<マッチレビュー>
中断明けの初勝利をめざしてアウェイの京都サンガF.C.戦に臨んだ明治安田J1リーグ第28節。東京はここまで3試合ノーゴールと得点力不足に苦しんでいることもあり、試合展開をコントロールしながらもしっかりと攻撃にフォーカスしていきたいところ。
チームは前節からスターティングメンバーを2名変更。ゴールキーパーには好セーブ連発でチームを支える野澤大志ブランドン選手が構え、最終ラインは右サイドバックに運動量豊富な中村帆高選手を置き、センターバックは土肥幹太選手が中断明け4試合連続でスタメン起用。前節で脳しんとうを起こした森重真人選手に代わって岡哲平選手が入り、左サイドバックには長友佑都選手を配した。中盤は高宇洋、小泉慶の両選手がボランチでコンビを組み、トップ下には荒木遼太郎選手。そして3トップは中央にディエゴ オリヴェイラ選手、右に仲川輝人選手、左に遠藤渓太選手という前節と同じ3選手が並んだ。
また、ベンチには初出場が期待される新戦力のエヴェルトン ガウディーノ選手を含めて4人のフォワードが控える布陣。チーム一丸となって待望のゴール、そして白星を手にするべく試合に臨んだ。
1stHALF—相手の出足に押され2点を先行される
試合はキックオフ直後から一気呵成にプレスを仕掛けてきた京都の勢いに押されてしまう。
果敢な寄せにビルドアップがズレて高い位置でボールをロストすると、ラファエル エリアス選手が強烈な左足のシュート。これは野澤選手が横っ飛びで弾き出して難を逃れたが、そのコーナーキックを中央でラファエル エリアス選手に頭で合わされて失点。完全に出端をくじかれる形となり、開始2分で先制点を許してしまう。
その後も相手のプレスに押し込まれてボールをつなげない時間が続いたが、高選手を中心に試合を落ち着かせ、徐々にポゼッション率を高めて相手陣内でのプレーが増えていく。
前半19分には荒木選手の左コーナーキックがこぼれたところをディエゴ選手が、続く32分には荒木選手のスルーパスをペナルティエリア内で受けた仲川選手が狙うなど、相手ゴールに迫るシーンが見られるようになった。
しかし前半34分、京都がロングカウンターから豪快なミドルシュート。これは野澤選手が弾き出したが、このコーナーキックから原選手に頭で叩きつけられて痛恨の追加点を献上。リードを2点に広げられてしまう。徐々にペースを握って押し込む時間を作れるようになっていただけに悔やまれる失点となった。
何とか攻勢に出たい東京はアタッキングサードに進入しながらチャンスを窺うが、前半はこのままタイムアップ。反撃は後半へ持ち越しとなった。
2ndHALF—猛反撃もクロスバーに阻まれ実らず
2点を追いかける後半、東京は長友選手に代えて安斎颯馬選手を投入。そのまま左サイドバックに入り、攻撃力を高めるべくトライしていく。
だが、京都も前半同様に後半キックオフからハイプレスを徹底。高い位置で積極的に仕掛けてくる。後半3分には京都がコーナーキックからドンピシャで合わせたが、ここも野澤選手が鋭い反応を見せて横っ飛びでセーブ。何とか守備でチームを勢い付けようと奮闘する。
しかし、東京は京都の激しいプレスに押されて思うようにボールをつなぐことができない。後半5分には左サイドでのロストから波状攻撃を食らい、ペナルティエリア内で守備網を崩されて3点目を失ってしまう。
苦境は続く。後半から投入したばかりの安斎選手が後半8分に相手選手との接触で負傷。そのまま交代を余儀なくされ、東慶悟選手が中盤に入り、小泉慶選手を左サイドバックでスクランブル起用することに。戦術眼と経験に頼る展開となった。
なかなかチャンスが作れない東京。後半22分には中村選手の右クロスからディエゴ選手が右足ボレー。そのこぼれ球に詰めた仲川選手がテクニカルなバイシクルシュートを決めたかと思われたが、ディエゴ選手がシュートを放ったタイミングで仲川選手がオフサイドポジションにいたためゴールは認定されず。鮮やかなシュートだったが、惜しくも得点には至らなかった。
後半24分、ピーター クラモフスキー監督が前線にテコ入れを施す。仲川選手に代えて東京デビュー戦となるエヴェルトン選手を右ウイングに、荒木選手に代えて小柏剛選手をピッチへ送り込む。
後半30分には小泉選手とポジションチェンジしてボランチに入っていた東選手が中央から左サイドへ展開。これを受けたエヴェルトン選手が得意の左足でゴール前へ送ると、走り込んだ高選手がヘディング。クロスバーに阻まれたこぼれ球に素早く反応した高選手が再び左足で狙ったが、これはゴールの上へ外れてしまい反撃弾となる1点を決めることができない。
