8/31 広島戦 MATCH REVIEW & INTERVIEW

INTERVIEW2024.8.31

8/31 広島戦 MATCH REVIEW & INTERVIEW

<マッチレビュー>

幾多の苦境を乗り越えてゴール、そして勝利をめざす戦い。まさにチームとしての意地の見せどころだ。

アウェイ広島に乗り込んでの明治安田J1リーグ第29節。試合に臨もうとするチームに、台風10号の影響が直撃した。選手たちは移動を1日前倒して木曜日に広島へ向かったが、途中で東海道新幹線がストップ。静岡県東部で7時間以上に渡って足止めになり、日付が変わったタイミングでようやく同県内の宿泊地へ移動。だが、翌日も台風と大雨に伴う高速道路の通行止めや一般道の大渋滞で西へ向かうことが難しかったため、午後にバスで一度東京へ移動。今日、試合当日朝に飛行機で山口宇部空港に向かい、さらにバスで約3時間をかけて、何とかキックオフの約6時間前に広島市内までたどり着いた。

相手は現在リーグ戦6連勝中で首位まで勝点2差に迫っているサンフレッチェ広島。東京は中断明けの4試合で無得点での2分2敗と苦しい状況にあるが、気迫の戦いで現地まで駆け付けてくれたファン・サポーター、そしてDAZNでの試合中継を通じて念を届けようとしてくれる皆さんの想いに応えたいところ。もともと現地で予定していた前日練習を実施できず、コンディション面のハードルはあるものの、チームはできる限りの準備をして浮上のきっかけを手にするべく戦う構えだ。

一丸となって戦いたいゲームに臨む青赤のスターティングイレブンは、ゴールキーパーに野澤大志ブランドン選手。最終ラインは右から中村帆高、土肥幹太、森重真人、白井康介の各選手が並んだ。森重選手は前々節の東京ヴェルディ戦での脳しんとうによる交代から復帰を果たした。中盤の底は高宇洋選手と小泉慶選手のコンビ。右ウイングに青赤初先発のエヴェルトン ガウディーノ選手が入り、仲川輝人選手を左ウイングに置く布陣。中央は荒木遼太郎選手とディエゴ オリヴェイラ選手が縦関係で並ぶような形となった。

また、日本代表に選出された長友佑都選手、負傷離脱していたエンリケ トレヴィザン選手もメンバーに入り。移動の負担に伴うコンディションを鑑みて岡哲平、児玉剛の両選手もチームに帯同して練習に参加し、まさに一丸となって勝利をめざしてキックオフを迎えた。

1stHALF—立ち上がりの好機も2点を失う

最初にビッグチャンスを作ったのは東京。前半2分、相手のビルドアップがズレたところをエヴェルトン選手が見逃さずにプレスを仕掛けて中央でボールを奪うと、左サイドでディエゴ選手が左足シュート。これは相手ゴールキーパーにキャッチされたが、いきなり惜しいシーンを作り出した。その後も立ち上がりから連動したプレスを仕掛け、前線でディエゴ選手をポイントにボールをつないで攻め手を探っていく。

だが、徐々に押し込んでいこうとしていた前半5分のことだった。相手の左クロスからファーサイドでヘディングシュートを許す。これは何とか撥ね返したが、こぼれ球をペナルティエリア内で広島に素早く拾われ、トルガイ アルスラン選手に冷静に蹴り込まれて早い時間で先制点を奪われてしまう。

勢い付けたい東京。ディエゴ選手と小泉選手が連動した激しいプレスバックを見せて背中で引っ張ると、20分には相手のコーナーキックからドンピシャで合わせられたヘディングを野澤選手がキャッチ。守備から建て直しを図るべく奮闘を続ける。

しかし、相手の素早い予測と出足に苦しむ展開が続くと、前半32分にもペナルティエリア内に押し込まれ、再びトルガイ アルスラン選手にこぼれ球を決められて失点。2点のビハインドを背負うことになった。

前半35分には荒木選手が相手との接触プレーで右足首を痛めるアクシデント。状態が心配されたが、大事には至らず何とかピッチに戻ることができた。

その荒木選手が得意のテクニックで好機を演出する。前半42分、左サイドから持ち上がって中央でボールを受け直すと、相手の寄せをいなしながらターン。このパスを受けたエヴェルトン選手がペナルティエリア外から強烈な左足ミドル。これは相手ゴールキーパーに阻まれたが、相手がキャッチできないような力強いシュートで怖さを見せた。

徐々に攻撃の手を強めていった東京だが、前半はゴールネットを揺らすことができず。2分間のアディショナルタイムを経て、0-2のスコアでハーフタイムを迎えた。

2ndHALF—小柏弾&テル躍動で猛反撃も一歩及ばず

メンバー交代せずに臨んだ後半は立ち上がりから高選手、ディエゴ選手を中心に縦へパスを出し入れしながら打開策を探り、中盤での激しいプレスを仕掛け合い、ペナルティエリア内での仲川選手のスライディングカットなど集中した入り方を見せていく。

