<マッチプレビュー>
青赤がプライムラウンドへ勝ち上がるための最低条件、それは90分間での勝利だけだ。
先週水曜日に行われたJリーグYBCルヴァンカッププレーオフラウンド第1戦、東京はサンフレッチェ広島を味スタで迎え撃った。
開始から攻勢に出ながら前半10分に先制点を許すと、反撃を期したキックオフで相手のプレスからボールをロストして追加点を奪われてしまう。わずか2分間で喫した痛恨の連続失点。前半25分にディエゴ オリヴェイラ選手のゴールで1点を返したが、試合は1-2で敗れることになってしまった。
ただし、プレーオフラウンドは2戦合計の結果で勝ち上がりが決まるため、まだ試合は“前半”を終えただけ。アウェイで行われる“後半”に勝負を懸ける形になった。
ピーター クラモフスキー監督も第1戦後の記者会見で「選手たちには『まだ前半が終わっただけ。いまはハーフタイムだ』と伝えた。次はアウェイで勝利を掴む。良いチャンスを何度も作れていたし、彼らならやれる」と次戦への手応えをコメントした。
あらためて大会レギュレーションを再確認しておきたい。ホーム&アウェイで行われるプレーオフラウンドではアウェイゴール数は優遇されず、勝利数が多いチーム、もしくは2試合の得失点差で勝ち上がりが決まる。つまり初戦を1-2で落とした東京としては、最低限1点差以上のリードで90分間を終えることが必要。2点差以上の勝利を挙げればストレートに勝ち抜き、1点差勝利の場合は前後半各15分の延長戦からペナルティキック戦へと勝敗の行方が託されることになる。
2戦合計のトータルスコアが重要になるだけに、ディエゴ選手が挙げた反撃弾は“後半”に向けて大きな意味を持つ。90分間で2点差以上の勝利が必要となれば、非常に試合運びが難しくなるからだ。安斎颯馬選手は「ディエゴが取り返してくれて次につながった。トータルで勝てば問題ないし、下を向いても仕方がない。まだ負けたわけではない。1点差勝利でも延長に入りますし、トータルで勝てれば良い」と前を向く。
思えば名古屋グランパスと対戦した2021シーズンのルヴァンカップ準決勝。初戦の後半アディショナルタイムに0-2から1点を返しながら直後に失点して3点目を奪われ、第2戦に1点差で勝利しながらも勝ち上がれなかった経験がある。その試合で実際にピッチに立っていた波多野豪選手も当時の記憶を思い返しながら「(1-2になってから)次の1点が大事になると思っていた。そういう意味では守れて良かった。ただ、2失点しているので、もう一回しっかりと準備したい」と過去の教訓を生かしながら次戦に向けて気を引き締める。
広島は得意のハードなプレスと強固なブロックを使い分けてくることが予想される。それをどうかいくぐり、決定機を決め切るかが勝負を分けることになりそうだ。
第1戦ではビッグチャンスを作りながらネットを揺らせないシーンもあっただけに、仲川輝人選手は「決め切るところを決め切れないと。僕たちは勝ちに行くしかない。点をとりに行く姿勢をアウェイでどれだけ見せられるか。チャンスはもっと多く作れると思うし、問題はフィニッシュの質。個人的にはもっとゴール前に迫力を持って入っていきたい」と勝ち上がりに炎を燃やす。
そして第1戦で久々に出場機会を得てピッチで輝いた徳元悠平選手。その言葉は全員の総意でもあるだろう。
「なかなか出番がないなかで、ルヴァンカップ(での出場機会)を信じてやってきましたし、自分の良さは出せたと思う。下を向いている選手はいないし、みんなもやるぞって気持ちのほうが強い。2失点目の課題はロッカールームで修正しました。しっかりと重たい空気で『どうすんだよ!」ってテルくん(仲川選手)が言ってくれましたし、そこに関しても修正し終わっている。広島で勝って突破できれば、初戦の負けが帳消しにできる。『代表選手がいないから』と言われないように、全員でもう一回引き締めてやりたい」
