GAME RESULT試合結果

第10節 2001/10/20(土)
観衆 8,657人 
天候 晴、無 気温 24.0度 湿度 55% 
主審:奥谷 彰男 副審:柴田 正利/原田 昌彦 四審:原田 秀昭

J1 2nd 第10節

博多球

HOME

アビスパ福岡

1-0

試合終了

前半1-0

後半0-0

AWAY

FC東京

アビスパ福岡 FC東京
02' 平島 崇
得点者
89' 山下 芳輝 → 久永 辰徳
89' 中払 大介 → 三好 拓児
選手交代 31' ケリー → 加賀見 健介
61' 下平 隆宏 → 喜名 哲裕
74' 伊藤 哲也 → 戸田 光洋
14 シュート 11
1 CK 4
25 FK 25
37' 盧 廷潤
警告 34' 伊藤 哲也
37' アマラオ
退場
アビスパ福岡先発
GK 12 塚本 秀樹
DF 2 河口 真一
DF 4 小島 光顕
DF 3 藤崎 義孝
MF 16 平島 崇
MF 40 盧 廷潤
MF 6 篠田 善之
MF 8 バデア
MF 10 中払 大介
FW 14 山下 芳輝
FW 34 服部 浩紀
アビスパ福岡控え
GK 1 小島 伸幸
DF 15 三好 拓児
DF 5 三浦 泰年
MF 24 久永 辰徳
FW 18 江口 倫司
FC東京先発
GK 1 土肥 洋一
DF 15 伊藤 哲也
DF 6 小峯 隆幸
DF 3 サンドロ
DF 8 藤山 竜仁
MF 5 下平 隆宏
MF 10 三浦 文丈
MF 14 佐藤 由紀彦
MF 19 ケリー
MF 9 福田 健二
FW 11 アマラオ
FC東京控え
GK 22 小沢 英明
DF 4 山尾 光則
MF 23 喜名 哲裕
MF 13 加賀見 健介
FW 29 戸田 光洋

【選手・監督コメント】

気持ちを切替えて再出発


 前節、1st王者のジュビロ磐田と“優勝戦線生き残りを賭けた大一番”で、残り10分まで互角の大接戦を演じながらも終盤畳み込まれ、結局大量5失点を喫して敗れた東京にとって、この日の福岡戦は今後を占う重要な一戦である。優勝こそ現実的には苦しい状況になってしまったが、その可能性はゼロではなく、またチームとして成長するためにもここで「切れる」わけにはいかず、この日の試合から再出発する気持ちで戦うことが大切であった。磐田戦との死闘、大敗から中3日しか経っておらず、選手の肉体的、精神的疲労は計り知れないものがあるが、気持ちを切り替えて戦い、ここで崩れないことが必要である。昨年以上の順位を確保するためにも、また東京の将来のためにも、この厳しい状況を何とか乗りきって欲しかった。

 一方、対する福岡にとっても、この日の試合は非常に重要な一戦であった。前節、ともに降格の危機に瀕している浦和との直接対決で引分けた福岡は、年間順位が14位に下がり、降格ラインぎりぎりの危機的状況にある。すぐ下の15位ヴェルディとの勝ち点差は7で、この日の試合に勝てば“残留”に大きく前進するが、逆に負ければ“降格”の足音が近づいてくる。福岡が死に物狂いで来ることはわかっている。さらに、この日の会場はホーム博多である。元々激しいプレーを身上とするチームだけに、「何をしてでも」の姿勢で死闘を仕掛けてくることは容易に想像できた。

 双方にとって今後を大きく左右する重要な一戦は、秋晴れが爽やかな博多の森球技場で午後3時、熱戦の火蓋が切って落とされた。

福岡の勢いに圧倒され、開始2分で先制される


 「死に物狂い」の福岡の出足は鋭かった。博多の森独特のリズムがスタジアムを包み込む中、サポーターの熱過ぎる応援に後押しされて、福岡イレブンは開始直後から激しく東京陣内に侵攻。試合前のミーティングで大熊監督が選手に指摘していた通り、福岡は開始直後から完全に前掛かりで先取点を取りに来ており、前線からのプレッシャーとパスを縦へ速く入れることで、東京に余裕を与えなかった。

 東京は福岡が攻め込むとすぐに始まる「ヨイショ!トットッ、ヨイショ!トットッ..」というスタジアムを包む独特のリズムに戸惑っていると2分、右コーナーキックから一旦シュートを打たれて跳ね返ったボールをMF平島に角度の無い所から豪快に蹴り込まれ、早速先制点を許してしまう。アウェーの雰囲気に呑まれたと言ったらそれまでだが、福岡がスタートから激しく来ることを承知しながら「開始直後は大きく蹴って相手の前掛かりの勢いを止める」等の対処をしなかったことが失点に繋がってしまった。福岡の出足が鋭かったことも事実だが、東京の出足が遅かったことも事実だった。

