1/16トレーニング
沖縄・国頭キャンプ5日目の16日。この日から実戦形式のトレーニングも始まり、ビルドアップや守備の確認など松橋力蔵監督がめざすサッカーの青写真がピッチに描かれ始めた。
ビルドアップの練習中に、指揮官からは「ボールを渡すだけでなく、時間を渡すんだ」と声が掛かる。前向きのより良い状態の選手にパスを届けるために、何度も最終ラインでビルドアップをやり直す意識が植え付けられた。
精度と練度は高めなければいけないが、「ボールを動かすのは相手を動かすのが目的」というフレーズが選手たちの頭の中に刻まれたはずだ。松橋監督の「みんなならできる。もっと先にいけるぞ」という声が国頭のピッチに響き渡っていた。
FOCUS ON
オフィシャルカメラマンが選ぶキャンプ写真企画『FOCUS ON』。キャンプ5日目は、チーム最年長で5度目のワールドカップをめざす長友佑都の砂浜での走り込みをセレクトした。ビーチでのトレーニングを熟知しているリオデジャネイロ出身で“カリオカ”のギレルメ コンディショニングダイレクターが考案したメニューは超ハード。それでも、鉄人・長友は力強い足運びで乗り切り、南国の空と海に雄叫びを上げた。
CAMP VOICE vol.5 常盤亨太選手
明治大学から新加入した常盤亨太は開幕スタメンをめざし、充実のキャンプを過ごしている。監督、コーチの言葉や練習メニューを自分なりにかみ砕き、やるべきことも整理されている。大卒ルーキーは練習中、周りの選手のプレーを観察して「盗めるモノは全部盗む」と言う。キャンプ5日目は刺激的な日々を過ごす常盤に話を聞いた。
Q、実戦形式のメニューがはじまりましたが、ここまでのキャンプはどうですか。
A、充実しています。一つひとつのトレーニングメニューは一見複雑そうに見えるけれど、本質のところを求められているのだと思います。難しく考えずに、言われていることを最大限に生かしていくメニューが多いので、そこが面白いです。
Q、松橋監督からは主体性やアイディアを持とうという声掛けもありました。
A、監督に言われたことは取り組みますが、監督もそれだけではいけないと話しています。そのなかで、自分のアイディアや良さをどう組み合わせていくかだと思います。大枠は提示されているけれど、そこから大きくはみ出さなければ自由にプレーしても良いと思っています。自分の良さを絶対に消さないように意識してプレーしています。
Q、昨シーズンも練習生としてキャンプに参加していました。当時との違いはありますか。
A、昨シーズンは練習生だったので、もちろんアピールすることは意識していましたが、どうしてもお客さんという見られ方になっていたと思います。今シーズンは正式にチームに加入して開幕スタメン入りを目標に掲げているので、お客さんという気持ちでいては絶対にいけません。自分がこのチームを引っ張っていくつもりで臨んでいます。ゲーム形式のメニューでも声を出してチーム全体を統一させたり、自分が中心になるという意志で強気に取り組んでいます。
Q、トレーニングマッチもはじまります。そこで存在感を示せば、どんどん周りも変わってくると思います。
A、練習でも徐々に認めてもらえはじめた手応えもあります。周りから『トップチームでもしっかりプレーできている』と言ってもらえるようになってきました。それでも、『できる』で満足してはいけないし、そこから突き抜けていかなければいけません。トレーニングマッチでも自分の特長でもあるボールを奪い切るところは、『通用する』ではなく、『一番うまい』『一番戦える』をめざさなければいけません。プロで戦うための武器として一番上をめざしていきたいです。
Q、ここには橋本拳人選手をはじめ、参考になる狩人も多いと思います。
A、(橋本選手は)足の出し方が海外の選手みたいで、見ていても面白いし、参考になります。自分は基本となる守備の原則に忠実な守り方をしているので、『そこで足を出すんだ』という場面でボールを奪い切ってしまうから面白いです。小泉慶選手もまた自分と違ったタイプの奪い方をしているので、どんどん参考にしたいです。
Q、そうしたプレーを盗めれば、さらなる成長も期待できそうですね。
A、みなさん本当にレベルが高いので、盗めるモノは全部盗むつもりで見ているので毎日が刺激的です。
Q、松橋監督は選手全員を平等にくまなく見ている印象があります。
A、監督は平等に見てくれていると思います。ただ、見られているということは逆に駄目だったり、手を抜いたりしているところも全部見ていると思います。そこは気が抜けないですし、見ていただいているありがたさもあります。とにかくチームのために全力で取り組むことが評価につながっていくはずですし、監督の目だけを気にするのではなく、最大限自分を出すだけだと思っています。
Text by 馬場康平(フリーライター)