現在、各年代の日本代表に6選手(バングーナガンデ佳史扶選手は怪我のため8日に帰国)を輩出している東京だが、誰が出てもクオリティの落ちないサッカーを表現できているのも今シーズンの特長。ここまでのチームの積み上げ、過去の教訓、そして全体のクオリティを証明するためにも、プレーオフラウンドは絶対に勝ち上がらなければならない。
1点のビハインドで迎えるアウェイ広島での第2戦。最後までしびれる展開が待っていることが予想される。決して焦れることなく、油断することなく、積極果敢な東京スタイルでカップに近付くことを期待したい。
[ピーター クラモフスキー監督インタビュー]
Q、サンフレッチェ広島との第2戦にどう向かっていきますか。
A、今がハーフタイムという認識です。2試合の合計結果が問われるエキサイティングな試合になると思います。第1戦で表現できたポジティブな部分を継続していきたいです。そして、あの試合では短い時間で相手に2得点を許し、隙を与えてしまいました。もちろん、悔しさはありますが、そこから1点を取り返し、追い付き、追い越すようなシーンを生み出すパフォーマンスも発揮していました。試合のなかで生まれた良かった部分をしっかりと身に着けて、良い準備ともう一度戦う準備を進めていきます。第2戦を勝ちにいきます。
Q、1-2のビハインドの状況ですが、得点を奪い、勝ちにいくという点がクリアになったとも捉えられます。
A、私たちは勝ちにいくだけです。それは、第1戦目がどのような結果であったとしてもです。勝ちにいく意識、試合に臨むにあたってのアプローチ、メンタリティについても何一つとして変えるものはありません。しっかりと準備をして、持っているものを全て出し切ることに何も変わりはないと考えています。結果を出すためには、自分たちの力を出し切ることです。そこにフォーカスしています。自分たちの戦い方がしっかりと表現できれば、それは広島にとって脅威になります。
Q、後半から出場した原川力選手が攻撃にアクセントを加えるプレーを表現していました。
A、とても良い仕事をしてくれました。もちろん、彼自身がもっと出場時間を増やしたいと出場に飢えていることも分かっていますが、チームとしてのメンタリティをプレーで表現してくれました。“誰が出たとしてもピッチ上で仕事をする”という姿勢の良い例を彼がピッチで示してくれました。
Q、練習後には野澤零温選手と話し合っている様子も見られました。
A、後半の場面の振り返りと、その時にどのように感じていたか、ここからどのように改善して成長していくかを話しました。改善や修正はこれまでも練習を通じて行ってきましたし、継続していくだけだと思います。野澤選手はチャンスを察し、前へと飛び出す能力を持っている選手です。そのような機会を得点に繋げていくことが前線の選手としてやらなければいけないポイントです。あのシーン、スタジアム全体の視線が野澤選手に集まっていたと思いますし、多くの観客が立ち上がったことでしょう。そのような高揚する場面に直面した時に、いかに冷静に、いかにメンタルをコントロールできるかだと思います。あとはゴールを決めるイメージを深めるように練習を積み重ね、成長を促すだけです。そして、放ったシュートがネットを揺らした時に、今までため込んできたものも含め、感情を最大限に解き放ってほしいと願っています。一歩一歩前に進み、もっと成長できる選手だと思います。
[選手インタビュー]
<高宇洋選手>
Q、サンフレッチェ広島との第1戦は悔しい敗戦となりました。
A、試合全体を振り返ると、悪いシーンばかりではなかったと思いますが、試合の入り方やリスタートの切り替え、複数失点については課題であり、修正が求められる部分です。その意識についてはチーム全体で共有もしましたし、9日の試合では、もう一度徹底して臨みたいと思います。
Q、そのなかで大事なことを教えてください。
A、僕らは勝ちにいかなければならないですし、これ以上の失点は絶対にしてはいけません。複数得点を奪うために、中盤の選手として攻守のバランスをとること、より迫力が増すようなプレーを促していきたいです。
