついていなかったので、最後は自分で行き切ろうと。
遠藤 僕は最低限、クロスかシュートで終わることを大事にしています。ドイツではポジション柄、ボールを失わないことが第一優先だったので、今はそれが染み付いてしまっていますけど、もう一度頭の中を変えることはできると思います。ドリブルの感覚は少し鈍ってしまっていると思いますけど、東京では考え方を変えてやっていければ良いと思います
たとえサイドで相手を何人も切り裂いたとしても、結局それは手段であって目的ではない。“理論派”の遠藤渓太と、“感覚派”の俵積田晃太。同じドリブラーでもそのスタイルに違いはあるが、辿り着く先は同じだ。何のために、この二人は何度も何度も仕掛けていくのか。それはゴールを奪うため、そしてチームを勝利に導くためである。
──自分のなかでドリブルの必勝パターンはありますか。
俵積田 言葉ではあまり表しにくいですね。難しいな。あります?
遠藤 必勝パターンなんてないよね(苦笑)。
俵積田 サッカーに絶対はないと思いますけど、自分のなかで確率が高いと思っているのは、渓太くんや自分みたいにドリブルの得意な選手だったら、1対1の状況で自分が先手を取れていて、スペースがあるシチュエーションであれば突破できる確率は高いと思います。どうやったら抜けるのかという部分は人それぞれ違いますけど、良い形で仕掛けられれば抜ける確率は高くなると思っています。
遠藤 確かに重要なのは、どれだけ抜ける確率の高い状況を作れるか。あとは自分が先手を取って半歩でも先に出られたら、ちょっと前にスペースを作れれば左足でクロスを上げられる。ドリブルのコース取りというか、その角度を作るのも大事だと思います。スピードの部分ではタワラほど速くないので、角度を作るのは必要かなと思いますね。
俵積田 まさにそこが課題だと思って頑張っている最中なんですよ。オフザボールの動きですよね。わざわざ自分で抜こうとせずに裏を取れるなら取ってしまえば良いし、逆に裏にいくフリをして足下で受けるとか、色々とオフザボールの動きはあるので、そこの課題に取り組んでいます
──相手と駆け引きする上で大事にしていることはありますか。
俵積田 個人的な課題としては、まず突っ込んじゃうことが多いんですよね。例えば縦に何回か仕掛けて、相手に読まれ始めたら中に行くというようなことはありますけど、ほとんど感覚でやってしまっているので、これは渓太くんに聞いたほうが分かりやすいかもしれないです(笑)。
遠藤 自分は結構考えますね。縦をめっちゃ警戒されて、一人抜いてもカバーする位置で待ち構える選手がいたりするので、さすがにそういう時はわざわざ縦には行かないです。そうなったら他にスペースが空いているはずなので、そこを他の選手に使ってもらうことを心がけていました。あんまり感覚でプレーすることはないですね(笑)。
──では最後にお二人にとって、「ドリブルとは?」という部分を聞かせてください。
俵積田 僕はゴールとアシストをするための手段だと思っています。もちろん相手を抜けたら気持ち良いですけど、ゴールを決めた時のほうが気持ち良いですから。ただ、ドリブルを特長とする選手ではあり続けたいです。スピードやキレ、伸びるような動きをレベルアップさせていけたらと思っていますし、ドリブルで仕掛けるかどうかの使い分けなど、まだまだ課題は多いので、そこを改善しながらより成長していけたら良いと思います。ドリブルとゴールがセットになってくるのが理想です。
遠藤 ドリブルがチーム戦術の一つになれれば良いですよね。味方がそれを理解してくれれば仕掛けやすいタイミングでパスが集まると思いますし、相手もそれを脅威に思うだろうし。タワラも言っていましたが、あくまでもドリブルは目的ではなく手段ですから。その武器を活かしてチームのタイトル獲得に貢献していきたいです。
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Text by須賀大輔(エル・ゴラッソ)