今シーズンもアカデミーから年代別代表の守護神がトップ昇格を果たした。2023年のAFC U17アジアカップでは最優秀ゴールキーパー賞を受賞。セービングとハイボールに抜群の強さを見せる若き俊英だ。現在はU-19日本代表として世界をめざす後藤亘選手。プロの舞台に挑まんとする彼に現在の心境、そしてトップチームでの意気込みを聞いた。
——トップ昇格を聞いた時はどう感じましたか。
自分の実力をトップチームの先輩たちと比較して考えると、間違いなく上がれるという確証があったわけではないので、最初にトップ昇格のオファーをいただいた時はびっくりしました。
——後藤選手はFC東京U-15深川からアカデミーで育ってきました。トップチーム昇格を意識し始めたのはいつ頃でしたか。
中学1年の頃は全然試合に絡めなくて、中学3年になってU-18に上がるタイミングでも、そこまで意識しているわけではありませんでした。具体的に上がりたいと思い始めたのは、U-18でトップチームの練習に参加するようになってからです。
——謙虚な性格なのですか。
いわゆる“オラオラ系”のような、どこまでも自信を持っていて強気な性格ではないですね。自分が持っている能力を追求して、自分ができることに集中しようと思ってやってきたので、自分のレベルが高いとか低いとか、そういうことはあまり考えなかったです。次の試合に出るためにその練習をやって、代表に呼ばれたら代表で結果を出すことをやり続けた結果が今につながっているんじゃないかと思っています。
——2023年のAFC U17アジアカップでは多くのビッグセーブで優勝に貢献し、5試合2失点で同大会の最優秀ゴールキーパー賞を受賞しました。自信になりましたか。
受賞したことは嬉しかったですし、自信は少しつきましたが、そのアジアカップに限定して考えると、そんなに納得のいくプレーができたわけではなかったので、自分がいただいていいのかと思うところもありました。個人的にはFIFA U-17ワールドカップのほうが良いプレーが多く、結構やれるなという手応えがありました。
——あらためて自身の長所はどこですか。
シュートセーブとハイボールの対応が得意です。高いボールが来た時は勝てます。
——フィジカルをどう強化していきたいですか。
まだ体重が軽いので、もっと増やさなければならないという部分が一つあります。上半身も下半身ももう少し分厚くしないと戦っていけないので、どう筋トレをするかは考えています。まず体重と身体を分厚くすることから始めないと、その後に続かないので、まずはそこを最初に考えています。俊敏性も伸ばしたいと思っていますが、優先順位としてはその次の取り組みですね。トップチームを担当していた松原佑治フィジカルコーチが今年からU-18を担当しているので、現状の取り組みを継続していく感じになると思います。
——トップチームには日本代表やパリ五輪のU-23日本代表にも選出された野澤大志ブランドン選手を始め多くの先輩がいて、選手層が厚いポジションです。
トップチームの選手層が厚いのは分かっていたことで、そこに自分が入ってどのくらいやれるのかは練習に参加しながら考えていたところです。どこにいっても競争は厳しいですから、覚悟はしています。
——トップチームでの日々を今からどうイメージしていますか。
僕はまだ技術やメンタルを含めて足りていないところが多いと思いますが、それでも1年目から試合に出てやろうと思っていて、そこは楽しみというか、早くやりたいという気持ちはあります。最初の1年で試合に出られるか出られないかは分からないですが、一日一日成長していきたいです。信頼の積み重ねも必要ですし、難しいかもしれないですが、まずは開幕スタメンを狙っていきたいです。
——トップの練習に帯同して感じるアカデミーとの違いを教えてください。
まずトップの選手はキャッチング、パス、セービングを含めて基本的な技術がすごく高いですし、ポジショニングなどの細かい部分も質が高く、どの選手も簡単にシュートを決めることができない。それに比べて僕は簡単な技術的ミスをしてしまったり、シュートを許してしまったりする頻度が高く、そこには差を感じています。
——明確な差はある一方、詰められないほど離れているわけでもないと感じますか。
確かに一つひとつは小さな差かもしれないですが、少しの差、少しの不足がいっぱいあって、総合力として差がある感じがしています。それぞれの能力をトップの練習に入ってどんどん上げていきたいので、キャンプは最初からフルで取り組みたいです。
——先輩たちとの差をひっくり返すポイントは。
試合に出ることができていないのであれば、練習で自分ができることを示し続けるしかないと思っています。落ち込んでいても意味がないですし、先輩に向かっていけるくらいの気持ちでやらないと信頼はもらえないと思うので、立ち居振る舞いも含めて強い気持ちでやっていかなければと思っています。
——代表の国際大会などでもそういう頼もしさが求められたのでは。
FIFA U-17ワールドカップでのメンタルに関しては楽しさが勝っていて、良い意味で緊張を感じませんでした。会場の雰囲気とか、国歌を聞いて「やるぞ!」と思った時の高揚感がすごかったですね。
——代表なども含めてサッカー界全体で気になる選手は誰ですか。
ガンバ大阪ユースの荒木選手です。年齢が僕より一つ下のゴールキーパーで、U-19日本代表でポジション争いをしている選手ということもありますが、彼はしっかりとシュートを止められるし、ビルドアップにも参加できる。ブレイクアウェイ(相手選手にディフェンスラインの背後に抜け出された時の対応)も全部できるという部分で、どうしても自分と比べてしまいます。年下に負けたくないという想いもあって、結構意識している選手です。
——東京で意識する選手は誰ですか。
小林将天選手はU-18でも2年間一緒にプレーしていて、お互いにライバルとしてずっとポジション争いをしてきた間柄ですし、U-19日本代表にも一緒に選ばれているので負けたくないですね。
——最後に、ファン・サポーターにはどう呼んでもらいたいですか。
「ゴトウ」でも「ワタル」でも……チームでは「ワタ」とか「ワタル」が多いです。どう呼んでいただいても嬉しいですが、まずは名前を覚えてもらえたらと思っています。1年目から試合に出た時にはしっかり自分のプレーを出せるようにしていきたいので、みなさんよろしくお願いします。
♢後藤亘(ごとう・わたる)プロフィール
生年月日:2006年5月8日
身長/体重:192cm/83kg
出身地:千葉県
経歴:FC東京U-15深川 → FC東京U-18
代表歴:U-16日本代表、U-17日本代表、U-18日本代表、U-19日本代表
Text by 後藤 勝(フリーランスライター)