Q、戦術的な駆け引きも予想されます。
A、第1戦では、これまでの試合に比べてボールを握る時間がありましたが、ゲーム全体を通して、相手の背後を狙うパスが少なかった実感です。相手のハイラインに対して、どのように攻略できるかがポイントなると思っています。相手も僕らと対戦した感触が残っていると思うので、ピッチ内での臨機応変な対応も求められてくると思います。
<エンリケ トレヴィザン選手>
Q、第1戦で、サンフレッチェ広島と対戦して感じた特長や印象を教えてください。
A、チーム全体としてのクオリティが高く、攻守のバランスが非常にとれているチームでした。リーグ戦でも失点が少ないように、守備の堅さや強さを感じましたし、攻撃面では前線の能力が高い選手を活かしたカウンターアタックには第2戦も注意が必要です。次の試合、相手に先に得点を与えてしまうと試合を進めることがとても難しくなってしまいます。ディフェンダーとして、守備の安定、無失点にこだわりたいと思います。
ホームでの第1戦は残念な試合、厳しい結果になってしまいました。9日はアウェイでの難しい試合になりますが、次のステージに進出するチャンスは大いにあります。勝利だけを求めて、戦いたいと思います。
Q、第2戦を迎えるにあたって、守備面のポイントを教えてください。
A、第1戦は、短い時間で簡単に得点を与えてしまいました。切り替えやキックオフ後のリスタートの部分を含め、修正が必須です。チームとしての守備の原則やディフェンス陣のコミュニケーションをもう一度徹底し、相手よりも先にチームとして得点が奪えるように最終ラインからサポートしていきたいと思います。
Q、プライムラウンド進出のためには、第2戦で複数得点の勝利が求められます。
A、勝つしかないという状況ですので、90分間攻撃的なプレーができるように最終ラインから前線までコンパクトな陣形が保てるようにコミュニケーションをとりたいと思います。私自身もセットプレーから得点を狙っていきたいと思っていますし、攻撃に枚数をかける分、守備の対峙で簡単に負けないこと、身体を張って相手に自由を与えない粘り強い守備で貢献したいと思います。
<岡哲平選手>
Q、プライムラウンド進出に向けて、勝利が絶対条件となります。どのような準備をしていますか。
A、ピーター クラモフスキー監督も言っていましたが、前半が終わっただけだと思っています。アウェイに乗り込んで後半を戦いますが、出場した際には無失点に抑えて勝つことが必要になると思います。無失点で試合を進めないと守備陣としての評価、もっと言えばチーム全体の評価が上がらないと思うので、そこを前提にしていきたいと思います。
Q、出場した試合では負けていません。良い感覚を得られていますか。
A、自分のなかでも常にポジティブな状態でいられているので、どんな状況でもチームの勝利のためにプレーしようと思っています。リーグ戦ではスタメンで試合に出場することができていないので、しっかりとアピールをしてリーグ戦にもつなげていきたいと思います。ただ、まずは目の前の試合で勝つことが一番重要だと思っています。
Q、チームを勝利に導くために、岡哲平選手の特長を出すことが必要になると思います。
A、サンフレッチェ広島は3バックのシステムで、その背後にパスを出すことができればチャンスになると思っています。前回の試合ではあまり見られなかったので、そのスペースを有効活用していきたいです。まずはゴールをめざすために一番遠いところを意識して見ようと思っています。
Q、第2戦に向けて意気込みをお願いします。
A、無失点での勝利がディフェンスの選手として求められるベースです。さらにそこに自分の特長でもあるロングパスなどを得点につなげたいです。良い準備をして、自分の最高なパフォーマンスをしてチームの勝利に貢献していきたいです。