8/10 鹿島戦 MATCH PREVIEW & INTERVIEW

INTERVIEW2025.8.09

8/10 鹿島戦 MATCH PREVIEW & INTERVIEW

<前節・浦和レッズ戦のレビュー>

FIFAクラブワールドカップ帰りの浦和レッズを迎え撃った一戦。アウェイで喫した劇的な逆転負けを胸に刻み、青赤イレブンが味の素スタジアムで躍動した。

まずは開始6分、アレクサンダー ショルツ選手の持ち上がりからパスを受けた右サイドバックの長友佑都選手がボールを持ち直して左足でクロス。これを中央の遠藤渓太選手がヘディングで巧みに流し込んで先手を奪う。


その後、一旦は浦和に逆転を許し、前半終了間際にマルセロ ヒアン選手が同点弾を決めたかに思われたが、VARのサポートで直前に東京のファウルがあったと判定されてゴールが認められず。1点のビハインドで後半を迎える。

ハーフタイムのロッカールーム、松橋力蔵監督から「これで舞台は整っただろう。絶対にやり返すぞ。最後は我々が笑っていることを思いながらしっかりプレーしてくれ」と檄を飛ばされた選手たちが、胸に秘めた想いをピッチで表現していく。

まずは後半21分、長友選手が右サイドから中央へ差し込むパスを入れると、ヒアン選手が巧みなキープからのターンを見せて左足で同点ゴールをねじ込む。

これで試合を振り出しに戻した東京は終了間際の後半44分。安斎颯馬選手の左コーナーキックが弾き返されたこぼれ球を野澤零温選手がハーフボレー気味に狙い、相手に当たって浮き球となったボールに仲川輝人選手が飛び込んで逆転に成功。アウェイでの悔しさをそのままお返しするような劇的勝利に、味スタが熱狂の渦に包まれた。


<今節のプレビュー>

真価が問われる一戦だ。

直近の公式戦は6勝1敗。勝負強さと試合巧者ぶりを見せながら、しっかりと結果を積み上げてきた。前半戦、長いトンネルに入り込んで苦しんだチームは大きく姿を変え、目線を揃えながら前を向ける集団へと進化を遂げた。

先手を奪う試合が増え、追いつかれても、逆転されても、自信を持って戦う選手たちにはたくましさを感じられるようになった。誰がピッチに立ってもそれぞれの持ち味を発揮できるようになった点も成長の証だろう。それは開幕から地道に取り組んできた成果が実を結んでいる証拠でもある。


思えば3月1日、アウェイでの明治安田J1リーグ第4節鹿島アントラーズ戦がシーズン序盤の分水嶺だった。ともに開幕から2勝1敗で迎えたゲーム、東京は開始から主導権を握って数多くのチャンスを作りながらも決定機を逃し続け、勝負どころで2点を失って敗戦。これで3連勝となった鹿島は勢いに乗って首位争いを繰り広げ、逆に東京はこの敗北を契機に8戦未勝利という苦しい道を歩むことになってしまう。

あれから約5か月。一時は降格圏内まで沈んだ青赤が4バックへのシステム変更と的確な戦力補強で一気に調子を上げ、再び鹿島と相まみえることになった。

伝統的に勝負強さを持つとされる鹿島。松橋監督はその裏側に「そういったものはいきなり染みつくものではない。しっかり定着させるためには本当に小さいことの積み上げが必要」と話す。

そして東京も「まさにそういったものに取り組んでいるところ。チームが良い状態だと捉えている選手もいるでしょうが、こういう時だからこそ大きくなり過ぎず、小さなことからしっかりと積み上げて勝利をめざすことで、相手を上回って結果を手にすることができる」と足下を見つめる。

水曜日に行われた天皇杯3回戦ではセレッソ大阪に粘り強く戦って勝利。中断明けのトレーニングで自分たちの持ち味を見つめ直した結果、最近の好調さが勢いだけでなかったことを示した試合でもあった。そして迎える鹿島戦。今の実力をぶつけることで手にした自信を加速させたいゲームとなる。

凡事徹底。勝って兜の緒を締めよ──。 

チーム全体で積み上げてきた様々な取り組みが実を結びつつある。だからこそ目の前の相手との勝負、ワンプレーにこだわって、チームのために戦うことにフォーカスして結果を引き寄せたい。

前回対戦の悔しさは忘れてはいない。5か月間の進化を見せつけるべき試合だ。指揮官は鹿島との大一番を翌日に控え、「我々の“今”をどうぶつけられるかは非常に楽しみ。自分たちの現在の姿をしっかり表現できれば、必ず勝てると僕は思っています」と力強く言葉にした。

東京としてはこの鹿島戦が後半戦の大きな分水嶺だったと言えるようなゲームにしなければならない。“反攻の夏”から“実りの秋”へとつなぐために──。

味の素スタジアムでその実力を証明するべく、青赤一丸となって勝利へと突き進む。


[松橋力蔵監督 インタビュー]


Q、天皇杯から中3日での準備期間になりましたが、どんなことを強調されましたか。
A、鹿島アントラーズを意識し、しっかりと攻守両面を強調したトレーニングをできる範囲のなかで実施しました。もちろんコンディションも整えながらですが、暑いなかでもしっかりトレーニングできることはやりました。

