2025 CAMP INTERVIEW<br />
木村誠二×バングーナガンデ佳史扶 対談<br />
盟友との再会 (前編)

INTERVIEW2025.1.27

2025 CAMP INTERVIEW
木村誠二×バングーナガンデ佳史扶 対談
盟友との再会 (前編)

木村誠二とバングーナガンデ佳史扶。U-15深川から長年の“盟友”が今シーズン、再び東京の地で同じユニフォームに袖を通すことになった。トップチーム昇格後、期限付き移籍を重ねて成長してきた木村は、昨シーズン、パリ五輪世代のU-23日本代表で主力となり、世界を経験して青赤に戻ってきた。一方の佳史扶は東京で研鑽を積み、2023年3月にA代表デビュー。パリ五輪は負傷の影響で本大会出場はならなかったが、ピッチで異彩を放つ存在へと進化を遂げた。異なる道を歩んできた二人が、それぞれ進化を遂げて再び邂逅する2025シーズン。果たして両選手はあらためて何を思うのか。前編では離れていた期間の記憶とアカデミー出身選手に求められる活躍について語り合った。



──昨シーズンはお互い離れた場所で様々な経験をしてきたと思います。あらためてどんなシーズンでしたか。
木村誠二 嬉しいこと、悔しいことの両方がありました。AFC U-23アジアカップ優勝やパリ五輪出場があった裏で、期限付き移籍先のサガン鳥栖では悔しい結果に終わってしまった。そんな両極端な経験を同じシーズンですることはなかなかないと思います。とてもメンタルが左右されやすい状態ではあったと思うけれど、それでもシーズンを通じて試合にも出続け、色々な人に支えてもらいながらプレーできたことは、とても良い経験だったと思います。
バングーナガンデ佳史扶 僕は悔しいシーズンになりました。開幕からの半シーズンはとても順調だったと思います。リーグ戦も今までで一番順調なペースで試合に出場できて、出場数における得点、アシストも今までで一番多かったと思います。ただ、ここからというタイミングで怪我をしてしまい、結局その怪我が完治せず引きずってしまったことは正直悔しかったです。

──久しぶりに再会してお互いの変化を感じますか。
木村 まだ東京に戻ってきてから一緒にプレーしていないので分からないところが多いけれど、おそらくプライベートで言えばそれほど変わっていないと思います。
佳史扶 久々に会った感じはしないよね。
木村 一年間ほとんど会ってなかったのか……。
佳史扶 そうだね。ほとんど会っていない。連絡もたまにとるぐらいだった。
木村 連絡も頻繁にとっていたわけじゃないけど、帰ってきたら本当にいつもどおりずっと一緒にいたような感覚なので、すごく変わったなとは思わないですね。

──この一年間離れていたなかで、自分のここが変わったというところはあるはずです。どういう姿を互いに見せたいですか。
木村 ビルドアップの立ち位置とかパスの出しどころの選び方、運び方とかは昨シーズンでとても良くなっていると思いますし、「うまくなったな」と思われるようなプレーを見せられると思っています。驚いたのは、ヤスくん(木本恭生選手)にも、そう言ってもらえたことですね。「鳥栖や代表でもビルドアップがすごくうまくなっているように感じたけど、それはどこで教わったの?」と聞かれて。それで、自分でも「うまくなったんだ」と実感しました。やっぱり嬉しかったし、自信を持てるようになったポイントだったので。復帰して一緒にプレーできるようになったら俺が左センターバックで出場するなら絶対に隣に並ぶ。以前よりもやりやすくなったと思わせたいです。
佳史扶 ぜひお願いします(笑)。僕はプレーの部分で成長したというか、試合中の落ち着きや余裕を感じられるようになりましたし、とても身についたと思っています。あとはプレーの幅も少し広がったと自分自身では感じているんですけど、そこから7か月くらいサッカーができてないので、復帰した時にどうなるかは分かりません。ただ、個人的には成長できたところだと思うので、自分自身もそこは楽しみにしています。