ケリー負傷退場で東京失速


 一瞬の悪夢だったが、これで目が覚めた東京はすぐに反撃に転じた。今やサイドアタッカーとしては、Jの中でも屈指の突破力を誇る由紀彦が右サイドでドリブルからスピードを生かした突破を見せるようになると、福岡の前掛かりの勢いは止まり、逆に東京は中盤の深いところで三浦が落ち着いたボールさばきと配給でタメのある攻撃を仕掛けるようになる。これにケリー、アマラオが安定したキープで前線の基点になり、ゲームの流れは早くも東京へ傾く。

 9分には攻撃参加した藤山が左サイドからクロスを上げると、ペナルティエリア手前で競ったアマラオがヘッドで前方へパスを送り、これに鋭く反応したケリーが抜け出して左足シュートを放ったが、惜しくもゴール右へ。2ndステージでは先制されても必ず取り返す自信を深めている東京は徐々に中盤を支配し、福岡ゴールへ迫った。しかし、東京ペースになりかけた14分、ケリーが中盤で突破しようとしたところを競り合った福岡MF中払が、柔道で禁じ手になっている技の如くケリーの右腕を抱え込んで二人で転倒。次の瞬間、ケリーは叫び声を上げ、右腕を押さえてもがき苦しんでいた。プレーは中断され、ケリーはピッチの外で治療を受けることになったが、選手生命を奪うような非常に危険なプレーに東京の選手は怒りを露にし、激しく抗議した。結局、この一連の出来事が試合を大荒れにするきっかけとなり、試合としては面白みの無い後味の悪さが残るだけの内容にしてしまう要因となった。

 東京はまさに「これから」という時にケリーという核を失い、前線でアマラオが孤軍奮闘するも、サイドへの展開が無く完全にトーンダウン。数分後にケリーが右腕をテーピングで固めてピッチに戻るとややリズムを取り戻したが、右腕が動かないケリーのプレーはスピードが無く、福岡を完全に崩すには至らなかった。それでも23分には、中央からケリー→アマラオ→ケリーと華麗な壁パスで福岡DF陣を崩し、最後はケリーから中央の福田に絶妙のパスが渡り、福田が左足で豪快なボレーシュートを放ったが、GKの正面に。結局ケリーはプレーを断念し、31分に加賀見と交代した。

ラフプレーでゲームブレイク...


 ケリーを失った東京は、ここで初めて福田、アマラオのツートップ体制を敷いた。左に加賀見、右に由紀彦で気持ち新たに福岡ゴールを目指した。しかし、待っていたのは、またしても「汚いファール」だった。32分、相手GKの蹴ったボールが東京の左サイドに流れ、小峯が体を入れてキープしたところを後ろから福岡FW山下が足を蹴って倒し、そのままクロスを上げると中央で待っていた中払がボレーシュート。ボールは大きくバウンドして土肥の頭上を越したが、バーに直撃してゴールならず。その直後、今度は東京DFラインの裏へ出されたボールをサンドロが左足でクリアしようとしたところをまたしても山下がサンドロの右足を蹴り、サンドロのクリアが小さくなったところをシュートを打たれた。ゴールにはならなかったものの、この連続したファール紛いのプレーで東京の選手は完全に平常心を失った。その直後の34分、ファールが少ないことで有名な伊藤哲が、激しいチェイシングから福岡FW山下を倒し、イエローカードを受ける。続く36分、サンドロが福岡FW服部と空中戦で競った際に肘で顔面を強打され、流血。サンドロは猛烈に抗議。サンドロが過去あれほど怒り狂った姿を見せたことはなかったが、結局唇の上を5針縫う代償を負うことに。その直後の37分、今度はアマラオと福岡MF盧が口論となり、けんか両成敗?で双方に対してイエローカードが出された。

 ゲームは大荒れの様相を呈してきたが、それでも両チームともに試合に勝つことが目標であることに変わりはなく、試合に集中してプレーを続行した。中盤で激しいボールの奪い合いから攻守が目まぐるしく入れ替わる中、東京は42分に左サイドでボールを受けた加賀見から攻撃に意識が集中してラインの浅い福岡DFの裏へスルーパスを通すと、そこへ福田が飛び込んでスライディングシュート! 意表を突くシュートでコースも良かったが、惜しくもGKに弾かれてコーナーキックに。ともに攻守の切り替えの速いサッカーでチャンスを作り始めたが、またも余計なラフフレーにより試合が中断することに。終了間際のロスタイムに福岡MFの中払が今度は伊藤哲とボールを奪い合った際に、またしてもケリーに仕掛けた同じ技(=腕を巻き込む)で二人とも転倒。伊藤哲はケリー同様、激痛にピッチ上でもがき、巻き込まれた左肘こそ軽い捻挫で済んだが、右肩打撲、さらには骨折中の左手をさらに悪化させることに。とんでもない危険な行為であることは明白で、試合は荒れ模様の度合いを強めていった。

敗戦以上に大きな代償...


