<マッチレビュー>
アウェイ福岡の地に乗り込んだ東京。直近の2試合では決定力を欠いたことで勝利を手にできていないが、内容は確実に向上している。今節のアビスパ福岡戦でも臨機応変な判断と立ち位置、試合の流れを見たサッカーで主導権を握り、決めるべきチャンスでしっかりと決めてチームを勢いづける白星をつかみたいところだ。
3試合ぶりの勝利をめざす東京は従来どおり3-4-2-1のシステム。野澤大志ブランドン選手がゴールを守り、3バックは右から土肥幹太、森重真人、岡哲平の3選手が並ぶ。両ウイングは右に白井康介選手、左には長友佑都選手を配し、ボランチは橋本拳人選手と高宇洋選手がコンビを組んだ。インサイドハーフは仲川輝人選手と俵積田晃太選手が入り、攻撃陣の頂点には山下敬大選手を起用。また、ベンチには東慶悟選手が今シーズン初のメンバー入り。松橋力蔵監督も認めるサッカーIQの持ち主で、昨シーズンのチームを支えたベテランの活躍にも注目が集まる。
小雨と肌寒い気候のベスト電器スタジアム。試合は福岡のキックオフでスタートを迎えた。
1stHALF- 集中した守備で後半へ折り返す
開始早々、ロングボール1本でいきなり大ピンチを迎えたが、紺野選手のシュートはわずかにクロスバーを越えて難を逃れた。続く前半10分には相手に押し込まれるなかで立て続けにシュートを打たれたが、ここは守備陣が身体を張った連続ブロックでゴールを許さない。
東京のファーストシュートは前半18分。右サイドから白井選手が入れたクロスを仲川選手が巧みに身体をひねって流し込もうとするが、これは相手ゴールキーパーにキャッチされてしまう。前半23分には中盤でボールを受けた山下選手が潰れながら前方へフリック。これに俵積田選手が抜け出してゴールラインきわまで持ち上がって折り返すと、中央で仲川選手がスルーし、逆サイドから詰めた白井選手がシュート。鮮やかに崩してチャンスを作ったが、相手のブロックに阻まれて先制には至らない。

直後の24分には紺野選手に強烈なシュートを打たれるが、至近距離からニアを突いたボールは野澤大志選手が鋭く反応してセーブ。守備からも流れを作るべくゴールに鍵をかけていく。
ロングカウンターを狙ってくる福岡。前半32分には紺野選手からのスルーパスにザヘディ選手が抜け出してゴールに流し込まれたが、副審の判断はオフサイド。VARのサポートでも判定は変わらず、得点は認められなかった。
前半44分には相手のセットプレーからゴール前の混戦で押し込まれそうになるが、これは橋本選手が寸前のところでクリア。懸命の守備を見せていく。
お互いにチャンスを作りながら、前半は4分間のアディショナルタイムもスコアは動かず。東京は守備で奮闘しながら攻撃では4バックの福岡に対して崩しの再現性をつくり切れないままハーフタイムを迎えた。
2ndHALF—終始後手を踏む。試合終了間際に失点して敗戦
両チームともにハーフタイムの選手交代はなし。エンドを入れ替えて後半がスタートした。前半にシュート2本にとどまった東京は、状況打破を狙いたいところ。だが、先にチャンスを作ったのは福岡だった。
後半12分、相手の右コーナーキックからゴール前の混戦で決定的なスライディングシュートを打たれたが、ここも橋本選手がラインギリギリでクリア。前半に続くファインプレーでチームを救う。
流れを変えたい東京は後半15分、白井選手に代えて小泉慶選手を右サイドに、山下選手に代えて佐藤恵允選手をインサイドハーフに投入。仲川選手を最前線に押し出すシステムに変更した。
交代直後には俵積田選手のドリブル突破からチャンスを作り、高い位置でボールを持った土肥選手のスルーパスから小泉選手が右サイドのポケットを取って折り返すなど、少しずつ良い形が生まれるシーンも出てきた。後半27分には右サイドでつないだボールを戻し、土肥選手から橋本選手へと渡った瞬間、左サイドから長友選手がペナルティエリア内へ猛然とダッシュ。ここに橋本選手がピンポイントで浮き球パスを送ったが、これはわずかに合わず。
左サイドで攻守に存在感を強めていた長友選手は後半29分に安斎颯馬選手と交代。同時に高宇洋選手に代わってシーズン初出場となる東慶悟選手がピッチに送り込まれた。その東選手がいきなりチャンスを作り出す。
後半33分、小泉選手からのパスをワンタッチでファーサイドの安斎選手に柔らかい浮き球パスを供給。惜しいシーンを生み出していく。
選手交代で勢いを得た東京は前線からアグレッシブなプレーを見せて攻勢を強める。守っては森重選手が身体を投げ出してのブロックでゴールを許さず。攻めてでは矢印を前方に向けたアタックを、守っては絶対に先制点を許さないという気持ちが伝わってくる集中したディフェンスを披露。緊張感のある時間が続く。

