現実を受け止めて
みんなでやっていくしかない
悔しい。ただただ悔しい。青赤2シーズン目、キャプテンの一角を託された小泉慶は、2024シーズンを振り返って何度も同じフレーズを口にした。ピッチに立つ選手がもっとやらなければならない──。悔しさが募る今シーズンを踏まえて、闘志溢れるプレーでチームを引っ張り続けた背番号37は青赤が本当の意味で強くなるために必要なものをどう捉えているのか。
Q、まずは今シーズンを振り返って、感想をお願いします。
A、昨シーズンに続き、悔しい結果になってしまったと思っています。
Q、タイトル争いも優勝争いもできなかった。それに尽きるということですか。
A、本当にそのとおりです。2シーズン続けて最終節を前にAFCチャンピオンズリーグの出場権を争うこともJ1リーグの優勝争いもなく、シーズンの最後の最後までファン・サポーターが観たいような試合、自分たちが思い描いていたような試合ができませんでした。ただ、それが自分たちの力だと思うので、悔しいかもしれないですけど、チームとしてその現実を受け止めなければいけないと思っています。
Q、小泉選手は昨シーズンから東京に加入し、昨シーズンの悔しさを胸に臨んだと思います。その“悔しい”という感情は前のシーズンと同じものですか。
A、昨シーズンは加入1年目だったので、ある程度は自分のペースで、どういう選手がいるかを把握したり特長をつかみながら、自分の色も出していこうという勝負でした。それが今シーズンは2年目でキャプテンという立場になり、シーズン開幕前にモリくん(森重真人選手)からも「中堅の選手がもっともっと引っ張っていかなければ」という話をもらいました。今シーズンはキャプテンが3人体制で、夏に松木玖生選手が海外移籍してしまった時に、「自分がやる」と腹をくくったこともあり、昨シーズンとは想いの部分が全然違います。ですが、結果的に言えば、何も変えられなかった。それが正直な答えだし、もっと言えば2年連続で個人的には何も得られていない。この世界は正直、結果がすべてです。どれだけ頑張っても結果を出せていない以上は評価されないですよね。僕たちはプロの世界に生きていて、全員がプロサッカー選手として重く受け止めなければいけないと思っています。
Q、キャプテンという役職に関係なく、昨シーズンよりも責任を重く感じているということですか。
A、そうですね。特に今シーズンはそういう立場を任されたのに、何も変えられなかった。それが2024シーズンの結果ということになります。何回も言いますけど、いくら頑張っていても結果がすべてですから。ならば、もっとやらないといけないし、何かを勝ち得るにはまだまだ足りなかった。個人としてもチームとしてもそういうことだと捉えています。
Q、“足りない何か”とは。
A、たくさんあると思います。大きいものではなく、細かなものがたくさん。僕が来る前も毎シーズンこのような順位に終わっている。それにみんな満足していないけど、それでも変わらないのは何か理由があるからですよね。まず一番に結果を出すのは選手なので、もっと選手がやらなければ、選手が頑張らなければいけません。ですが、選手だけが頑張っても勝ち続けることは厳しいと思うし、それは監督や現場のスタッフだけが頑張っても同じです。もっと言えば、社長や強化部をはじめとするクラブのスタッフ、パートナー、ファン・サポーターのみなさんだけが頑張っても厳しいです。それぞれが頑張るだけで勝ち続けるのは難しいですよね。だから、東京に関わるすべての人が、どうしたらこのチームがもっと強くなるか、どうしたら優勝できるか、優勝したクラブとの差はどこなのか。これらを他人ごとではなく自分ごとにして向き合うべきです。それは人のせいにしたり、粗探しをしたりするのではなく、みんなで考える必要があるということ。みんな今の悪い流れには気が付いていると思うから、発信して、行動してやっていく。
僕はまだ2年目ですけど、ファン・サポーターのみなさんをはじめ、ずっと東京を見ている人たちのほうが多いと思うので、東京を変えるためにみんなでもっともっとエネルギーを使うようにしていきたい。もちろん、みんなも頑張っていますが、僕は選手の立場として強調したいのは、僕を含めて選手がもっとやらなければいけないということです。
Q、一番の問題は何だと捉えていますか。
A、たぶん、目に見える問題だったら僕が来る前に優勝していると思いますね。東京はカップ戦しかタイトルを獲れていないですけど、その流れを考えると、“これ”といった問題が分からないから難しいんだと思います。答えが分かっていたらとっくに変わっているはず。逆を言えば、みんながやりがいを感じて、新しい選手も強い想いを持って入ってきていると思うので、みんなで一つになってリーグタイトルを獲れた時に、その“何か”が分かるのかなとも思います。自分がいる時なのかいない時なのかは分からないですが、在籍している時にリーグタイトルを獲れたらベストですね。
Q、言葉にするのが難しい問題が多いということですね
A、自分のなかで“これ”という答えを持っていれば良いんですが、そこは本当に難しいですね。すぐに変えられる問題点と、すぐには変えられない問題点があると感じています。そこは個人というよりもチームとしての部分ですね。だから、今シーズンは僕がキャプテンをやったなかで何も変えられなかったのはやっぱり悔しい。自分でやると決めたわけだから、もっとやらなければいけなかった。このチームを変えるためには、間違いなくもっとエネルギーを使わなければならない。そこは自分の力不足でした。
Q、そのエネルギーとは何でしょうか。
A、本来の性格を抜きにして、強く言わなきゃいけないところは強く言わないといけない。ダメなことはダメとはっきり言う。そこは自分が試合に出ているかどうかに関係なく、ダメなものにはダメだと言える人にならないといけない。そこは本当に力不足だったと感じていますね。
Q、ピッチ上、サッカー面のことはどう感じていますか。
A、選手全員に『東京のサッカーとは?』と聞いても、たぶん同じ答えは返ってこないと思います。そこが合っていない時点で形を見出せなかったということになります。それがまず一つの答えですよね。ただ、何回も言いますが、選手個々でできるところもある。個人で運べて、剥がせて、守れる選手が一人、二人、三人と出てくれば勝利に近づける。まず、その力が僕にはないことでこの順位になってしまったと思うし、戦術的な話の前に(個人として)一人で守れて、ボランチでもサイドバックでも10ゴールくらいに絡める能力が必要です。そこは一人の選手としては昨シーズンに続いて悔しいシーズンになってしまいました。
Q、来シーズンに向けて強く想っていることを教えてください。
A、来シーズンも厳しい戦いが待っていると思います。自分たちがめざしているところは簡単に獲れる、辿り着けるところではありません。リーグ優勝を経験している選手はいますが、選手一人ひとりがもっともっとやらなきゃいけません。自分たちが描いている目標を達成するためには、みんなで話し合いながら、一つになってやっていくしかないです。簡単に言えば、やるしかない。それだけです。
Text by 須賀大輔(エル・ゴラッソ)