ハーフタイムに大熊監督から「試合に集中するように」指示があり、選手も今ある戦力で勝利を得るために全力でプレーすることを誓ってピッチに出た。

 開始早々、加賀見が左サイドからクロスを上げると、中央で福田が飛び込むが一歩及ばず。さらにその直後にも三浦が右サイド深く突破してグランダーのパスを中央へ折り返したが、アマラオの手前でマーカーにクリアされる。東京は好調の加賀見が左から右サイドまで前線で大きな動きを見せて徐々にリズムを作ると、4分には右の由紀彦からのクロスに三浦が中央でヘッドしたがバーの上へ。続く8分には、伊藤哲のクロスに相手DFが跳ね返したところを加賀見が強烈なボレーを放ったが、これもバーを越していった。16分には喜名を投入して勝負に出ると、中盤でのボール支配率は大幅に増え、チャンスも広がった。

 一方、福岡は1点リードしていることもあって全体的に引き気味で、カウンター主体でボールを奪うとバデアに預け、そこから前線の山下、中払へパスを配給。さらにサイドを崩してクロスを上げると、ゴール前にはヘッドの強い服部が待ち構える。気は抜けない。東京は1点を返すためにある程度リスクをわかって前掛かりにしているため、カウンター時の東京DFの枚数は少なく、ピンチも多く訪れた。21分、24分には立続けにゴール前から山下にシュートを打たれたが、ともに僅かにゴールを外れる。ゴール前での山下、中払の細かいパス交換からの突破は驚異で、東京DFも小峯を中心に高い集中力で守った。

 29分、負傷の伊藤哲に代えFW戸田を投入。3トップの超攻撃的布陣でゴールに迫った。31分には喜名のクロスに福田がヘッドしたが、惜しくもGKの正面に。逆に直後の32分にカウンターから左サイドを突破され、クロスを上げられると、ボールはゴール前を横切り、逆サイドの至近距離から服部にシュートを打たれたが、大きくバーを越えていった。さらに34分、カウンターから今度は右サイドを突破されクロスを上げられると、ゴール正面で待ち構える服部にドンピシャでヘッドされたが、土肥がファインセーブで弾き出し、さらにこぼれを山下に詰められたが土肥がキャッチ。東京はDFの枚数を減らし攻撃の枚数を増やしているものの、がっちりと引いて守る福岡に対して前線でアマラオ以外に基点を作れず、サイドからの攻撃も相手の裏を突くような崩しがないため、決定的なチャンスを作れなかった。時折、喜名や三浦が福田の飛び出しに合わせてゴール前にループパスを送るが、単調でGKにキャッチされるかDFにクリアされてしまう。試合終了直前のロスタイムには、左から加賀見が上げたクロスに由紀彦が逆サイドから豪快にボレーシュートを放ったが、GKのファインセーブで弾き出され万事休す。結局、0対1のままタイムアップとなった。ケリーがあのような形で抜けたことが大きく影響したことは間違い無いが、相手を崩せるサッカーをしていなかったことも事実である。この日の東京は完全に平常心を失ってプレーしていた。終盤は攻め焦り、福岡の早い時間帯からの時間稼ぎに対しても東京は余計なファールで自分たちの首を締めていた。結局は最初から福岡の“術中”にはまっていたということだ。ただ、これを「経験が足りなかった」と一言で片付けれれるものでもなかった。ケリーや伊藤哲、サンドロに対する悪質なラフプレーは到底許されるものではなく、あの行為に対して平常心でいろというのが無理な話である。試合は通常、ゲーム終了とともに両チームの選手が健闘を称え合う美しい光景が待っているものだが、この日は全く別の展開を見せた。両チームが入り乱れての乱闘のようになり、スタッフが止めに入る始末に...。これをスポーツと言っていいものか。素晴らしい理念で立ち上がったJリーグであるが、サッカーである以前に健全なスポーツであることを忘れてはならない。

 東京はこの日、敗戦以上に大きな代償を負った。文中述べていないが、前述した選手以外に三浦もゲーム中に悪質なタックルに倒れ、右ひざを捻挫した。選手はチームの、そしてファンの大切な宝物である。その意味でも残念な試合だったと言うしかない。次節、マリノス戦では素晴らしいグッドゲームをしたい。

【大熊監督コメント】サッカーはスポーツで、スポーツとして成立させるのが大前提。その意味で今日は“一緒にやろうという仲間”として残念だった。勝敗の前に、そうゆうことを理解しあうことが必要。選手は宝物ということを皆が確認すべきだ。試合の内容としては、ケリーが抜けた後に前線に基点ができなかったことが反省すべき点。相手が引いた時に、裏への飛び出しもなかった。今後はケリーがいない時の基点づくりを考えたい。次に気持ちを切り替えて戦いたい。 *オフィシャルサイトとしては、多少感情的に書き過ぎた部分がありましたので、本日一部訂正させていただきました。(2001.10.22)