──謙遜していますが、負傷直前のプレーは見ていて本当に素晴らしく、攻撃的なイメージが強かったなかで、守備での貢献度も大きく上がりました。今度は守備でも木村選手をサポートできるのではないですか。
佳史扶 そうですね。ただ、守備で助けられるかは……(笑)。
木村 もう僕がカバーに入らなくてもいいくらいなら助かります(笑)。でも、それぐらいメチャクチャ良かった。やっぱり東京の試合は気になってちょくちょく観ていましたからね。

──今シーズンはトップチームの半数近くが東京のアカデミー出身の編成になりました。過去にも前例がなかったくらいの数です。そのなかでちょうど中間世代にあたる二人は、このチームをどう引っ張っていきたいですか。
佳史扶 一番上が拳人くん(橋本拳人選手)で、その下が豪くん(波多野豪選手)……。
木村 そこからツバくん(寺山翼選手)がいてオレたちか……。みんな、うまいよね。あとはどれだけピッチ内でサボらせず、自分もサボることなくやるか。みんな能力が高いから昇格して現在のチームにいるはずなので。アカデミー出身の面倒は……、まだ面倒を見るほどのところに自分たちがいるとも思わないけど。
佳史扶 それこそ自分たちは姿勢で示していければいい。試合に出場して中心になっていけば、必然とチームを引っ張っていくことにつながると思う。
木村 それが絶対に言葉よりも伝わりやすいよね。アカデミー出身の先輩や後輩が頑張っているなと。「自分も頑張ろう!」と思ってもらうためには、試合に出て活躍することが一番だよね。


──今シーズン昇格した山口太陽選手や後藤亘選手だけでなく、キャンプに練習参加しているアカデミーの選手が伸び伸びとプレーしていることに少し驚いています。自身のプロ1年目や、練習参加していた当時を思い出して、どう見ていますか。
木村 もうビビりまくっていたよね(笑)。1年目や練習生の時は。
佳史扶 そこで伸び伸びやっているのは、見ていてすごいなと思います。自分が物怖じしていたことを少し後悔しているところもあるので。だからこそ、アカデミーの選手が練習参加する時は「思い切ってやればいい」とずっと声を掛け続けてきました。そこは意識していたので、彼らが伸び伸びプレーできて気を遣わないような環境を作れているのは良いことだと思います。ただ、自分たちがアカデミー時代に見ていたトップチームの厳しさは、絶対に消してはいけない。そこは「これがトップチームだぞ」と示しつつ、そのなかで彼らがビビらず、食い込んでいけるような声掛けをしていきたいです。アカデミー出身の僕らのほうが彼らとも接しやすいと思うので、できるだけ話し掛けることは今後もしていきたいですね。

──あらためて松橋力蔵監督はどのような監督ですか。
佳史扶 まだ長い時間は話せていないですが、ミーティングを聞いていると、すごく正直な人だなというのが第一印象でした。表現が難しいですけど、裏表がなく、物事を深く考えて真摯に人と向き合って話している真面目な人だなという印象です。
木村 力蔵さん自身が伝えたいと思っていることは、すごく理解しやすいです。それだけすごく丁寧に伝えてくれています。ここ数シーズンは外国籍監督が続いていましたが、コミュニケーションの部分は日本人監督の強みだと思うし、そこに力蔵さんの伝える力が加わっているのかなと。個人的には「何でこんなに敬語を使うんだろう」と思いました。ミーティングも敬語だったでしょ。
佳史扶 オレはそこまで意識していなかったかも。
木村 選手相手にすべて敬語でしゃべっている。だから圧を感じることがない。それが伸び伸びプレーできている要因にもなっていると思います。意図的にやっているのかは分かりませんが、本当にすごく丁寧で、監督も新たな挑戦に「ビビっている」と話していたので、正直な人なんだなと思いました。僕たちのところに下りてきて目線を合わせてくれて、何を言ってきてくれても構わないと言ってくれているし、聞きやすいし、もし何かあった時には言いやすい監督だと思います。人を萎縮させないし、練習中の雰囲気が悪くなることがないのは、力蔵さんのそういった人格だからだと思います。


後編へつづく



Text by 馬場康平(フリーライター