試合終盤、低温と強風に加えて雨足も強くなる過酷な環境でも選手たちが奮闘。後半43分には岡選手に代えてエンリケ トレヴィザン選手を投入。福岡が途中出場した長身のウェリントン選手を使った攻めに対して、高さと対人ディフェンスで強さを発揮できるエンリケ選手を起用して対応していく。
多くのシュートを打たれながらチーム全体で集中した守備で福岡を抑えてきた東京だったが、6分間の後半アディショナルタイムに痛恨の失点。押し込まれて許したクロスから安藤選手にヘディングを決められて終盤に先制点を許してしまう。
1点を追いかける展開からロングスロー、クロスボールと反撃を狙うも実らず。全員で耐えながらゴールを狙ってきたが、最後の最後で失点を喫してアウェイ福岡で悔しい敗戦となった。
MATCH DETAILS
<FC東京>
STARTING Ⅺ
GK野澤大志ブランドン
DF森重真人/長友佑都(後半29分:安斎颯馬)/岡哲平(後半43分:エンリケ トレヴィザン)/土肥幹太
MF高宇洋(後半29分:東慶悟)/橋本拳人/俵積田晃太/白井康介(後半15分:小泉慶)
FW山下敬大(後半15分:佐藤恵允)/仲川輝人
SUBS
GK 波多野豪
DF 木村誠二
MF 常盤亨太
FW 野澤零温
MANAGER
松橋力蔵
GOAL
ー
<アビスパ福岡>
STARTING Ⅺ
GK 村上昌謙
DF 前嶋洋太(後半41分:橋本悠)/田代雅也/安藤智哉/志知孝明
MF 松岡大起/見木友哉/紺野和也(後半41分:金森健志)/北島祐二(後半11分:名古新太郎)/藤本一輝(後半11分:岩崎悠人)
FW シャハブ ザヘディ(後半29分:ウェリントン)
SUBS
GK 小畑裕馬
DF 上島拓巳
MF 秋野央樹/重見柾斗
MANAGER
金明輝
GOAL
後半45+5分:安藤智哉
[松橋力蔵監督インタビュー]

Q、本日の総評をお願いします。
A、アウェイの地まで多くのファン・サポーターが来てくださいましたが、勝点をとることができず、残念なゲームだったと思います。 ゲーム内容も終始後手を踏むような、出来の悪いゲームでした。
Q、特に後半は相手にボールを握られる展開が続いていました。どのように分析していましたか。
A、後半にかかわらず、相手にボールを握られる展開ではあったため、まずは一人ひとりがただ下がって守るのではなく、寄せるところはしっかり寄せるということ。オーガナイズされた構成を作り上げることが大前提ではなく、やはり一人ひとりが1対1の場面で良いパフォーマンスを発揮することが大事だったと思います。その形が出なくなってきた時に自分たちのプレスの形を少し修正しましたが、良いパフォーマンスがなかなか発揮できませんでした。そこはシステムというか、並びを思い切って変える必要もあったと思っています。
Q、エンリケ トレヴィザン選手の途中起用の意図を教えてください。
A、エンリケ選手の起用に関して、本来はセンターバックを担う選手ではありますが、一つは彼がレフティーで、ボールを受けた時にシンプルに縦の長いボールを上手く入れられる可能性が高いということ。もう一つはセットプレーの強さもあるので、チャンスが来た時に、彼の力を発揮できるだろうということで起用しました。
[選手インタビュー]
<橋本拳人選手>

Q、難しい試合展開でした。ピッチのなかではどのように考えていましたか。
A、監督も言っていましたが、厳しい試合だったなという印象です。自分たちのペースでなかなか試合が進められなかったですし、最後の一瞬の隙をつかれて失点してしまいました。悔しいゲームでした。
Q、何が試合を難しくさせたと感じていますか。
A、なかなか前に良い状態でボールを届けられない。良い状態で誰かが前を向いて仕掛けるというシーンが少なかったですし、それは色々な要因があると思います。そこは改善していかないといけないです。相手にとってもっと怖い攻撃をしていかないと、得点には近づいていけないと思います。シュートも少なかったですし、そういったシーンを増やしていかなければいけないです。
Q、点がとれない試合が続くなかで、これまでの試合の展開とは違っていたように感じました。
A、試合を重ねるごとに相手も対策をしてきますし、僕らも相手の対策をして臨みますが、なかなか予想していた形ではないこともあります。そのなかで試合中にピッチのなかにいる選手がどう攻略していくかというところ。今日の試合に関しては、シンプルに背後をとることもなかなかできなかったですし、もっともっと怖い攻撃をするためにはどうしていくべきなのかという、そういった課題をとても突き付けられたゲームだったと思います。
<東慶悟選手>

Q、東慶悟選手にとって、2025シーズンのJリーグ初出場となりました。
A、悔しいです。非常に難しい試合でした。試合をとおして、ほとんどが相手の攻撃を耐える時間でした。今のチームの実力だと思います。短い出場時間でしたが、ゴールやゴールにつながるラストパスをなんとか狙おうとしました。上手くいかず、非常に悔しいです。
Q、相手の攻撃で守備のラインを下げられてしまっていた印象です。
A、前半から受け身になってしまっていて、後半もそれが続いてしまいました。長いシーズンを考えると、守勢にまわる試合もあると思います。それでも最後のところはやらせないように90分間戦わないといけないですし、勝点1を持って帰れるかどうかで大きく違ってくるので、その部分は課題だと思っています。
Q、これまでの試合と今日の試合では内容が違っているように見えました。
A、相手がいるスポーツなので、相手も分析してきます。ハイプレスをかけられた際にどのように打開して相手陣地までボールを運ぶのか、ゴールを狙っていくのかという部分はまだまだ改善できることがたくさんあるので、チームで共通認識をもって取り組まないといけないと思っています。