この姿勢が東京に流れを引き寄せる。後半9分、左サイドから鋭い攻撃でゴールに迫ってエヴェルトン選手が左足でチャンスを作ると。同11分には荒木選手が右足で狙う。その2分後にはエヴェルトン選手の左コーナーキックに森重選手がヘディング。これを相手ゴールキーパーの目前で仲川選手がコースを変えようと触ったが、ボールはわずかに枠の上に外れてしまう。

完全に東京ペースになったかと思われた時間帯だったが、ここで思わぬ3失点目を喫してしまう。ビッグチャンスを作った直後、広島にペナルティエリア内への進入を許し、相手と交錯したプレーがファウルの判定でペナルティキックを与える。トルガイ アルスラン選手にハットトリックとなるキックを決められてしまった。

3点を追いかける東京は失点直後に動く。荒木、エヴェルトンの両選手に代えて、右ウイングに遠藤渓太選手、左ウイングに俵積田晃太選手を投入して反撃を試みることになった。

さらに後半18分には高選手とディエゴ選手に代えて小柏剛選手、東慶悟選手をボランチに入れてピッチの活性化を図る。

そして後半34分、このまま終われない青赤軍団に待望のゴールが生まれる。ゴールキーパー野澤選手からのスローを受けた俵積田選手が自陣から高速ドリブルで左サイドを突破。ペナルティエリアまで力強く持ち上がって中央へ柔らかく折り返すと、ここに走り込んだのは小柏選手。滑り込みながらの強烈なシュートでネットを揺らし、5試合ぶりとなる意地のゴールで反撃をスタートさせた。


この一撃で選手たちの動きが一気に軽くなる。前への圧力を強めて相手陣内でプレーする時間帯が続き、交代選手だけでなくスタメン組も体力的に厳しい時間にもかかわらずセカンドボールへの予測や出足で上回って相手の自由を奪っていく。その後も東選手の浮き球でのロングスルーパス、俵積田選手が左サイドで見せるカットインからのシュートなど、完全に東京ペースの試合展開になる。

そして6分間の後半アディショナルタイムに入った直後だった。右からのコーナーキック。仲川選手が相手の隙を突いて素早いショートコーナーからボールを受け直してゴールライン沿いをゴールに向かって仕掛けると、シュート性の鋭い折り返しが相手のオウンゴールを誘発。まさに意地の反撃で1点差に迫る。

迫力ある猛攻を続ける東京。野澤選手も相手との1対1を止めるビッグセーブでチームを後押しする。

しかし、試合はここでタイムアップ。台風10号の影響による過酷な移動との戦いも強いられながら臨んだ広島とのアウェイゲームは2-3で敗れる結果となってしまった。だが、交代選手の躍動も含めて意地を見せることはできた。

勝利への渇望、届かなかった悔しさは選手たちの表情からも見て取れた。目を赤くする選手もいた。

試合後、ゴール裏スタンドは「いつも俺らがついてるぜ。自分を信じていれば勝利はついてくる」というチャントから『You'll Never Walk Alone』の大合唱が続いた。

ここでリーグ戦はインターナショナルマッチウィークに伴う中断期間に入るが、この想いを胸にクラブ一丸となって前進し、国立競技場での名古屋グランパス戦での勝利につなげなければならない。苦境を乗り越えようと戦ったゲームは、必ずや何かのきっかけになるはずだ。

MATCH DETAILS
<FC東京>
STARTING Ⅺ
GK野澤大志ブランドン
DF中村帆高/土肥幹太/森重真人/白井康介
MF高宇洋(後半26分:東慶悟)/小泉慶/荒木遼太郎(後半19分:遠藤渓太)
FWディエゴ オリヴェイラ(後半26分:小柏剛)/仲川輝人/エヴェルトン ガウディーノ(後半19分:俵積田晃太)

SUBS
GK波多野豪
DFエンリケ トレヴィザン/長友佑都

GOAL
後半34分:小柏剛 / 後半45+1分:オウンゴール

<サンフレッチェ広島>
STARTING Ⅺ
GK大迫敬介
DF中野就斗/荒木隼人/佐々木翔
MF新井直人(後半22分:越道草太)/トルガイ アルスラン(後半22分:ドウグラス ヴィエイラ)/川辺駿(後半11分:塩谷司)/東俊希
FW松本泰志/満田誠(後半22分:中島洋太朗)/加藤陸次樹

SUBS
GK川浪吾郎
DFイヨハ理ヘンリー
MF茶島雄介

GOAL
前半5分:トルガイ アルスラン / 前半32分:トルガイ アルスラン / 後半18分:トルガイ アルスラン


[ピーター クラモフスキー監督インタビュー]


