青赤からSAMURAIBLUEへ。FIFAワールドカップ26北中米大会のアジア最終予選に東京から長友佑都、俵積田晃太の両選手が選出され、世界一をめざす刺激的な時間を過ごしている。5大会連続でのW杯出場を狙う38歳の長友選手、年代別代表を含めて初めての日の丸を着ける21歳の俵積田選手と対照的なキャリアの両者。それぞれ夢の舞台に向かう二人のチャレンジを現地で取材する青山知雄氏がレポート。パース(オーストラリア)から俵積田選手の現地独占取材を中心に、日本代表初招集の様子をお届けします。
子どもの頃から憧れていた日本代表という舞台。晴れてSAMURAI BLUEの一員となった俵積田晃太の緊張感は、見ている側にも十分に伝わってきた。
パースでの練習初日。バックパックを背負い、先頭を切ってチームバスから降りてくると、目線を上げることなくロッカーへと歩を進める。前夜にパースへ到着し、まだ選手やスタッフと親睦を深める時間がなかったのだろう。周りの先輩たちも彼の緊張している姿に気づいたのか、渡辺剛ら数人の選手が気持ちをほぐそうとしてくれた。

「最初に(渡辺)剛くんが話しかけてくれたりして、すごく話しやすい印象だった。リュウ(佐藤龍之介)とはもともと話していましたけど、本当にみんながすごく接しやすくしてくれています」と感謝の意を言葉にする。
一方、青赤のチームメイトで日本代表のムードメーカーでもある長友佑都は、ボール回しからいつもどおりに大声を発し、一つひとつの動きや言葉に熱量を込めていく。そんな長友も後輩の姿が気になっていた。
「タワラ、めちゃくちゃ緊張してるよ。あいつの声、一回も聞いてないじゃん(笑)。パースへの移動も一緒だったから多少話はしましたけど、すごく緊張してるんで、うまくなじめるようにやっていかないとね」。
実際にホテルに戻り、食事会場などで打ち解けやすいように振る舞い、「いじってもらったり、話してもらったりした」という。また、2日目の非公開練習が終わると、二人並んでクールダウンのジョギングで長く話す様子も見られた。「日本代表の選手たちと一緒に練習して、『東京だったらこうすれば良いよな』みたいな話をしていた」(俵積田)と、森保ジャパンと東京でのプレーを紐づけながらイメージを膨らませるサポートもしてくれた。
オーストラリア戦前日、日本代表として過ごした最初の3日間を振り返りながら、翌日に控えた試合について本人に聞いてみた。
「だいぶほぐれてきましたけど、まだ緊張感はあります」と言いながら、試合の話題になると言葉に力が入る。
「代表では全然まだまだですが、そもそも負ける気では来ていないんで、食らいついて、追い越していきたい。(試合に向けては)しっかりと準備をしたいし、得点につながるようなプレーが求められていると思うんで、そこをしっかりできれば。まずはチームのために走って、自分の特長をしっかり試合で出せればと思います」

オーストラリア戦に向けた非公開練習でも手応えはあったという。
「練習でも自分らしい突破はできましたし、試合にもし出場したら、そういうプレーをどんどんしていくことで、周りにも特長を分かってもらえるようにしたい」
試合前日。町田浩樹が周囲とのコミュニケーションについて聞かれた際、「左だったらタワラとか」と名前を出してコメントをしていた。その件について俵積田に聞くと、「周りとコミュニケーションをとりながら、走り出した瞬間に目が合ったりすることもできてきましたし、そこは徐々にすり合わせていければ」と連携面でもフィットしてきた様子を感じさせる。
経験や実績、これまでの序列を考えれば、オーストラリア戦でベンチ外になる可能性は除外できないが、一方でいきなりスタメン出場する可能性もある。本人に「緊張は?」と聞くと、「あります」と即答し、「緊張にはあまり強くないタイプ」とも続けたが、「普段どおりのプレーを意識して(緊張を)乗り越えたい」とも話してくれた。
初めて迎える国際Aマッチ。ピッチに立てばもちろんだが、外から見守ることになっても、かけがえのない経験となるはずだ。ここで彼が何を感じ、何を得るのか。こちらも青赤の背番号33がパーススタジアムで躍動する姿を期待しながら、メンバー発表とキックオフを迎えたい。
(文中敬称略)
Text and Photos by 青山知雄


