<マッチレビュー>
JリーグYBCルヴァンカップのプライムラウンド進出を懸けて、プレーオフラウンドの第2戦を迎えた。4日前の5日(水)に味の素スタジアムで行われた第1戦は、1点のビハインドで終えたものの、内容の部分では手応えを得ることができた。ディエゴ オリヴェイラ選手が決めたペナルティキックを獲得するまでの一連の流れは鮮やかで、今シーズン積み上げてきた攻撃の形がきれいに表れたシーンでもあった。
クラブとしては初めて試合を行うエディオンピースウイング広島での一戦。東京は第1戦のメンバーをベースに森重真人選手と中村帆高選手がスターティングメンバー入り。ダブルボランチは小泉慶選手と高宇洋選手がコンビを組んだ。両ウイングには安斎颯馬選手と俵積田晃太選手が立ち、前線にはディエゴ オリヴェイラ選手と仲川輝人選手が入った。敵地での逆転勝利でのプライムラウンド進出を懸け、“後半90分”の開始を迎えた。
1stHALF—前半終盤に立て続けにゴールに迫るも決められず
立ち上がりの短い時間で立て続けに失点を喫した第1戦の反省を生かし、東京は集中した試合の入りを見せる。前半6分にはファーストチャンス。流動的なパスワークから左サイドバックの徳元悠平選手がクロスまで持ち込んだ。
ただ、サンフレッチェ広島も簡単に引かない。前半11分に新井選手のクロスボールからピエロス ソティリウ選手に決定的なシュートを打たれると、前半16分にはコーナーキックからゴールに迫られる。しかし、ここはゴールカバーに入った中村選手がゴールライン上ギリギリでクリアし難を逃れた。
第1戦と同様にお互いのインテンシティーの高さと攻守の切り替えの早さが目立ったゲームは、両チームのゴール前での攻防が増えていく。前半19分には東京が右サイドを崩し安斎選手の折り返しから俵積田選手がシュートチャンスを迎えそうになったが、ブロックから反転してカウンターを受けてしまう。右サイドに流れた大橋選手の折り返しを東俊希選手に合わされるが、これはゴール上へと外れた。
前半39分には最終ラインからボールを前進させ、ペナルティエリア内に抜け出した安斎選手がゴールキーパーの出端を突いてクロスボールを入れると、前半45+3分には駆け上がってきた中村選手が連携プレーの流れから右足で強烈なシュート。ゴールこそ奪えなかったが、前半終盤に広島ゴールに迫る場面を作り出し、試合を折り返した。
2ndHALF—17歳のディヴァがゴールも連続失点が響く
逆転でのノックアウトステージ進出のためには何が何でも1点が必要な東京だったが、後半の立ち上がりに先制点を許してしまう。後半8分、右サイドで仕掛けた越道選手にクロスボールを上げられると、一度はクリアしたもののボールが加藤選手の前にこぼれ、蹴り込まれた。
その2分後には追加点を許す。左サイドに流れた加藤選手の折り返しを大橋選手が右足で強烈なシュート。波多野豪選手の手をはじいたボールがゴールに吸い込まれた。
第1戦と同じく連続失点を喫した東京は、反撃を期して後半17分に中村選手と安斎選手に代えて原川力選手と野澤零温選手を投入。まずは1点を返そうとフレッシュな選手をピッチに送り出した。
しかし、後半23分に3点目を失う。前がかりになっていた背後に塩谷選手のラストパスを通され、加藤選手にゴールへと流し込まれた。
何とか意地を見せたい東京は、後半29分に3枚の交代カードを切る。エンリケ トレヴィザン選手に代えて岡哲平選手を、俵積田選手に代えて東慶悟選手、そして仲川選手に代えてこの試合がトップチームデビューとなる2種登録の尾谷ディヴァインチネドゥ選手を送り込んだ。
すると後半32分、期待を背負ってピッチに立った若手がゴールをこじ開ける。
東慶悟選手が中盤で粘って左サイドへ展開したボールを野澤選手が受けると、左足で相手のゴールキーパーとディフェンダーの間にクロスボールを送り込む。このボールに対してファーサイドから飛び込んできた尾谷選手が頭で合わせ、ようやくゴールをこじ開けた。
その後も東京は若い選手がゴールへの積極性を見せ、原川選手が決定機を迎えるなど反撃姿勢を強めたが、ゴールを決め切れず。2試合の合計スコアは2-5となり、プライムラウンド進出はならなかった。
東京の連戦はまだ続き、中2日の6月12日(水)には天皇杯2回戦を戦い、その4日後にはリーグ戦の再開を迎える。残る大会でのタイトルを最後まで追うために、ここからまたチームの総力で試合に臨んでいく。
MATCH DETAILS
<FC東京>
STARTING Ⅺ
GK波多野豪
DF中村帆高(後半17分:原川力)/森重真人/エンリケ トレヴィザン(後半29分:岡哲平)/徳元悠平
MF高宇洋/小泉慶/仲川輝人(後半29分:尾谷ディヴァインチネドゥ)
FWディエゴ オリヴェイラ/俵積田晃太(後半29分:東慶悟)/安斎颯馬(後半17分:野澤零温)
SUBS
GK児玉剛
DF永野修都
MF中野裕唯
FW浅田琉偉
GOAL
後半32分:尾谷ディヴァインチネドゥ
<サンフレッチェ広島>
STARTING Ⅺ
GK川浪吾郎