Q、試合を振り返ってください。
A、まず、自分たちのパフォーマンスを出すために、そして勝つために力を尽くしてくれた選手たちを誇りに思います。自分たちにとって、試合当日に移動しなければいけない状況になってしまい、非常に大きなチャレンジでした。このチャレンジを乗り越えるところまでは少し届きませんでした。そして、試合のなかで鍵となる場面があったと思うのですが、その場面では自分たちが“なりたいチーム”に向かっていけるクオリティを出せたと思います。サンフレッチェ広島が、決め切れる良い場面で決め切りました。ゴールがゲームを変えていくと思いますし、広島はそのゴールを決め切りました。そういった場面を相手に与えずに、それを自分たちで作っていかなければいけません。

試合終盤まで強く戦えましたし、自分たちで良いゴールを決めることができました。そして、自分たちのフットボールをしながら終盤の流れを作ることができました。もちろん結果に関しては悔しく思っています。ただ、選手たちの献身さ、取り組みは誇りに思えるものでした。そして、ここまで足を運んでチームを最後までサポートしてくれたファン・サポーターのみなさまに感謝しています。ここに来ようと思っても来られなかった方々もいると思いますし、来ようとトライして諦めた方もいると思います。チームを支えるすべての方々に感謝しています。今日の試合、ここに辿り着くまでに多くの移動をしなければいけない戦いでした。それが大きなチャレンジでした。ただ、今日選手たちが発揮してくれた彼らの戦いを非常に誇りに思っています。結果には少しだけ届きませんでした。

Q、丸2日移動に要して当日に現地入りした試合で、最後に意地を見せました。選手たちにはどのような声をかけましたか。
A、今日の献身的な戦いに対して、本当に誇りに思っているという話を試合後にしました。この試合に辿り着くまでに3日間かかってしまいました。いつもよりも早めに出発しましたが、そのなかで足止めを食らってしまいました。先ほども言いましたが、そうした色々なことがあって大きなチャレンジでした。一番良かった点は試合終盤の戦いです。自分たちのフットボールに対して献身的に戦ってくれました。信念を持って戦うなかで、流れをつかんでゴールを決めることができました。

(試合後に悔しがる選手たちの姿をみて)結果が出なかったことで悔しさがあります。我々にとって大事なのは、パフォーマンスをしっかりと分析することです。リーグトップにいるチームとの対戦で、自分たちがどのような戦い方ができるのか、どのようなチームになりたいのかをお見せすることができたと思います。自分たちにとってもっと良くしていかなければいけない部分を学んだ厳しいレッスンでもありました。


[選手インタビュー]
<小柏剛選手>


Q、流れを変える意地のゴールでした。
A、いつも通り冷静にピッチに入ることができました。0-3で追いかける状況、1点ずつ返していかなければいけない状況でしたが、僕のゴールが2点目を生むきっかけや雰囲気に繋がったと思います。チームとして2得点を奪えたことは良かったですが、勝つために広島に来ましたし、最低限3-3の引き分けに持ち込みたかったです。誰一人、今日の結果にも内容にも納得はしていませんし、多くの課題が出ました。

Q、広島までの移動など、イレギュラー対応が多いなかでのゲームとなりました。
A、試合をやるからには勝ちに来ましたし、プロサッカー選手としてピッチ上では何一つ言い訳できないと思っています。今日も勝たなければいけない試合でしたし、自分たちの実力が結果に表れただけだと思っています。

Q、小柏選手自身、今日の得点が次に繋がるのではないですか。
A、俵積田晃太選手から良いボールが来ましたし、僕自身も得点を決めることで良い流れに乗ることができると思っていました。最近の試合では得点も奪えていませんでしたし、チームとして1点、2点と得点を奪えたことは良かったですが、勝点に繋がる得点でチームに貢献していきたいです。


<中村帆高選手>


Q、難しい状況での試合になりました。試合を振り返ってください。
A、どんなことがあっても試合をやるとなったら、プロなのでやるしかありません。結果として負けたことは事実なので、言い訳は全くできません。応援に来てくれたファン・サポーターには、本当に申し訳ない気持ちでいっぱいです。

Q、3点リードを許してしまう展開でしたが、最後には意地を見せる攻撃もありました。
A、やるしかない状況のなかで、交代選手が入りどんどん勢いもついてきました。東慶悟選手がすごく話してくれて、よりボールを持てるようになりました。そこから縦に勝負できるようになり、良い時間帯が作れたことが意地の得点に繋がったと思います。ずっと無得点が続いていたなかで、今日の試合で2点を奪えたことは、一歩踏み出すところまで行けたかは分からないですが、絶対に次に繋がると思います。

Q、ここ数試合は思い切ってプレーできている印象があります。
A、自分らしくないのですが、メンタル的にも難しい状況が続いていたなかで、いろいろな人の支えがあり、本当に小さいことかもしれませんが気持ちの面で一歩踏み出すことができました。もう自分を表現するしかないので、やっていくだけだと思っています。