前線からの圧を強めたい東京。後半39分には投入されたばかりの俵積田晃太選手が左サイドから得意のドリブルで持ち込んで右足を振り抜く。これは相手ゴールキーパーの好反応に防がれたが、両サイドからアタッカーが果敢に仕掛けることで打開を図ろうとしていく。
終盤も野澤選手の好セーブで耐えながら俵積田選手が狙うシーンが見られたが、点差を広げたことで守備を固めながらカウンターを狙う京都を崩し切れず。
思わぬアクシデントもあったが、相手の術中にハマるような展開となってしまい、前後半の立ち上がりを含む3失点に加えて4試合連続の無得点という悔しさが残る結果となった。
MATCH DETAILS
<FC東京>
STARTING Ⅺ
GK野澤大志ブランドン
DF中村帆高/土肥幹太/岡哲平/長友佑都(後半0分:安斎颯馬)(後半13分:東慶悟)
MF高宇洋/小泉慶/荒木遼太郎(後半24分:小柏剛)
FWディエゴ オリヴェイラ/遠藤渓太(後半38分:俵積田晃太)/仲川輝人(後半24分:エヴェルトン ガウディーノ)
SUBS
GK波多野豪
DF木本恭生
GOAL
―
<京都サンガF.C.>
STARTING Ⅺ
GKク ソンユン
DF福田心之助/宮本優太/鈴木義宜
MF福岡慎平/米本拓司(後半24分:川﨑颯太)/平戸太貴(後半45分:中野瑠馬)/佐藤響
FWマルコ トゥーリオ(後半45分:ムリロ コスタ)/原大智/ラファエル エリアス(後半38分:平賀大空)
SUBS
GK太田岳志
DF喜多壱也/ルーカス オリヴェイラ
GOAL
前半2分:ラファエル エリアス/前半36分:原大智/後半5分:平戸太貴
[ピーター クラモフスキー監督インタビュー]
Q、試合を振り返ってください。
A、今日のスコアを非常に悔しく思っています。京都が勝ちに値するものを出しましたし、鍵となる部分で我々を上回っていました。大事なことは、自分たちのプレーを振り返って反省していくことです。そのなかで、自分たちがもっとシャープにしていかなければいけない点があったと思います。自分たちが上手くプレーできている時とできていない時の差がありましたし、非常に苦しい試合になってしまいました。我々にとっては試合の立ち上がりが悪く、ゴールというものが試合を変えていきます。京都がコーナーキックから先制点を奪い、彼らにとっての最高のスタートになってしまった。その後、自分たちが試合を掴みかけていたところまできていましたが、その時点でまたコーナーキックから失点してしまいました。こうしたことは起こしてはいけませんし、試合の流れを変えてしまう部分になります。そこで自分たちが試合を掴んでいかなければいけませんでした。選手たちはすべてを出し尽くして戦い切ってくれました。京都はゴール前での危険な場面をしっかりと決め切っていました。それで勝点3を奪われてしまいました。
Q、荒木遼太郎選手に代えて小柏剛選手を投入しました。この2選手を同時起用するという選択肢はありましたか。
A、そのオプションも考えられる選択肢の一つです。小柏選手が出てきて相手にとって危険なプレーをしてくれました。(途中からの出場ということに関して)彼はまだ身体のリズムをつけている段階で、彼の今後にとってはそれも大事なことです。またディエゴ オリヴェイラ選手が何かをしてくれると感じている部分もありました。ディエゴ選手とエヴェルトン ガウディーノ選手のコンビネーションを見たかったという点もあります。その観点での判断でした。
Q、夏に入って勝ち切れない、点がとれなくなった要因をどうお考えですか。
A、自分たちは今、非常に難しい状況にいます。勝つことは習慣付けだと思っていて、そういう点で難しい状況にいます。難しい時は、自分たちのほうになかなか上手く流れが来ないことが多いと思います。今日、点はとれませんでしたが、何度かチャンスを作れていました。クロスバーに当たった場面が二度ありましたし、オフサイドで取り消しとなったゴールもありました。うまくいっている時というのは、そうした場面がゴールとなって自分たちのほうにうまく傾いてくるものだと思います。
数週間前にも話したことがありますが、こうした時期というのは大事で、自分たちがこの苦境に試されています。次の試合に向けた準備をしていくなかで、どういったことをしていくか、どう反応していくかが非常に大事だと思っています。自分たちのプロセスは変わりませんし、しっかりとパフォーマンスを分析していきます。そのなかで、どこがうまく改善できる点なのかを学んでいかないといけません。この状況が一番の成長につながり、乗り越えていくためにはみんなでハードワークすることが大切です。私たちはそれを一歩ずつ踏んでいき、その成果が返ってくるように取り組んでいきたいと思います。あと10試合で勝点30分の試合があります。私たちはもっと改善できると思っています。
