“プロ”に必要なものを知った
トップチーム昇格1シーズン目の真摯な取り組み
GK 31 小林 将天
人に、選手にストーリーあり。2024シーズンを戦い抜いた全青赤戦士を選手ごとに紹介する『2024 PLAYER’S REVIEW』。果たして彼らはいかなる想いを抱えながらシーズンを過ごしていたのだろうか。自信、手応え、課題、喜び、悔しさ……。それぞれが送った今シーズンの戦いを、本人の言葉を紡ぎながら振り返る。
U-18からトップ昇格1シーズン目の小林将天。経験と実績を兼ね備えた先輩との競争は容易ではなく、残念ながら公式戦に絡むことはできなかった。だが、頭で理解していたことと、実際に肌で感じた違いを知れたことが何よりかけがえのない財産になったはず。プロとして戦っていくためのベースを整えた彼の2024シーズンを振り返る。
4人のゴールキーパーがひしめく東京にあって、U-18から昇格してきたばかりのルーキーが公式戦に絡むことは容易ではなかった。それでも秋が深まってくると、いつの間にか頼もしさが増し、練習試合や練習中のパフォーマンスに成長のあとが窺えるようになる。
だからこそ、先輩の児玉剛、波多野豪、野澤大志ブランドンとの違いが何であるのかも、少しずつ理解してきた。
「プロ1年目で、高卒で、ゴールキーパーで、すぐに序列を変えることは難しいと分かってはいましたが、実際に今シーズンやってきて、先輩のピッチ内外での取り組みの素晴らしさを見て、これまでずっとプロの世界で戦うことができている理由を肌で感じました」
先輩たちがメンバーに選ばれる基準は、まずはゴールマウスを守れるかどうかという選手としてのシンプルな能力。そこに加えて監督やスタッフ、チームメイトからの信頼だという。ゴールキーパー単体としての実力を比べた時には、それほど極端に大きな差があるわけではないかもしれない。しかしこの差を埋めていかないことには、チャンスをつかむことは難しい。
「チャレンジし続けることが大事だと思っています。それをやめたら普通のゴールキーパーになってしまう。何事にもチャレンジするメンタリティを持ち続けることが、メンバーに選ばれる要因の一つなのかもしれないと思いました」
もう一つ、純粋にプロのゴールキーパーとして能力を高めるには、一定量のトレーニングが必要だ。トップ昇格1シーズン目はピッチ外の筋力系トレーニングで負荷をかけることで、ピッチに入った時に身体が重く感じるケースも経験した。
「その状態でもやらなきゃダメ。身体が重いからやる気がなくなる、めげる、みたいなことはなく、安定するようにしています」
プロの壁を痛感している一方、そのおかげでフィジカル強化が進み、練習の負荷をキツいと感じなくなってきたことは今後への明るい材料だ。
「試合勘を維持することが難しくても、プレー中に何かを残そうとするアグレッシブな姿勢は出せていると思いますし、ただ立っているのではなく、何をすべきか考えながらゴールキーパーとしてピッチに立てるようになったことが一番大きな成長だと思います」
未来の守護神候補がトップレベルで活躍する先輩の姿を見て、肌で感じて、自らの肉体改造にも着手した2024シーズン。真摯に取り組んだ地道な努力と新しい発見は、ここからJリーグで活躍するための下準備となるはずだ。
Text by 後藤 勝(フリーランスライター)