DF中野就斗/荒木隼人(前半34分:越道草太)/佐々木翔
MF新井直人/松本泰志/塩谷司(後半42分:志知孝明)/東俊希
FW加藤陸次樹(後半42分:満田誠)/大橋祐紀(後半26分:エゼキエウ)/ピエロス ソティリウ(後半26分:ドウグラス ヴィエイラ)
SUBS
GK田中雄大
MF柏好文/松本大弥/野津田岳人
GOAL
後半8分:加藤陸次樹/後半10分:大橋祐紀/後半23分: 加藤陸次樹
[ピーター クラモフスキー監督インタビュー]
Q、試合を振り返ってください。
A、まずプレーオフラウンドを突破したサンフレッチェ広島にお祝いの言葉を述べたいと思います。第1戦と同様に良いフットボールの戦いでした。失点するまでは多くのことがあったわけではありませんでした。両試合においてそうでしたが、相手にプレゼントを与えてしまい、そこで相手に流れを掴まれてしまいました。我々が特別なクラブになっていくためには、そうした部分はなくしていかなければいけません。厳しい状況のなかでも、選手たちが最後まで献身的に一緒に戦ってくれたことを誇りに思っています。チームはすべてを出し切って戦ってくれましたし、カップに向けて先に進むことができずに悔しく思っています。我々はまだまだ学ばなければいけません。多くのファン・サポーターが広島まで足を運んでくれました。彼らに感謝しています。笑顔をもたらすことができず、申し訳なく思っています。
Q、各年代の日本代表チームに多くの選手が招集されていたり、怪我人が多いという状況について、監督は言い訳にしたくないとは思いますが、その影響はありましたか。
A、国際的な試合が設定されているなかで、東京の選手が多く選出されているというのは事実です。ただ、私はそういったことについて言い訳はしたくありません。代表選手や怪我人が抜けているという状況はありますが、それは我々のチームの総力が試されているところだと思っています。そういった困難に立ち向かっていこうとする姿勢、そして自分たちでそれを乗り越えていこうとする姿勢を、難しい状況のなかでも戦っていかなければいけないメンタリティを出した選手たちを素晴らしく思っています。
今週、厳しい戦いになってしまいましたが、4人のアカデミーの選手たちがベンチに入っており、そのうちの一人がハードワークした結果としてゴールを決めることができました。そのプレーを誇りに思っています。そして、トップチームの選手たちがアカデミーの選手たちとうまく繋がりながら、自分たちの経験を彼らに受け渡しながら戦ってくれました。難しい1週間のなかでも成長していくことができていますし、エキサイティングな選手たちが出てきていると感じています。
Q、また中2日で、今度は天皇杯を戦います。そこに向けた修正や切り替えはいかがでしょうか。
A、自分たちは今、とても悔しくて残念な気持ちを持っていますが、それを次の試合にぶつけたいと思っています。そのなかでも、フットボールは眠らないと思いますし、自分たちとしてはしっかりとリカバリーをして、来週の水曜日にはまだ自分たちの仕事をしっかりとできるように準備をしていきます。
Q、ゴールも決めた2種登録の尾谷ディヴァインチネドゥ選手の評価をお願いします。
A、将来性のあるエキサイティングな選手です。アカデミーとつながりながらトップチームのコーチングスタッフが指導する練習のなかで、トップチームの選手と一緒に練習をさせることをクラブとして取り組んでいます。彼にはポテンシャルがありますし非常に良い成長をしています。そういった成長の観点で言うと、他にも非常に多くのエキサイティングな選手がいます。彼は良いインパクトを残してくれましたし、この数か月で一緒にやってきたことがこうして結果で返ってきました。アカデミーに対してもエネルギーやパワーを与えることができたと思います。
[選手インタビュー]
<小泉慶選手>
Q、悔しい結果となりましたが、心境を聞かせてください。
A、一つのタイトルを失ったという現実を受け止めなければいけないです。サンフレッチェ広島との差は一つひとつは小さいかもしれませんが、その少しの差がタイトルを獲るか獲れないかという大きな差になると思います。
Q、試合を振り返るとどういう印象でしょうか。
A、ゲームプランとしては焦る必要はなかったですし、前半は0-0で折り返すことができたので、後半に何とか1点を取って、延長戦でもう1点を取るような戦い方でも良いとは思っていました。ただ、やはりあそこで前回と同じように立て続けに失点してしまうと苦しい状況になります。失点の部分は改善しなければと思っていますし、相手にスキを与えないようにやっていきたいです。
Q、この敗退をどう受け止めていきますか。
A、繰り返しになりますが、3つあるうちの一つのタイトルを簡単に失ってしまったという現実はしっかり受け止めなければと思っています。また中2日で天皇杯があるので、現実を受け止めて、そこに向かって本当に死に物狂いで勝ちに行かないと、また足下をすくわれてしまいかねません。リーグ戦も同じことが言えると思うので、しっかり地に足をつけてやっていきたいと思います。