[選手インタビュー]
<高宇洋選手>
Q、最初から最後まで相手の高い位置でのプレスを受けて難しい試合だったのではないですか。
A、相手のプレスを上手く回避できなかったことが、今日の試合のすべてだったと思います。今までも何回もありますし、同じことを繰り返しているので、やはりそこは今のチームの甘さだと思います。どうすべきかをはっきりとさせて、しっかりとみんなで話をして、それぞれが責任感を持ってやらなければいけません。前半の途中からボールを動かせるシーンもありましたが、失点してからではなくてゲームの入りからやれるようにしたいです。相手を受けてではなく、自分たちからもっと仕掛けていかないと、後手を踏んでしまいます。そこはチーム全体で共通意識を持ってやっていくしかないと思います。
Q、狙っていたけれども上手くいかなかったのはどういう部分ですか。
A、セカンドボールはやはり相手に転がっている回数も多かったですし、京都サンガF.C.が相手だと、あそこでしっかりと制圧できていれば流れは来るというところはありました。そこで相手に流れが転がるということは、自分たちの準備がまだまだ甘い証拠です。まずはサッカーの本質部分の、戦う、走る、気持ちの部分で相手を上回ることです。僕個人もそうですし、チーム全体としてもう一度そこをしっかりと強い気持ちでプレーしていきたいと思います。今日もアウェイゲームながら素晴らしい雰囲気を作ってくれたファン・サポーターのみなさんが、試合後も最後まで声をかけてくれました。それに対して勝利で応えることができなかったことが非常に悔しいですし申し訳ないです。ただ、まだ試合は来るので、しっかりと同じ方向を向いて、やり続けるしかないと思います。
Q、今、チームに関わる全員が苦しい時期の真っただ中にいます。サンフレッチェ広島戦に向けて一番大事にしたいことを教えてください。
A、やはり、勝つという気持ちを本当にどれだけ一人ひとりが持っているかというのは大事なことです。こういう時にこそ、目の前の相手に立ち向かうことが問われてきます。トレーニングからやるしかないと思うので、しっかりとこだわりながら、一人ひとりが矢印を他の人や外に向けるのではなく、しっかりと自分自身に向けてやっていくだけです。
<エヴェルトン ガウディーノ選手>
Q、東京に加入後、初の公式戦出場となりました。
A、東京でのデビュー戦となりましたが、チームとして0-3で負けてしまったこと、得点に絡むプレーで貢献できなかったことが非常に悔しいです。ですが、すぐに次の試合がやってきます。来週のトレーニングをまた仲間たちと懸命に励んで、次節のサンフレッチェ広島戦で、勝利を掴みとるために前を向いていきたいと思います。
Q、攻撃的なプレーではなくて守備面の貢献度も高かったと思います。
A、今日は右ウイングで途中出場しましたが、仮にどのポジションで出場したとしても、チームの勝利に必要なプレー、クラモフスキー監督やチームメイトに求められているプレーを表現するだけだと思います。
Q、あらためて、公式戦のピッチに立って表現し切れなかったことはありますか。
A、途中出場で約20分の出場でしたし、初めてのJリーグでのプレーということもあり、チームが負けている状況での出場など、色々と今日は難しいタフな試合だったと思います。ここからまずはコンディションをさらに高めて出場時間を増やすこと、そして得点に関わるプレーで貢献したいと思います。
Q、リーグ戦も残り10試合となりました。ここからどのように貢献していきたいですか。
A、今日の試合もそうですし、ここ最近は、我々選手だけではなくファン・サポーターのみなさんも苦しい時間を過ごしています。ですが、残りのリーグ戦で勝つために、団結して、前に進んでいくことを一番大切にしていきたいです。みなさんの応援が後押しになりましたし、次の広島戦こそ勝利するために、僕たち選手はトレーニングからハードワークしていきたいですし、声援に応えるためにも勝利だけを考えていきたいと思います。
<ディエゴ オリヴェイラ選手>
Q、厳しい状況ではありますが、今の状況を変えるためには何が必要だと思いますか。
A、 私たちも色々と試行錯誤していますが、チャンスを作ることができない、得点をすることができない、簡単に失点をしている状況です。何かを変えるしかありません。それは自分たちで変えなければいけません。このチームで戦う者としてのプライドと応援してくれるファン・サポーターのためにです。すぐにまた試合が来ます。もう一度勝利のために全員でやっていきます。