2024 PLAYER’S REVIEW<br />
13 HATANO GO

COLUMN2024.11.21

2024 PLAYER’S REVIEW
13 HATANO GO

“東京愛”あふれる男が味わった
復帰1シーズン目の悔しい日々


GK 13 波多野豪

人に、選手にストーリーあり。2024シーズンを戦い抜いた全青赤戦士を選手ごとに紹介する『2024 PLAYER’S REVIEW』。果たして彼らはいかなる想いを抱えてシーズンを過ごしていたのだろうか。自信、手応え、課題、喜び、悔しさ……。それぞれが送った今シーズンの戦いを、本人の言葉を紡ぎながら振り返る。

期限付き移籍で経験を積み、満を持して東京に復帰して守護神としての活躍が期待された波多野豪しかし、チーム始動からキャンプまでの順調な日々から一転、積極性が裏目に出た退場劇を契機に出場機会を減らす悩み多きシーズンとなった。そんな彼を救ったのは、ベテラン選手たちの言葉。“東京愛”あふれるゴールキーパーが過ごした紆余曲折の2024シーズンとは。



「しょっぱい感じだったと思います」と率直に今シーズンを振り返った。無理もない。期限付き移籍先のV・ファーレン長崎でシーズンを通して活躍し、自信と経験を手に2024シーズンから東京へ帰還。再び青赤で迎えた始動日、そしてキャンプの時点では、俊敏性、反応の速さ、パワー、守備範囲の広さ、いずれをとっても絶好調。特に空中戦の強さは圧倒的で、巨躯を素早く動かし、開幕スタメンの座をつかむ好スタートを切った。

だが、二度の退場劇が彼のシーズンをつまずかせる。一度目は明治安田J1リーグ第5節の川崎フロンターレ戦。この時は1試合の出場停止を経てベンチメンバーに回ることになった。その後、野澤大志ブランドンが代表活動でチームを離れたことに伴って先発に復帰したものの、第13節の柏レイソル戦で再びレッドカードを提示されて退場。ここで2試合の出場停止処分を受けると、ベンチが主な居場所となってしまった。昨シーズンはJ2リーグ戦全36試合でゴールを守った実績とは対照的な数字となった。本人が1月のチーム始動時点で想い描いていたイメージとの落差は大きかった。

「(今年の秋には)もう僕は代表に行っていると思っていました。甘かったな、と」

退場の主因は、最終ラインの背後を狙って抜け出した相手に対し、ペナルティエリア外まで飛び出して守ろうとしたプレーがファウルになったこと。これを機に自らを見つめ直した波多野は、再び出番をつかもうとひたすら練習に明け暮れた。チームが勝利から見放され、自らも出場機会から遠ざかる時期が続いたが、胸に抱えていた悩みを吐露すると、長友佑都、森重真人、東慶悟といったベテランに「自分は自分らしくいれば良い」と励まされ、前向きに取り組めたという。

「自分のプレースタイルをもう一度戻そうと思いました。その結果、ヴィッセル神戸戦(第34節)で急きょ出場機会が来た時にチームを救うことができた。自分は自分らしくやろうと思えました」


野澤大志のアクシデント発生に伴うスクランブル出場という事態にも、波多野は臆することなく、むしろプレーする喜びを笑顔であらわし、ファインセーブでゴールを守り切って勝利に貢献した。

「良い経験はできたと思いますし、自分自身も強くなれた。決してムダじゃないシーズンだったと思います」

はっちゃけた明るさ、練習の熱量、クラブを愛する気持ちでは自分が一番という自負がある。もう誰がなんと言おうと周りは気にしない。自分らしく、チームのために熱く戦う。そんな姿勢が選手としてのさらなる成長と誓う波多野の心を駆り立てた。

Text by 後藤勝(フリーランスライター)