Q、前回対戦では、試合中盤まで押し込んだ展開もあったなかで、悔しい負け方を喫したと思います。
A、今節はホームですし、やはり我々が良いゲームをして勝利を収めることが大事です。出場するメンバーも互いに変わってくるでしょうし、両チームとも時間をかけて積み上げてきている部分があります。今あるものをしっかりぶつけて、必ずそれが勝利に結び付くように頑張りたいです。

Q、鹿島の印象はいかがでしょうか。
A、本当に素晴らしく強いチームです。『勝負強い』ですし、一人ひとりの選手としての強さ、クラブとしての強さもある。勝つために何をすべきかがしっかりと根付いたクラブです。少しでも隙を見せたり、弱腰になったら簡単に流れを持っていかれます。鹿島も他のクラブもそうですが、ある日突然染みついたものではなく、そういうものをしっかり定着させるために、小さいことをしっかりと積み上げてきています。我々も現状は良い状態かもしれませんが、気持ちだけが大きくなり過ぎると、小さいことに手が回らなくなったり、やれることをやらなくなったりします。人間の成長と一緒で、やはりこういう時だからこそ、しっかりと小さいものに目を向けたいです。その積み上げや積み重ねが結果として相手を上回って、勝ちを得ることにつながるということは、選手にもミーティングで伝えました。

Q、前回対戦では、チャンスを作りながら勝負どころでやられてしまったと思います。
A、鹿島は絶対そういうところを逃しません。“絶対に逃さない”という過大な捉え方をする必要はないかもしれませんが、今の彼らの順位を見れば分かります。まさしく積み上げだと思いますし、リスペクトに値する部分です。だからこそ、我々の今の状態をどう見せつけられるかという視点では非常に楽しみな一戦ですし、自分たちの今の姿をしっかりと表現できれば、勝てない相手ではないと、東京は必ず勝てるチームだと信じています。


[選手インタビュー]

<長倉幹樹選手>


Q、天皇杯で良い形でゴールを決めて、その勢いに乗って上位の鹿島アントラーズというチームと戦えることをどう感じていますか。
A、ここ数試合はチームとして勢いもあって良い流れできているので、そのなかで上位に位置するチームとどう戦えるのかというのはすごく楽しみです。

Q、これまでの結果を見ても勝負強い鹿島にここで勝てると自信も深まるのではないですか。
A、そこは相当自信につながると思います。点をとられても、点をとっても、動じずに最後までやり切ることが大事です。松橋力蔵監督は小さいことの積み重ねで勝利をめざしていると言っていたので、その局面ごとの勝ち負けにこだわってやっていきたいです。

Q、自分のなかでプレーの優先順位などはどのように考えていますか。
A、相手が嫌なプレーとか、味方が助かるプレーというのを常に考えています。優先順位としては、常に前が選択できるようにしています。自分が前を向けなくても、次の選手が前を向ければ良いと思っていますし、常に(チームが)前を向ける選択肢を意識して優先順位を高くしています。

Q、継続してゴールをとり続けています。
A、なぜか点がとれているな、という感じです。そういった感覚は大事だと思うので、それをまた次の試合でも出せるようにやっていきたいです。こんなに運が良いことはあまりないと思うので、この勢いに乗って次の試合も点をとって勝ちたいと思います。

Q、鹿島戦は本当に大事な試合になると思います。意気込みをお願いします。
A、ここを勝てるかどうかが本当に大事です。引き分けではなく、勝ちたいと思います。


<室屋成選手>


Q、天皇杯ラウンド16のセレッソ大阪戦では前半途中から急遽出場することになりました。
A、急な出場で難しい部分もありましたし、C大阪が主導権を握っていた時間帯でした。まずは守備面でしっかりと対応すること、ボールを奪った後に落ち着かせること、焦らずにボールをつなぐことを意識しました。後半に入り、ボールを握る時間が長くなったことでチャンスも増えましたし、得点にもつながりました。

Q、C大阪戦では右サイドバック、前節の浦和レッズ戦では左サイドバックでの出場でした。同じサイドバックとはいえ左右が変わる難しさがあると思います。
A、左サイドバックでのプレーはまだまだ時間が必要ですし、最初の頃は慣れていないことも多く、“正解”を見出すのに時間がかかりました。いろいろと良いと思うことを試しながらプレーすることで、考えてプレーできる楽しさを感じています。

Q、C大阪戦と同様に今節対戦する鹿島アントラーズもハイラインかつ守備強度が高いチームです。
A、基本的に自分たちがやるべきこと、ここまでやってきたことに変わりはありません。ただ、鹿島は伝統的な攻守におけるスタイルをしっかりと確立していて、前線から積極的にボールを奪いにくる印象です。まずは、そのような局面で簡単に負けないことや球際のバトルが重要だと思います。

Q、以前、メディアの取材で「巻き返せる雰囲気がある」と答えていましたが、チームとして調子が上向いてきた一つの要因でしょうか。
A、チームの雰囲気はとても良いです。言語化するのは難しいですが、ただボールを回しているわけではなく、しっかりとゴールをめざした上でプレーできている実感があります。やりたいサッカーも表現できている手応えも感じています。もちろん、安易な失点は良くありませんが、難しい展開のなかでもしっかりと耐えることや戦い方を保つことで、僕らに得点が生まれ、同点や逆転、勝ち越しにつながっていると思います。

本当に強いチームには、状況や試合展開に動じることなく点を決めてしっかりと勝ち切る力があり、それは今回対戦する鹿島にも伝統的に備わっています。接戦をしっかりとものにしたいですし、だからこそ、リーグ戦2位の鹿島を相手に勝って、示していきたいと思います。