その熱を逃すな<br />
37 KOIZUMI KEI

INTERVIEW2025.8.02

その熱を逃すな
37 KOIZUMI KEI

今から約5か月前、県立カシマサッカースタジアム(現メルカリスタジアム)へと乗り込んだ東京は、多くの決定機を作りながらも常勝軍団の勝負強さの前に屈した。かつてその常勝軍団に在籍しその“伝統”の強さを知る小泉慶は、悔しさで唇を噛んだ。

「僕は途中から試合に出ましたが、自分が出てから良い流れを悪い流れに変えてしまったという責任を感じている。その悔しさや、あのスタジアムの空気にまんまと飲まれてしまった記憶が残っている」

試合序盤から優勢に試合を進めていたのは東京だった。だが、次々と訪れる絶好機を逃してしまう。放ったシュートがバーやポストを叩き、わずかにゴールポストの外側に外れるなど、徐々に頭を抱える場面が増えていく。


そのなかで、橋本拳人に代わって小泉がピッチに送り出されたのは後半18分。しかし、その数分後から形勢が逆転してしまう。ホームの声援に後押しされて攻勢を強める鹿島に対し、東京は自陣に押し込まれる時間が長くなっていく。

ホームで無類の強さを誇る鹿島は、勝負の機微を見逃してはくれない。同26分にペナルティキックを献上すると、それを鈴木に決められて先制を許してしまう。さらに終了間際にもセットプレーから追加点を奪われて万事休す。勝負どころで鹿島らしさを見せつけられる悔しい敗戦となった。その後悔を小泉は、こう口にする。

「鹿島相手に強度で負ければ、すべてを持っていかれる。まずはそこで負けないこと。タイトに戦うところでしっかり戦って、ずる賢くやってくるところをまともに受けず、こちらも賢く、警戒を強めながら戦っていきたい。相手をリズムに乗らせなければ、自ずとチャンスもやってくる。そういう相手だと思う」


青赤はこの敗戦から8戦未勝利という長いトンネルに迷い込んでしまう。2か月近く勝利から見放され、今シーズンからチームキャプテンを務める小泉自身も苦しい時間を過ごした。さらに5月17日の浦和レッズ戦で喫した敗戦を機に今度は5戦未勝利も経験。そうした順風満帆とはほど遠い今シーズンの日々が、一つの答えに辿り着かせた。

「相手がどこであろうが、まず自分たちにベクトルを向けなければいけない。今、自分たちが取り組んでいることにどんどんトライしていく。一人ひとりがチャレンジしていくことが大事だし、それが結果的に良い方向につながっていくのだと思う」

ようやく選手個々の良さが試合に出始めた青赤は、直近の公式戦5試合で4勝1敗と調子が上向きつつある。それぞれが日々と向き合い、ピッチの上ですべてを懸けて戦う。熱を送り込む場所はただ一つだ。

「自分が出た時に勝つためのパフォーマンスをしっかり見せなければならない。もちろんピッチ外でもやるべきことはたくさんある。ただ、一番大事にしなければいけないのは、僕たち選手にとってはピッチの中だと思う。小平グランドとスタジアムのピッチで何ができるか。とにかくチームを勝たせられるパフォーマンスをピッチで見せたい」


この勝負へのこだわりは、鹿島で教わったことでもある。2019シーズン夏から2シーズン所属した古巣との再戦を前に、小泉の目に火が灯る。

「鹿島は古巣だし、とてもお世話になったクラブ。まだまだ頑張っている姿をしっかりと見せたいし、しっかりとやり返さないといけない」

リベンジの場所は、青赤フラッグが掲げられた味の素スタジアムだ。腕章を巻き、ピッチをところ狭しと走り回る。球際の勝負も譲る気はない。アニキの見せ場が、再び訪れようとしている。


(文中敬称略)

Text by 馬場康平(フリーライター)