Q、中2日で天皇杯があります。
A、タイトルを一つ失ったことで全員が相当悔しい気持ちになっていると思うので、天皇杯に向かってしっかりもう一回やっていければと思います。
<野澤零温選手>
Q、途中出場となりました。難しい状況での出場となりましたが、いかがでしたか。
A、チームとしても個人としてもやるべきことははっきりしていました。僕のなかでは得点に絡むことや攻守でスイッチを入れるために走ることを意識していました。途中からの出場で1アシストできましたが、まだまだ足りないと思っています。あの状況で出場させてもらった時に、自分に何ができるのかで今後にも大きな影響があると思っていました。得点が欲しい状況で自分が出場した以上は、得点に絡まなくてはいけないですし、あそこで追い付くような試合展開にしなければいけなかったので、その点ではまだ僕の力が足りなかったんだなと痛感しました。
Q、アシストのシーンを振り返ってください。
A、ボールを受けた時にはフリーで、相手との距離もあったので突破をしようかと思いました。ですが、ゴールまでの距離もあったので、奥に尾谷ディヴァインチネドゥ選手がいて目が合ったので、シンプルにクロスボールを入れて尾谷選手に届けば得点に繋がると思っていました。チームの決まりごととしても、早いクロスボールを入れることが自分の仕事でもあると思っていたので、自信を持ってプレーしました。それが結果に繋がってよかったです。
Q、今日のプレーからは、思い切りの良さが見られました。
A、前回の試合より自信を持ってプレーできました。前回の試合を終えて、僕のなかでも振り返りをして整理しましたし、いろいろな選手やスタッフ、監督ともコミュニケーションをとりましたし、ファン・サポーターの方々にも言葉をもらいました。そのなかで、自分なりに噛み砕いて整理した結果が今の自分だと思っています。まだまだ足りないと思っています。今日、広島の地に来てくださっているファン・サポーターの方々には申し訳ない気持ちでいっぱいです。この結果を次に繋げないといけないですし、次の試合もすぐにあるので、次に向けて良い準備をして勝利を届けられるように準備していきたいと思います。
Q、野澤零温選手は多くのチャンスを引き寄せることができていると思っています。次の試合に向けてどのような意識で向かいますか。
A、僕のなかでも、チャンスを引き寄せることはできていると思っています。今日も実際にアシストを記録できました。ですが、自分はストライカーとしてこのチームにもっともっと貢献をしたいので、応援してくれている方々のためにも、まずは目に見える数字を残していきたいと思います。チームでの存在価値、存在意義を示せるように、ポジティブに前向きにやっていきます。
<尾谷ディヴァインチネドゥ選手>
Q、今日の試合出場をどのように迎えたのか。そして、実際に出場した手応えを教えてください。
A、僕個人として、今シーズンからFC東京U-18の試合にも出場できる時間が増えてきて、そのなかでトップチームの練習に参加させていただく機会が増えました。先週、2種登録をしていただき、まずは驚きが一番大きかったです。2種登録として試合に帯同させてもらえたからには絶対に結果を残したいと思っていました。後半20分くらいのタイミングでアップをしていた時に『ディヴァいくぞ』と声がかかり、出場できる気持ちの高ぶりもありましたが、負けている状況だったので、まずは自分自身のプレーを最大限に発揮しようとピッチに入りました。最終的に得点という形で結果を残すことができて良かったです。
Q、トップチーム公式戦初ゴールはヘディングでのゴールでした。得点シーンの振り返りをお願いします。
A、左サイドの深い位置にボールが流れた時に、僕自身の特長であるスプリントを活かすこと、スピードに乗って相手ディフェンスの前に入ること、飛び込む意識は練習から常に言われていたところだったので、勢いを持ってゴール前に飛び込みました。野澤零温選手から良いクロスボールが来たので、しっかりと決め切ることができてうれしく思います。
Q、公式戦のピッチに立って感じた課題、通用した部分があれば教えてください。
A、スプリントの部分では通用した手応えもありました。ファールにはなってしまいましたが、スピードでボールホルダーにしっかりと寄せることができましたし、フィジカル面でも全く通用しなかった訳ではない感触です。ですが、コミュニケーションや試合に臨むメンタリティの部分でいうと、チームにとってプラスに働くような声掛けがもっとできるような選手になっていかなければいけないです。
Q、中2日で天皇杯も控えています。今日のゴールが出場機会を手繰り寄せたのではないですか。
A、今日の試合は20分の出場でしたが、ここからさらに出場時間を増やしていきたいですし、スタメンで出場できるような選手に成長していきたいと思います。昨シーズンでいうと、8月には佐藤龍之介選手がトップチーム昇格を決めていました。僕自身もその姿を見て、多くの刺激を受けましたし、トップチームで活躍できる選手をめざしていきたいと思います。