偉大なストライカーを目標に掲げ、アカデミーから若きポイントゲッターがトップチーム昇格を果たした。「ディエゴ選手のように頼られる存在になりたい」と語る山口太陽選手は、選手としての成長と同時にクラブの夢でもあるリーグ制覇を目標に掲げる。最大の武器は抜群の得点感覚。怪我を乗り越えて大きな挑戦をスタートさせようとしている彼の心境、そして胸に秘める未来像とは。
──FC東京U-15むさしでは中学3年次に日本クラブユースサッカー選手権(U-15)大会で優勝を果たしました。
小学生の頃から全国大会に出たことがなかったので、中学最後の夏に全国優勝することができて、自分としては本当にめちゃくちゃ嬉しかったです。当時からいずれトップチームに上がりたいという気持ちはありました。
──U-15むさしからトップ昇格を意識していたとのことですが、U-18に昇格した時点では自身のこれからをどう思い描いていましたか。
まずはすぐに高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグに出て、代表活動に絡めたらと考えていました。高校1年生の時はなかなかプレミアリーグのメンバーに絡めませんでしたが、高校2年生になって試合に出られるようになり、そこから軌道に乗った気がします。自分としてはプレミアで10得点を挙げてU-17日本代表でも実績を残した高校2年生の1年間が自信につながっています。
──そして正式にトップチーム昇格が決まりました。
3年生になってすぐに怪我をしてしまい、しばらくは「正直、どうなるんだろう」という不安な気持ちでした。でも、それまでに積み上げてきたものを評価していただけたことで昇格が決まり、それが率直に嬉しかったです。
──年代別の日本代表活動ではどんなものを得ましたか。
代表では周りの選手が相当うまくて、パスをもらってからの動きにバリエーションが増えます。自分自身がやれることも増えますし、海外の選手はフィジカルに優れていて、強かったり速かったりするので、彼らにどこまで自分が通用するのかという点で、本当に良い経験になっています。
──高校を卒業してすぐにプロの世界へ飛び込んでいくことになります。あらためてどんな心境ですか。
自分としては高校を卒業したら、すぐにプロで活躍したいという想いがずっとありました。今回、トップチームに昇格することで願っていたチャレンジができるチャンスをもらえたので、思う存分挑みたいということだけですね。
──すでにトップの練習試合に出ていますが、どんな影響がありますか。
小さな頃から見てきたディエゴ選手のような選手たちと一緒にプレーできるのは本当に嬉しかったです。強度やスピードがU-18とは全然違うので、今までにあまり経験したことのないような疲れ方をするのですが、そういうところで自分のレベルが上がっているなとは感じます。
──JリーグYBCルヴァンカップではU-18所属の後輩でもある尾谷ディヴァインチネドゥ選手がゴールを決めました。率直にどう感じましたか。
当時、自分は怪我をしていて試合を観るだけだったので、とにかく「早く自分も試合に出たい」という気持ちでした。彼とは同じポジションなので悔しさはありましたが、それ以上に「自分も早くその場に立ちたい」という想いが強くなりました。
──トップチームで参考になる部分は。
U-15むさし時代からずっとディエゴ選手を見てきたので、間近で見ることができて大きな学びになりました。シュートを含めたゴール前の動きはもう全然レベルが違う。とても参考になりました。それに、ディエゴ選手は信頼感もすごいと思うんです。「必ず決めてくれる」みたいな。自分も周りからそういう信頼を得るために、結果を残していくしかないと思っています。
──そんな山口選手の長所は。
ゴール前で点をとるところが自分の長所だと思っています。シュートに加えてポストプレー、前でタメをつくることも得意です。得点感覚に関しては、味方と合わせることや、どこにボールが落ちてくるのかを予測してプレーし続けてきたので、そういった感覚は養われているかなという気がしています。
──2025年1月からトップチームが始動し、2月には2025明治安田J1リーグが開幕します。どんな調整をイメージしていますか。
すぐ試合に出るところから逆算すると、1月のキャンプでアピールするしかないと思っています。フォワードである以上、得点という結果を残していくしかないですから。まずは試合に出ることをめざしながら、なるべく早く点をとって、チームを勝たせられるフォワードだと思ってもらえることが来シーズンの目標です。
──味の素スタジアムで活躍したいという気持ちが強いですか。
アカデミー時代から熱い応援をしていただいていましたが、味の素スタジアムではより多くの方に観てもらえるので、本当に夢みたいです。多くのファン・サポーターのみなさんの前でゴールを決めて、みんなで一緒に喜びたいと思っています。
──数字的な目標はありますか。
具体的な数字はなくて、できるだけ早く、できるだけ多く点をとりたいです。
──ライバルも多いです。ルーキーとしてどう競争に加わっていこうと考えていますか。
まだ自分のプレーや長所を知ってもらえていないと思うので、そこを分かってもらうために周りの選手以上に積極的にやっていかなければいけません。もともとトップにいる選手以上にやらないと、自分のアピールはできないと思っています。
──この選手には負けたくないと意識する存在はいますか。
同年代ですでに海外に行っている選手もそうですし、国内でも鹿島アントラーズの徳田選手のようにJクラブのトップチームでJ1月間ベストゴールを決めたような選手もいます。まずは彼らに追いつきたいと思っています。
──Jリーグで対戦したい選手を挙げるとすると。
川崎フロンターレの高井選手です。日本代表デビューもしましたし、今シーズンのJリーグアウォーズでベストヤングプレーヤー賞にも輝いているので、対戦して、上回って勝ちたいです。
──海外も含めて目標とする選手は。
カリム ベンゼマ選手です。ゴール前でしっかりと仕事ができて、レアル マドリードでクリスティアーノ ロナウド選手などと一緒にプレーしていた時は、自分が点をとるだけではなくて、チャンスクリエイトも含めて万能性を見せていたので、そういうところは参考にしています。
──厚い選手層を誇る青赤のトップチームに挑んでいくことになります。
参考になる選手ばかりですが、参考にしているだけだったら抜かせない。ここで戦って試合に出られるようになれば、どこに行っても戦える選手になると思います。味方ではありますが、そういうすごい選手たちに勝って試合に出られるようになるという経験は、ここでしかできないと思っています。
──ファン・サポーターにはどう呼ばれたいですか。
「太陽」。それしかないですね。
──ここから東京を引っ張っていくことが期待されていると思います。どんな選手になっていきたいと考えていますか。
ディエゴ選手もそれほど長身ではないですが、頼られるフォワードという役割を長年やってきたことが本当にすごいです。自分もああいう存在になりたいですし、自分がゴールをとっていけば試合に負けることはないと思うので、しっかりと結果を残して、クラブの目標でもあるリーグ優勝に貢献できる選手になっていきたいと思っています。
♢山口太陽(やまぐち・たいよう)プロフィール
生年月日: 2006年8月18日
身長/体重:183cm/79kg
出身:埼玉県
経歴:FC東京U-15むさし → FC東京U-18
代表歴: U-17日本代表
Text by 後藤 勝(フリーランスライター)